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『最後の小料理屋』の“お豆腐のカニあんかけ”を再現!

 今更感がものすごくて恐縮ですが、あけましておめでとうございます。
 去年は再現料理記事アップのペースが上がったかと思えばガクンと下がったりと、さながらジェットコースターのような年でした;。
 今年は、良くも悪くも色々バランスをとりながらゆっくり更新していこうと思っておりますので、もしご縁がございましたらお付き合い下さいますと幸いです。
 2020年も、何卒よろしくお願い致します。

 どうも、何か面白い事を言おうとして何も思いつかなかった当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『最後の小料理屋』にて主人公・成雪さんがある迷い込んだ有名人の為に用意した“お豆腐のカニあんかけ”です!
お豆腐のカニあんかけ図
 『最後の小料理屋』とは、『最後のレストラン』の主人公・園場凌さんの従兄妹である成雪さんが、勤めている小料理屋へ現れる少々(?)性格に難ありな偉人男性達に料理を振る舞ってはあの世へ送り返す、タイムスリップ系歴史料理漫画(←※たまにまともなお客様も来店します)。
 園場さんは悲観的すぎて女性に消極的なタイプですが、雪さんはその真反対で、楽観的すぎるが故に危険な男性に惹かれては積極的に突撃してしまう、典型的なダメンズウォーカー。
 その為、いつも悪い男性やお友達に騙されては痛い目にあい、「雪は不幸ですわ」と嘆いては自殺未遂を繰り広げるのが鉄板パターンとなっています(←※『さよなら絶望先生』の糸色望先生同様、本気で逝く気はありません;)。
 しかし、その割にお話があまり辛気臭くなく明るい雰囲気なのは、雪さんが幕之内一歩ばりに打たれ強く全然懲りていないからで、見た目は純和風ですが、内面は恋多きハリウッド女優に匹敵する強靭な精神力の持ち主だからかと。
 園場さんと雪さんを足して二で割ったらちょうどいいのにな~と、つくづく思います。

 そんな雪さんの苦労多き雇用主であり、よきツッコミ役として登場するのが、小料理屋の名物パンチパーマ女将・笹谷きんさん。
 『スナックバス江』のママと同じく、見た目はかなり癖があるものの中身は至極全うな常識人で、お店のお金を何度も盗まれたり高価な食材を勝手に食べられたりしても通報せず働かせてくれる人格者(←雪さんは返済ゆえの薄給を嘆いていましたが、これが『喧嘩稼業』ワールドなら煉獄をかまされてもおかしくない所業なので、五体無事な事を感謝すべきかと…)。
 唯一バス江ママと違うのは天然ボケ要素がない所ですが、明美さん以上に浮世離れしている雪さんに続いて女将さんまでボケてしまったら修羅の国以上の無法地帯になる事が予想される為、ちょうどいいバランスだと思います。
園場さんの従兄妹・成雪さんが主人公ですしっかり者の女将・きんさんが手綱を握っています
 そんなお二人の元に、記念すべき第1話でやって来たのが、かの伝説的な文豪・太宰治
 自殺未遂・薬物中毒・破滅主義・女性遍歴といった、1900年代初期の文豪にとってはテンプレのような経歴の持ち主ですが、中でも太宰治がすごかったのは、女性を虜にする天性の才能。
 お付き合いをされた女性は、奥様も含め最低でも5名とそこまで多くないように見えますが、内2名とは心中未遂、内1名とは心中を果たしており、その密度の濃さには驚かされます(←男性を破滅させる運命の女を海外では「ファム・ファタール」と呼ぶそうですが、太宰治はその男版ではないかと常々思います)。
 写真を見る限りはごく普通の優しげな男性に見えますが、どことなく掴み所がない所が面倒見のいい女性を惹き付けたようで、恋愛って奥深いな~と感じます(←もっとも、写真を見ただけではその方の真の魅力は分かりませんので、本当は他に理由があったのかもしれません。かの有名なモテモテ怪僧・ラスプーチンも写真だと地味に見えますが、ある本に載っていたロシア宮廷の侍女の証言によると「彼の瞳を見ると吸い込まれそうで、ああ、もう逆らえない」という魔性の持ち主だったそうですし…)。

 なお、園場さんのいる<ヘブンズ・ドア>と同じく死の直前にタイムスリップしてきた太宰治は入水心中直後で、首に縄をかけたびしょぬれスタイルという非常にエキセントリックな状態で来店していましたが、雪さんは動じるどころか「まあ!ずぶ濡れで気の毒な方!」「きっと今までたくさんの辛いことを経験された方なんだわ」とすっかり感情移入していました;。
 ちなみに、太宰治の殺し文句は「死ぬ気で恋愛してみないか」だったそうで、そんな事をダメンズ萌えの死にたがり雪さんが聞こうものなら…と読んでいてヒヤヒヤしたものです(←一晩で枯れる月下美人のように儚げに見えるものの、実際はドクダミ草の如くしぶといたくましい雪さんですので、ちゃっかり一人だけ生還しそうですが。そういえば、「少女漫画界に咲くドクダミの花」と呼ばれた岡田あーみん先生はお元気でしょうか?)。
暗がりから現れたずぶぬれの男…怪しすぎます;太宰治は最期、愛人女性と入水して果てていました
 その後、女将さんの「太宰の好物はカニだのホタテだのだったそうだヨ」「あと豆腐とか納豆とか」という言葉にヒントをもらった雪さんが、体を冷やした太宰治に温まってもらおうと作ったのが、この“お豆腐のカニあんかけ”です!
 作り方はとても簡単で、フライパンへゴマ油・生姜・玉ねぎ・カニのほぐし身を入れて炒め、醤油・みりん・お出汁・水溶き片栗粉を加えて餡を用意し、仕上げにお出汁で似た豆腐の上にかけて刻んだネギを飾ったら出来上がりです。
 ポイントは、最初はごま油と生姜だけ入れて火入れし香りをたたせてから他の具を入れること、単品ではなく温かいご飯の上に乗せて食べることの二点で、こうすると香り高くカニの旨味がより分かりやすくなるみたいです。
 カニ餡と豆腐はポピュラーな組み合わせですが、和風出汁を使うのにゴマ油や生姜を使って香りを出すのが珍しい感じで、初見時から気になっていました(←あと、みりんも加えて甘さも足すのも意外)。
 生姜は体を温め、食欲不振をなおす効能もあるとの事ですので、川で死にかけた太宰治にとっては文字通り生き返るような食事だったろうな~としみじみしました←食事を出された数秒後、上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想を行い台無しにしていましたが…)。
女将さんの言葉がヒントになって生まれた料理でした
 カニの値段が高く、なかなか手を出せないままでいたのですが、先日やっと安価なカニ缶を見つけたので再現する事にしました。
 作中には大体のレシピが記載されていますので、早速その通り作ってみようと思います。


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、豆腐の下準備。
 小鍋へ鰹と昆布からとった合わせ出汁を注いで絹ごし豆腐をそっと沈め、程よく煮えるまで弱火で静かに煮ます(←あんまり強火で長時間煮ると、スが入ってボソボソの食感になるので要注意です)。
お豆腐のカニあんかけ9
 次は、炒め作業。
 フライパンへごま油とみじん切りにした生姜を入れ、弱火にかけます。
 いい香りがしてきたら中火にし、みじん切りにした玉ねぎを投入してさっと炒めます。
お豆腐のカニあんかけ1
お豆腐のカニあんかけ2
 玉ねぎに透明感がでてくるまで炒めたら、カニのほぐし身を加えて混ぜ合わせます(←カニ缶を使うとお手軽です。その場合、缶汁も一緒に使います)。
 そこへ、醤油、みりん、お出汁を入れて味を調え、水溶き片栗粉を回し入れてゆるめのとろみをつけます。
お豆腐のカニあんかけ3
お豆腐のカニあんかけ4
お豆腐のカニあんかけ5
 深さのある器へ先程の豆腐を移し、上からカニ餡をたっぷりとかけて小口切りの万能ネギを散らせば“お豆腐のカニあんかけ”の完成です!
お豆腐のカニあんかけ6
 見た目は茶色系なので地味ですが、カニや鰹といった海鮮系の香りが強く鼻腔をくすぐるせいか、なかなかゴージャスな印象を受けます。
 カニとゴマ油という組み合わせは前例がない為、どんな味になるのか想像がつきませんが、雪さんを信じて食べてみようと思います。
お豆腐のカニあんかけ7
 それでは、豆腐をざっと崩してカニ餡ごとご飯へ乗せ、いざ実食!
 いただきまーすっ!
お豆腐のカニあんかけ8


 さて、味の感想は…見た目も味付けも完全に和風なのに、ちょっと中華っぽい趣のある味わい!両方のいい所取りで、ご飯にぴったりです!
 ほんのり熱が通ってふんわりプルプルになった豆腐に、よーく味わえば分かる程度の出汁の風味が移っており、ほのかに鰹の香りがする贅沢湯豆腐みたいな仕上がりになっています。
 湯豆腐は昆布主体のまろやかで甘やかな味付けにするのが王道ですが、鰹主体のしゃっきりした豊潤な味付けもイケると感じました。
 この豆腐へ、熱々トロトロの餡を絡ませると滑らかさと柔らかさが、そしてご飯に乗せると豆腐の甘味が相乗的にぐっと強調される感じで、さらに箸が進みます。
 味は全然違いますが、どことなく麻婆豆腐ご飯に似た口当たりだと思いました。
 餡は、カニのリッチな出汁がガツンと効いた優しく甘辛い和風仕立てですが、ゴマ油の香ばしい旨味が控えめに主張してくる為、想像よりも濃いめでしっかりとしたコクのある味わい(←中華料理店によくある”カニと豆腐のうま煮”に少し似ていますが、そちらよりもあっさりしていてカニの出汁がシンプルに活きている気がします)。
 やわやわとした舌触りの餡の中、玉ねぎのシャキシャキ感がいいアクセントで、刻みネギの青みと生姜の爽やかな香味が後口をキリッと引き締めてくれました。
 和:中華=7:3というイメージの一品です。

 簡単に作れる割にはなかなか凝った味になる為、忙しい時に便利なレシピです。
 豆腐の代わりに、茹でた青菜やブロッコリー、ふろふき大根、チャーハンに乗せても合いそうです。
 

P.S.
 kawajunさん、00092さん、無記名さん、コメントを下さりありがとうございます。
 今年もよろしくお願いします(´∀`)。


●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”を再現!

 その昔、「頑固親父のラーメン屋」というジャンルが一世を風靡した事がありますが、そういえば「頑固親父のパスタ屋」というのは見た事がないと気づきました。
 よくよく思い返せば、店主の写真もラーメン屋さんだとムッと一文字に口が結ばれている物が多いのに対し、イタリアンだと落合務シェフ片岡護シェフのように満面の笑みの物が多い感じで、不思議です。
 同じ小麦粉で打った麺同士なのに、かたや怖そうなイメージ、かたやにこやかなイメージ…いずれ研究してみたいテーマです。

 どうも、「チョコケーキから食べたらダメだ、プリンの味がわかんなくなっちまう!」「まだいちごは旬じゃないから、ショートケーキはないよ。春になってから来てくれ」とズケズケ言う頑固親父のケーキ屋さんがあったら面白そうだと考えた当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『最後のレストラン』にて主人公・園場凌さんがナポレオンの為に作った“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”です!
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”図
 歴史上の有名人物が最期の時の直前にお店にタイムスリップし、奇妙な注文をするのも半信半疑ながら慣れてきた頃、園場さん達の前にすごい大物がやって来ます。
 その人物とは、ナポレオン=ボナパルト
 イタリアはコルシカ島の貧乏貴族として生まれつつも、己の才覚とカリスマ性を武器にフランス皇帝の座についた、まさに立身出世の極みのような人生を送った偉大なる軍人皇帝。
 熱狂的に支持してくれた民衆のおかげでのし上がったものの、最終的に自身を失脚させる大きな一因となったのもまた、ロシア遠征大敗やこれまでの専制君主と変わらぬ姿に猛反発した民衆の力で、何とも皮肉な物を感じます。
 民衆=ファンの力で地位を押し上げられて支えられた、ある意味人気稼業なその人生を見ていると、何だかアイドルみたいな生き様だな~と思います←国民投票で皇帝に選ばれるとか、まさにAKB48のシステムを連想させます。握手券があったら、さらに票数は倍増したはずです)。

 なお、圧倒的な能力ゆえに孤高にならざるを得ない英雄というと、他にはアレクサンドロス大王ハンニバル織田信長源義経あたりが思い浮かびますが、ナポレオンの場合実家の家族を大事にして丸ごと抱え込み苦労した事が判明している為、「魅力的な一人の異性」というよりは「一家の大黒柱のお父さん」っぽいイメージ。
 一生懸命頑張って尽くしている割にはあまり報われているように見えない所もまた、ほとんどのお父さん方に通じる物があり、哀愁が漂って見えます(←ナポレオンが退位して没落した後、母と一人の妹以外は誰も助けようとしませんでした)。
 その為、藤栄道彦先生が描かれた晩年の疲れきった『スナックバス江』にいそうなおじさん風ナポレオン像は、すごくしっくりきたものです。
晩年のすっかり病んでしまったナポレオン様がご来店
 この時<ヘブンズドア>へやって来たナポレオンは、監視役の島の提督・ハドソン=ロウから腐ったワインを飲まされそうになったり、食事会で「ボナパルト将軍」と呼ばれて笑い者にされたり、家の前に衛士を置いて常に見張られるなどされてストレスがK点超えしており、胃痛に苦しんでいました(←まるで、『羅刹の家』に出てくる壮絶な嫁いびりをする鬼姑の如き仕打ちで、ドン引き。陰湿すぎて、「水とりぞうさんダースで持ってきて~!」と言いたくなる案件です)。
 おかげで食欲が全くなく、『ちびまる子ちゃん』山根君の如く胸をおさえて呻いていましたが、千恵さんが渡した「ガ○ター10」のおかげで、ほんの少しだけ食事をとる余裕が生まれます。
 そこで、ナポレオンが希望した料理が「人類の歴史と英知を味わえる一皿」
 ナポレオンが言うには、「もし人がピラミッドのように40世紀も永らえるのならば…どれほどのロマンを体験できるものか」「数千年の人類の歴史、それを味わえるような料理があれば良いのだが」だそうで、自身の終焉が近い事を予知していたようでした←処刑や自殺直前のお客様以外でそれを察知していたのは、今の所ナポレオンだけです)。

 けれども、園場さんはナポレオンの好物だった“鶏のマレンゴ風”←現代ではトマト・海老・卵などが入った豪勢な料理になっていますが、初出のレシピを見ると、ナツメグ風味の質素なチキンソテーみたいな印象)を引き合いに出し、「その時に使われた最高の調味料。今となっては、これがもう手に入らない」と言います。
 その調味料とはズバリ「空腹」で、「具合の悪い人というのは食欲も落ちています。どういう物を出せば<おいしい>と思ってもらえるのか…」と、大いに悩みます。
人類の叡智を感じられる料理をと希望され、悩む園場さん
 実はこの頃、発酵食品を使った料理について色々研究していた園場さんは、たまたま用意していた食材を使ってある料理を作り上げます。
 それが、この“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”です!
 作り方は簡単で、バニラビーンズを混ぜた塩麹にステーキ用の牛フィレ肉を一晩かけて漬け込み、塩麹を取り除いて両面をソテーしたら出来上がりです。
 ポイントは、塩麹に漬ける事で染み出た水分をさっとでいいので軽く拭き取ること、塩麹に漬けたお肉は焦げやすいので弱火でじっくり焼き上げることの二点で、こうするとカリッとしつつ柔らかく焼けるそうです。
 通常、お肉はそのまま焼くとどうしてもそれなりに硬くなりますが、塩麹に漬けると噛まずに飲み込めそうなくらい柔らかくなる為、胃がボロボロなナポレオンでもスッと食べられていました←バニラビーンズで臭み消しをしたおかげで独特の癖がなくなり、その上トゲトゲしくない塩気までプラスされるので、フランス人のナポレオンでも塩麹を受け入れられていました)。
 園場さん曰く、「発酵と腐敗は本来同じものでして、人間にとって好ましい結果を生むものを発酵として区別しているだけです」「そうは言ってもどうすれば好ましい結果を出せるのか、それは人類にとって、試行錯誤の歴史であったはずです」との事で、その答えにナポレオンも「見事!」と納得していました。
塩麹とバニラビーンズを混ぜたものに漬けこんでやきます
 塩麹にバニラビーンズというだけでも想像がつかないのに、さらにお肉を漬け込むなんて前代未聞だった為、どんな味か知りたくて再現する事にしました。
 作中には大体の作り方が書かれていますので、早速その通りに作ってみようと思います。


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、牛肉の下ごしらえ。
 バットへ塩麹とバニラビーンズを入れてよく混ぜ合わせ、そこにステーキ用の牛フィレ肉を置いて全面にまぶすようにして塗りつけます。
 まぶし終えたらラップをして冷蔵庫に入れ、そのまま一晩寝かせます。 
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”1
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”2
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”3
 一晩たったら冷蔵庫から取り出し、出てきた水分をよくきって塩麹を指でさっとこそげ取ります(←あんまり水っぽい時はキッチンペーパー等で拭いてもいいですが、できれば塩麹がちょこっとだけ残った状態のまま使った方がいいです)。
 これで、牛フィレ肉は準備OKです。
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”4
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”5
 次は、焼き作業。
 よく熱して薄く油をひいたフライパンに牛肉を入れ、弱火でじっくりゆっくりと両面を焼きます。
※塩麹に漬けたお肉は、火力が強いとすぐ焦げてしまいますので、トロ火で時間をかけて焼いた方がいいです。あと、何度もひっくり返さないようご注意下さい。
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”6
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”7
 中がミディアムレアくらいになるまで焼いたらすぐ火からおろし、温野菜を飾り付けたお皿へ移せば“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”の完成です!
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”8
 塩麹よりもバニラビーンズの香気の方が目立ちますが、不自然な感じは一切なく、ステーキの香ばしい匂いと相まって心とろかすような仕上がりになっています。
 弱い火力で焼いた割には意外とカリッとした焼き上がりですし、これは味が楽しみです。
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”9
 それでは、熱々の内に切り分けていざ実食!
 いただきまーすっ!
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”10


 さて、味の感想は…この上なく官能的で貴族っぽい品格のあるステーキでうっとり!予想の斜め上を行く相性のよさです!
 塩漬け肉みたいに程よく水分が抜けている為、ギュムッと引き締まった口当たりなのですが、噛むごとにジュワジュワと肉汁が出てくるフレッシュなジューシーさも兼ね備えています。
 私の腕が未熟なせいか、噛まずに飲み込めそうな程とはいかないものの、唇でしなやかに引きちぎれるくらい柔らかな仕上がりでした。
 表面は少しねっとりとした、まろやかに甘辛い塩気のベールを纏っている感じで、内側の肉のエキスも隅々まで熟成されたような奥深さがあります(←分かりにくい例えですが、始めはぶどうジュースだったはずなのに、いつの間にかワインになっていたマジックを見せつけられたようなイメージ)。
 最も似ている味の料理を挙げるなら牛の味噌漬け焼きですが、それよりも数倍垢抜けたエレガントな旨さで、濃厚で舌がとろけそうな程コクが強いのに後口がすっきりしているのに感心。
 肝心のバニラ風味ですが、意外にも塩麹の癖とぴったり調和して複雑なスパイシーさが生まれており、不思議と塩味とよくマッチしていました。
 塩麹のほのかな甘味がバニラと結び付き、何とも芳しい香りが肉に染み込み、牛肉特有の臭みや麹のツンとくる匂いを巧みにかき消しています。
 バニラアイスに醤油をかけたら妙に合っててびっくりしたみたいな面白い美味しさで、軽さと重さが両立した肉料理だと感じました

 バニラと牛肉が本当に合うのか半信半疑でしたが、食べてみて考えを改めました(←ただ、牛肉や豚肉ならともかく、淡白な鶏肉に合わせるのは難しいと思います)。
 普段、こういう甘さ+お肉の組み合わせが苦手な夫も、「うまい!これはいい」と認めて食べていましたので、実際の男性にも受けがいい味わいだと思います。
 ローストビーフのタレに使ってみても面白そうだな~と感じた再現でした。


P.S.
 銀猫さん、キンメさん、kawajunさん、コメントを下さりありがとうございます。
 大変遅くなってしまいましたが、今年も当ブログの記事を読んで下さり、誠にありがとうございます。
 来年もまた、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。


●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

生まれて初めて、サイン色紙が当選しました!

 最近、安達智先生がマンガボックスで連載されている漫画・『あおのたつき』が好きです。
 何故か幼い姿で浮き世とあの世の境にある〈冥土の花街〉へたどり着いた遊女・あおさんと、悲しい情念によってそれぞれ執着した物を象徴する姿になって流れ着く遊女達を導く役目を持つ社の宮司・楽丸さんが繰り広げる和風ファンタジーの物語で、更新される度にワクワクしながら拝見しています。
 そんなある日、HPに「アプリ読者限定のプレゼント企画」「応募してくださった方から抽選で10名様に、安達先生直筆のミニサイン色紙をプレゼント!」と告知があり、迷わず応募!
 正直、当管理人はこういう時かなり運が悪く当たった試しがない為、応募した事に満足して半ば忘れて生活していたのですが、先日宅配ボックスに見覚えのない包みが投函。
 何も注文した記憶はなかった為、「新手の架空請求詐欺だろうか…?」と大変罰当たりな事を考えながら開けたのですが、そこにはかわいらしい「うすいのかみ」(←『あおのたつき』のマスコットキャラ)が描かれた色紙と、プレゼント当選の通知書が!!
 夫共々、興奮しながら額縁に入れて飾りました。
 色々忙しく、先の見通しがつかなくて参っていましたが、元気が出そうです。
あおのたつき うすいのかみ 色紙

P.S.(その1)
 月に1度は必ず更新したいと考えていましたが、年末に向けてのバタバタと冠婚葬祭の影響で、とうとう更新できませんでした…誠に申し訳ございませんorz。
 再現する料理は決まっていますので、来月には出来るだけ更新(←最悪の場合、何らかの食関係の記事を代理でアップする事を考えています)する予定です。
 ご縁がありましたら、何卒よろしくお願いします。

P.S.(その2) 
 ほーりーさん、kawajunさん、無記名さん、しまうまさん、コメントとご質問をして下さり、ありがとうございます。
 無記名さんからご質問頂きましたポン菓子ですが、お察しの通り無糖タイプを使用しました。
 甘いタイプもおやつっぽくなっておいしいかも…とは当時も考えたのですが、あくまで旬君は「丼」という形にこだわっていましたので、あえておかずっぽくなるよう甘さなしで仕上げました。
 ご参考になりましたら幸いです。

『人情小料理 のぞみ』の“のぞみ風鮭ハンバーグ”を再現!

 先日、ある馬肉専門のお肉屋さんの前を通ったのですが、看板に「天高く!肥えております」というキャッチコピーが大きく書かれており、複雑な気持ちになりました;。
 「もしかして、例のことわざの語源は馬肉関連なのかな?」と気になって調べた所、実は古代中国の将軍の「北から匈奴が、春と夏に青草をたっぷり食べて力強く肥えた馬に乗って略奪しに来るから、秋には気をつけろ」と言った言葉が元になっているのだそうで、予想以上に殺伐とした話で驚きました。
 危うく「秋って馬刺しが一番美味しい時期みたいだよ~」と嘘の情報を流す所だったので、事前の確認作業はやはり大事だなと思いました。

 どうも、夫と『スーホの白い馬』のラストを語り合う度、「いくら夢の中でずっと一緒にいたいから作ってってお願いされても、愛猫の骨や皮や筋や毛を使って楽器は作りきれない…!」という結論に毎回達する当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『人情小料理 のぞみ』にて主人公・三蔵のぞみさんがある魚嫌いのお客さんの為に作った“のぞみ風鮭ハンバーグ”です!
のぞみ風鮭ハンバーグ図
 『人情小料理 のぞみ』とは、八年前に事故で亡くなった板前の夫の後を継いで小料理屋を営む女将・のぞみさんと周囲の仲間達が、すっかり寂れた自店やシャッター商店街を活性化する為に奮闘する、ヒューマンドラマ系料理漫画です。
 『華中華』の作画を担当されたひきの真二先生の絵のせいか、デジャブなキャラが多く、初めて見た時は「パラレルワールド!」「未亡人バージョンのハナちゃんだ!」と思ったのを覚えています(^^;)。
 しかし、心優しくて包容力のある性格はそっくりなものの、のぞみさんは和服の似合うしっとり落ち着いた大人の女性で、どこか艶のある雰囲気なのが特徴。
 恰幅がよくて女難の節がある酒屋・猪野山さん、優しく真面目でカッパ頭な八百屋・沙川さん、喧嘩っ早くて陽気な魚屋・猿渡さんといったズッコケ中年三人組凸凹常連トリオが、何だかんだ言いつつもマドンナ的存在のぞみさんの力になろうと協力するのが、見ていて微笑ましいです(←その名通り、どう見ても『西遊記』に出てくるキャラがモデルですね)。
 『美味しんぼ』みたいに薀蓄が並んだり、『ミスター味っ子』みたいに料理対決が繰り広げられたり、『中華一番!』みたいにド派手なアクションがあったりする訳ではないので地味ですが、目立たなくても一生懸命に頑張る人々の成長が描かれており、惹かれるものがある作品です。
すっかり寂れた商店街にある小料理屋の女将・のぞみさんが主人公
 単行本に載っている料理は題名通り和食系の創作料理が多く、それも既存の常識に縛られない、色んな技術を応用した斬新なレシピが多いのが特徴。
 卵かけご飯の焼きおにぎり・パルメジャーノと醤油のご飯・いわしのこしょう煮・小玉ねぎの味噌グリル・和風ロールキャベツなど、純和風ではないですが料理名を聞くだけで好奇心をそそられる物ばかりです(←この真面目なようで大胆な和食は、どことなく『美味しんぼ』のはるさんの料理を彷彿とさせます)。
 実は当初、のぞみさんは亡き夫・健さんの愛弟子だった淳さんに本格的な板前料理を教わり、一から修行をやり直そうとしていたのですが、後々淳さんから止められます。
 淳さん曰く、「健さんはこう言ったんです。のぞみさんの作る料理は俺たちプロの職人が作った料理とは違う味がする…あったかい味がするって」「だから、俺に料亭の味を教わるのもいいんですけど…のぞみさんだけが出せる料理…姉さんらしい味があってもいいんじゃないですか?」との事で、その言葉で夫亡き後、失われた味を再現しようと知らず知らずの内に自由な発想を押し殺していた事にのぞみさんは気づき、それ以来自分の心に素直になって料理を作るようになっていました。

 その昔、「歌が上手なだけでプロになれるなら、音楽の先生はみんな一流歌手になっている。技術だけではない何かを求めて、人は音楽を聞いている」というようなセリフをどこかで見た記憶がありますが、それは料理も含めた他の文化・芸術にも言える事なのかもしれないと、今になって思います。
 自分の理想を正確に具現化する為の技術も確かに必要ですが、例え荒削りであったり常識外れだったりしても、心に響く何かがやはり一番重要なのだと感じます。
それまでは亡き夫の味を追っていたのぞみさんですが、自分なりの味を追求する事になります
 今回ご紹介するのは、自分の味を手探りで模索し始めていたのぞみさんが、「魚なんか嫌いだよ」「ハンバーグがよかったなぁ」と言ったある魚嫌いのお客さんの為に即興で作っていた、“のぞみ風鮭ハンバーグ”!
 作り方はちょっと手が込んでおり、生鮭と木綿豆腐を手で練り合わせた後、みじん切りにした長ネギ・にんにく・にんじん・ピーマン・ベーコン・生パン粉・塩・こしょう・溶き卵を加えてさらに混ぜ、成型し真ん中をへこませたら粗くみじん切りにしたベーコンを乗せて全面に小麦粉をまぶし、両面を焼いて千切りキャベツの上へソースと共に乗せたら出来上がりです。
 ポイントは、生鮭は骨を取りつつスプーンで身をかき取って手でざっくりつぶして使うこと、木綿豆腐は一時間以上重しにかけてしっかり水気をきること、焼く時は最初からフタをして白ワインで蒸し焼きにすることの三点で、こうすると魚の旨味も活かしつつ臭みが消えたおいしいパテになるとの事でした。
 ソースは、ハンバーグを焼いた後のフライパンにトマトジュース・ウスターソース・醤油・こしょうを足して煮詰めた物を使うとの事で、こうするとびっくりするくらい深みのある味わいになるみたいです。

 肉と魚介類をミックスさせたハンバーグと言うと、『ミスター味っ子』『堺一馬特製豚肉抜きハンバーグ』や、『大使閣下の料理人』“ベトナム風ハンバーガー”を思い出しますが、生鮭とベーコンという組み合わせはかなり珍しく、味の想像が全くつかなかったのを覚えています。
 けれども、調べてみると鮭ハンバーグは「癖がなくておいしい」と色んな方がレシピをアップされているくらいポピュラーな料理らしく、驚きました(←かの有名な料理研究家・栗原はるみ先生レシピを考案されていました)。
 作中でもお客さんから「チョーうまいよ」「ファミレスのハンバーグよりずっと美味しいや!」と喜ばれており、のぞみさん共々ほっとしたものです。
なんと、スプーンでかき取った生鮭と木綿豆腐をベースにして作ります
 単行本を読んだ時からずっと気になっており、生鮭が安く手に入るようになったので再現する事にしました。
 作中には詳細なレシピが分量つきで記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、パテ作り。
 骨を抜いた生鮭から身をスプーンでかき出してボウルへ入れ、そこへあらかじめキッチンペーパー等に巻いて重石を乗せた後約一時間置いて水気をしっかりきった木綿豆腐を、手で潰しながら加えます。
 この二つを指で潰しあうようにしてざっくり混ぜた後、さらにみじん切りにした長ネギ、にんにく、にんじん、ピーマン、ベーコンを投入し、ざっと混ぜ合わせます。
※生鮭は包丁でみじん切りにしたり、細かく身をかき取るのではなく、指で細かくしすぎない大体のミンチ状にするのがミソです。
のぞみ風鮭ハンバーグ1
のぞみ風鮭ハンバーグ2
のぞみ風鮭ハンバーグ3
 パテに刻み野菜が行き渡ったら、生パン粉、塩、こしょう、溶き卵を入れ、粘りが出るまでよく練り合わせます(←お好みで小麦粉を入れてもOKです)。
 これで、パテは準備完了です。
のぞみ風鮭ハンバーグ4
のぞみ風鮭ハンバーグ5
のぞみ風鮭ハンバーグ6
 次は、焼き作業。
 先程のパテを等分に分けて空気を抜きながら丸く形を整え、真ん中を少しくぼませて中央に粗いみじん切り状にしたベーコンを飾り、前面に薄く小麦粉をふってまぶします。
のぞみ風鮭ハンバーグ7
のぞみ風鮭ハンバーグ8
のぞみ風鮭ハンバーグ9
 このパテを、油をしいてよく熱したフライパンへ並べてフタをし、数分かけて焼きます(←この時、ベーコンの面を最初に焼くとカリッとしやすい上、焼けたベーコンから出た肉汁が他の面にも染みて美味しくなります)。
 下の部分が焼けたらひっくり返し、白ワインを振ってすぐにフタをし、また蒸し焼きにします。
のぞみ風鮭ハンバーグ10
のぞみ風鮭ハンバーグ11
のぞみ風鮭ハンバーグ12
 ハンバーグが焼けたら火からおろし、千切りキャベツを盛り付けておいたお皿へ移します。
 その間、肉汁が残っているフライパンへトマトジュース、ウスターソース、醤油、こしょうを足して火にかけ、焦げつかないようゆっくり煮詰めてソースを作ります。
のぞみ風鮭ハンバーグ13
のぞみ風鮭ハンバーグ14
 ソースが煮詰まってとろみがついたら火を止め、そのままハンバーグの上へたっぷりかければ“のぞみ風鮭ハンバーグ”の完成です!
のぞみ風鮭ハンバーグ15
 見た目はごく普通のハンバーグ、匂いは本物のハンバーグにそっくりで、事前に鮭を使っていると言われなかったらまず分からないと思います。
 ハンバーグにキャベツの付け合せというのは珍しいですが、焦げ茶色のハンバーグに鮮やかな緑色がよく映えており、一体どんな味がするのか楽しみです。
のぞみ風鮭ハンバーグ16
 それでは、熱々の内に切り分けていざ実食!
 いただきまーすっ!
のぞみ風鮭ハンバーグ17


 さて、味の感想は…見た目以上にがっつり系な旨さで衝撃!一瞬魚入りだとは分からないくらい肉々しており、表面のベーコンのカリッとした部分が目新しくていいです!
のぞみ風鮭ハンバーグ18
 パテはふっくらとして柔らかいのですが、いい意味でふわふわし過ぎることはなくがっしりとした食べ応えのある口当たりで、食感だけなら豆腐入りの鶏ひき肉のつくねに似ていました。
 しかし、ベーコンの熟成された塩気を帯びた肉汁がたっぷり含まれているせいか、味的にはむしろ豚ひき肉のしっとりジューシーでボリューミーな味わいに近いです。
 噛むごとに溢れる色んな野菜の甘味と、鮭ならではのあっさりしつつも豊潤なコクが複雑に入り交じった、何とも新しい美味しさで、魚ハンバーグにありがちな臭みや淡白すぎるという欠点が全くない、純粋な旨味の塊みたいな仕上がりに驚きました。
 鮭は完全にみじん切りにするのではなく、手で砕くだけに留めている為たまに鮭の身の断片を噛み当てるのですが、酒蒸し風の品のいいホロッとした舌触りがしみじみ美味です(←この時だけ魚料理っぽさが出るので、不思議な感じ)。
 ピーマンのパリパリ感、にんじんのサクサク感、長ネギのシャキシャキ感、豆腐のふんわり感が口の中で賑やかに主張するのが歯に心地よく、いくらでも食べたくなる癖になる後味になっていました。
 ソースは昔ながらの洋食屋さん風にあるバーベキューソースみたいで、にんにくの力強い風味がガツンとくる奥深いスパイシーな甘辛さがたまりません。
 ピーマンとトマト風味のひき肉という組み合わせのせいか、ピーマンの肉詰めをどことなく彷彿とさせる所が面白く、どこか懐かしくて優しい味にほっこりしました。

 ソースや肉汁が絡んだ千切りキャベツのザクザクした歯触りがまたおいしくて、何個でも食べられそうなくらいすっかりハマりました(←正直、一馬君のハンバーグよりも肉らしさはずっと上でしry)。
 夫は豆腐入りのハンバーグがあまり好きな方ではないのですが、このハンバーグは「ほう!これはうまい!」と感心しており、バクバク食べていました。
 作るのに手間はかかりますが、それだけの価値がある料理だと思いました。


P.S.
 AKHさん、無記名さん、無記名さん、kawajunさん、ゆゆさん、上條由佳子さん、湖南さん、あやのさん、名無しの読者さん、コメントやアドバイスを下さりありがとうございます。
 日々におわれて細かいご返信が出来ず心苦しいですが、毎回必ず読んでは励まされておりますので、御礼申し上げます。
 お勧めしていただいた本、時間が出来たら是非読ませて頂きますね(^^)。


●出典)『人情小料理 のぞみ』 原作:毛利甚八 作画:ひきの真二 料理監修:Takeru/毎日新聞社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

『ミスター味っ子』の“味吉陽一特製揚げピザ”を再現!

 先日、ディズニーパーク内のフードについて紹介しているサイトを色々チェックしていたのですが、そこで以前アイス用のコーンにご飯を入れた商品がディズニーランドにあった事が判明し、思わず「時代が陽一君に追いついた!」と心の中で叫びました;。
 おまけに、おにぎり対決時の陽一君が見ていたら「食べやすく、手を汚さずに食べられるおにぎり…そういう手があったか!」と感激していたであろう寿司ロールポークライスロールが公式メニューとして登場しており、味っ子ファンとして興奮しました。
 数年前、未来を予言していた過去の映画や小説が話題になっていましたが、もしかしたら『ミスター味っ子』もその仲間入りをしたのかもしれません…。

 どうも、クアトロフォルマッジに蜂蜜をかけるという肥満まっしぐらな食べ方が気に入っている当ブログの管理人・あんこです(←範馬勇次郎が見たら「上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想!!!」と怒りそうですが、チーズ+蜂蜜の組み合わせだけは譲れません)。


 本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君が味皇GPの決勝戦で一馬君と戦う時に作った“味吉陽一特製揚げピザ”です!
味吉陽一特製揚げピザ図
 第28回味皇GPで第一回戦は小西さん、第二回戦は下仲さんを打ち破った陽一君と一馬君は、いよいよ次の決勝戦でぶつかる事になります(←詳しい経緯はこちらでご紹介してます)。
 実は勝負の五日前、味皇様は負けて誇りを傷つけられた下仲さんが再起をかけてフランスへ失踪した事もあり、「勝利する者は栄光に包まれるが、敗者はその全人格を否定され、屈辱にまみれる」「勝者と敗者の栄光と挫折の歴史が、またひとつくりかえされることになるな」とセンチメンタルな気分になっていたのですが、丸井さんは「大丈夫ですよ、あの二人に限って下仲のようなことは…。明るいもの」とすぐ否定しており、実際当の陽一君はその頃TVを見ながら爆笑していました;。
 さすがの丸井さんも、約二十年後に陽一君が妻子を残して明るく前向きに失踪する大人になるとは予想不可能だったんだろうなと思うと、じわる物があります←一方、破天荒でエキセントリックだった一馬君の方が真面目に社会人していたので、人間分からないものです)。

 とはいえ、味皇様の心配も少しは当たっており、「あいつが工夫してくるなら、オレも徹底的にその上いって研究して世界最高のピザを作ってみせるよ」松岡修造さんばりに燃える陽一君に対し、一馬君は「勝つんはオレやで」と一見燃えつつも、「あいつ…陽一には、まさか…まさかがあるんや」「つぶせる時は二度と立ち上がれんようにする。ピザソースでも具でも完全に奴を乗り越えんと勝機はないんや」とどこか焦りがある感じで、失踪とまではいかなくても崩れたら危うそうな一面が垣間見えました(←この強さと脆さが両立したアンバランスな魅力は、『新世紀エヴァンゲリオン』アスカに近い物があるかと)。
 『ガラスの仮面』で例えるなら、荒削りながらも天性の才能と創造力を持つ主人公・北島マヤ=陽一君、血の滲むような鍛錬を重ねて一流の能力を維持している努力派ライバル・姫川亜弓=一馬君というイメージで、あらゆる意味で対照的なキャラだな~と感じます。
味皇GP決勝戦の最終課題は、イタリア料理のピザでした相手がよきライバル・一馬君なのもあって、気合充分でした
 そんな親の心子知らずな陽一君が思いついたのが、この“味吉陽一特製揚げピザ”!
 当初、陽一君は一般的な円形のピザに、通常の倍以上チーズを乗せたボリューム満点なピザを作ろうとしていたのですが、チーズを溶かそうと高い温度で焼いた結果、トマトの風味が消し飛んでしまうという弱点に直面してしまいます。
 それではと反対に火力を抑えて焼いてみたものの、今度はチーズが溶け切らずに残ってしまい、頭を抱えます(←根性のない当管理人はこういう時、OK Googleに頼りそうです)。
 しかしそんな時、法子さんが外を飛んでいたちょうちょを見て「<二つ折りの恋文が…お花畑で届け先を探してる>…か」とフランスの詩人・ジュール=ルナールの詩を口にした事で、陽一君はあっという間に解決法を思いつきます(←相変わらず、コナン君ばりに超人的な連想力です)。
 それは、土台を二つ折りにして揚げてしまうこと(←要はカルツォーネですね)!
 トマトとチーズをピザ生地で包んで直接火に当てずに調理する事により、トマトの風味を殺さずチーズも完全にとろけさせるという画期的なアイディアで、見事難問をクリアしていました。
※ちなみに、連載されていた1980年代当時はまだ生地の厚いアメリカンクラストが主流だったそうですが、陽一君と一馬君は作中で早くも生地が薄めのイタリアンクラストを土台にしていました←さすが「オレの料理は常に革命や!」と岡本太郎の「芸術は爆発だ」風に言い切った一馬君、すごい先見性です)。
フランスの詩を何気なく歌い上げる法子さん、教養ありすぎです今では広く知られていますが、当時はすごく画期的なアイディアでした
 次は具ですが、陽一君は「ドゥの油っこさを消す新鮮なさわやかさを持った具」という理由で、肉は生ハム・野菜は生パイン・魚介類は生ウニを選びます。
 生ハムと生パインはともかく、生ウニはさすがにゲテモノ冒険しすぎでは…と個人的には思うのですが、陽一君が言うには一緒に生卵を入れる事によって全ての具が渾然となって調和するとの事で、大胆な発想だと感じました(←確かに、卵が強烈な味を中和させるのは「自由軒」さんのカレーが立証済みです)。
 なお、陽一君は「これだけのボリュームあるピザには…何かのアクセントが欲しいんだ!!」「やわらかい味わいの中にピリッと刺激的な全体の味をひきしめる味さ」と考え、さらにかぼちゃの花を刻んで炒めたものを加えています。
 普通だと、ピザのアクセントはバジル・オリーブの実・タバスコなどが考えられますが、陽一君曰く「どれもこれも刺激と風味が強すぎ」だそうで、もっとデリケートで繊細な刺激を与えたくてかぼちゃの花を選んだと語っていました。
 調べた所、本場イタリアではかぼちゃの花を「フィオーリ・ディ・ズッカ」と呼んでおり、ピザやパスタの具としては勿論、チーズを詰めてフリットにしているようで、実はかなり本場風の工夫だったんだな~と感心しました(←ただ、どちらにしてもオイル系やクリーム系としか合わせていないのが気になりましたが…)。
当時としては斬新な事に、生ハム・生パイン・ウニを具にしていました個性の強い具を、半熟卵で一つに纏め上げていました繊細なアクセントをつけるため、かぼちゃの花を刻んで入れてました
 一番重要なかぼちゃの花が手に入らなかったので、半ば諦めかけていたのですが、先日偶然手に入れる事が出来ましたので再現する事にしました。
 作中に載っている大体の手順や、文庫版の単行本に記載されている再現レシピを参考に、早速作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、生地の用意。
 ボウルに強力粉、薄力粉、塩、ドライイースト、お水、オリーブオイルを入れて全体を混ぜ合わせ、手で生地が一つにまとまるまでしっかり練り上げます。
 生地が滑らかにまとまってきたらラップをかけて五十分程放置して発酵させ、二倍くらいに膨れ上がったらガス抜きをしながら何等分かに切り分けて丸め、麺棒で薄くのばします。
 のばし終えたら底の深い器へ生地を広げながら入れ、トマトソースをたっぷり塗ります(←かぼちゃの花と具の相性をはっきりと確かめたかったので、トマト・玉ねぎ・塩・にんにくなどをシンプルに煮込んだ物を使用)。
“味吉陽一特製揚げピザ”1
“味吉陽一特製揚げピザ”2
“味吉陽一特製揚げピザ”3
 次は、具を乗せる作業。
 先程の生地の上へ、食べやすいサイズに切った生ハム、小さくスライスした生パイン、生ウニを順々に入れます(←悪あがきですが、生うにと生パインを直接触れないよう生ハムでガードしてました;)。
“味吉陽一特製揚げピザ”4
“味吉陽一特製揚げピザ”5
“味吉陽一特製揚げピザ”6
 そこへ、細かく刻んで軽くさっと炒めたかぼちゃの花を投入します。
※かぼちゃの花は炒め過ぎるとシナシナになりすぎて香りも飛んでしまいやすいので、ほんの数秒だけの気持ち程度しか火を通さないか、もしくは生のまま使われることをおすすめします。
“味吉陽一特製揚げピザ”7
“味吉陽一特製揚げピザ”8
“味吉陽一特製揚げピザ”9
 これらの具を覆うようにして生卵を落とし、加熱用チーズをたっぷりふりかけ、生地を重ね合わせて縁をギュッギュッとくっつけてふさぎます。
※見た目が大きな餃子っぽくなってしまいますが、揚げている最中に中の具や汁気が漏れると大変なことになりますので、これぐらい力強くくっつけた方がいいです。
“味吉陽一特製揚げピザ”10
“味吉陽一特製揚げピザ”11
“味吉陽一特製揚げピザ”12
 次は、いよいよ揚げ作業。
 160度くらいに熱した揚げ油へ先程の生地をそっと滑らせるようにして入れ、全体がこんがりキツネ色になるまでじっくりと火を通していきます。
 この時、何度かひっくり返して熱が均等に行き渡るようにします(←入れてすぐに触ると破けやすいので、表面が固まるまでは絶対に触らない方がいいです)。
※イタリア風なので、揚げ油はオリーブオイルとキャノーラオイルをブレンドした物を使いました。
“味吉陽一特製揚げピザ”13
“味吉陽一特製揚げピザ”14
 全体がキレイに色づいてきたらキッチンペーパーへ取り出して余計な油分をきり、そのままお皿へ移せば“味吉陽一特製揚げピザ”の完成です!
“味吉陽一特製揚げピザ”15
 陽一君が作った物よりも大分ごつくて不恰好になってしまいましたが、香りの方はとてもおいしそうで、胃袋を激しく揺さぶります。
 試しに包丁で真っ二つに切ってみると、作中の表現通り半熟卵とトマトソースに包まれた具がドバッとあふれ出し、内心「おお~!」と歓声を上げました(←一見具が少なく見えますが、中を見ると固形の具は中に留まったままで、ずっしりしてました)。
 果たして、味の方はどんな感じなのか…食べて確認しようと思います!
“味吉陽一特製揚げピザ”16
“味吉陽一特製揚げピザ”17
 それでは、熱々の内にいざ実食!
 いただきま~すっ!
“味吉陽一特製揚げピザ”19


 さて、味ですが…意外な事にかなりおいしくてびっくり(←失礼)!予想していた油っこさは全然なく、クリスピーな皮からジューシーな具がドロリと溢れて絶品です!
この揚げピザは、須原椎造さんもブラボーと絶賛していました
 生地はピザというより極薄のピロシキやナンっぽい味わいで、そこまで油を吸っておらず、揚げ物特有のギトギト感がない軽やかな味わい。
 表面はカリカリザクッとした硬めの食感、内側はシコシコモチッとした弾力で、焼いたピザにはない脳に直撃する香ばしいフレーバーがたまりません。
 縁の部分も硬くて噛みにくいという事は一切なく、軽いカリカリ感が逆にいいアクセントになっています(←アメリカンドッグの棒の根元についてるあの部分に近い旨さかと)。

 具で一番ガツンと来たのはウニとチーズとトマトで、イタリアンで定番の「ウニとトマトのクリームパスタ」みたいなこってりした味付けになっていました。
 ウニの甘くて濃厚なコクと磯の香りが、チーズの熟成した旨味やトマトのフレッシュな甘酸っぱさと三位一体になって調和しており、非常に贅沢な仕上がりになっています。
 生パインはトマト味と不思議に相性がよく、独特の強い甘味はすっかり影を潜めてマイルドな引き立て役となっており、全体にフルーティーな風味をプラスして味を深めていました(←生ハムともよく合っていて、まるで「生ハムメロン」のような組み合わせだと感心)。
 陽一君の言っていた通り、トロトロのソース状になった半熟卵が全体をまろやかにまとめてホクホクした食べ味になっており、バラバラにならずに済んでいました。
 例えるなら「港町のとろけるご馳走カルツォーネ~トマトとウニの特濃仕立て~」というイメージで、リッチな気分になりました。

 ただ、残念ながらかぼちゃの花は全く存在感がありません…。
 たま~に噛み当てるとちょびっとだけかぼちゃの優しい香りと、僅かにほろ苦い刺激が舌に伝わるのですが、他の個性的な具によってすぐかき消されます。
 「そういえば、何か忘れているような…?」とお約束的に放置される、影の薄い漫画キャラみたいだと思いました。
“味吉陽一特製揚げピザ”18


 これだけよくまとまった旨さだと、下手にアクセントがあるとバランスが壊れそうでしたので、かぼちゃの花が目立たなくて結果オーライだと思いました。
 夫も「うまい!これ一つでご馳走だな」とかぶりついていましたので、気に入ったようです。
 儚いかぼちゃの花ではなく、もっと主張が強いハーブを隠し味にしてまた試してみようかな?と色々考えさせられた再現でした。


P.S.
 ここさん、無記名さん、ほーりーさん、コメントとご質問をしてくださりありがとうございます。
 乾燥黒胡椒を水で戻す…のは、まだ試した事がないですが、相当硬いので難しいんじゃないかな?と思っています(^^;)。
 機会があったら、実験してみます!


●出典)文庫版『ミスター味っ子』3巻 寺沢大介/講談社
     文庫版『ミスター味っ子』4巻 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


○当ブログについて
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○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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