『鉄鍋のジャン!』の“飲めるラー油のチャーハン”を再現!
- Thu
- 15:56
- 再現料理
この二人、息子が大好きなくせにわざときつく当たる事で有名ですから…。
こんにちは、あんこです。
今日再現する漫画料理は、『鉄鍋のジャン!』内の第二回中華料理人選手権大会でジャンが作った“飲めるラー油のチャーハン”です!
『鉄鍋のジャン!』の主人公・秋山ジャンは、料理漫画においては珍しい事に無茶で非道な事を行う悪役っぽい主人公。
常に審査員や観客から蛇蝎の如く嫌われてブーイングを受けているという、ピカレスクロマン風の中華料理人です。
どれくらい無茶な事をするかというと、マジックマッシュルームみたいな効果をもたらすきのこ料理で審査員を病院送りにしたり、対戦相手の料理の味をぐっと落とすような料理を先に出して陥れたり、ウジ虫(一応無菌ですが)を埋め込んだダチョウ肉の刺身を食べさせたりなど、数えあげたらきりがないくらい。
本当、こんな主人公見たことがないです。
以上説明したように性格は極めて横暴ですが、ジャンの作る料理は大抵がおいしそうで、実際料理大会ではかなりいい線までいっています(いかんせん、人格に問題があるせいで正式な優勝経験はありませんが…)。
今回作る“飲めるラー油のチャーハン”は、その中でも指折りにウマー(゜Д゜)そうな料理です。
飲めるラー油とは、その名のとおり「飲めるくらいおいしく香りもいいラー油」で、ジャンが作った新しい調味料です。
作り方は、陳皮・八角・花椒・桂皮・太ネギ・しょうがで香り付けして熱した油を、桂花陳酒というキンモクセイのお酒で練った唐辛子の粉にかければ出来上がりです。
飲めるラー油がそこまで辛くない秘密はこの唐辛子の粉にあり、辛さを補う普通の一味唐辛子と、辛さよりも旨味風味の方が強い韓国産の唐辛子粉の二種類を巧妙にブレンドしたからこそ、飲める上に香り高いラー油になるのだそうです。
このラー油をたっぷり使い、具に溶き卵、レタス、醤油漬けの大根を加えて作ったチャーハンが“飲めるラー油のチャーハン”で、審査員はこのチャーハンのあまりの旨さにおかわりまでしてがっつき、ジャンは見事にベスト4へと駒をすすめます。
この時の審査員がチャーハンを貪っている様子や、飲めるラー油の魅力が語られているシーンがあまりに強烈だった為、「一回でいいから食べてみたいな~」と前々からすごく憧れていました。
ですが、素人の私に飲めるラー油の正しい分量や配合など想像できる訳がなく、もんもんとしながら歳月は流れていきました。
しかし先日、ネットを回っていると「文庫版の『鉄鍋のジャン!』十巻の巻末に載っている」という情報を得たので半信半疑で入手したところ…本当に書いてありました、飲めるラー油のレシピ!
しかも、元はといえばこのラー油を作ったのは実在するプロの中華料理人とのこと。せっかくなので、気合で再現します!
と言う訳で、レッツ再現調理!
まず作るのは、肝心の飲めるラー油。文庫本に書いてある分量だと大量に出来すぎてしまうので(何と六リットル!)、監修をされたおやまけいこさんの「実際に作りやすい分量で作ってくださいね」というアドバイス通り、1/6の分量に計算しなおして作る事にしました。
以下が、飲めるラー油作りの為に準備した材料です。
韓国産の唐辛子粉(キムチ用の物が好ましい)、一味唐辛子。
味の決め手となる重要な材料なので、出来る限りこだわって用意しました。
花椒、八角(別名:スターアニス)、桂皮(別名:シナモン)、陳皮。陳皮は大雑把に言えば「カラカラに乾燥させたみかんの皮」なので、自家製のものを用意しました。
しらしめ油。
調べてみた所、「菜種油を加熱用に精製した油」という意味だそうなので、加熱用のキャノーラ油を用意しました。
しょうが、太ネギ。これらは香り油作成の時に使います。
桂花陳酒。
キンモクセイの香りがするお酒で、楊貴妃が命じて作らせたというどこかロマンチックな話が残る中国酒です。
以上が、全ての材料でした!
下ごしらえは、作業に取り掛かる前日から始まります。
中華鍋にしらしめ油、陳皮、八角、花椒、桂皮を入れ、火をつけて八十度くらいまで温度を上げます。
八十度になったら火を消して三十分置き、再度火をつけて八十度になるまで温度を上げて油に香辛料の香りを移し、一晩寝かします。
この時点で、既にいい香りです。全ての香りが程よく漂ってましたが、比較的濃いのは陳皮と八角の香りでした。
翌日、油の中に太ネギのぶつ切りとしょうがのスライスを加え、弱火で二百二十度になるまで温度をゆっくり上げていきます。
その間に、唐辛子粉の準備。二種類の唐辛子粉を鍋に入れ、桂花陳酒を少しずつ入れながらよくかき混ぜます。
そうこうしている内にネギが真っ黒になり、油の温度が二百二十度になったらその温度を維持します。
驚いた事に、本場インド風のカレーに似た香りがしました。
考えてみれば、入っている香辛料はカレー粉の配合によく使われている物なので、似た香りになるのは当然かもしれません。
油をお玉ですくって見てみると、奥ゆかしい黄金色でした。
唐辛子粉が入った鍋の上に漉し網をセットし、先程の二百二十度の油をお玉で七百~八百ccずつすくい入れ、すぐかき混ぜます。
この時、沸いてすぐ沈むはずなので沸き上がりをチェックします。
油を入れるたびに手早くかき混ぜ、全部入れ終わってかき混ぜたらしばらく温度が下がるまで待ちます。
ニ~三分程して、鍋の下のほうから大きな泡(ゲップみたいな泡?)が出てきたら、成功!
飲めるラー油の出来上がりです!
残念ながら、有名な「特大ゲップ」を見ることは出来ませんでした(^^;)。
小さい泡がポコポコ出てきたのを確認するのが精一杯で、ジャンが見たら「ケケケケケー!お前ラー油にゲップさせる事も出来ないのかよ、ばーか!」とからかわれそうな、まあまあの出来でしたorz。
こちらが、唐辛子粉を漉して完全に完成した飲めるラー油です。
作中に書いてあった通り濃いルビー色で、スカーレット(真紅)と表現されたのも分かる気がします。
早速、出来上がったばかりのラー油をスプーンで一口飲んでみると…確かにあまり辛くない!飲める人は飲めると思います!
正確に表現するなら、「全然辛くないし、香りもいい……あ、段々辛くなって来た!……ん?でも、ちょうどいい辛さですぐ消えてく!」って感じでした。
最初の数秒は全く辛くない為、複雑かつ鮮やかな香りが鼻をダイレクトに刺激してくるのですが、少しすると舌にジワジワと辛さが広がってきます。
辛さの高まりが頂点になるとさすがに「辛っ!」となるのですが、徐々におさまるのでショックはさほどではありません。
ちょっとでも辛い物が好きな人なら、病み付きになるラー油だと思います!
香りも辛さも素晴らしく、料理の味付けや隠し味にピッタリかと。
大谷みたいゴクゴク飲むのは無理ですが、私は辛い物好きなのでお猪口サイズなら飲めると思いました。
ただ、辛い物が苦手な人は「飲める」訳ではなさそうです…やっぱり、ある程度辛い後味がありますので。
では、いよいよ“飲めるラー油のチャーハン”作りに入ろうと思います!
お盆だからという訳ではないのですが、お経みたいに長ーい前置きになってしまってすみませんでしたm(´Д`;)m。
最初に、チャーハンの材料をあらかじめ用意。
レタスは大き目の千切り、卵は溶き卵にし、大根の醤油漬けは小さめのサイコロ切りにしておきます(大根を拍子切りにした物を塩で少し揉み、洗って水気をきり醤油と酢の混合液に一晩漬けたら出来ます)。
次に、フライパンに「ええ~?!」となる程ラー油をドバドバ入れて強火で熱します。
ラー油が十分に熱されたら溶き卵を一気に流し入れ、すかさず冷やご飯を加えてすぐにかき混ぜます。
ラー油がご飯にまんべんなく絡んだらレタス、醤油漬け大根、塩、こしょう、酒、醤油を投入し、よく混ぜます。
出来る限りご飯や具をパラパラにしたら火を止め、お皿に盛り付けたら“飲めるラー油のチャーハン”の完成です!
画像にすると色がくすんでしまいましたが、多量のラー油に染まったご飯は見事なルビー色でした。
また、香りの方も何ともいえないような見事さで、味が楽しみです。
では、熱々の内にいざ実食!いただきまーす。
さて、味の感想ですが…すっごくウママママーーー(゜Д゜)!こんなチャーハン初めてです!!
あれだけたっぷりのラー油を使ったのに、ちっともくどくありません。
それどころかねぎ、しょうが、陳皮や八角などの香辛料の素晴らしく奥深い香りがラー油チャーハンを噛み締めるごとに溢れ出し、一口食べると途中でやめられないような魔力に取り付かれます。
作中で、ある審査員は「辛いには辛いのだが、辛さを超える香りや旨味が先にくるんじゃ!」と言っていましたがまさしくそんな感じで、ある程度辛いんですが旨さの方が際立っているので、その辛さが逆にクセになります。
ラー油をコーティングしたご飯の一粒一粒に、旨味成分がじわ~っと染み込んでいてたまりませんでした。
これが卵だけのシンプルなチャーハンだったら途中でダレが生じていたかもしれませんが、醤油漬け大根の酸味やカリコリした食感がいいアクセントとなっている上、レタスの程よいシャキシャキ感が爽やかさを演出している為、全く飽きる事なく完食する事が出来ました。
もちろん、高温の油で一気にフワッと仕上がった炒り卵もご飯によく合っていておいしかったです。
正直、こうして感想を書いている今もあの香りを思い出してまた食べたくなっています。
それくらい、とっても香り高くて美味なチャーハンでした。
見た目もルビー色とインパクトがありますし、恐らく一生忘れられない味になると思います。
もしかしたら、このラー油チャーハンの為にまた飲めるラー油作っちゃうかもしれません。
秋山ジャン…恐ろしい子っ(月影先生風に)!
結論から言うと、「ジャンのチャーハンはやっぱりおいしい!」です。
長年の疑問を無事解決できて、なかなか有意義な再現でした(・∀・)。
…もう一回連載してくれないですかねー『鉄鍋のジャン』(ボソッ)。
●出典)『鉄鍋のジャン!』 作画:西条真二 監修:おやまけいこ/メディアファクトリー
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。