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『美味しんぼ』の“初卵の黄身の味噌漬け”を再現!

その昔、相方・マサル君がまだ社会人生活の辛酸を知らない純粋な中学生だった頃。かの有名な柔術・格闘漫画『真島クンすっとばす!』を友達と一緒に毎週楽しみにしながら見ていたらしいんですが(部活の時、よく漫画の技を試しあったとの事^^;)、ある日新号を読むと「かかってこいや~!」と主人公が言う所で唐突に打ち切られていたのを見てがっかりしたそうです。そして次の日、打ち切りに気づいていない友達と「今週の真島クン見た?誰がラスボスやろうな~」「いや、終わったよ」「は?だって何も終わってないやん!」「うん。でも終わり」「………」という会話をしたのだとか;。
こんにちは、急激な打ち切りは思春期の少年少女に大変悪影響を与えると思うあんこです。

今回再現する漫画料理は、『美味しんぼ』初期で行われた「卵の前菜」勝負にて海原雄山氏率いる至高のメニュー側が用意した“初卵の黄身の味噌漬け”です!
初卵の黄身の味噌漬け図
実はこの勝負こそ、後々まで何十回と続く事になる究極のメニューVS至高のメニューの記念すべき第一回目となります(意外な事に、十五巻になってからこの対決シリーズは始まりました)。
究極VS至高の対決には「日本が誇れる<食>という文化遺産を後世の為にまとめる」との共通意識や、東西新聞社と帝都新聞社という二大巨頭が「我が社こそがNO.1だ!」というプライドと面子をかけて戦う一面があると同時に、山岡さんと海原雄山氏という因縁浅からぬ親子が己のアイデンティティーを賭けてぶつかり合うという側面が存在する為、それぞれの視点で何度か読み直してみるとなかなか興味深い物があります。
その晴れ舞台で、海原雄山氏が自信満々に初戦の場に出したのがこの“初卵の黄身の味噌漬け”。一見ごく普通の黄身の味噌漬けに見える為、究極のメニュー側は安堵しかけますが、そこは何事においても徹底的にこだわり抜く海原雄山氏の料理、やはりただの黄身の味噌漬けではありませんでした。
作り方は海原雄山氏自身も「漬け方に特別の事はない」と言っている通り通常の作り方とほぼ同じで、味噌の中へガーゼを敷いて卵黄を崩さぬよう漬けて三日待つだけですが、その分材料全てに特別なこだわりがあります。
その一つ目が、お味噌。それも単に一種類のお味噌だけで漬けるのではなく、赤味噌と白味噌の二種類を混ぜてから使用するというのですから頭が下がります。赤味噌の方は富山県産の艶麗という品種の大豆(栄養バランスが優れてて、たんぱく質保有量が多いのが特徴)を使って二年熟成させた物、白味噌は秋田県産の白千成という糖分が多くて上品な甘味が出やすい大豆を仕込んで作った物を選び、その上「甘味がはっきりと甘味に感じられない程度に白味噌を加え」たらようやく特製合わせ味噌が出来上がるとの事でした。
二つ目は、卵。自然な環境で良質な餌のみ与えて飼育した旨味が濃い品種・「後藤一三○」という鶏から産まれた初卵を、海原雄山氏は厳選して使用していました。ちなみに初卵とは成熟した鶏が初めて産む貴重な卵の事で、そのせいか食通の間ではそこそこ珍重され続けているのですが、海原雄山氏は食通達同様にその神秘性を評価して用意したのではなく、「人間はどうやって初卵を手に入れるか…鶏を飼っている人間が、一羽一羽の鶏をずっと注意深く見守っていなければ出来ない事だ」「それほど注意深く育てられてきた鶏の卵は、初卵であろうとなかろうとその中味は素晴らしいに決まっている。完璧な健康状態にあるようにと見守られ続けて来た鶏の産んだ卵なのだからな!」という極めて合理的な理由で自然養鶏の初卵を求めたのだとか。
この素材選びのくだりを読むたび、権威や迷信に対して盲目的に従う事をせず、常に理論と自分の舌を信じて徹底的にこだわる海原雄山氏ならではの視点だなと心から感嘆させられます。それに比べて私は、「あの有名シェフが選ぶ幻の食材!」と派手に推薦されているとイメージだけ先行して最高そうと考えてしまう単純人間ですので、海原雄山氏を見習わなきゃな~と反省です(^^;)。
秘密その一は、こだわって調合した味噌秘密その二は、厳重に管理されて生まれてきた初卵
その後、海原雄山氏は東西新聞社側(というより、ほぼ山岡さん)に向かって「料理の技法を云々する前にどれだけ本物の材料を求める事が出来るか、それを極限まで追及していって得た物を後世の者に残し伝える事こそが、<究極のメニュー>なり、<至高のメニュー>なりを作る目的であるはずだ!」「本質を追及せず表面的な口当たりのよい料理で、人間を一時的に喜ばせる事は出来る…しかし、人の心を感動させる事は出来ぬ」と言い放ちます。うがった見方をすると、例の如く“茹で卵トリュフソース”というゴージャス料理を持ち出した山岡さんに対する当てこすりと取れなくもないですね;。
そして、「人の心を感動させるのは唯一、人の心をもってのみ出来る事なのだ。それを忘れて<究極のメニュー>とやらを求めてみても、それはただのグルメごっこ。悪質で愚劣な遊びに過ぎない!」凄まじい表情で一刀両断します。もっともな論理な為一言も言い返せず、山岡さん達大ピンチ!な状態に陥って危うく負けそうになりますが、幸い唐山陶人先生が「茹で卵トリュフソースも料理として素晴らしかった。士郎は負けだが、料理が負けとは言えない」と判定に不満を言ってくれたおかげで何とか首の皮一枚で繋がり、後日勝負のやり直しをしてもらう事でギリギリ引き分ける事が出来たのでした(ここらへんの流れは、是非『美味しんぼ』十五巻でお確かめ下さい)。
正直、この場に唐山陶人先生がいなかったら負けたままスタートを切るという非常に不名誉な事になっていたと思いますので、内心「唐山先生、グッジョブ(・∀・)b!」とガッツサインを送りたくなりました(「豪華な遊びも入れてくれい!」「卵が本物かどうかだけで勝負を決めるなんて、つまらんわい!」の名セリフも正論なので、同感です^^)。
心を感じられないグルメごっこを嫌悪する雄山氏
それにしても、このお話の見所は東西新聞社の皆さんの「おいしい物を食べているようにはとても見えない顔」だと個人的に考えています;。それだけ“初卵の黄身の味噌漬け”の味が衝撃的でショッキングだったんだと思いますが、やはり料理漫画にこの表情は異様だな~と少々苦笑させられる迷シーンです。
どう見てもおいしい物を食べた顔には見えません(^^;)
全ての材料を同様に準備する事は手間的にも金銭的にもさすがに出来ませんでしたがorz、現時点で出来る限り手に入る材料で再現してみる事にしました。その為、再現度が低くて残念な出来になってしまったかもしれませんが、よろしければ少しでも楽しんでいただけますと幸いです。

という事で、レッツ再現調理!
まずは、初卵を用意。自然養鶏で育てた「後藤一三○」の正真正銘の初卵は諸々の事情(過去に取り扱っていたお店はありましたが、今この時期に売っているお店はありませんでした)で手に入りませんでしたので、その代わりに自然養鶏で育てた鶏が一週間以内に産んだ鮮度抜群の初卵を購入しました。ネットで調べてみた所、どうやら現代で初卵は「卵を産むようになった若鶏が初日~三週間以内に産んだ卵」の事を指すそうですので、それならセーフかなと思う事にしました。
初卵の黄身の味噌漬け1初卵の黄身の味噌漬け2
左がその初卵、右が一般的なMサイズの卵ですが、確かに見比べてみると初卵の方がやや小さめです。斜め上から撮ったせいで一回小さめにしか見えませんが、実際に持って触ってみると二回りくらい小さかったので、初めて見た時はびっくりしました。調べてみると、初卵はせいぜいSSサイズ~Sサイズしかないのが普通との事でした。
初卵の黄身の味噌漬け3
ちなみに、一回普通に割って一般的な卵と見比べてみました(左が初卵で、右が一般的な卵です)。一応、一般的な卵も新鮮そのものな物を用意したんですが、それでも初卵の方が白身も黄身も色が濃くてプリンプリンしていた為かなり驚きです;。特に黄身が一番違っていて、いたいけなくらい小ぶりな黄身が分厚い卵白の中にそのまますっぽりとはまっている上、白身から取り上げようとしてもしっかりくっついていてなかなか剥がすことが出来ないのにはちょっと感動しました。一番最初に出産されている訳ではない卵でもこんなにすごいのなら、正真正銘の一個目の卵はどんな物なんでしょう…想像がつかないです(^^;)。
この初卵を、卵白と卵黄に分けておきます(卵白はシフォンケーキ作りに使いました)。
初卵の黄身の味噌漬け4
初卵の黄身の味噌漬け5
次は、お味噌の準備。作中では、無農薬で育った富山県産の艶麗大豆を使って二年熟成させた赤味噌を使用していましたが、私の場合低農薬である以外は原作とほぼ同じ二年熟成・天然醸造の富山県産艶麗赤味噌を購入しました。昔ながらの技法で作られたこうじで仕込まれているお味噌との事で、ちょっぴり味見してみると原作で言われている通りコクと渋みのバランスがちょうどいい、本当においしいお味噌でした(^^)。
この赤味噌を、漬ける容器の中へ多めに入れておきます。
初卵の黄身の味噌漬け6初卵の黄身の味噌漬け7
初卵の黄身の味噌漬け8
続いて白味噌ですが、残念ながら白千成を使用した味噌どころか大豆自体を探し出す事すら困難でしたので原作通りの物を用意するのは断念し(Googleで調べてみても、出てくるのは成分表ばかりが五ページ余り程度でした…。もしかしたら、今は生産が下火なのかもしれません)、代わりにネット上で「本格的なお味噌作りを心がけている」と評判なお店で国産大豆を使用して作られた白味噌を用意しました。試しにペロッと舐めてみると、くどくなくて品のいい甘味が美味なお味噌でした。実は白味噌は苦手だったんですが、これなら大丈夫です!
この白味噌を、甘くなりすぎないよう味見しながら容器へ少しずつ混ぜ入れます。
初卵の黄身の味噌漬け9初卵の黄身の味噌漬け10
塩味と甘味のバランスが取れた特製合わせ味噌になったのを確認したら半量だけ取り出し、容器に残った合わせ味噌へガーゼを敷きます。この時、黄身がぴったり入るサイズのくぼみをスプーンで作っておきます。
初卵の黄身の味噌漬け11初卵の黄身の味噌漬け12
初卵の黄身の味噌漬け13
用意した黄身の数だけくぼみが出来たらそれぞれの場所へ黄身を慎重に入れ、その上にまたガーゼをそ~っとかぶせ、そこへ取り出しておいた半量の合わせ味噌を丁寧に乗せていきます。これで味噌漬けの準備は完了ですので、あとは冷蔵庫に入れて約三日寝かせます。その間、冷蔵庫を空けるたびに横目で容器をチラチラ盗み見する日々が続きました;。
初卵の黄身の味噌漬け14初卵の黄身の味噌漬け15
初卵の黄身の味噌漬け16
三日経過したら、合わせ味噌とガーゼを取り除いて黄身を取り出します。
その際、お味噌の下から顔を出した黄身を見て思わず「琥珀みたいだ…」と少し見惚れてしまいました。お味噌に入れて放置するだけなのにどうしてこんなに美しくなるのか、一度詳しいメカニズムを是非調べてみたいです。
初卵の黄身の味噌漬け17
合わせ味噌から出した黄身をそのまま器へ盛り付ければ、“初卵の黄身の味噌漬け”の完成です!
初卵の黄身の味噌漬け18
明かりの下へ持っていってさらに近くで見てみると、ますます輝きが増してキレイに見えるのでうっとりします。透明がかったべっこう色みたいな色合いで、一瞬食べるのが勿体なくなったくらいでした(´∀`*)。合わせ味噌のいい香りが食欲を増進させてくれますし、見た目だけでも「前菜」として最も相応しい一品なのではと感じました。
初卵の黄身の味噌漬け19
それでは、食べやすい大きさにお箸で割っていざ実食!いただきまーす!
初卵の黄身の味噌漬け20

さて、味の感想ですが…確かに、これは至高の味。「さすが海原雄山氏!」と手放しで賞賛したくなるおいしさです。
栗田さんの表現は、あながちオーバーではありません栗田さんも思わず絶句して言葉を失ってました
いくらなんでも山岡さんや栗田さん、そして東西新聞社の皆様みたいに真っ青になって絶句する程ではありませんが(100%同じ材料じゃないからかもしれません;)、それでもうっとりと夢見心地になる威力は十二分にありました。作中で言われている通り「味の高貴さと鮮やかさ」が尋常ではなく、口の中に含むと黄身のこっくりと濃密かつ典雅なコクや、合わせ味噌の胸がすくようで何とも艶めかしい風味と複雑な塩気で溢れ返ります。とにかく合わせ味噌の洗練された香りがすごく、黄身の味噌漬けを舌に乗せて転がしながら吸うと味噌本来のすっきりした甘味・辛味・渋味が少しずつにじみ出て来るのがたまらなく美味でした。
普通の味噌で漬けても卵黄は大分おいしくなる物ですが、これは余計な所を削いでさらに旨味を濃縮したみたいな仕上がりなのが印象的です。あと、これは初卵だからかそれとも丹念に育てられた卵だからか分かりませんが、卵だとどうしても発生しやすい生臭みが全然匂わないのに驚きました。実を言いますと私は卵の匂いに対してなかなか神経質で、卵かけご飯はそのせいでつい醤油を多めに入れちゃう方なんですが、この“初卵の黄身の味噌漬け”は臭気どころか上等な日本酒のように芳しくすらありました。
外側の塩辛みたいに味のある塩気でねっとりトロトロしている部分と、内側のチーズと酷似した味と柔らかさを持つ部分と二種類の旨さを楽しめます。多少歯にくっつく所には閉口しますが、舌でこすると案外すぐにはがれるのでそこまで気にする程ではありませんでした。まさに、「大人の珍味」といった感じです。そのままはもちろん、熱々のご飯や冷酒にさぞかし合うだろうな~と感じました。

いい材料を使ってこだわりながら作ったらこうも味が違う物なのかと、内心舌を巻く思いです。正直、「普通の味噌漬けとそんなに変わらなかったらどうしよう…」と不安になっていましたが、嬉しい事にそれは杞憂に終わりました。厳しく飼育された初卵は生でも全然臭くありませんので、今度から主に卵かけご飯として食べる為に定期的に購入しようと思いました。また、今回買った二年熟成した艶麗赤味噌はエグミがないのに重厚な味わいでしたので、今度はドテ鍋に使ってみようと思います(合わせ味噌床は『おかわり飯蔵』の“味噌漬けとイワシの炊き込みご飯”にしたり、味噌汁や味噌炒めとして活用していますがどれもウマーでした^^)。あと、白味噌はあまりに上品なので「お菓子やカレーの隠し味としても可能かも…」と思い、現在研究中です。
○追記(2010/10/02)
初卵の卵かけご飯と普通の卵かけご飯の味を比べてみた所、ものすごい違いは見出せなかったものの少々差異が見られました。それは、「とろみ」!通常の卵よりもプリンプリンととにかく張りがすごい為、溶いてご飯に混ぜると通常の卵よりもご飯粒によく絡みやすく、結果的に舌触りがそこそこ向上していました(また、絡みやすい→ご飯に溶き卵がたっぷりくっつく→食べやすいという嬉しい現象も起きました)。黄身は小さめですが味自体はそこまで変化はないので、とろみがついた卵かけご飯のほうがお好みという方には是非お勧めいたします。

●出典)『美味しんぼ』 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


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 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
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