『高杉さん家のおべんとう』の“たけのこご飯二種”を再現!

 近頃『あさひなぐ』という薙刀漫画に大注目しています。絵もさることながら、最も注目すべきはいったん読み出すと目が離せなくなるストーリーと魅力的なキャラ。『一二の三四郎』とはまた違うベクトルで熱くなる秀作です。また、主人公の旭ちゃんがスポーツ漫画orバトル漫画ではありがちな「一見ダメに見えて実は出来る主人公」ではなく、「ダメそうに見えるけど、やっぱりダメな主人公(しかも才能がないだけではなく、運動音痴)」というのがまた新鮮で面白いです。
 どうも、長身でゴツイせいか頻繁に運動部に勧誘されたものの、運動神経はあんまりよくなかった為がっかりさせていた管理人・あんこです。

 本日再現する漫画料理は、『高杉さん家のおべんとう』にて主人公・温巳さんが各方面へ問い合わせて教えてもらった“たけのこご飯二種”です!
たけのこご飯二種図
 温巳さんが十九歳年の差がある従兄弟・久留里ちゃんと一緒に暮らし始めてから、二年目の春が訪れたある春の日の事。温巳さんが大学生だった頃からの腐れ縁的なご友人で、今でも職場である大学でちょくちょく顔を合わせては何かと交流を持っている准教授・香山玲子さんから朝掘ったばかりだという新鮮なたけのこをたくさんおすそ分けされます。ちなみに、この時香山さんはまだ朝九時前後だというのに竹林から携帯で「たけのこいる?高杉クン」「今っ、節子のっ、母の知り合いの竹林!もう大量でっ。分かるでしょ、たけのこなのよ(゜Д゜#)!」とかなり唐突に息を切らせながら温巳さんへ電話をかけています;。正直私は「たけのこは取り立てを茹でるとおいしいけど、こんな時間に押しかけて大丈夫かな…昼がいいかな…いや、でももし用事がある時だったら気を使わせてしまう」とグジグジ鬱陶しく悩んで結局機を逸するタイプですので、香山先生の明るくてコミュニケーション能力の高い部分が垣間見えるおすそ分け電話を見て、その積極性がちょっぴり羨ましかったです;。
 その後、温巳さんは家中の鍋を総動員してたけのこの下茹でに大興奮する久留里ちゃんを横目に一人物思いにふけるのですが、このときのセリフがなかなか胸に染みます。それは、「農村を調査で回っていると、たけのこや山菜、旬の物を都会へ行った子どもや友人に送る姿をよく見かける。旬は嬉しい、だけど短い。彼らは旬を逃さない。そうして遠く離れた人との繋がりを繋ぎ続ける」「学ぶべきは、嬉しさを伝える瞬発力か」というもの。出来れば意欲的に関わっていきたいと思うものの、日々の慌しさによってついつい忘れてしまいがちな物の一つに<旬の食材>がありますが、タイミングよく食べることが出来たら体中にパワーがみなぎってくる上気持ち的にも「もう○○の季節なんだな~」とテンションが無条件に上がってきますので、我ながらみすみす見過ごしてしまうのは勿体無いのでは…と改めて感じた一節でした。考えてみれば、採れたてのたけのこを楽しむ事が可能な季節はせいぜい一~二ヶ月程度。<期間限定>という言葉には日本人魂をくすぐる何かがありますので、これ以後は前向きに旬と向き合っていきたいなと考えさせられました(恐らく、日本には四季があるから尚更その傾向が強いのかもしれません)。
 今回再現するのは、温巳さんがほのかな恋心を抱いている真面目でお茶目な性格が愛らしい特別研究員・小坂りいなさん(実は両思いなんですが、二人とも二十代後半~三十代とは思えない程奥手なので、当分進展はなさそうです…;)から電話でざっくり教わった“小坂さんのたけのこご飯”と、料理上手でしっかり者な香山さんの母・節子さんから手紙で丁寧に教えてもらった“節子さんのたけのこご飯”です。
 二つとも材料はほぼ同じなんですが、作り方は所々違う点が多々ある為、地理的な観点から見るととても興味深いです。例えば、“小坂さんのたけのこご飯”は炊き込み式・にんじん使用・昆布茶が決め手なのに対し、“節子さんのたけのこご飯”は混ぜ込み式・鶏肉使用・みりんと砂糖が決め手という具合で、どっちも似ているようで出来上がり図は全く違いそうな所が読んでいて「どっちも食べてみたい…(´Д`*)」と猛烈に食欲をそそられました。
たけのこご飯で分かる地理
 実は後日、この“たけのこご飯二種”は久留里ちゃんの友達であり、香山さんの一人娘でもある活発な女の子・なつ希ちゃんをクラスで孤立した状態から救うのに役立ってくれます。元々なつ希ちゃんは明るいクラスのムードメーカー的な存在だった為そういう危険性は極めて小さい子だったのですが、思春期の女の子にありがちな「何よ、最初は仲間はずれにしていたくせに久留里、久留里って!なっちゃんの馬鹿!」という嫉妬混じりの寂しさと苛立ちで新しいクラスから浮いていたのですが、内気な久留里ちゃんが勇気を出して持っていった大量の“たけのこご飯二種”のおにぎりでクラス中を巻き込んでの食べ比べ大会を勃発させてからは空気が一変。見事なつ希ちゃんはみんなが盛り上がっている中を巧みに泳ぎ回ってクラスの中心的存在に戻り、一旦は仲間はずれにしようとしたものの逆に自分達があぶれた状態になったのを切なく感じていた元・友達ともうまく歩み寄って元通りの姉御キャラに返り咲いていました;。う~ん、食べ比べという女心をくすぐるイベントを偶然にとはいえとっさに思いついたなつ希ちゃん、恐るべし!
大量のたけのこごはんのおにぎりを前に、途方に暮れてました;
 せっかくなので、前回再現料理を調理した際に下ごしらえしたたけのこを使って再現する事にしました(ちなみに、“若竹チャーハン”を作った翌日の話です)。たけのこご飯が大好物な家族、相方さんの為にも、頑張ってレシピ通り挑んでみようと思います。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、“小坂さんのたけのこご飯”。たけのこは「これくらいかな?」という程度の薄切りにし、油揚げは熱湯をかけて油抜きをしてから細く千切り、にんじんは皮をむいて薄切りにします(にんじんは、たけのこよりもやや少なめにしたほうがいいと作中で語られていました)。
たけのこご飯二種1
 飯釜の中へ、研いだ後ザルで水気をきっておいたお米、昆布茶、お出汁(特に指定されていなかったので、かつおと昆布の合わせ出汁にしました)、お酒、塩、醤油を入れてさっとかき混ぜ、その上に先程のたけのこ、油揚げ、にんじんを乗せて炊飯のスイッチを押します。ちなみに、昆布茶は小坂さんが大のお気に入りな調味料ですので、気持ち多めにいれちゃいました(^^)。
 ※こうして改めて小坂さんの炊き込みご飯の味付けを考察してみると、昆布茶や塩といった脇役的な調味料でたけのこ本来の良さを全面的に押し出そうとしている基本に忠実な和風炊き込みご飯って感じです。小坂さん曰く「関西出身の方から教わりました」という事でしたので、そこの所もレシピに反映されているのかもしれません。
たけのこご飯二種2
たけのこご飯二種3
 ご飯が炊き上がったらしゃもじでさっくり混ぜ、フタをして数分間蒸らして味を落ち着かせます。これで、“小坂さんのたけのこご飯”は用意OKです。
小坂さんのたけのこご飯を炊く前
たけのこご飯二種4
 次は、“節子さんのたけのこご飯”。たけのこは食べやすい大きさに薄きりにし、油揚げは油抜きをせずそのまま千切り、鶏肉は黄色い脂肪や筋を取り除いてから細かいサイズに切りそろえます(鶏肉の部位はどこなのか書かれていませんでしたので、個人的に大好きな鶏もも肉を使用しました)。なお、シンプルな料理なだけに鶏肉は地鶏やこだわりの新鮮な鶏を使ったほうが味わいが断然跳ね上がるのでお勧めです!
たけのこご飯二種5
 あらかじめお鍋の中へ、かつおと昆布の合わせ出汁、砂糖、醤油、みりん、お酒を入れて軽くかき混ぜて沸騰させ、そこに先程のたけのこ、油揚げ、鶏肉を加えて弱火~中火くらいの火加減でコトコト煮込みます。時間がないときは二十分くらい煮詰めた物で十二分においしいと思いますが、もし時間がある場合は二十~三十分煮る→火を消してフタをし、そのまましばらく放置して冷まさせ味を染み込ます→再度火入れして十~二十分くらい煮詰める方が材料に下味がちゃんとついてより美味になります。
 ※“節子さんのたけのこご飯”は、小坂さんバージョンと比べると鶏肉・みりん・砂糖などでがっちり濃い目に味付けして、見るからにおふくろの味!というイメージを受けました。「たけのこの自然なおいしさ」より、「たけのこご飯としての完成度」を追求した感じです。
たけのこご飯二種6
たけのこご飯二種7
たけのこご飯二種8
 材料が煮汁をしっかり含んだら火を消し、炊き立てのご飯へ汁ごと全部ドバッと回し入れてすぐさまフタをし、そのまま約十五分程度蒸らします。時間が経過したら大皿へ取り出してご飯を練らないよう切るようにして優しく混ぜ合わせ、煮汁をご飯に行き渡らせます(個人的に、混ぜ終えたら一旦ラップをかけるか、また炊飯器に戻すかして数分くらい落ち着かせてから食べることを推奨します)。これで、“節子さんのたけのこご飯”も準備万端です。
たけのこご飯二種9
たけのこご飯二種10
 それぞれのご飯が食べごろになったらお茶碗へよそい、冷めてしまわない内に食卓へ大急ぎで運べば“たけのこご飯二種”の完成です!
たけのこご飯二種11
 並べて見比べてみると、“小坂さんのたけのこご飯”はほのかな薄茶色・たけのこのクリーム色・にんじんのオレンジ色がかわいらしい正統派炊き込みご飯って感じで、“節子さんのたけのこご飯”は鶏肉の脂分でキラキラ輝くこゆめの茶色のご飯が如何にも喉を鳴らしたくなる食堂の定番混ぜご飯って感じに見えました(毎度ながら訳の分からない例えですみませんorz)。香りのほうも前者は昆布のふくよかな芳香、後者は鶏肉を甘辛く煮付けたにおいがたまらず、一刻も早く食べたくてウズウズしました。
たけのこご飯二種12

 それでは、炊き立ての内にいざ実食!
 一番目は、“小坂さんのたけのこご飯”から。いただきまーす!
たけのこご飯二種13
 さて、味はと言いますと…あっさり上品な味でウマーーー!万人受けしそうなオーソドックスなおいしさです!
早速教わったばかりのたけのこご飯を作って食すお二人
たけのこご飯二種16
 最初から一緒に炊き込んだせいかご飯の一粒一粒がピンと立っており、ふっくらもちもちととても噛み応えのある仕上がりでした。肉類を一切使っていないのでそれぞれの食材の個性や出汁の風味が一層際立っており、シンプルながらもたけのこ本来の繊細な香り・食感・味わいを引き出せています。昆布茶ならではの奥ゆかしい磯風味と、静かにじんわり効いて来る旨味成分がご飯全体に効いており、どことなく心安らぐ味わいでした。仮に例えるなら「ちょっと濃いめなたけのこのお吸い物で炊いた料亭風炊き込みご飯」っぽい感じで、初めは品のいい和風昆布醤油味ですが、食べ進めるごとににんじんの自然な甘味や鰹出汁が徐々に浮き上がってくるという変化がよかったです。
 ほぼ蒸して仕上げたせいかたけのこのザクザクしゃっきりした独特の歯触りが活きており、蒸しにんじんの方も蜜のような甘さがよりくっきりと引き立っていました。反対に、油揚げは油抜きをした為ややさっぱりめな味で(おかげで油分が全くない為、爽やかな後口)、それがこの品のいい炊き込みご飯にぴったり合っています。少し薄味ですが、それだけにたけのこの春らしい醍醐味が十分堪能出来る穏やかな印象のたけのこご飯でした。

 二番目は、“節子さんのたけのこご飯”。いただきますっ!
たけのこご飯二種14
 さて、味ですが…がっつり食べられる大人っぽい味で美味し!鶏肉の力でたけのこの味がさらにグレードアップしています!
たけのこご飯二種15
 一言で例えるなら「かしわ飯風田舎のたけのこご飯」という感じで、噛めば噛む程増してくるどこか懐かしい素朴な甘辛い後味が印象的な一品です。鶏肉の濃いようであっさりした味わい深いコクの肉汁と、鶏皮のくどすぎない脂分が混ぜご飯の表面へ適度に絡まり、非常にメリハリのあるおいしさでした。煮汁をじっくり時間をかけて吸い込ませたせいか、ご飯がふんわりしっとりした柔らかい口当たりなのが特徴的で、炊き込みご飯とは違ってお米自体のふくよかな甘味が楽しめるのがよかったです。砂糖ではなくみりんを使用したのが功を成し、しっかりした甘辛醤油味に仕上がっているにも関わらず全くべとつかない落ち着いた味わいなのに感心しました。
 こちらは一度煮たおかげでたけのこがサクサクコリコリした程よい歯応えで、中にまでちゃんと出汁が染みているのが食べやすくてよかったです。鶏肉はもも部分を使ったぐりぐりと弾力ある歯応えな上、炊き込まずに鍋で煮含めて混ぜるだけに留めたおかげでエキスを出し切って硬くなっていなかったのが気に入りました。まるで「たけのこと鶏肉の甘辛煮物」をもう少し煮詰めて混ぜ込んだような味で、炊き込みご飯とはまた違った濃厚な美味しさです。

 これまで当管理人は炊き込みご飯と混ぜご飯は同じような物だという認識を持ち続けていましたが、今回の再現でそれは大きな間違いだと違いました。ご飯の硬さ、香りの立ち方、味の染み加減、どれ一つとっても正反対で食べ比べてみると大変面白いです。どっちもおいしかったので、今シーズン中にまた作ってみる予定です(^^)。

●出典)『高杉さん家のおべんとう』 柳原望/メディアファクトリー
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『華中華』の“若竹チャーハン”を再現!

 最近、ようやくプロフィール欄に掲載している「再現料理を予定中の漫画」コーナーの漫画を半分くらい消化できたので、本日また数を増やして更新しました;(リクエスト受付、また再開いたします^^)。考えてみれば、『美味しんぼ』の“アワビのしゃぶしゃぶ”、“パンケーキのスープ”、“はるさんの贅沢牛鍋”、“中華風ソーセージの炊き込みご飯”、“八百屋のスープ”、“黒豚しゃぶしゃぶ”など、「作ります!」とコメント欄にてお約束したものの再現できていない漫画料理がまだたくさんありますので、その再現やレシピ作り、試作の為に当分は嬉しい悲鳴で忙しい日々が続きそうです…;。
 どうも、『なんちゃって駅弁』がきっかけでお取り寄せした有田焼カレーのカレーとお皿の完成度の高さに、思わず絶句してしまった管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんが実家のある徳島県で採れたたけのこと鳴門わかめを使って作った春の目玉商品“若竹チャーハン”です!
若竹チャーハン図
 前回のお話でとうとう憎からず想っていた康彦さんからプロポーズされたハナちゃんは、様々な難しい問題が山積みになっている中ではありましたが、思い切って結婚を承諾します。ただ、ハナちゃんは二十歳、康彦さんは三十一歳と少々歳が離れている上、結婚どころか好き合っている事すら知らなかったハナちゃんのお父さんは、ハナちゃんから結婚話をされた時に「キツネにでも化かされたんじゃないのか?」「まだ、康彦さんに会ってないから反対も賛成も出来ない」とだけ手紙に書いて送ります。ここら辺を読むと、あまりに唐突で少々混乱気味なお父さんの心境が透けて見えるようで、内心「そりゃ、会った事がない人だったら簡単にはいとは言えないだろうなぁ…(^^;)」とほろ苦い気持ちになります。
 その手紙の内容を知った康彦さんは当然ながら思いつめた顔になり、何としてでも結婚の了解をもらう為に単身ハナちゃんの実家にまでご挨拶に行くことを決意します。最初はハナちゃんも行こうかどうか迷っていたみたいですが、康彦さんは「いいんです。華子さんは今日みたいに満点大飯店が休みの日でも、上海亭さんの為に休まず厨房に立つ人なんですから…。そして、それを喜んでやっている華子さんだから好きなんです」という半分惚気な説得をしてハナちゃんを上海亭での料理修行に集中させ、畑はご両親に任せて徳島県にあるハナちゃんの実家へすっ飛んでいきます。それにしても、この前後のやり取りをする康彦さんとハナちゃんはカップルというよりは既に初々しい若夫婦っぽいピンク色な雰囲気になっている為、それまで近所のおせっかいおばちゃんのような感覚でハナちゃんを見守っていた私としては嬉しいような、ちょっぴり寂しいような複雑な心境に初見時になったのを覚えています;。
 ここまで読むと、あと数ページ後には修羅場が待ってそう…と思われる方が多いと思いますが(私もそうでした;)、いざ徳島空港に降り立った康彦さんを待っていたのは、<歓迎!斉藤康彦君 中村家一同>と大きく書かれた垂れ幕を持って待っていたハナちゃんのお父さん・お母さん・妹の紀子さんの姿(さすがに、お父さんの方だけは会ったばかりで緊張していたのかムスッとしていましたが;)。そのまま山のふもとにあるハナちゃんの実家・「中村食堂」の応接間へ案内された康彦さんでしたが、「あ、あの…私は華子さんを愛してます。心から愛してます!」と勇気を振り絞って宣言するものの、ご家族全員から思いがけず「ワイもじゃ!」「ウチも愛してます」「私も!」と微笑ましい逆宣言をされ、続けてお父さんから「華子を愛してくれとる人が一人増えたっちゅうんは、めでたいことや…」「華子の目ぇは、食材だけでなく人を見極める心もあるんや。その華子が見初めたあんたは、間違いのない男やとワイは信じとるけんなぁ」と言われ、ハナちゃん達の結婚を承諾されていました。どうやら、一目見て再確認したいが為にわざとつっけんどんな手紙を出していたみたいで、最初からOKサインが出ていたようだったので康彦さんもほっと一安心していました。ここの流れを読むと、ハナちゃんは本当に大勢の温かな人達から愛されているんだな~とほのぼのするので、結構好きなエピソードです(^^)。 
徳島にいるハナちゃんのご家族と会ってご挨拶してきました
 その後、康彦さんは夜を徹しての村中の人間を巻き込んだ大宴会に参加し(何とハナちゃんがいた村では、宴会で酔い潰させてその人の本性を見るというお酒に弱い康彦さんには不利な風習があったんですが、ハナちゃんに手助けを頼まれていた楊貴妃さんが康彦さんのお酒を全部水に変えていたので無問題でした;。楊貴妃さん、ナイスアシスト!)、朝早くから村近くにある竹林で掘ったたけのこと鳴門わかめを持って昼前にはハナちゃんの待つ横浜中華街の上海亭へ戻ってきていました。実を言いますと、康彦さんはほぼ貫徹でこれらのハードなスケジュールをこなしていたのですごいと思います;。
 実はこの時、ハナちゃんには修行先である満点大飯店の春の目玉となるパフォーマンスや料理を考えなければならなかったのですが、康彦さんが持って帰ってくれたたけのこを見て「国産たけのこをお店の前で実際に茹でるイベント&そのたけのこを使った中華風たけのこ料理の販売」というアイディアを思いつき、見事満点大飯店の客足を増やすことに成功していました。結婚話だけでなく仕事まで一歩先まで進められて、まさしくハナちゃんにとっては一石二鳥なお話でした(ただ、この時もハナちゃんは全部お手柄を他の人に譲っているので、もうちょっと欲を持ったらいいのに…と少し歯がゆかったです;)。
たけのこをお店の前でゆでるパフォーマンスを思いついたハナちゃん
 この日、ハナちゃんは上海亭で一つの名作チャーハンを生み出しています。それが、この“若竹チャーハン”です!作り方は少々手がかかっていて、たけのこの上部分はゴマ油風味の中華酢の物、下部分は刻んでチャーハンに使い、それらを一緒にお皿へ盛り付ければ出来上がりです。何でも、たけのことわかめの組み合わせは和食界では「出会い物(相性のいい旬の食材同士を指します)」と称されているほどぴったり合うのだそうで、そのまま単品でチャーハンにするよりさらにおいしくなるとの事でした。確かにこれなら相乗効果で味の深みが増しそうですし、個性の違う上部分と下部分をそれぞれ活かせるのが食べてて面白そうです。
たけのこは上部分と下部分を分けて使います
 相方さんがたけのこ好きなので、前々から挑戦したいと思っていました。ちょうど近所の八百屋さんでたけのこが売られ始めてきたので、早速それを使って巻末レシピ通り再現してみます!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、たけのこの下ごしらえ。たけのこは泥がついていることが多いので流水で丹念に洗い流し、皮を一~二枚程度はがして下の根の部分を少しだけ削ります(ただ、二枚目画像右側のたけのこは削りすぎましたので、左側くらいの削り加減にする事をおすすめします)。頭の上部分は斜めにカットし、縦に一本切れ目も入れておきます。
若竹チャーハン1
若竹チャーハン2
 このたけのこを、大量の水、米ぬか、鷹の爪が入った寸胴鍋へそっと沈め、弱火~中火の火加減で竹串がすっと刺さるようになるまでクツクツ下茹でします。その際、強火だと吹きこぼれやすいので要注意です。やがて、たけのこに熱が通ったらすぐに火を止め、そのまま放置して冷まします。数時間後に引き上げてもOKですが、出来れば一晩かけて寝かせる方がいいです。
若竹チャーハン3
若竹チャーハン4
 冷め切ったたけのこから皮をはがし過ぎない程度にはがし(上部分の姫皮は美味なので、気がつかない内にちょこっとしか残ってなかったという悲劇にならないよう注意した方がいいと思います)、流水で軽く汚れを洗い流したらたけのこの下ごしらえは完了です!なお、中を割ってみると白い粒が残っていたりすることが多いので、この時点で丁寧にとっておいたほうがいいです。
若竹チャーハン5
若竹チャーハン7
 たけのこは真っ二つに切り分け、上部分は五センチ前後の長さのスライス、下部分はさいの目くらいのみじん切りにし(あんまり小さいと食感が損なわれるので程々が肝心です)、それぞれのお皿に分けておきます。
若竹チャーハン6
若竹チャーハン8
 その間鳴門わかめは水につけて戻し、水を吸ってプリッとした感じに戻ったらザルにあけて水気をきっちりきり、包丁で食べやすい一口大の大きさへ切っておきます。今回は鳴門わかめが手に入ったので原作通り使用いたしましたが、どうしても見つからない場合は他の乾燥わかめでも可です。
若竹チャーハン9
若竹チャーハン10
 上部分のたけのこはボウルに入れて醤油、お酢、砂糖、ゴマ油で調味したらよく混ぜて中華風の酢の物にし(ゴマ油はやや多めのほうがチャーハンとの相性がぐんと跳ね上がるのでおすすめです^^)、下部分のたけのこは卵、塩、こしょうと共に別のボウルへ入れてまんべんなく混ぜ合わせます。これで、各たけのこの用意はOKです。
若竹チャーハン11
若竹チャーハン12
 次は、チャーハン作り。強火で熱して油をうんとなじませておいたフライパン(又は中華鍋)に、先ほどのたけのこ下部分を入れて溶いておいた溶き卵を一気に投入し、続けて冷やご飯と塩を入れてガーッとあおりながら手早く混ぜ合わせます。この時、「ご飯は卵でコーディング」「ダマは丁寧に根気強くほぐす」「油は惜しまず多め」「火は強火」を意識して調理すると成功しやすいです。段々ご飯がパラパラになってきたらすぐに刻みネギ、こしょうを加えてざっといため合わせ、仕上げに醤油を鍋肌に沿わせながら入れてご飯へまんべんなく行き渡らせます。
若竹チャーハン13
若竹チャーハン14
 最後にチャーハンの塩加減を調整し終えたらすかさず火からおろしてお皿へ丸く盛り付け、その上へあらかじめ作っておいたたけのこ上部分の中華風酢の物をどっさり乗せれば“若竹チャーハン”の完成です!
若竹チャーハン15
 見るからにしゃっきりしていそうなたけのこと、ぷりぷりしてそうなわかめの組み合わせがナイスです。色合いは地味ですが、ゴマ油のほのかな香りが香ってくるのでお腹がすいてきます(^^)。あんかけチャーハンなら食べた事がありますが、ゴマ油入りとはいえ酢の物をチャーハンに乗せて食べるのは初めての経験ですのでどんな味なのか気になります。
若竹チャーハン16
 それでは、チャーハンと酢の物を一緒にれんげですくっていざ実食!いただきまーす!
若竹チャーハン17

 さて、味はと言いますと…お手軽なたけのこ尽くしって感じで美味し!見た目よりかなりさっぱりした後口でいくらでも入ります!
たけのこを採ってきた康彦さんも大喜び
 チャーハンに入っているたけのこの下部分はザクザクコリコリした小気味良い歯応え、酢の物に入っているたけのこの上部分はサクサクジャキジャキした鮮やかな食感で、同じたけのこでも上と下とでこんなにも違うものかと目を見張る思いです。特にやや硬めな下部分を使用したたけのこのみじん切りの噛み応えが一番好みで、歯を当てるとちょっと抵抗した後にスッと繊維にそって割れていく素直な口当たり、その隙間からにじみ出てくるジューシーな汁っ気、たけのこ本来の清々しい香りがチャーハンによく合っていて、一口食べた途端病み付きになりました。炒めてある分たけのこご飯よりもボリューム感があるんですが決して脂っこくなく、「焼き飯風和中折衷たけのこ混ぜご飯」と言っても十分通用しそうな適度な油分が絶妙だったです。卵のふんわりした甘味とネギのシャリシャリした僅かな辛味がいいアクセントとなって単調になるのを防いでおり、シンプル塩味なしっとりパラパラした仕上がりのたけのこチャーハンの味をさりげなく高めていました。
 酢の物の方は康彦さんが言っていた通り「たけのことワカメの中華風酢の物」ってイメージの味わいで、ゴマ油の香ばしいコクが効いた甘酸っぱい後味が品よく柔らかい姫皮や、なめらかな舌触りのワカメと抜群の相性です。ゴマ油がまんべんなく絡んでいるせいか強すぎず弱すぎずな淡い酸味が特徴的な酢の物で、チャーハンの味を新たにさせる箸休めになると同時にチャーハンにぴったりな具にもなっていました。ワカメのクニクニシコシコした歯触りとほんのり漂う磯の風味がたけのこの新鮮な旨味をより引き出している為、内心「さすが出会い物!」と感嘆です。

 たけのこが色々楽しめるので、たけのこ好きにはたまらない一品だと思います。特に、たけのこの酢の物は今までに食べてきた酢の物の概念が変わってしまうくらいおいしかったので、かなりおすすめです(お酢を使った料理が苦手な相方さんも「これは気に入った!」と相当に感心してました)。

●出典)『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『クッキングパパ』の“エビちらし寿司”を再現!

 十代の頃は、言葉に出来ない焦燥感に駆られて「遠い場所へ行って色んな物を見てみたい、様々な経験を積みたい」「自分にはどんな可能性の未来が合っているのか知りたい」という、若い頃には如何にもありがちな発想をしていましたが、最近は行ける範囲へ行ける時に行けばいい、という心境になってきました。もちろん、狭い環境の中だと視野が狭くなって異質な物を受け入れる余裕がなくなってしまう為、たまには180度違う場所へ遠出するのも必要だと思いますが、最近は限られた日々の生活の中でどれだけやれるのかを試行錯誤しつつ辛抱するのも重要な経験ではないのか…と感じるようになりました。自分を不幸にする闇も、反対に幸福にする鍵も、外の世界にではなく全て自分の中にある。そう信じて、世界の広さより自分の深遠を覗く事に集中している今日この頃です。
 どうも、とはいうものの深遠という程ご大層な深みは皆無な底の浅い管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『クッキングパパ』にて荒岩主任の親しい同期である敏子さんが、結婚しようかどうしようか迷っていた男性・達也さんの為に作った“エビちらし寿司”です!
エビちらし寿司図
 事の発端は、荒岩主任が幼い頃から何かと親しい付き合いを続けてきた幼なじみ・溝口達也さんと馴染みの居酒屋「わらじや」で近況を報告しつつ飲んでいた時、荒岩主任が達也さんと「結婚したらいいじゃないか、いい人いっぱいいるだろー」「いないよそんなもんっ!いたら苦労しないさ(´∀`;)」という会話をした事から始まります。何でも、達也さんは高校時代にご両親を亡くした後「生きていく事で精一杯」「働く事が人生」というかなり慌しい生活を送ってきたとの事で、やっと落ち着いてきて気がついた時には三十代後半になっており、自身曰く「気がついたら、この年ですっかりヤモメ暮らしが染み付いたおじさんになっちまって…誰も振り向いてくれないよ」と自嘲していました。けれども、その時偶然荒岩主任の同期である独身女性・池田敏子主任が夕食がてら「わらじや」へ立ち寄って荒岩主任達と出会い、荒岩主任からお互い自己紹介をさせあうよう促された事から話は急速に進展します。
 大抵、こういう時は一時間以上場が盛り上がらなかったら余程の事がない限りそれ以上の進展は諦めた方がいいのだそうですが(…と、昔女子大時代の先輩から教わりました;)、このお二人の場合は最初に出会ったときからお互い悪くない印象だったようで、飲み始めてまだ十分もしない内から「まあっ、じゃああなたもまだお一人で?」「ええ、まあ…」「私も独身よ」「ええ~っ、本当ですか(・∀・*)!」とすごくいい感じに盛り上がり、話が弾んでいました。こういう、人と人との恋の始まりが明らかに分かる瞬間を見た事は今までに一度もないので、荒岩主任がちょっと羨ましかったです(ましてや、それが幼なじみと信頼できる同期との間に起こった事だったら尚更格別だったろうな~と勝手に推測しちゃいました^^;)。
 実を言いますと、荒岩主任は敏子さんとばったり鉢合わせした時から密かにお二人を引き合わせる仲人的立場としてこの場に居続けた節があり、どうやら三十分以上経過した頃には「これはいける!」と確信したらしくサッと席を立ってお邪魔虫にならないよう引き上げていました(何という的確な判断!)。この時、荒岩主任は店を出た後引き戸のガラス越しに夢中になって話し合っているお二人を優しく見つめながら微笑んでいるのですが、その眼差しがこの上なく温かなので個人的にお気に入りのシーンです(^^)。
二人の縁結びの神・荒岩主任;
 その後、敏子さんは休日に暇を見ては達也さんと何度か会って親交を深めるようになり、一ヶ月経過した頃には初めて来た達也さんのアパートですっかり惚れこんだ達也さんからいきなりのプロポーズを受けるまでに話は急展開を迎えます。ただ、元々慎重派で仕事に対する責任感が人一倍強い敏子さんはすぐに受け入れる事が出来ず、しばらく考えさせて欲しいと返事します。普段は田中君達を始めとする会社のみんなに恐れられる程いつもキビキビしていてしっかり者な敏子さんですが、この時は素直に驚き戸惑う表情をしていて非常に女性らしい様子なのが微笑ましく感じました。
 達也さん自身も、知り合って一ヶ月での結婚は我ながら唐突だったと分かっていたようで、すぐに「そうか…」と落ち込みつつも納得していましたが、決して嫌っている訳ではないのだとわかって欲しくて焦ったらしい敏子さんから「今度は私のアパートに来て、夕食にご招待するわ」と誘われ、俄然大喜びしていました。
 …と、ここまで読んだら夕食会は限りなく大成功の可能性が高いように思えますが、いざ当日になって実際に敏子さんが自分の為だけに素晴らしい夕食(ザッと見ただけでも“エビちらし寿司”、豆腐のお吸い物、グリーンサラダ、がめ煮、菜の花の和え物など、一目で心がこもっていると分かる豪華絢爛さ)を目の当たりにした達也さんは動揺し、“エビちらし寿司”を一口食べただけでいきなり表へ飛び出して飲み屋「わらじや」へ一人直行してしまいます。正直、子どもの時このシーンを初めて見た感想は「………(゜Д゜;)??」でした;。
自分の為に作られた手料理のおいしさに動揺し、発作的に逃げ出します
 しかし、その理由は「わらじや」の店主から珍しく酔って大荒れしている達也さんをどうにかして欲しいと要請を受けて駆けつけた荒岩主任が達也さんを支えつつアパートへ送り届け、目を覚ます為に洗面所で顔を洗わせている時に判明します。それは、「嬉しくってどうしたらいいのか分からなかったから」。達也さんが言うには「彼女の料理があまりにうまくってよー…この料理を俺の為に作ってくれたかと思うとあまりに幸せで」「嬉しくって嬉しくて料理が喉を通らないんだ!」という心境で、どうしようもなくいたたまれなくなっておいしいの一言も言えないまま飛び出したとのことでした。
 このシーンは人によっては未だに評価が分かれるところで、ある方が言うには「さっぱり分からん!」だそうなんですが、少なくとも私はこのシーンを読んで達也さんの孤独の深さを垣間見た思いになりました(ここまで過剰反応なのはびっくりすると思いますが;)。今まで十余年以上ずっと一人で過ごし続け、これからもずっと一人のはずだと思い込んでいた所へ唐突にこんな愛情溢れる手作り料理を好きな人からごく自然に差し出されたら、人はもう心震えて泣くか、信じきれなくて逃げるかのどちらかしか出来ないと思います。
珍しく酔った勢いで自分の感情を吐露した達也さん
 そんな達也さんの様子を見た敏子さんは自身にも何か響くものがあったようで、荒岩主任がいるのも忘れて「達也さん…私、今日からここに住むわ。今日からあなたと暮らします。いいでしょう?」と涙を流しながら寄り添っていました(もちろん、荒岩主任は例の如く「おっと、こりゃお邪魔だ」と早々に退散してました;)。そして二~三日後、初々しく同棲し始めた頃に敏子さんが達也さんに「はい、この間食べられなかったお寿司(^^)」と茶化しながら出したのが、この“エビちらし寿司”です。
 作り方はそこそこ凝っていて、ブラックタイガー(もしくは大正エビ)のペーストを炒って作った特製エビそぼろ、ウナギの蒲焼き、イクラ、もみのりを酢飯に混ぜこみ、最後に錦糸卵とカイワレ大根をどっさり載せれば出来上がりです。レシピ欄での見開きでは「幸せの味」と表現されており、ポイントはエビを「ゆっくりゆっくり、気長に根気よく煮詰める」との事でした。
 ちなみに、この“エビちらし寿司”を食べた達也さんはまだ幸せとおいしさをどう表現したらいいのか分からないようで不器用に笑っていましたが、敏子さんは心得た様子で「いいのよ、言わなくても。顔見たら分かるわよ」と優しく笑っていました。このお二人のその後は『クッキングパパ』では全くと言っていいほど描かれていないので気になりますが、心底幸せに暮らしていて欲しいカップルです。
言葉に出来ない思いを感じ取る敏子さん
 エビが大好きなので、特製エビそぼろに初見時から興味津々でした。ちょうど時期も物語と同じ春で、ブラックタイガーも特売で安く大量に手に入ったことですし、早速レシピ通り忠実に再現してみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、特製エビそぼろ作り。ブラックタイガーの殻と背ワタを包丁と指で丁寧に取り除き、小さなゴミをキッチンペーパーでさっと拭き取ったらフードプロセッサーへ塩、砂糖、お酒、みりんと一緒に投入します(ない場合は結構時間がかかりますが、すり鉢でも可)。
 ※実は、私は生のエビを手で触ると痒くなる体質なので、百円ショップで売られている薄いビニール手袋をはめて作業しました;。これだと手が痒くならないですし、手をしょっちゅう洗わない分荒れにくくなるのでお勧めです。
エビちらし寿司1
エビちらし寿司2
 フードプロセッサーを起動してエビを細かいペースト状にしたら小鍋へ入れ、ごくごく弱火にかけて四~六本くらいの菜箸でグルグル~っと休みなくまんべんなく混ぜます。この時、手間を惜しんで強火にしすぎたり、適当に休みつつ混ぜたり、二本の菜箸だけで雑にガチャガチャかき回すだけにするとやたら大粒で味気ないエビそぼろが出来上がってしまいますので、辛抱しながら根気強く混ぜ続ける事を推奨します。
エビちらし寿司3
エビちらし寿司4
 慎重に弱火(短時間だけなら、弱火~中火の間の火力にかけてもOK)のまま焦がさないよう混ぜていたら、少しずつ水気が飛んでポロポロっとした手ごたえになってくるので、めげずに菜箸を動かし続けます。炒り終わるのに約三十分以上かかるので手が疲れますが、ここで手を抜くと後々後悔するので気をしっかり持ったほうがいいです;。やがて、エビのペーストから水分がなくなってサラサラ~としたきめ細かなそぼろ状になったら、特製エビそぼろの出来上がりです!
 最初はうっすらした群青色、中盤は透明感のある桃色、最後らへんは濃いピンク色と、徐々に色合いが変化していくのが見ていて楽しいです(^^*)。完成したエビそぼろの見た目は、まるで地面に降り積もった桜吹雪のような趣の美しいピンク色なので、内心「さすが元はエビ、桜エビに匹敵しそうな色」と感心しつつも見惚れました。着色料を一切使わずこれだけの色が出せるとは思わなかったので、実際に目の当たりにすると感動する事間違いなしです!
エビちらし寿司5
エビちらし寿司6
 エビそぼろの荒熱を取っている間、他の具作り。塩少々で味付けした溶き卵を極薄になるよう両面焼き、一旦冷ましたら細長く刻んで錦糸卵を作ります。ウナギの蒲焼き(今回は奮発して、イ○ンで国産ウナギ使用と明記した物を使いました)は、前に一度ご紹介したやり方でふっくら蒸し焼きにした後市販の蒲焼きタレを絡ませて少し煮含め、食べやすい小さなサイズの細きりにします。カイワレ大根は根元を切断し、流水で洗ったらザルで水気をきっておきます。
エビちらし寿司7
エビちらし寿司8
 次は、いよいよちらし寿司作り。ちょっと甘めかな?と感じる程度に配合した合わせ酢を加えて切るように混ぜて作った酢飯を用意し、そこへ先ほどの特製エビそぼろを投入してざっくり混ぜます。酢飯が瞬く間に桜色へ染まったら続けてイクラ(瓶詰めor醤油漬け、どちらでも可)、ウナギの蒲焼き、軽く炙ってから千切ったもみのりを入れ、下からパラリとほぐすようにさっくり混ぜ合わせます。その際、具を潰さないよう細心の注意を払います。
 ※レシピ欄での敏子さんのコメントによると、「もみのりはたっぷり!蒲焼きのタレも少し加えたりして豪快に」との事でしたので、アドバイスに従ってもみのりを通常よりやや多め・蒲焼きのタレを隠し味としてちょろっと加えたりしました。
エビちらし寿司9
エビちらし寿司10
 酢飯と具を練らないよう切るように混ぜたら酢飯の塩加減の微調整を行い、仕上げに上から錦糸卵とカイワレ大根を飾り付ければ“エビちらし寿司”の完成です!
エビちらし寿司11
 一瞬、目を離した隙に酢飯の上へ桜の花びらが舞い散ったのかと見紛うくらい淡くて自然なピンク色で、見れば見る程とても艶やかなちらし寿司です(惜しい事に画像ではほとんど目立たなくなっていますが、実際には画像以上に強いピンク色でした)。ルビーのようにつややかな朱色が美しいイクラ、見た目だけでも香ばしさが伝わってくる焦茶のウナギ、ひらひらとちらし寿司を彩っている黄色の錦糸卵、鮮やかな緑色が特徴的なカイワレ大根と、どの具も美味しそうで目移りしてしまいます。正直、うららかな春の日にこんなご馳走が食べられるなんて…と、日頃の疲れが一気に吹き飛んでしまいました(^^;)。
エビちらし寿司12
 それでは、取り皿に一人前分だけよそっていざ実食!いっただっきまーす!
エビちらし寿司13

 さて、味の感想ですが…思わず顔がほころぶ美味さ!確かに、これは一度食べたら忘れられない感動的な味です!
エビちらし寿司14
 ふんわりポロポロした口当たりのエビそぼろは例えるならば「エビ版桜でんぷ」って感じの味わいなんですが、普通の桜でんぷよりもずっと自然で優しい甘味がじんわり舌に響く割には全くしつこくなく、噛むごとにエビ本来の旨味エキスと共にほのかなお酒の風味が舌の上へ広がるのにうっとりしました。あと、桜でんぷだと後口がモサモサして口の中の水分が吸い取られてしまう事が多いですが、このエビそぼろはプリプリな弾力やしっとりした潤いが最後の最後まで残っているのがよかったです。この素朴なエビそぼろがまんべんなくまぶされた酢飯の口当たりがまた素晴らしく、時間がたってもずっとソフトな柔らかさを保ったままでした。水分を吸ってシコシコした歯触りになった海苔がいいアクセントになっており、全体的に磯の風味が濃い華やかな海鮮ちらし寿司というイメージです(ただ、江戸前海鮮ちらしが荒波のような圧倒的旨さとするなら、こちらの方はおだやかな凪の海を思わせる静かな旨さという違いはありました)。
 やや甘めな酸味が効いた酢飯に、プチプチパチンとコクある塩っ気が弾け出すイクラと、甘辛くて重厚なタレが十分染み込んでふわっふわなウナギの蒲焼きが程よい塩分を与えているのがよりメリハリがついた複雑な後味にしており、単に甘いだけの平面的な仕上がりになっていないのに感心しました。錦糸卵の上品な舌触り、カイワレ大根の僅かに辛いシャッキリ感もエビそぼろの酢飯にぴったりで見事に味を引き立てていましたし、大満足な春らしいご馳走ちらしです!

 桜の咲く季節になるたびに思い出しそうな、極めて完成度の高いちらし寿司です。見た目の美しさといい、味のおいしさといい、余韻の深さといい、「春らしいお寿司コンテスト」という大会が開かれたら間違いなく上位に入賞出来そうな素晴らしいお料理でした。自宅で食べるだけではなく、思わず大切な人達におすそ分けしたくなるような一品です。作ってみて、敏子さんが何故この料理を達也さんに作ったのか、理由が朧気ながら理解出来た気がした再現でした。

●出典)『クッキングパパ』 うえやまとち/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』の“浅利の御神酒蒸し”を再現!

 つい先日、米粉100%の生地で作ったあんパンを食べてみたんですが、後味のもちもちした感じがとっても気に入りました(´Д`*)。ポンデリング程もっちりしている訳ではないんですがちょうどいい具合にムニムニした手触りと食べ味なので、これからもちょくちょく米粉のパンを購入したいな~と思いました。米粉のピザとかもおいしそうな予感がします。
 どうも、パン屋へ行ったらどんなお洒落店でも必ずあんパンを買うのが鉄則な管理人・あんこです。

 本日再現する漫画料理は、『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』にて主人公・澪ちゃんにとってもはや家族同然な「つる家」の老店主・種市さんを元気付ける為に作った“浅利の御神酒蒸し”です!
『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』
 約一ヶ月前に出版されたばかりの『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』は、私の大好きな時代料理小説・「みをつくし料理帖」シリーズの記念すべき第五巻です。一巻~四巻までは春夏秋冬それぞれを象徴するようなオリジナル料理がバランスよくご紹介されておりましたが、反対に五巻は全四話全てに「春」を象徴する料理が主役として登場しており(浅利のお神酒蒸しをはじめ、菜の花尽くし、寿ぎ膳、ひとくち宝珠などなど)、おかげで春が身近な今の季節にはしっくりくるようなお話ばかりでした。巻が進むごとに段々時の流れがゆるやかになってきているような気がしますが、ファンとしてはよりじっくり澪ちゃん達の成長や身の回りの変化が楽しめるようになった為、嬉しい心持ちになっております。また、桜、菜の花、牡丹、菖蒲など、春から初夏にかけて盛りを迎える明るい色合いの花々が各話で象徴的に取り上げられている事が個人的にとても興味深く、想像するだけでも華やいだ気分になりました(^^)。
 今回再現するのは、一番目のお話「迷い蟹」に登場する“浅利の御神酒蒸し”。
 まだ、澪ちゃんが第二の母ともいえるご寮さん・芳さんとお江戸へやって来たばかりで何の光明も見えなかった頃、神田町近辺で<化け物稲荷>として避けられていた荒れ神社をせっせと掃除していた澪ちゃんを、ひょんな事がきっかけで気づき声をかけたのがそば屋「つる家」の店主・種市さん。誰も顧みる者が居ない忘れ去られた神社を覆う雑草を、見返りを求めるでもなく黙々と引き抜きに来る澪ちゃんの後姿に今は亡きかつての愛娘・おつるさんを重ね合わせた種市さんはいてもたってもいられなくなり、自分のお店である「つる家」へ澪ちゃんと芳さんを引き取り、同時に住む場所の面倒まで見てくれました。最初は自分の寂寥感を埋める形代として澪ちゃん達を引き取った節のある種市さんですが、一年、二年と時が過ぎ行く中で共に笑い、泣き、励ましあう内に徐々にかけがえのない、本当の家族のような存在となっていきます。一巻からこの密やかで温かな流れを読み返すたび、つくづく人と人との強固な絆というものは血の繋がりだけでは推し量れないという事を実感させられます。
 「迷い蟹」は、そんな種市さんが娘・おつるさんを失う事になってしまった苦渋の過去と、その過去の無念を晴らそうとする種市さんが一大事な事をしでかそうと暗い怨念の世界へ危うく一歩を踏み出そうとした一部始終のお話を書いた作品。駆け落ちして家を出たものの、あまり幸せではない生活をしていた種市さんの元女房・お連さんを放っておけなかったおつるさんが数々の不幸な偶然と思惑に囲まれて遂には命まで落とし、何十年もそれを自分のせいだと悔いていた種市さんが幸か不幸かおつるさんの仇の居場所を知ってしまい…という筋書きなのですが、これ以上ネタバレしたくない為あえて詳細は伏せます。ただ一言添えるなら、切なく重いラストでありながらも、僅かながらもどこか救いの残るお話でした。
 元々、迷い蟹とは浅利の殻を自分の家と勘違いしてそのまま住み着いてしまった極小の蟹の事を言うのですが、作中で迷い蟹を見つけた種市さんが呟いた「何で迷わず自分の家に帰らなかったんだ、浅利の殻は手前の家なんかじゃないのによ」というもの悲しい言葉と、種市さんの待つ家へ帰ろうとして結局帰る事が出来ず、十七歳のまま時が止まってしまった心優しい娘・おつるさんの姿が静かに重なり、何とも切なく印象的な一話です。
 “浅利のお神酒蒸し”は、密かに仇討ちを決意していたものの風邪を引いて寝込んでいた種市さんに、そうとは知らずに元気がない種市さんに元気を出してもらおうとした澪ちゃんが、何を作ろうか浅利を洗いながら考えている時に目に留まった神棚のお神酒を使って作った即興オリジナル料理。作り方はとってもお手軽で、しょうが・赤唐辛子・ゴマ油を熱した鉄鍋で浅利をジャージャー炒め、そこへお酒をトクトク注いで蒸し煮にしたらもう出来上がりです。
 澪ちゃん曰く「他の貝と違って浅利は油馴染みがいい」そうで、単に煮るだけではなく油と一緒に調理するとさらに旨みが跳ね上がるとの事。江戸時代では油を使う料理はまだまだ珍しかった為、あまりに賑やかな台所の音を聞いて不安になった種市さんが「おいおい、随分と乱暴な料理じゃねえか」とほんのひと時だけ暗い気持ちを忘れて覗きに来る光景がほろ苦くも微笑ましいです。あと、そんな種市さんの声を聞いて逆にいたずらっ子のように「うふふ(^^)」と茶目っ気たっぷりに答える澪ちゃんの様子が文章で活き活きと描かれていて、読んでいると頭の中にその笑顔が眼に浮かんできそうな気がして思わずほほが緩みました(料理は食べる時の完成図だけではなく、作っている時の情景も知るとさらにおいしさがグレードアップするような気がする為、どちらかと言うとオープンキッチンのお店の方が好きだったりします^^;)。ちなみに、この料理は浅利が大好物な種市さんの口に非常に合ったようで、「…こいつぁいけねぇ」と唸っていました。
 種市さん同様、浅利が大好きな私には興味津々な料理だった為是非再現したいと初見時から決めていました。近所で新鮮な浅利がようやく出回るようになった事ですし、早速再現してみます!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下準備。浅利は塩水をはった容器の中へ驚かさないよう静かに入れ、そこに包丁の刃を入れて半日~一晩放置して砂を吐かせておきます(これは、作中で澪ちゃんがしていた方法です。何でも、鉄っ気のある包丁を浅利と共に塩水へ入れておくと、より砂を吐きやすくなるのだとか)。その際、浅利をザルに入れてから塩水に沈ませると砂が底に溜まって浅利が再度吸い込みにくくなります。あと、しょうがは皮をむいてみじん切り、赤唐辛子は水に浸けて戻した後種を取って小口切りにします。
浅利の砂を吐かせるには、包丁もいいそうです。
浅利の御神酒蒸し1 
 次は、炒め作業。フライパン(又は鉄鍋)へ好みのゴマ油、しょうがのみじん切り、赤唐辛子の小口切りを加えて弱火でゆっくり熱を通します。個人的に、この料理に限って言うならゴマ油は太白や普通の物より、香りもコクも程よい太香胡麻油がバランスよく仕上がるのでおすすめです。
 ※最初の試作の際、しょうがと赤唐辛子の量は巻末レシピ通りきっちり使用してみましたが、双方の強烈な個性ゆえ浅利の味が少々殺されているように感じました(あくまで私の所感です)。その為、この料理だけは完全にレシピ通りの分量にはせず、自分好みに量を調節して使う事を推奨いたします。ちなみに私の場合、しょうがは親指の先ほどの量・赤唐辛子は1/2~1/3本がちょうどよく感じました。
浅利の御神酒蒸し2
浅利の御神酒蒸し3
 しょうがの香りが立って赤唐辛子の辛味が溶け出してきたら、殻と殻をこすり合わせるようにしてよく洗った砂吐き済みの浅利をどっさり投入し、殻を割ってしまわないよう慎重に混ぜながら軽く炒めます。ジャラジャラとまるで砂利遊びをしているみたいな気持ちになり、そこそこ楽しいひと時が過ごせました(^^)。
浅利の御神酒蒸し4
 浅利が少々炒まったら、そこへ日本酒(又は本物のお神酒でも)をとくとくとく…と注ぎ、すぐにフタをして中火で加熱します。この時、あまりに早くフタを開けてしまうと浅利は生、だからと言って遅くにフタを開けると浅利はガチガチになってしまいますので、そろそろ最後の浅利が殻を開ききった頃かな~?と疑問に感じるくらいの時に一旦そろっと確認した方がいいです。
 耳をすませると、お酒が沸騰してシュワシュワ~ピチピチ…と弾ける音と共に、カタカタ…カランッという浅利の殻が開くわずかな気配が空気を通して伝わってきます。フタの隙間から漏れ出る湯気がまたおなかのすくいい匂いで、内心浅利に「ごめんね」と思うと同時に、別の部分では「おいしそう」と舌なめずりをしているので、私という人間はつくづく罪深いと感じます;。
浅利の御神酒蒸し5
浅利の御神酒蒸し6
 次第にクツクツ煮えるだけの音になり、浅利の殻が全部開いているのを確認したら火を通し過ぎない内にさっとコンロからおろし、そのまま汁ごと浅利をお皿へ移せば“浅利の御神酒蒸し”の完成です!
浅利の御神酒蒸し7
 薄く白濁した浅利のおつゆからは強い磯の香りが漂い、見るからに食欲をそそります。巻末レシピには「物足りない場合は、お好みで塩やお醤油を」とかかれてありましたが、少なくとも私にとっては原作通りこのままで十分いい塩加減だと味見をした際に感じました。時折チラチラ見える赤唐辛子の赤が彩りよく見せるのに一役買っており、喉が鳴ります。
浅利の御神酒蒸し8
 それでは、熱々の内にいざ実食!いただきまーすっ!
浅利の御神酒蒸し9

 さて、味の感想ですが…和風のようでエスニック風でもある変わった味わいの浅利が、かなり美味!お酒のおつまみ、もしくは飲んだ後のシメとして最適な一品です!
 ピリピリッと舌を刺してくる刺激的な後味がたまらない赤唐辛子と、口の中へスーッと広がっていく爽快かつ鮮やかな風味が印象的なしょうがのアクセントが心地よいおつゆがとっても美味で、本当にいくらでも飲めちゃいそうなくらい高クオリティな出来栄えでした。ゴマ油の心とろかすような香ばしさと、濃い割にはあっさりキレのいいコクが全体をうまくまとめており、おかげで一見ボリューム感がなさそうにみえますが、食べ終わる頃には程よい満足感を感じる事が出来ます。春の穏やかな陽光を思わせる柔らかで優しい貝類特有の甘味や、海のミネラル分を凝縮させたみたいに強烈な潮味がとことんにじみ出た浅利出汁をピリ辛な味付けがいい具合に引き立てており、シンプルながらも深い味わいでした。見た目は上品そうにみえますが実際に食べてみるととんだじゃじゃ馬って感じで、磯の香りがする甘塩味がよかったです。
 ぷっくり肉厚な浅利のプリプリクニクニした歯応えのある身が何ともおいしく、小さい貝柱も注意深く噛むとシコシコした歯触りが堪えられませんでした。水を一滴も使わず日本酒の旨味だけで仕上げたせいか浅利のおいしさがダイレクトに伝わってくる一皿で、作中で澪ちゃんが言っていた通り「余分なものが何一つない。どれが欠けても成り立たない味わい」で、そのまま食べるのはもちろんそうめんを絡めてもいけそうな乙な料理です。

 浅利のバター焼きとはまた違った醍醐味が味わえる料理で、ついついお箸が進みます。日本酒のおつまみとして最適な出来で、最後にお皿の底にたまったおつゆを一気に飲み干すと胃が休まる心地になりました。春にプクプク肥え太った身の厚い浅利で作ると、もだえる事必至な料理です。

●出典)『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『風流つまみ道場』の“万能もやしディップ料理三種”を再現!

 最近、『古畑任三郎』シリーズをファーストシーズンから順々に視聴する事が自分の中で流行っているのですが(相方さん共々セカンドシーズンが一番好きです)、何気に冒頭の前置きっぽい導入部分が好きで毎回「あ~、確かにそうですね」と頷かされます。ちなみに、私が特に好きだったのは「えー、自分が人に嫌われてんじゃないかって心配してる皆さん、安心してください。そういう場合は大抵本当に嫌われてます。問題なのは自分が人に嫌われているのが分かってない人の方で…」「今年の風邪は、たちが悪いってよく言います。去年も一昨年もそんなこと言ってました。風邪は年々たちが悪くなっているようです。みなさん、お身体は大切に」の二つです。
 どうも、セカンドシーズンが好きだと言ったくせに、好きな前置きに選んだのはファーストシーズンとセカンドシーズンの物だったという矛盾している管理人・あんこです。

今回再現する漫画料理は、『風流つまみ道場』にて錦ちゃんがよく行く洋風居酒屋のマスター達の為に一肌脱いで考案したおつまみ“万能もやしディップ料理三種”です!
もやしディップ入りオムレツ図もやしディップソースのパンピザ図もやしディップのっけ焼き肉図
 ある日、錦ちゃんがよく行く洋風居酒屋<WINE Napa BEER>のマスターとウエイトレスのルミちゃんが、また錦ちゃんに厄介なお願い事をします。それは、「もやしを使った斬新な洋風おつまみのレシピを考えて欲しい」というなかなかの難問。マスターとルミちゃん曰く「安くて栄養豊富なもやしがこの頃よく売れているって言うから、うちでも使わない手はないって思ってさ」「でも、もやしを使う料理ってもやし炒めとかお好み焼きとか焼きそばとか、うちのイメージに合わないでしょ」「さあさあ錦ちゃん、頼むよ~」との事で、なるほど確かにもやしで洋風メニューってそんなに聞かないな~と読んでいる私の方まで悩んでしまいました。我が家もせいぜい炒め物・味噌汁・付け合せに使うくらいであまり凝ったもやしのレシピは思い浮かばない為、実はもやしって料理法がかなり固定されている食材なのでは…と思います。
 案の定、最初は「そうだな、ぺペロンチーノ風に炒めるとか、生春巻の中に巻くとか」と無難なアイディアで答えを濁そうとする錦ちゃんでしたがすぐにお二人から却下されてしまい、挙句の果てには「駄目駄目、そんなありきたりの錦ちゃんらしくなーい(´A`)」と軽いブーイングまで受けちゃっていました;。正直、この流れを見るたび「店員とお客さん」というよりは「雇い主とフードコーディネーター」という関係により近いものを感じてしまうので、無償でしょっちゅうこういう相談を聞いている錦ちゃんが少々気の毒になっちゃいます(^^;)。ただ、錦ちゃんは根っからの料理好きで何だかんだ言いつつ楽しんでいる節がある為、結局持ちつ持たれつお互い様なのかもしれません(新レシピを考える事が大の苦手な私にとっては、錦ちゃんの才能がすごく羨ましいです)。
洋風居酒屋風のもやしメニュー考案を迫るマスター;
 そんな時、錦ちゃんが「はいはい、それじゃ本気で考えようかな」と苦笑しつつ思いついた新しいレシピが、この“万能もやしディップ料理三種”。作り方はちょっと凝っていて、もやしを茹でて細かく刻んだものに各種調味料を混ぜて作った特製もやしのディップでオムレツ、パンピザ、焼肉の薬味ソースを作り上げたら出来上がりです。もやしのディップは全部で三種類あり、マヨネーズとこしょうで和えた「マヨネーズのもやしディップ」、オリーブオイル・乾燥バジル・塩等を混ぜた「オリーブ油もやしディップ」、ポン酢と青しそを使った「ポン酢のもやしディップ」などバリエーションが豊富で、錦ちゃんが言うには「もやしのシャキシャキ感を活か」す事を重視したオリジナル料理とのことでした。確かに、これなら洋風居酒屋で出しても全く違和感がなさそうなお洒落さです!
 ただ、材料費自体は破格に安いものの問題なのは手間がかかりすぎる作業工程で、茹でたもやしを大量に細かくみじん切りにするのが最大のポイントだと書かれてありました。茹でると相当にカサが減る事を考えると、十分な量を確保するには最低でも二~三袋分のもやしを黙々と刻み続ける必要がありそうですが…考えただけでゲッソリしてきますね(ヽ´ω`)。現に作中でも、マスターとルミちゃんは相当にゲンナリしながらもやしをひたすら刻んでいました;。
もやしディップ作りの作業はものすごく重労働です;
 その後、苦労して作った“万能もやしディップ料理三種”のおいしさを認めたマスターは即座に新メニュー採用を決定しますが、翌朝ルミちゃん共々大変な筋肉痛になってしまい、泣く泣く売り出し延期にしていました;。しかし、包丁を持てないくらい憔悴してしまったお二人と同じくらいきっつい作業をしたはずの錦ちゃんは全く持ってピンピンしており、「もー、二人してもやしっこなんだから~」と言ってケロリと笑っていました。…うーん、錦ちゃんの体力恐るべし!
もやしのみじん切りのし過ぎで筋肉痛になった為、延期になっちゃいました
 もやしのディップなんて今まで見た事も聞いた事も、ましてや食べた事もなかった為、一体どんな味なのか非常に気になりました。久々にザワザワ騒ぎ出した強い好奇心をおさめる為にも、早速再現してみます!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、もやしディップ作り。鍋一杯に水をはってグラグラ沸騰させた所へもやしをどっさり投入し、まだしゃっきり感が残っているうちにザルにあけて余計な水滴をきっちり落とします。ザルで落とせるだけの水分が取れたらキッチンペーパーの上に一旦取り出し、しっかり拭いておきます(とにかく、後々ベチャベチャにならないよう細心の注意を払って水気を落とします)。このもやしを、包丁で相当に小さく細かくみじん切りにし、仕上げに水分をぎゅっと絞ります。
 ※予想通り、この作業は結構きつくて翌日右腕と腰が軽~い筋肉痛になりましたorz。ただ、慣れればそこまで苦痛な作業ではないですし、きつさレベルでは「卵白のメレンゲ作りを全て人力で行う」より下の部類に入りますので、初心者の方でも大丈夫だと思いました。包丁二刀流を推奨します。
万能もやしディップ料理三種1
万能もやしディップ料理三種2
 この刻みもやしを三つのボウルへそれぞれ均等に分け、一つはマヨネーズとこしょう、一つはオリーブ油と塩と乾燥バジル一つは青じその千切りとポン酢を加えてよーく混ぜ合わせます。調味料と刻みもやしが混ざりきったら、もやしディップ三種の出来上がりです!
 錦ちゃんが言っていた通り、どれもそのままつまんでみてもいいおつまみになりました。なので、面倒な時はこの時点で食べちゃうのもありだと思います(^^;)。マヨネーズの方はまろやか洋風、オリーブオイルはあっさりイタリア風、ポン酢の方はさっぱり和風でそれぞれ違う味わいで美味だったです。
万能もやしディップ料理三種3
万能もやしディップ料理三種4
万能もやしディップ料理三種5
 次は、もやしディップを応用した料理作り。“もやしディップソースのパンピザ”は自分好みの厚さに切ったフランスパンの上へオリーブ油のもやしディップ→ピザ用チーズの順にたっぷり乗せてオーブントースターに入れ、チーズに火が通るまで焼きます。チーズの表面にこんがりした焼き目がついたら、準備OKです。
万能もやしディップ料理三種6
万能もやしディップ料理三種7
 “もやしディップのっけ焼き肉”は、焼肉用牛肉あらかじめ薄く塩こしょうをふって下味をつけ、油をひいて熱しておいたフライパンでミディアムレアになるまで程ほどに焼きます。ちょうどよく焼けた牛肉の上に適量のポン酢のもやしディップを乗せたら、出来上がりです!
 ※この料理は牛肉の方が圧倒的に合います(豚肉だと、もやしディップの方が迫力負けしてしまいます)。ただ、鶏肉のもも肉は牛肉と負けず劣らず合うのでおすすめです。
万能もやしディップ料理三種8
万能もやしディップ料理三種9
 “もやしディップ入りオムレツ”は、ボウルに卵と生クリーム(コーヒーフレッシュでも可だとか)を入れてよくかき混ぜたらマヨネーズのもやしディップを加えてさらに混ぜ合わせ、それをオリーブ油とバターを熱して溶かしたフライパンへ一気に流し込んでオムレツ状に焼き上げます(この時、強火にし過ぎず弱火~中火でとろとろにしつつ慎重に混ぜながら形作るとうまくいきやすいです)。卵が半熟状に焼き固まったら、用意万端です。
万能もやしディップ料理三種10
万能もやしディップ料理三種11
万能もやしディップ料理三種12
 これらのもやしディップ料理を出来たての内にそれぞれのお皿へ盛り付ければ“万能もやしディップ料理三種”の完成です!
万能もやしディップ料理三種13
 ぱっと見はもやしを使った料理にはとても思えない感じで、もやしというよりはみじん切りのたまねぎ料理に見えてしまいます(ある意味、もやしを新たまねぎに置き換えて作ってみるのもそれなりに合っておいしそうですね^^)。正直まだ手に脱力感が残っている物の、頑張った甲斐がありました。どれもこれも簡単に作れた割にはそれなりに本格的っぽく見えるので、味が楽しみです!
万能もやしディップ料理三種14
万能もやしディップ料理三種17
万能もやしディップ料理三種20

 それでは、熱々の内にいざ実食!
 一つ目は、“もやしディップ入りオムレツ”。いただきま~す。
万能もやしディップ料理三種15
万能もやしディップ料理三種16
 さて、味はと言いますと…洋風なオムレツともやしが意外にもぴったりで旨し!これは大発見です!
料理に使うと、より一層しゃきしゃき感が演出できます
 生クリームでふんわりトロトロとゴージャスな味わいになったオムレツと、シャキシャキした歯触りのもやしディップの相性がかなりナイスでした。フワフワ柔らかい卵の旨味が口の中にとろけ出した所へ、もやしの何とも小気味良い食感がほどよいアクセントをプラスしており、そのせいかそこそこ濃厚な味わいにも関わらず丸一個ペロリと胃もたれせずに完食する事が出来ます(炒め玉ねぎから甘味や苦味を全部抜き、もっと瑞々しくさせた感じの食べ味でした)。もやしディップに絡んでいたマヨネーズの効用か、ちょうどいい塩味が全体的についており、尚且つとてもまろやかなおいしさが特徴的です。
 細かく刻んだ後に適度に水分をきったもやしを使用した為非常に食べやすく垢抜けた口当たりで、全く水っぽくないのに驚きました。見た目同様濃い味わいなのに、後味はとても淡泊かつヘルシーな印象という相反した料理な為、ケチャップの甘酸っぱい塩気はよく合います。スパニッシュオムレツみたいな具沢山感を楽しめるのにさっぱり軽く食べられるので、パンに乗っけて夜食や朝食として頂くのにも向いていそうでした。

 二つ目は、“もやしディップソースのパンピザ”。いただきまーす!
万能もやしディップ料理三種18
万能もやしディップ料理三種19
 さて、味の感想は…びっくりするくらいもやしがイタリアンな味になっていてウマーーー!これならお店にも出せそうです。
 香ばしく焼けたフランスパンのザクザクした力強い食感や、ピザ用チーズの熱々にとろけて糸を引く強烈なコクに、オリーブ油独特の風味が染みたもやしディップの鮮やかなシャキシャキ感がすごく合ってます。丹念にみじん切りにする事によってもやしにありがちだったモサモサした口当たりが皆無になっており、口に入れた途端ホロッとあっけなくバラバラになってほどけていくもやしのようでもやしではない不思議な感覚を堪能出来ました。豆部分のサクサクした歯触りが要所要所で効いて来る為、単調さが防げているのに感心です。乾燥バジルのすっきり爽快な香りとオリーブ油の透明感ある旨味がもやしとフランスパンのいい仲立ちになっており、例えるとするなら「イタリア風もやしのナムル乗せチーズトースト」としか言いようがない面白い味わいがしました。
 もやしディップの汁気を吸い込んでちょっぴりやわやわになったフランスパンのごく表面部分がスープを染み込ませたパンみたいな感じがしてまた美味で、思わず笑みがこぼれます。ピザ用チーズのカリッとした部分の濃い塩気がやや薄味なもやしディップをさらに引き立てているのもいいですし、個人的に創作イタリアンとしてなら十分通用する料理なのでは…と感じました。

 三つ目は、“もやしディップのっけ焼き肉”。いっただっきま~す!
万能もやしディップ料理三種21
万能もやしディップ料理三種22
 さて、味ですが…これは美味!三品中最もお酒のおつまみとして有効な一品です!
 ミディアムレアに焼けてジューシーに仕上がったあっさり塩味な焼き肉用牛肉を、もやしディップのシャキシャキした食感がさっぱり食べさせてくれます。作中で錦ちゃんが「タン塩のネギのような役割」だと話していますがまさにそんなイメージの薬味で、強いて言うならこちらの方がネギより癖が全くない分、牛肉の旨味たっぷりな肉汁がよりストレートに味わえるのがポイントだと思いました。ポン酢のフレッシュな酸味と青じその爽やかな風味が牛肉の純粋な旨さを引き出しているので、つい箸が進む一品です。こちらの場合、もやしディップをそのまま使っている分一層しゃっきりした感じが出ているのがたまりません。
 作中で指摘されている通り、確かに生のさらし玉ねぎと非常に似た歯応えなんですが、玉ねぎと違ってもやしには突き刺すような辛味も強い刺激もない為優しいソフトな口当たりなので、安心して色んな方におすすめする事が出来ます。熱い牛肉とひんやりしたもやしディップのコントラストも素敵ですし、何よりビールやサワーと痛快なくらいばっちり合いますので、喉が鳴る事請け合いです!

 もやしを刻む作業が結構地味にきついですが、もやしのようでもやしではないような不思議なおいしさが堪能できますので、一食の価値は十二分にあると思います。手間はかかりますが材料費はほとんどかからないも同然ですので、味の割にはお得なディップです。

●出典)『風流つまみ道場』 ラズウェル細木/芳文社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

プロフィール

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

Copyright © あんこ