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『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』の“ひとくち宝珠”を再現!

 小さい頃から様々な本を読んできている当管理人ですが、実を言いますと古今東西問わず兄弟姉妹が出てくる昔話や童話(シンデレラ、三匹の子豚など)だけはイマイチ感情移入出来ませんでした。何故なら、男女問わず長子が主人公or幸せになれるお話が相当に限られていた為。主人公はほとんどと言っていいほど末っ子で他の兄妹達は大抵いい目を見ず、それどころか頭と性格が悪い設定にされたりひどいラストを迎えてしまったりと長女の立場からするとあまり愉快ではないお話が多々あったので、幼かった当時は「理不尽だ!」とよく憤慨していたのを覚えています(今はさすがにそんな被害妄想じみた考えはなくなりましたが;)。けれども最近、相方さんから「昔は長子の方が遺産を相続するのが普通だったり、おいしい思いをしたりする機会がいっぱいあったから、そういうので不平不満を持ちやすい人たちをスカッとさせる為にそんな話がたくさん作られたんじゃないかな」と指摘があり、目からウロコが落ちました。実際のところはどうしてだったのか、非常に気になります…。
 どうも、幼児の時に親戚の家で読んだ劇画調挿絵つきの『ジャックと豆の木』に載っていた吼えたける大男のドアップ絵を見て大泣きしたのはいい思い出な管理人・あんこです(未だに、『ジャックと豆の木』はホラー童話だと思ってます…。ちなみにこの本、お母さんが家の窓から魔法の豆を投げ捨てるシーンすらヒステリックな感じで非常に恐ろしかったですorz)。
※注意:今回はネタバレがひどい回です。未読の方は、あらすじ部分を飛ばすことをお勧めいたします。

 本日挑戦する再現料理は、『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんの想い人・小松原さまこと小野寺数馬が<嘉祥>の為に考案したオリジナルのお菓子“ひとくち宝珠”です!
『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』
 第五作目『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』には全四話が収録されていますが、一番最後にいわゆる幕間のような役割で載っているのが、小松原さまこと小野寺数馬の視点で話が展開される「嘉祥―ひとくち宝珠」。表向きはどこにでもいるような粗野な浪人を装っているものの、まだ「つる家」が蕎麦屋だった時代から通いつめては澪ちゃんに料理に関する助言をさりげなく与え続けていた謎の人物・小松原さまですが、その正体は現将軍である徳川家斉公の御膳奉行を勤める若年寄・小野寺数馬。公方様が食べる食膳の献立を毎日考え、その責務を一身に負うというなかなかに重い役職で、その息抜きも兼ねた料理研究の為に夜な夜な市中の料理屋の食べ歩きを行っていたのがきっかけで「つる家」に行き着いたとの事。第一話から謎だらけだった小松原さまでしたが、今回のお話を読んで「どおりで料理に関する知識が膨大なはず」とようやく合点がいきました(それにしても、町人に身をやつしてお忍び調査とは、どこか遠山の金さんを彷彿とさせますね)。
 このお話には、真の姿・小野寺数馬として過ごしている時の小松原さまの周囲にいる家族や友が複数登場するのですが、なかなかにユニークな人物ばかりな上に江戸っ子らしい歯切れの良い言葉の掛け合いがあちこちで繰り広げられる為、最後まで楽しく一気に読み進めることが出来ます。幼なじみである小松原さまから「熊澤熊三郎」と呼ばれてからかわれる程の大男で、どんな料理でも快活に「うまい」と言って平らげる頑丈な胃袋を持つ小納戸役御膳番(何と、冷めてしまった毒見後の食事を温めなおす役職だそうです!恥ずかしながら、公方様は冷め切った食事しか食べれなかったとずっと誤解し続けていました;)・駒澤弥三郎。兄の小松原さまから「猛獣」「女にするには惜しい技の持ち主」呼ばわりされる程のじゃじゃ馬で、同じく幼なじみである駒澤弥三郎と結婚して現在もしかしたら六男かもしれない六人目の子どもを妊娠中の妹・早帆。小松原さまの女性に対する憧憬を粉々に打ち砕かせる程気の強い性格で、一度など娘共々墓参りの際に大立ち回りをして悪目立ちをしてしまった母・里津。皆それぞれアクの強い性格の持ち主ですが、どの人も憎めない愛すべきキャラクターなので好感が持てますし、何より小松原さまの語り口が面白いのでどのページをめくっても笑がこみ上げてきます(特に、早帆さんが実家にいる頃作ったという「えぐみの強い里芋の煮付け、悶絶しそうに甘い春菊のお浸し、岩石のようなかき揚げ」などといった壮絶な料理の数々には、自身を重ね合わせて失礼ながら爆笑してしまいました;)。
 今回作ってみるのは、六月十六日に華々しく行われるお菓子が主役の行事<嘉祥>の日の為に小松原さまが澪ちゃんの漏らした一言を元にして考え出した創作和菓子・“ひとくち宝珠”。
 <嘉祥>とは、六月十六日に公方様から家臣が菓子を賜るという由緒正しい行事。元々古くから宮中で行われていた伝統行事だったそうですが、その昔三方が原の合戦の際に家康公が嘉定銭を拾った事やその折に家臣が菓子を奉納して戦の勝利を願った事から、将軍家とは気っても切り離せない重要な儀式になったのだとか。作中の記述によると、この<嘉祥>は幕府の威信をかけた一大行事なので相当に豪勢な振る舞いをするのが通例で、何と何千何万という和菓子を広間いっぱいにびっしり敷き詰めるのが普通というまさに狂気の沙汰な一日になるとの事。いやはや、いつの時代もお菓子業界の陰謀とも言える行事はあるものなのだな~とある意味感心です(^^;)。
 甘い物が苦手な小松原様は毎年菓子商人に菓子納品を全部任せていたのですが、この年は運悪く家康公の二百回神忌という節目の年だった上、若年寄や医師達から「いつも菓子商にまかせっきりというのも如何なものか」「砂糖を多く使いすぎるのはよくないので、もっと体が健やかになるような菓子を」という声が上がった事から、哀れ小松原さまは来る日も来る日も拷問のような量のお菓子を無理やり食べて和菓子研究をする羽目になります;。
 おかげですっかり参ってしまった小松原さまですが、その時ふと思い出したのが澪ちゃんの「炒り豆が好きです」という一言。これにピンときて試行錯誤しつつ作り上げたのが、“ひとくち宝珠”です。
 作り方は手間がかかるものの基本的には簡単で、きな粉・上白糖・水飴・米粉の一種である寒梅粉を混ぜて作ったきな粉生地をくるくる丸めて宝珠型に形作り、最後に細かくすった上白糖を散らしたら出来上がりです。小松原さま曰く、「素朴で地味。華やかさとは無縁だが、滋養に溢れている」炒り豆と澪ちゃんのイメージが膨らんで思いついたお菓子だそうです。
 ちょうど明日は、<嘉祥>の日。せっかく巻末には詳細に書かれたレシピが載っていることですし、早速再現してみようと思います。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、きな粉の用意。ボウルにきな粉、上白糖、寒梅粉(新米を蒸してついて、餅状にした後に薄く伸ばして焼いて砕いた粉。関西では寒梅粉、関東ではみじん粉と呼ばれてます。まだ肌寒い、梅の花が咲く時期に仕込む事が多かった事からこう呼ぶのだそうです)を入れてざっくり混ぜ合わせ、何度もふるいにかけて粒の大きさを揃えます。全体が混ざり、均一な黄色になったらOKです。
ひとくち宝珠1
ひとくち宝珠2
ひとくち宝珠3
 そこへ、お湯で程よく溶いておいた水飴を数回に分けて少しずつ加えては混ぜ、よく練り合わせます。この時、水飴の配合が多過ぎたり、水飴入りのお湯を入れ過ぎてしまったりしたら食感が失われてしまう上に整形しにくくなってしまうので、慎重に加減しながら入れたほうがいいです。
ひとくち宝珠5
ひとくち宝珠6
 やがて、きな粉が耳たぶくらいの柔らかさになったら準備完了です(もしベチャベチャになってしまったら、きな粉・寒梅粉・上白糖を少しずつ増やしてまた混ぜ合わせたら大丈夫です)!ちなみに、練る時はゴムベラが均等にムラなくこねやすくて便利でした。
 ※蛇足ですが、練りあがったきな粉の外見はお味噌にそっくりなので初見時はびっくりする事請け合いです;。粘りといい色合いといい、パッと見ならまず分からないと思いました。
ひとくち宝珠7
ひとくち宝珠8
 先程のきな粉を二等分にし、半分はそのまま、もう半分はふるいにかけた抹茶の粉を入れてよーく練ります(レシピでは「水で溶いた抹茶」とありましたが、それだと水加減が相当に難しくべチャッとうまくまとまりにくいです。その為、当管理人のように腕に自信がない方は粉状のまま和える事を推奨します)。これで、二種類のきな粉生地は出来上がりです。黄色というよりは黄土色、緑色というよりは苔色になってしまったのがちょっと無念;。
ひとくち宝珠9
ひとくち宝珠10
 これら二種の生地を、一口でパクリといけるほどの大きさにコロコロと丸めていきます。実はこの時、丸くなったきな粉の上部分をつまんで尖らせて宝珠型(一見スライムっぽいです^^;)にしなければならなかったのですが、ドン臭い事に材料をバランスよく配合出来ずに生地をうまくまとめる事が出来なかった当管理人は、途中で断念orz。代わりに、澪ちゃんのほほを思わせるような可愛らしい真ん丸型にする事で一旦妥協して黙々と丸め続けました。
 ※混ぜたては比較的まとめやすいですが、時間がたつにつれて生地はどんどんだれて手にくっつくようになります。なので、このきな粉生地は満足がいくまでのんびり丁寧に形作るのではなく、スピーディーかつ丁寧にを目指してしゃしゃっと丸めた方がいいです;。
ひとくち宝珠11
ひとくち宝珠12
 全てのきな粉生地を丸め終えたら、その上にすり鉢できめ細かくなるまで根気よくすった上白糖を茶漉しでふるいながら粉雪のようにパラパラと散らします。茶色一色のきな粉生地も、粉状になった上白糖で徐々に薄化粧を施されていくとぐっと洗練された雰囲気になる為、作っていてウキウキします。
ひとくち宝珠13
ひとくち宝珠14
 厚化粧になり過ぎぬように上白糖を表面にまぶし終えたら和風の菓子皿(又は朱塗りの折敷)に盛りつけ、仕上げに傍らへそっと熱い緑茶を添えれば“ひとくち宝珠”の完成です!
ひとくち宝珠15
 物がきな粉なせいか色合いが地味で、決して主役になれるような華のある見た目ではないのですが、鼻を近づけると一度炒った豆にしか出せない素晴らしく芳しい香りがする為うっとりします。老舗菓子店の本格和菓子というよりは、近所の和菓子屋さんで気安く買える和菓子ってイメージでした。茶色と緑色の優しい色合いを上白糖の白さが引き立てているのが好印象です。
ひとくち宝珠16
 それでは、手のひらにコロンと転がしていざ実食!いただきま~す(↓いきなり手のドアップ画像を置いてしまい、すみません;)!
ひとくち宝珠17

 さて、味はと言いますと…きな粉が見事に活かされていて、美味。口の甘い物が苦手な方でも抵抗感なく頂いてくれそうな、奥ゆかしいお菓子です。
ひとくち宝珠18
 見た目も味も決して華美ではありませんが、きな粉の素朴な滋味が砂糖と共に口の中でふうわりと広がり、一度食べると無性に虜になります。大豆本来の香ばしい風味、ねっとりしたコク、上品で後に残らない油分が楽しめるので、そこそこ甘いというのに全くくどさを感じませんでした。作中の文章通り「噛み締めると、しっとりと味わい深く解れて溶けていく。表面の砂糖の甘さは一瞬だけ。あとは大豆の芳ばしさと水飴の優しい甘さが舌のみでなく、心にまで沁みとおる」という深い旨さで、これ以上しっくりくる味の説明はない為途方にくれてしまった程です。大袈裟かもしれませんが、ここまで「美味しい」という文字が似合う和菓子は初めてかもしれません。
 こしあんに似た食べ応えなんですがそれよりもずっと粘りがあり、かと思えばすっと舌の温度で散り散りになっていく口溶けの良さがある為、不思議さのあまりもっと食べたくなります。プレーン味はきな粉と水飴が生チョコのようにサラッとほどける品のいいおいしさ、抹茶味はプレーン味よりも少し硬めなものの口溶けのよさに変わりはなく、先に抹茶の落ち着いた和の香りがきた後にきな粉や水飴とまったりとろけあう凝ったおいしさって感じでした。何より、甘い物なのに珍しく体の滋養に繋がりそうな味なのが嬉しいです。単品で味わうのもいいですが、熱いお茶と一緒に食べるとまた格別そうな一品でした。

 なんと言っても、きな粉にありがちな粉っぽさが皆無なのがよかったです。水飴や上白糖が入ることによってまろやかな味わいになっているので、きな粉好きはもちろんきな粉が苦手な方にもとっつきやすいお菓子なのでは…と感じました。飽きの来ない心に響く甘さなので、ほとんどの年齢層に大受けしそうです。
 ただ、原作通りの宝珠型も捨てがたいので、後日宝珠にしやすい柔らかさにしたきな粉でリベンジをしてみようと思います。その際はこの下↓にアップいたしますので、気が向かれた時に見ていただけますと幸いです。

●出典)『小夜しぐれ―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『想い雲―みをつくし料理帖』の“澪の鮎飯”を再現!

 お久しぶりです、あんこです。更新が遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。木曜日の夕方頃から体調の崩れを実感して「おや?」と思っている内に金曜夜からあれよあれよという間に高熱に襲われ、二日間ずっとダウンしていました;。ようやくまとまった時間が手に入りそうだと思っていたのですが(再現料理のストック作り、コメントのご返信、記事作りなどに取り掛かろうと予定していました)、ようやく落ち着いた今となっては金曜更新予定だった更新内容をアップするので精一杯でした;。明日からまた通常運転に戻りますので、何卒よろしくお願いいたします。
 どうも、今日の夕方にやっと復活して「馬鹿は風邪を引かないというけれど、そんな事はやっぱりないんだなぁ」と納得した当ブログの管理人・あんこです。

 今回挑戦する再現料理は、『想い雲―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんがある初夏の日に「つる家」でお客さんたちに振舞った“澪の鮎飯”です!
『想い雲―みをつくし料理帖』  澪の鮎飯
 実はこの『みをつくし料理帖』シリーズ、現在揃っている主要キャラクターは大抵第一~二巻にかけて徐々に揃ってくる感じで最初から登場しているキャラクターの方がむしろ珍しいのですが、第三巻となる『想い雲―みをつくし料理帖』の頃には、お馴染みの登場人物はもうほとんど出揃っています。ちなみに、この『想い雲―みをつくし料理帖』はそれまでの小まとめかと言いたくなる位ドラマチックなお話が数多く紹介されている為(「天満一兆庵」の元ご寮さんである芳さんが、旦那さん縁のかんざしを軸として行方不明の息子・佐兵衛さんの失踪の真相を知る話、小さい頃に洪水にあってから離れ離れだったかつての親友・野江ちゃんと吉原の華やかな行事<俄>で果たしたつかの間の再会話、「登龍楼」から追放された原因は澪ちゃんのせいだと逆恨みする元料理人・末松による卑劣な営業妨害話など)、相当に読み応えのある一冊です。
 中でも、一番印象に残ったのが第三話にて吉原で開催された<俄>の白狐行列のシーン。吉原で一、二を争うほど華やかな祭り行事・<俄>を見物に来た群衆、独特のリズムによって奏でられる鼓と三味線、狐の仮面と白装束で白狐に扮した艶かしい「翁屋」の遊女達、そして野江ちゃんと澪ちゃんが一瞬だけ夢のように再会した場面が出てくる箇所は、想像するだけでとても幻想的かつ美しい名場面だと思います。
 ちなみに、この時期に登場した中で地味ながらも一番味があって妙に記憶に残る人物が、辛口批評ばかりで口うるさい御仁だけれども家では恐妻家な戯作者・清右衛門さんとよくつるんでは振り回されて苦労としている版元・坂村堂嘉久さん(推定四十代)。第一話「豊年星―<う>尽くし」の際に、清右衛門さんに連れられて「つる家」で食事を取っている場面が初登場シーンで、「飯を一口頬張るたびに、その丸い目をきゅーっと細め、頷いている」「賞賛の言葉はないのだが、目を細めて幾度も頷く様子から、男の感動が手に取るように伝わる」という何ともそそられる食事描写をしてくれた事ですぐに名前を覚えました(^^;)。その食べっぷりは、数多くのお客さん達を見守ってきた澪ちゃんをして「これほどまでにおいしそうに食べる客を知らなかった」とある意味見惚れてしまった程。また、外見の方もきょとんとした丸い目やしょぼしょぼとした薄いヒゲがチャームポイントというどことなく憎めない風貌で、その姿はまるで江戸名物・泥鰌みたいだと書かれてあったのに微笑ましさを感じました。意地悪な清右衛門さんと唯一うまくやっていけている数少ない人格者ですが、それでも度々清右衛門さんの気まぐれな所に泣きを見てはほとほと苦労している描写があるので、毎回苦笑しながらお二人のやり取りを見ています;。
 この坂村堂さんが、初回で黙々と三膳も平らげてしまったお料理が、“澪の鮎飯”です。作り方自体はひどくシンプルで、素焼きにした鮎を醤油・酒・米・水の入った釜へ放り込んで炊き上げ、仕上げに頭や骨を取って薬味の青しそを投入してさっくり混ぜたら出来上がりです。たったこれだけですが、後からではなく最初から共に炊き上げることによってご飯へより味がしみこんで美味になるとの事でした。どうやら「つる家」の夏の定番らしく、お店にやって来た夏バテのお客さん達は食欲がないはずなのに「どの飯椀も舐めたように空になって戻ってくる」くらい夢中になって食べたという記述がありました。
 近所でおいしそうな鮎がお手頃価格で買い求められる季節になってきましたので、早速再現してみようと思います。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、鮎と炊飯の準備。鮎は塩をまぶして少しもみ、包丁でぬめりや汚れをこそげ落としたら流水でさっと洗いキッチンペーパーで水気を拭き取ります(この時、お腹を押してフンを丁寧に押し出しておく事を推奨いたします)。水気が取れたらそのまま魚焼きグリル(ガスコンロと網でも可)でこんがり焼きあげて素焼きにし、それを水・醤油・酒・生米を入れて水加減しておいた文化鍋へ投入して通常通り炊きます。
 ※ここでは作中通りワタ入りで作りましたが、ワタの苦味が苦手な方は最初に取り除いておいてもOKです。あと、あんまり良心的ではない所の養殖物だと砂がワタに入っていたりしやすいので、炊き上がったらワタだけ先に取り出して確認してから戻しいれる方式がお勧めです。
澪の鮎飯1
澪の鮎飯2
 ご飯が炊き上がったら全体へ湯気が充分に行き渡るまで放置し、少々落ち着いたところでフタを開けて頭と骨と取り除きます。その際、骨はなるべく根気よくとった方がいいですが、鮎の骨は小さく気にならない物も多いので、気にならない方はざっくばらんに放っておいても大丈夫です。
澪の鮎飯3
澪の鮎飯4
 身から骨を除き終えたら、ざっくり混ぜ合わせて身をご飯へ行き渡らせます。その間、青しそを千切りに刻んで水に放ち、葉に瑞々しさが出たら取り出して水気を拭いておきます。
澪の鮎飯5
澪の鮎飯6
 先程の炊き込みご飯にきっちり水気をとっておいた青じそをやや多めに加え、しゃもじで練らぬようまんべんなくさっくりと混ぜます(鮎は淡白なので青しそのみの方が純粋に旨さを堪能できますが、薬味は多ければ多い程いいと感じる方は白ごまやみょうがの千切りがおすすめです)。
澪の鮎飯7
澪の鮎飯8
 青しそが混ざりきったらまたフタをして少し蒸らし、食べる分だけお茶碗へご飯をふんわり盛り付ければ“澪の鮎飯”の完成です! 
澪の鮎飯9
 ためしに少し嗅いでみると、確かに魚らしいふくよかな香りと共になにやら野菜っぽい匂いが湯気となって漂ってきた為、若干驚きました(匂いだけなら、魚の炊き込みご飯というよりは夏野菜と魚の混ぜご飯っぽいです)。思わず、別作品『鬼平犯科帳』シリーズの鮎飯の描写まで思い出して余計お腹がすいてきてしまいました;。青しその葉が目に涼しげで彩りも美しかった為、どんな味なのか楽しみです!
澪の鮎飯10
 それでは、炊きたてで熱々の内にいざ実食!いただきまーす!
澪の鮎飯11

 さて、味の感想ですが…何ともさっぱりした後口で旨しっ!川魚だからこそ堪能出来る独特の香り高さに感激です!
 作中で坂村堂さんが言っていた通り、ご飯粒の芯まで鮎の味が沁みこんでいて噛むごとにどんどん旨味がにじみ出てきます。香魚とはよく言った物で、一口食べるときゅうりっぽい清涼感溢れる香りが鼻を突き抜けた為「魚を使っているのに、まるできゅうりやスイカの皮が入っているような匂いがする」と不思議な気持ちになりました。青しそのザキュッとした鮮やかな歯触りや、爽やかかつすっきりした風味が混じり込むとよりさっぱり感が強調されたので、まさに「初夏の定番炊き込みご飯」というイメージを抱きました。
 ご飯全体にあっさり薄い醤油味がついていますが、後からじんわり鮎のワタの油分や苦味が舌へ響き、最後に日本酒がフワッとさり気なく効いてくる奥深い大人の味で、鮎のわずかな癖を消しているのがいい感じです。また、この炊き込みご飯は鮎の身がやわやわと蒸されて細かくご飯に入り交じって一体化しているのが特徴な為、これは鮎を純粋に楽しむ料理というよりは鮎の出汁が染み込んだご飯粒自体を主役と考えて楽しむ料理なのだと思いました。
 一旦焼く事によって香ばしく活性化した鮎特有の淡泊かつ繊細なコクが、とても美味です。鯛やイワシなどの炊き込みご飯よりもずっと地味な味わいですが、野趣の強いほろ苦さがわずかに染み込んでいるご飯の合間合間に青しそがアクセントとなってキレをよくしているのがたまりませんでした。

 以前、ある文豪が書いたグルメエッセイで(名前は残念ながら失念;)、「養殖物は脂っこい」という意見を見た為あまり期待はしていなかったんですが、食べてみるとそこまで変ではなかったのでほっと一安心です。鮎は塩焼きにするだけでも十分美味ですが、炊き込みご飯にすると飯粒と一緒にしっかり噛み締める事でより複雑な旨みが分かるのだな~と感心しました。今度は是非天然物で試してみたいと思います(^^)。

 ○追記
 これまで各作品のご紹介文を書いてきましたが、最近ようやくネタバレ感がひどいのではないかという自覚が出てきましたorz。その為、当ブログを見ていらっしゃる方の中で「これはやりすぎ」だと不快に思われた方は、是非ご指摘していただけますと幸いです(場合によっては即刻訂正させて頂きます)。
 また、大変遅くなり恐縮ですがコメントのご返信は来週仕事から帰って時間があるときに、少しずつさせていただきます。以上、ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

●出典)『想い雲―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『華中華』の“巾着きつねお弁当チャーハン”を再現!

 前々回の前置きを見た知人から、「シナモンの配合がどうとかそこまで細かい事を気にするくらいなら、いっそさくらんぼ酒を一から作ってみたらどうかな?十年熟成させてない物でも、市販物より手作りの方が読んでて楽しいと思う」と指摘された為、ただ今人生初の果実酒つくりに取り掛かろうとしています;。幸い、今はさくらんぼの旬と果実酒作りの旬が巡ってきている絶好の時期ですので、これをいい機会に色々作ろうと画策している今日この頃です。
 どうも、再現料理記事の為に再現した『美味しんぼ』69巻に出てきた大人用のデザートカクテル(山桃&シナモン、バニラ&バナナ、抹茶&ジンなど)を飲んで「これはウマー(゜Д゜)!」とカクテルに目覚めた管理人・あんこです。

 本日再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんがはるばる徳島の実家まで挨拶をしに行く康彦さんの為に愛情をこめて作った“巾着きつねお弁当チャーハン”です!
巾着きつねお弁当チャーハン図
 今回は、ハナちゃんのプロポーズシーンが見られる“春爛漫キャベツ・チャーハン”誕生秘話と、徳島の実家で採れたたけのこを贅沢に使った“若竹チャーハン”が登場するお話のちょうど中間に位置する時期のお話。いよいよハナちゃんの未来の夫・康彦さんが徳島の実家にいるハナちゃんのご両親へご挨拶をしに行く当日、康彦さんはハナちゃんと散歩をしながらお土産用のお菓子は何にしようかと話し合います。個人的に、結婚式の打ち合わせや新婚旅行の企画練りよりもこういう相手方の実家へのご挨拶話や、友人達への事前の顔合わせなどといった何気ないお話の方に、より結婚をリアルに感じます。
 その際、ハナちゃんが言った「父ちゃんと母ちゃんは、甘い物が大好きなんです」と話したのに対し、康彦さんは気を利かせるつもりで「そうだ!木の葉形のリーフパイを持っていこうかな」と言ったのですが、ちょっと前にハナちゃんのお父さんが手紙の中で「キツネにたぶらかされたんじゃないか?」とハナちゃんを心配していたのを思い出し、「あ、いや、ダメだ!葉っぱのお菓子じゃ、キツネが化けて華子さんを奪いにきたと思われちゃいそうだ(´∀`*)」と照れながら茶化していました;。
なかなか茶目っ気がある康彦さん(^^)
 その後康彦さんはハナちゃんの実家へ行く準備をする為、ハナちゃんは上海亭のチャーハンを作る為に一旦解散するのですが、何と上海亭ではおじいさんとおばあさんが「今日のお昼は、きつねうどんにしようと思って…」と言ってたまたま油揚げを用意していたので、「今日はやたらと話にキツネがでてくるなあ…;」と苦笑していました。そしてこの時、ハナちゃんの頭の中を<キツネ><油揚げ><チャーハン>という三つのキーワードが組み合わさって偶然閃いたのが、この“巾着きつねお弁当チャーハン”です!
 作り方はちょこっと凝っていて、油揚げと長ネギを醤油や日本酒で和風に味付けして作った“きつねチャーハン”を油抜きして袋状にした油揚げの中に詰め込み、フライパンで醤油を塗りつつ焼き上げたら出来上がりというもの。お出汁で煮るのではなく、生醤油を塗って焼くというのがミソで、こうする事によってチャーハンと油揚げの良さを活かしつつ稲荷寿司風にも仕上げる事が出来るとのことでした。油揚げが好物の方にとっては、まさに夢のようなお料理といえそうです。
 ちなみに、これは康彦さんが飛行機の中でも愛情がこもった手作りチャーハンを食べてもらえるようにというハナちゃんの真心が最後の一押しとなって生み出したお弁当用チャーハンで、事実ハナちゃんは上海亭の営業が終わった後休む間もなく空港へこちらのお弁当を届けに行っていました。実を言いますと、作中で楊貴妃さんは康彦さんの登場によって「かえってチャーハンの味がダメになったりして…」という心配をしていたのですが、このお話を読む限りどうやら逆にパワーアップした感じなので、楊貴妃さん共々「これからも美味しいチャーハンを作ってくれそう!」とほっとした気持ちになったのを覚えています(^^;)。
油揚げをふんだんに使った、まさにキツネ好みなチャーハンです!
 本来はこの“巾着きつねお弁当チャーハン”、康彦さんだけが食べるはずだったのですが、「両親から結婚の承諾を得られるよう、康彦さんの手助けをよろしくお願いします!」というお願いをする為に楊貴妃さんにも作って持たせていました(上海亭のお客さん達は、熱々のまま食べれるのできつねチャーハンのまま提供。なので、ある意味レアなチャーハンです)。結婚騒ぎの中、何だかハナちゃんを取られたような気がしてちょっと面白くなく感じていたらしい楊貴妃さんもこれには参り、「こんなに美味しいお弁当をもらったら、断れないね!」と言ってウキウキしながら康彦さんと同じ飛行機に乗っていました(ふと、『フリーター、家を買う』をもじった『幽霊、飛行機に乗る』というフレーズが頭に思い浮かびました;)。何だかんだ言って面倒見のいい楊貴妃さんに、不覚にも萌えてしまいます(^^)。これが本当のツンデ霊…なんちゃって(←すみません、無視して下さいorz)。
幽霊、飛行機に乗り込む…の巻;
 おいなり、焼きお揚げ、巾着煮などが好きな私にとって、初見時からツボを押されまくりな漫画料理でした。せっかく詳しいレシピが巻末に載っていることですし、早速再現してみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、油揚げの下準備。作中では特に油揚げの種類について言及されていないのですが、私の場合内側と外側のメリハリをもっとつけたいと考えた為、外側用はごく一般的な油揚げ、内側用は多少こだわりをのぞかせている割高な油揚げを使う事にしました(もちろん、全く同じ物を使っても可です)。外側用の油揚げは最初の段階でザルに入れて熱湯をかけ、余分な水気をきっておきます。
巾着きつねお弁当チャーハン1
巾着きつねお弁当チャーハン2
 内側用の油揚げも熱湯で一旦湯引きして水分をしっかりきり、包丁で縦半分に切った後一センチ幅の千切りにしておきます。この油揚げはきつねチャーハン用の油揚げでもありますので、キッチンペーパーで挟むようにしてきっちり水気を取っておいた方が後々パラパラな仕上がりになりやすいです。
巾着きつねお弁当チャーハン3
巾着きつねお弁当チャーハン4
 この千切り油揚げとみじん切りにした長ネギを、油をひいて熱した中華鍋(又はフライパン)で強火で炒め、醤油と日本酒でやや濃い目になるよう味をつけます。そのまま食べて強めの味だと感じたら火を止め、ボウルに入れて冷ましておきます。
 ※油揚げは気がつかない内に結構調味料を吸いやすいので、入れすぎに要注意です。
巾着きつねお弁当チャーハン5
巾着きつねお弁当チャーハン6
 その間、以前作り方をご紹介したハナちゃん流基本チャーハンのレシピ通りにチャーハンを作り(通常より薄めの塩加減がいいです)、最後に先程の味付き油揚げと長ネギを加えてざっと炒め合わせます。これで、きつねチャーハンの出来上がりです。このまま食べても、日本酒の風味が効いた醤油味の油揚げが美味な和風チャーハンとして美味しく頂けますのでおすすめです(´∀`)。
巾着きつねお弁当チャーハン7
巾着きつねお弁当チャーハン8
 次は、巾着作り。初めに湯引きしておいた外側用の油揚げを麺棒で軽く潰し、長い物は半分に、小さいサイズは隅っこを細く切って中をそっと指で押し広げて袋状にします(要は、稲荷寿司用の下ごしらえと似たようなものです^^)。この時焦ったりいい加減にしたりするとすぐに破けちゃうので、気長に丁寧に広げる事がコツです。
 ※実はこの麺棒でコロコロする作業は「ブチュ!」と隅から油交じりの水が飛び出てきたりしやすい為、地味に周辺が汚れやすいです;。ですので、あらかじめ周囲に布巾をしいておくと後片付けが楽です。
巾着きつねお弁当チャーハン9
巾着きつねお弁当チャーハン10
 外側用の油揚げを全て袋状に出来たら、中にほんのり荒熱を取っておいたきつねチャーハンをちょうどいい塩梅に詰め込み(欲張るとすぐに破けるので注意!)、端っこをつまようじで縫うようにして閉じます。そこまで神経質にとめなくても大丈夫です。
巾着きつねお弁当チャーハン11
巾着きつねお弁当チャーハン12
 このきつねチャーハン入り巾着を、薄く油をひいて弱火~中火にかけたフライパンに乗せて両面をじっくり焼きます。途中、刷毛で醤油をぬって焦がしすぎないようこんがりカリッと焼くのが最大のポイントです(醤油を塗ると急に焦げ付きやすくなりますので、気を抜かない事が肝心です)。
 ※なお、稲荷寿司みたいな甘めの味の方がお好みの方は、醤油に味醂を混ぜた物を刷毛で塗って焼くとよりそれっぽく仕上がります。
巾着きつねお弁当チャーハン13
巾着きつねお弁当チャーハン14
 両面に程よい焦げ目がついたら火を止め、たくあんと一緒に折りつめの中へ丁寧に詰め込めば“巾着きつねお弁当チャーハン”の完成です!
巾着きつねお弁当チャーハン15
 冷めた後もなおほのかに漂う焦がし醤油の郷愁を誘う香りが空きっ腹に突き刺さるようで、それでも我慢しつつ画像を撮っていると限界を超えたお腹がグ~ッと鳴っちゃいました(^^;)。見た目は稲荷寿司に似ているので一瞬間違えかけてしまいますが、直に火を通した食材のみが持つ香ばしい匂いが鼻をくすぐるので、お客さんにお出しすると「何なんだろう…?」と不思議に思われちゃいそうなイメージです。稲荷寿司と焼き油揚げがお好きな方には答えられなさそうな一品でした。
巾着きつねお弁当チャーハン16
 それでは、お箸でつまみあげていざ実食!いっただっきまーす!
巾着きつねお弁当チャーハン17

 さて、味の感想ですが…油揚げがダブルで楽しめて相当に美味!見た目によらず、結構ガツンとくるおいしさです!
巾着きつねお弁当チャーハン18
 中に入っているきつねチャーハンは、日本酒の品のいい風味が効いた和風醤油味がしっかり染み込んだ乙な味。やや高めな油揚げを使用したせいか、木綿豆腐の旨さをギュッと濃縮したようながっしりした歯触りが特徴的で、ネギのシャキシャキ感と卵のふわふわ感がその旨さを最大限まで引き出しています。材料だけ見るなら油揚げの袋煮とほぼ同じな為、「チャーハン入りこんがり焼き稲荷」って感じでした(実際、噛み締めると油揚げの脂分と共に日本酒や醤油がじんわりにじみ出てくるので少々濃いめでワイルドな袋煮と言えなくもない感じです)。
 この素朴でどことなく懐かしい後味のきつねチャーハンを表面はカリッと、中側はふんわり柔らかな袋状の油揚げが優しく包みこんでおり、二種類の油揚げのあっさりしているようでどこか肉々した大豆由来のコクがあいまって大変ボリュームのある味わいでした。焦がし醤油の香ばしい香りと強い塩気が油揚げにいい調味をしており、一回食べると病み付きになります。例えるならば、稲荷寿司と袋詰め焼きを足して二で割ったような不思議な美味しさの料理で、時間がたってもチャーハンが乾燥してバサバサにならず程よくパラパラほどける口当たりなのに感心しました。時間が経つにつれて油揚げとチャーハンがしっとりなじむのがまたよかったです。

 きつねチャーハンのままでも十分おいしいですが、こうやって稲荷みたいにして冷まして食べるのも違ったおいしさがあって感動物でした。合間にたくあんをポリポリかじり、烏龍茶をグビグビ飲んで舌を新しくしつつパクパクいっちゃうともう止まらなくなりますが、見た目どおりボリュームがあるので気がつくとお腹が苦しい状態に…となりがち。その為、食べ過ぎに注意です;(実際、父は珍しく「うまい」と普段以上の量を食べてしまった為、しばらく苦しそうにしていました^^;)。

●出典)『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『マリー・アントワネットの料理人』の“バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ”を再現!

 書きやすいからなのか、それとも漫画家の方にとって魅力に感じやすい題材なのか、漫画化されやすいローマの物語はほとんどが帝政時代が題材なのですが(仮にそれより過去だったとしても、クレオパトラ・スパルタクス・ヴェルチンジェトリックスのようなローマに反旗を翻す主人公が軸となりがち)、個人的に一番漫画化されて欲しい時代は紀元前200年頃のスキピオとハンニバルが活躍した時代です。この頃はカエサルのいた時代と同じくらい魅力的な人物が多く登場しており、正直いつ文献を読み返しても胸が高鳴ります。「雷光」を意味する姓を持ち、数々の天才的な戦術を生み出してはローマ軍を十年以上脅かし続けたカルタゴの将軍・ハンニバル=バルカ。そのハンニバルと互角に渡り合い、戦争を終わらせローマを救った英雄と呼ばれたスキピオ=アフリカヌス。一時はわずか数騎の部下と共に国を落ち延びたものの、見事自国を取り戻し領土を拡大していったヌミディア王・マシニッサ。持久戦略と防御を重視した作戦でカルタゴ軍をじわじわ追い詰めた「ローマの盾」・ファビウス。ハンニバルに「勝てば勢いづき、敗れれば恥と思ってさらに追撃してくるあの男」と評される程果敢な戦術で挑み続けた「ローマの剣」・マルケルス。この他にも魅力的な人物は数多くいる為、どなた様か是非漫画化してくれたらな…と前々からよく夢想しています。
 どうも、紀元前ローマへの愛が冒頭でつい炸裂してしまった管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『マリー・アントワネットの料理人』にて主人公・磯部小次郎がマリー・アントワネットと共にナポリで食べた“バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ”です!
バターとチーズのスパゲティ図小次郎流オリーブスパゲティ図
 ナポリ公国のフェルディナンド四世の元へ嫁いだ、マリー・アントワネットのすぐ上の姉であるマリア・カロリーナは、夫であるフェルディナンド四世の悪癖について大分前から悩んでいました。というのも、フェルディナンド四世は何でもかんでも手づかみで食べるというあまりお行儀のよくない習慣があり、その様子を毎日傍で見せつけられていたからです;。実を言いますと、マリー達が生きた1700年代はまだフォークやナイフみたいなちゃんとした道具で食事をする習慣はそこまで発達していなかった時代だった為、フェルディナンド四世が手づかみでスパゲティを食べることはそこまで非常識な事ではなかったのですが(むしろ、日本のように庶民レベルまでお箸文化が行き渡っている国の方がレアケースなのだとか)、真面目で潔癖症なマリアは何としてでも手づかみをやめて欲しいと思い悩んで実家のハプスブルク家にいる母女王に「このままだと夫婦仲の危機で国交が危なくなります(つД`)!」と相談します。そこで、事態を重く見たマリア・テレジア女王はフランスの地にいるマリーと小次郎に、ナポリへ客人として行ってもらうようお願いする手紙を出します。う~ん、悩み自体は現代でもありそうなちょっと微笑ましい些細な内容ですが、そこに国交が絡んでくるあたり政略結婚とはなかなかに厄介な物だと痛感させられます;。それにしても、料理を手づかみで食べる食べないで国が傾きかけていると領民が知ったら、さぞかし脱力した気分になるだろうな~と少々気の毒でした(^^;)。
 けれども敵も然るもので、久々の再会に喜ぶマリーとマリア姉妹(史実だとお互い一番歳が近い上に、まだ国許にいた頃はずっと同室だったとの事なので相当に仲が良かったそうです)を尻目に、フェルディナンド四世は来て早々の小次郎に「そちらがアントワネット殿の料理人か!おおかた、マリアに私の食べ方を直させたいと頼まれたのであろう?」「わが国の名物スパゲティを食べた事もない者に、何が出来るというのだ!」と遠慮なく喧嘩腰で言い放ちます。そして、小次郎が何かを言い返す前にマリー・アントワネットが「コジローはこの国のどの料理人よりも美味しいスパゲティを作ります(゜Д゜)キッパリ!」と一足早く言ってしまった事が原因で、とうとうナポリ公国のスパゲティVS小次郎のスパゲティという料理勝負が行われる事が決定してしまいます(ちなみにこの時、小次郎は「勝手に話を進めないでいただきたい!」とでも言いたげに大きく咳払いをしてました;。ムキになりやすい主君を持つと下の人間は苦労するという好例ですね;)
フェルディナンド4世と、マリーの姉であるマリア・カロリーナ
 その際、勝負の前日にマリー・アントワネットと小次郎がフェルディナンド四世から「最高の組み合わせ」「一番スタンダードなスパゲティ」として紹介されて自信満々に振舞われたのが“バターとチーズのスパゲティ”で、食事後に小次郎が「フェルディナンド四世のスパゲティのように、単純に一度食べてうまい料理ではなく毎日食べたくなるスパゲティ」「日本人にとって飽きない食材は梅干し。イタリア人にとって梅干しに当たる食材は、オリーブであろう」と考えながら試作した“小次郎流オリーブスパゲティ”です。
 “バターとチーズのスパゲティ”はバター・チーズ・塩・こしょうのみで茹で立てのスパゲティに味付するだけ、“小次郎流オリーブスパゲティ”も同じく茹で立てのスパゲティにオリーブ油・グリーンオリーブ・塩などで和えれば出来上がりという相当に手軽なレシピで、たったこれだけの単純極まりない手順のスパゲティなんですが妙にそそられました。実は両方とも詳しいレシピはなかったのですが、ネット上や文献を調べていく内に後者はどうやら小次郎の完全なオリジナルであるものの、前者はイタリアの定番家庭料理である「パスタ・ブォーロ」らしい事が分かってきました。何でも、「パスタ・ブォーロ」はイタリア本国では子どものスパゲティと呼ばれるくらい誰にでも食べられておいしい非常にポピュラーなパスタとして知られているようで、日本で言うならば卵かけご飯的存在との事。ただ、たった一つだけこだわりがあるとするなら「絶対にアルデンテに茹でる」だそうで、この原則さえ守れば大抵美味に仕上がるとどのサイトや本にも載っていました。
当時のイタリアでのスパゲティ事情
 その後、マリー・アントワネットから「おいしい!」と誉められた“小次郎流オリーブスパゲティ”でしたが、結局小次郎の「これは失敗でござる」という一刀両断によって没になります。小次郎が言うには、普段からずっと食べ続けられる料理は「美味すぎる料理は許されぬ」「かと言って、どうしてもこれがいいとならない料理も許されぬ」という相反する要素が並び立たないと駄目だとの事で、改めて定番料理の偉大さを痛感させられました。ある意味、ご馳走を考えろと言われる方がまだ気が楽なのではと思います;。
 そして、困り果てて食材探しへナポリの田舎村を回った小次郎は、あるお店で解決の糸口につながる重要な野菜と出会うのですが…この料理はまた次回再現するので、続きはまた今度にさせていただきます(^^)。
毎日食べられて、「どうしてもこれがいい」となるスパゲティを探すコジロー
 こういうシンプルなスパゲティは大好物なので、初めて読んだ時からずっと気になっていました。詳細なレシピがないので大体は想像になってしまうのですが、パスタ専門料理本に載っているレシピを幾つか組み合わせつつ早速作ってみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、肝心なスパゲティの用意。出来る限り本格的なスパゲティを用意して人数分の量を取り出し、塩入りの大量のお湯をグラグラになるまで沸かせた鍋に投入してアルデンテに茹で上げます。個人的に、スパゲティはディ・チェコがおすすめです(味はもちろん、麺に適度なざらつきがあるのでソースがよく絡みますし、何と言っても相当に簡素なソースなのでスパゲティはなるべくいい物を使うに限ります)。
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ2
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ3
 次は、“バターとチーズのスパゲティ”作り。ボウル良質なバターをやや多めに投入してあらかじめ室温に戻しておき、粉チーズはパルメザンチーズ(又は、パルメザンチーズが大量に配合されている粉チーズ)を準備しておきます。
 ※この時、どうしても「バターとチーズだけじゃ物足りない!」と感じられる方は、お好みでバジルなどを加えてみてもいいと思います。ただ、バターとチーズだけでも結構いい味が出るので、初回は少しだけでも試していただけたらありがたいです;。
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ1
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ4
 このバター入りボウルに、先ほどのゆでたてスパゲティを入れて手早く混ぜ合わせ、バターが麺全体に馴染んだらすかさずパルメザンチーズ、塩、荒挽き黒こしょうを投入してまんべんなく混ぜます。ちなみに、荒挽き黒こしょうがきいている方が味にしまりが出るので、調整しつつ気持ち多めに入れる事を推奨いたします。
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ5
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ6
 これらの作業と平行して、“小次郎流オリーブスパゲティ”作り。
 オリーブ油は良質で緑がかった香りの強いエキストラバージンオリーブ油、オリーブは作中で使われていたらしき緑色のグリーンオリーブを用意し、グリーンオリーブは真っ二つに切ります(再現度にこだわらない場合は、ブラックオリーブで代用して作ってみるのもありだと思います)。
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ7
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ8
 別のボウルにゆでた手のスパゲティを入れ、そこへさっきのオリーブ油、オリーブ、塩、少量のこしょうを加えてざっとかき混ぜます。その際、当管理人のようにはしゃぎすぎてうっかりオリーブ油を入れすぎてしまうとオリーブ臭い出来になってしまいますので、要注意ですorz。
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ9
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ10
 これら双方のスパゲティが冷めてしまわない内に、それぞれ別のパスタ皿へスピーディーに盛りつければ“バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ”の完成です!
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ11
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ12
 “バターとチーズのスパゲティ”はバターの芳醇かつ心とろかすような香り、“小次郎流オリーブスパゲティ”は爽やかで鮮烈極まりない芳香がたまりません。前者の見た目は白っぽいカルボナーラ、後者の見た目はオリーブ入りの冷製パスタに似てなくもないですが、よーく眺めていると全くの別物だとちゃんと分かります。両方とも調理時間約十~十五分で出来たとは思えないほどきちんとした出来栄えで、果たして味の方はどんな感じなのか気になります。
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ13
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ14

 それでは、スパゲティが伸びてしまう前にいざ実食!
 まずは、“バターとチーズのスパゲティ”から。いっただっきまーす!
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ15
 さて、味の感想ですが…単にバターとチーズを混ぜただけとは思えない程、凝った美味さ!これは是非定番にしたいです!
 パルメザンチーズの強烈に濃厚なコクと、発酵バターの豊かな風味が混然一体となり、熱々の内に頬張ると恐ろしいくらいに美味です。シンプルながらも乳製品独特のまろやかかつ存在感のある旨さが効果的に活かされたソースで、ある意味これは「イタリア版卵かけご飯」みたいな料理なのでは…と感じました。チーズクリームのパスタよりもずっとストレートにこってりした味わいなんですが、反対にカルボナーラと比べるとはるかにあっさりした後味なので、不思議と病み付きになります。余分な材料を何一つ使わず最低限の食材のみで仕上げたせいか、チーズとバターの強い塩気が効いているにも関わらずものすごくすっきりした食後感なのが印象的でした。
 黒こしょうのピリリとしたドライな辛さが後から程よく舌を刺激してくるのがいいアクセントになっていて、そのせいか贅沢な味なのに飽きのこないおいしさです。ざっくり例えるなら、「卵とベーコン抜きのさっぱりカルボナーラ」ってイメージでした。チーズがガツンと主張してくるもののくどさはまるでない為、見た目の割に胃もたれしにくい所がよかったです。あと、上質な発酵バターの芳しい香りが全体に抗しがたい艶めかしい味わいをプラスすると同時に、ほんのわずかな酸味が深みを増させるのに成功していました。

 二番目は、“小次郎流オリーブスパゲティ”!いただきま~すっ!
バターとチーズのスパゲティ&小次郎流オリーブスパゲティ16
 さて、味はと言いますと…オリーブの魅力満載な料理でウマーーー!グリーンオリーブもなかなか乙な味です!
 こちらは打って変わって「イタリア版梅干し茶漬け」って感じのかなりすっきりした味わいで、オリーブ特有のフレッシュかつ爽快感溢れる香りがスパゲティへまんべんなく絡み付いているのが特徴的でした。オリーブ油の適度なコクとサラッとした口当たり、そして透明感のある鮮やかな風味がスパゲティをしっかりコーティングしており、スルスル食べる事が出来ます。加熱していない分オリーブの清涼感溢れる爽やかな香りがそっくりそのまま効いていますし、何より茹でたての良質な麺の美味しさをそのまま堪能出来る釜あげ風な醍醐味がナイスでした。グリーンオリーブのしょっぱ酸っぱい後味がシコシコしたスパゲティとばっちりあっており、確かにこれは「西洋版梅干し」だな~としみじみ納得です。
 グリーンオリーブは初めて食べたんですがブラックオリーブよりもやや硬めで塩味や酸味がより強く、よりお酒のつまみになりそうながっつり頂ける味わいが特徴的でした。ただ、グリーンオリーブは完熟していないのでそんなに深みはなく、従ってスパゲティ自体の完成度も高いとは言えないんですが、その分軽くさっぱりしているので小腹がすいた時によさげです。

 これまで一番手軽に作れるスパゲティはぺペロンチーノだと思っていたのですが、今日からは認識が変わりそうです。強いて言うならば、材料の良し悪しが残酷なくらい反映されるという欠点はありますが(安価な材料だと「…うん、それなりにおいしい」という味になります;)、そこそこいい材料を使うと簡単かつ美味なスパゲティが楽しめるのでかなりお勧めです(^^*)。

●出典)『マリー・アントワネットの料理人』 原作:白川晶 作画:里見桂/集英社
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『丼なモンダイ!』の“国崇特製サラダ牛丼”を再現!

 最近、『美味しんぼ』初期に登場したさくらんぼ酒に桜の塩漬けを浮かべた飲み物と、八百屋のスープの試作を空いた時間で繰り返しているのですが、どちらも満足する出来ではない為「うーん…」と悩んでいます。前者は肉桂の粉とさくらんぼ酒の香りがケンカしない割合、後者はどうやって小麦粉だけで野菜をプリン状に固めるかという課題で、肝心な箇所をぼかしたらすぐに記事に出来そうなのですがそれだとつまらないと思い、ここ数週間はそればっかり考えています;。コメント欄にてリクエストされた皆様、ご返信で「します」と言った漫画料理は必ず再現させて頂きますので、恐れ入りますが今しばらくお時間をご頂戴させて頂けますと幸いです。 
 どうも、作りたい料理は山ほどあれど肝心の調理スキルが圧倒的不足している為遅々として進まない管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『丼なモンダイ!』にて主人公の国嵩さんがライバル店のプレミアム牛丼に触発されて売り出した“国崇特製サラダ牛丼”です!
国嵩特製サラダ牛丼図
 国の米食促進の為にオープンされた政府直営の丼屋・<丼ぶり一丁>が、もうすぐ開店一周年を迎えようとしていたある日の事。日本有数の牛丼チェーン店・<吉田亭>の本部幹部達(恐らく吉○家をモチーフにしたと思われます;)は会議の際、<丼ぶり一丁>と同じ地区にある視点の売り上げが軒並み落ちてきている事を指摘し、「役人なんぞに負けおって恥を知れ!吉田亭は全てのエリアでナンバーワンの丼屋でならねばらならん(゜Д゜#)!」と激昂して各店の店長達を怒鳴りつけます。そして、この事態を一刻も早く改善しなければならないと考えた幹部は、最後の切り札として社員・湯浅さんを近隣の支店へ応援として派遣する事にします。一見ごく普通の中年男性に見える湯浅さんですが実はかなり凄腕な助っ人で、何でも売り上げがあまりよくない支店へ行ってテコ入れをしては近所にある同業者の店を容赦なく廃業へ追い込む事から、社内では「潰し屋」というあだ名で呼ばれている程恐ろしい人物なのだとか。そのせいか幹部からは相当に頼りにされており、「お前が指揮をとり、東京第13エリアでの丼戦争を征するのだ!」という指令を直々に下されてからは<丼ぶり一丁>の至近距離にある支店にて独自のマーケット調査で得た情報を参考に開発した三百円の五種類のオリジナル・プレミアム牛丼を売り出し、<吉田亭>を大繁盛させます。それにしてもこの流れ、かの『ミスター味っ子』で一時期黄金パターン化した展開(味将軍グループの刺客登場→挑発的なキャンペーンで近隣の顧客を奪い取る→陽一君が味方したお店大ピンチ!)とそっくりで、思わずノスタルジーに浸ってしまいました;。
 ただ、本作に登場する湯浅さんは『ミスター味っ子』内で登場したヒールたちと違ってお店を潰す事に喜びを感じている様子は一切なく、むしろ料理に対して真摯に取り組む姿勢がある為好感が持てます。よくよく考えれば、客側にとって「安い、早い、旨い!」と三拍子揃ったお店はありがたいと思いこそすれ避ける理由はないので、大手チェーン店のこういう経営努力は一概に責める気にはなれなかったりします…(ただ、個人経営のお店にはチェーン形式のお店にないフリーダムなメニューや、融通の利く細やかなサービスがあるので大手にはない魅力があるのも事実です)。
飲食業界から「潰し屋」として恐れられる料理人・湯浅さん
 ちなみに、五種類のプレミアム牛丼の内容は「鶏そぼろ牛丼」「メンマキムチ牛丼」「目玉焼き乗せタイ風牛丼」「とろけたチーズ牛丼」「もみじおろし牛丼」で、そのクオリティの高さは実際に試食した国嵩さんが「これで三百円か…」と感嘆したほど。けれども、だからと言ってこのまま指をくわえる訳にはいかないと助手・栞さんにはっぱをかけられた国嵩さんは、主な客層である三十代男性向けにある牛丼を発明し、首位自体は<吉田亭>に奪還されるものの集客数は見事にキープします。それが、この“国崇特製サラダ牛丼”です!
 佐賀県のご当地グルメ・シシリアンライスを国嵩さん流に大幅にアレンジして作った一品で、ごく普通の牛丼の上にレタス・きゅうり・トマト・かいわれなどの生野菜、コチュジャンやりんご酢などで調整した醤油味のドレッシング、辛子マヨネーズを彩りよく乗せたら出来上がりです。牛丼とサラダという組み合わせは他の牛丼チェーン店でもよく見かけますが、この牛丼みたいに生野菜と牛丼をバランスよく合体させた丼を出しているお店はあまり見かけないので、なかなかいい着眼点だな~と思いました。強いて言うならす○家の牛丼ライトに似た感じですが、それよりもさらに豪華で食欲をそそられます。
佐賀県の地元グルメ・シシリアンライスがモチーフ
 国嵩さん曰く、「この辺りは三十代前後の男性客がメインです。実は、彼らこそ潜在的には最も野菜を欲している客層だと思うんです」「健康診断の結果が気になり始め、食生活を見直そうとする。それでいて、単品ではサラダを注文するのは気恥ずかしいという方は多いんです。でも、牛丼に入れてしまえばそんな事はない」との事で、初見時は妙に納得させられました。個人的には、体に害があるかもしれないというのに人目を気にしている場合ではないのでは…と思ってしまいましたが、考えてみれば私自身も買い物カゴにカップラーメンとんこつ味・キムチ・缶ビール・プリンという見るからに胸焼けしそうな食品たちを入れてレジへ行く時には結構勇気がいるので、それと似た心理なのかもしれません。
 その後、<丼ぶり一丁>で“国崇特製サラダ牛丼”を食べて久々に初心に立ち返った湯浅さんは初めてライバル店を潰さないまま本部へ戻り、幹部に「あの店を潰す事は出来ません」「むしろ、アイツは丼業界を盛り上げてくれるという意味では我々の救世主なのかもしれません…」という言葉を漏らすのでした…。
健康面に気を使い始める三十代男性をターゲットにした牛丼
 最近、ぶっかけそばや冷やし茶漬けばかり食べてこってりした料理を食べていなかった為、読み返していくうちに無性に食べたくなってきました。サラダと牛丼を組み合わせると本当に美味しいのか、早速作中のレシピ通り再現してみます!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の準備。ベースとなる牛丼の具は、以前ご紹介した連載第一回目に登場する基本の牛丼のレシピを元に作っておきます(一晩寝かせた練れた味でも、出来立てほやほやの味でもOKです)。その間、作中の完成図から推測して用意したレタス、きゅうり、かいわれ、トマトを水洗いし、レタスとカイワレは大まかにザク切り、きゅうりは薄い輪切り、トマトはヘタをとってサイコロ状に切ります。
国嵩特製サラダ牛丼1
国嵩特製サラダ牛丼2
 次は、特製ドレッシング作り。ボウルに醤油、ゴマ油、りんご酢を入れて泡だて器でよく混ぜ、好みの配合になるまでそれぞれの量を調節します。りんご酢は他の酢に比べて酸味がまろやかですので、結構入れちゃっても大丈夫です。
国嵩特製サラダ牛丼3
国嵩特製サラダ牛丼4
 そこへ、味の要となるコチュジャンを適量入れ、さらにガーッと念入りに混ぜ合わせます。最後に味見をして納得したら、特製ドレッシングの出来上がりです。
 ※量は明確には書かれていなかったので各人の好みになりますが、辛いもの好きな方でしたら結構多めに入れたほうがより刺激的で牛丼に合う味わいになります。ただ、辛いものが苦手な方は隠し味程度がベストです。
国嵩特製サラダ牛丼5
国嵩特製サラダ牛丼6
 今度は、肝心の牛丼作り。丼に炊き立てのご飯をよそったらレタスとトマトを乗せ、その上へあらかじめ作って温め直しておいた牛丼の具とつゆを上からかけます(特に、レタスはやや多めに乗っけた方がいいと思います)。
国嵩特製サラダ牛丼8
国嵩特製サラダ牛丼9
 そこへ、さらにきゅうりとかいわれを散らすようにして飾りつけて特製ドレッシングを振りかけ、和辛子とマヨネーズを入れてぐにゃぐにゃ混ぜて作った辛子マヨネーズ入りビニール袋の先端をハサミで小さく切り取り、細い線状にしながら斜めかけにしていきます。
国嵩特製サラダ牛丼10
国嵩特製サラダ牛丼7
 辛子マヨネーズをお好みでかけ終えたら机へ運び、傍らに牛丼屋さん風に冷たいお水を添えれば“国崇特製サラダ牛丼”の完成です!
国嵩特製サラダ牛丼11
 牛丼は茶色一色になってしまいがちなのでどうしても殺風景な外見になりがちですが、この牛丼は色彩鮮やかなサラダを乗せているおかげでパッと見はとても華やかに見えます。トマトの赤・かいわれの緑・辛子マヨネーズの黄色が綺麗で、これなら牛丼チェーン店だけといわず、お皿に乗せてカフェに出されていてもおかしくないような印象を受けました。一体どんな味がするのか、見ているだけでワクワクしてきます。
国嵩特製サラダ牛丼12
 それでは、牛丼・生野菜・辛子マヨネーズを一気にお箸で持ち上げていざ実食!いただきま~す!
国嵩特製サラダ牛丼13

 さて、味の感想ですが…これはかなりおいしいです!牛丼チェーン店にあっても、十分通用しそうな旨さでした!
久々に勉強になる牛丼を食べ、感謝する湯浅さん
 コチュジャンのピリ辛味とゴマ油の香ばしい風味が堪えられない焼き肉のタレ風ドレッシングに、甘辛い牛肉やトロトロにとろけた玉ねぎが美味な牛丼がよく合っていて、生野菜がうまい具合に仲立ちとなって見事に調和しています。新鮮なレタスのザキュザキュした食感、トマトのジューシーな舌触り、きゅうりのサクッとした小気味良い歯触り、カイワレの瑞々しいシャキシャキ感が後口をスカッと爽やかにしている為、そこそこ濃い味わいにも関わらずスルスルッと胃に収められたのが印象的でした。上にかかっている辛子マヨネーズのまろやかに辛い刺激がいいアクセントになっていますので飽きませんし、何より生野菜がちゃんとサラダっぽく味わえるのがよかったです。他の酢に比べると比較的口当たりが優しいのが特徴的なりんご酢を使用したせいか程よい酸味が効いていて、ボリュームがあるのにさっぱりという不思議な味わいの牛丼でした。
 甘いようで辛酸っぱい、こっくりしたコクがあるようでしゃっきりフレッシュという相反した要素が複雑に入り交じっているので、幅広い層に受けそうな丼です。作中で言われていた通り「シシリアンライス」と多少似ていましたが、個人的にこれは「チーズとスパイス抜きのタコライス風牛丼」って感じの味がするな~と感じました(なので、この丼はチーズをトッピングしてもベストマッチします)。サラダが牛肉の旨味を引き上げつつしつこさを中和するという、まさに一石二鳥な料理です。

 牛丼とサラダを一緒くたにするとぐちゃっとしちゃいそうなイメージがありましたが、実際に食べてみるとそこそこヘルシーなのに「牛丼を食べた!」という満足感まで味わえたので、幅広い層に受けそうです。特にドレッシングの出来が素晴らしく、これなら普通のサラダに使ったり冷奴にかけたりしても合いそうだと思いました。

●出典)『丼なモンダイ!』 原作:花形怜 作画:吉開寛二/日本文芸社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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