『今朝の春―みをつくし料理帖』の“里の白雪”を再現!

 昨夜、地元情報誌をめくってみると「お野菜たっぷりのハーフお好み焼き&コーンスープ&シーザーサラダのランチ!食後はコーヒーにケーキもつけちゃいます!可愛い小物を眺めながら女子会はいかがですか?(\880)」という驚きの組み合わせのランチを売りにしているカジュアル系のお店があり、びっくり仰天しました;。
 個人的に、お好み焼きは寂れた駅前にある擦り切れた漫画雑誌が何十冊も置かれているような年季の入ったお店で食べるワンコインの物ばかり食べている為、この発想は全くありませんでした;。
 家で作る時も「今日はオタフクの野菜と果実をつめこんだお好みソースが手に入ったからワンランク上の味が出せるぞー!」(←おいしいのに、置いている店舗が少なく寂しい限りです)とささやかな幸せを噛み締めるタイプなので、当分はご縁がなさそうですorz。
 どうも、外で食べるお好み焼きでお気に入りの具は海老&イカ、もしくはモチ&チーズな管理人・あんこです。
※注意:今回はいつもにも増してネタバレがひどい回です。未読の方は、あらすじ部分を飛ばすことをお勧めいたします。


 今回作ってみる再現料理は、『今朝の春―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんが離れ離れになった無二の友・野江ちゃんを守る為に作った“里の白雪”です!
今朝の春
 澪ちゃんが小松原様への思いを胸に秘めようと決意してしばらく経ったある日(詳しくはこちら)、<つるや>によく通って来てくれている毒舌で皮肉屋だけれども鋭い舌を持つ売れっ子戯作者・清右衛門先生がとんでもない作品を書こうとして、澪ちゃんを大いに慌てさせます。
 その作品とは、幼き日の澪ちゃんと大の仲良しだった幼なじみで、八歳の時に水害で澪ちゃんと離れ離れとなってご家族とも死に別れた後、騙されて吉原の<翁屋>へ売り飛ばされ‘あさひ太夫’として数奇な人生を生きる事になった友達・野江ちゃんを主人公にした女一代記のようなもの。
 実を言いますと、澪ちゃんは野絵ちゃんが水害にあって天涯孤独の身の上になってからの人生はつい最近まで知らなかったのですが、‘あさひ太夫’の取材をしてその実像に迫ろうとする清右衛門先生の口から少しずつ事実を知る事になります。

 廓に売られたとは言っても、有名な易者から≪旭日昇天≫という最大の吉相だと占われた事が功を奏して、最初は禿(かむろ)として一通りの英才教育を受けた事。
 その頃から、この上ない美しさと聡明とで名だたる粋人を虜にして名を上げていった事。
 いよいよ初見店に出る時、≪旭日昇天≫の強運にあやかりたいと思った三人の大商人がそれぞれ身請け銭四千両、合計して一万ニ千両という大金を<翁屋>に預ける代わりに三人だけの相手をする遊女として‘あさひ太夫’を買い上げ、年季があけた時には三人の内どちらの傍がいいのか‘あさひ太夫’に決めてもらうという遊女にしては異例の高待遇を受けているとの事…。

 通常でしたら、吉原一の吉運を持っていると言われてもおかしくない半生に聞こえるかもしれませんが、かつて野絵ちゃんが上方でも有数の商店の末娘で将来は大店の若旦那の御寮さんになっていてもおかしくない身の上である事を知っていた澪ちゃんは、それらの輝かしい経歴を知っても何ともいえない複雑で悲しい心境になります。
 しかし、清右衛門先生が「運命に翻弄される、美貌の太夫」として一本の戯作を書き上げ、世の中に広めようとしているのを知って嘆いている場合ではないと思い、何とかしてその戯作を書くのをやめさせようと考えます。

 その時、少し前に蕪が大好物な清右衛門から「旨い蕪料理を考えたら、一つ褒美をやる」と口約束を交わされていたのを思い出した澪ちゃんが決死の思いで試作に試作を重ね、半ば祈るような気持ちで完成させたのがこの“里の白雪”。
 作り方は古典的料理・“かぶら蒸し”とほぼ同じで、すりおろして卵白などを混ぜ合わせた蕪を鯛(もしくはヒラメ)の上にかけて蒸し、仕上げに出汁と葛で作った熱々のあんをかけてわさびを乗せたら出来上がりです。
 澪ちゃん曰く、蕪料理としての完成度を追求しつつ「おろした蕪の下に、ヒラメが隠れている。里に住む太夫をいたずらに表に出さないで欲しい、との思いをこめた」一品との事で、そのせいか当初は“隠れ里”という名前でした(ただ、少々地味な名前だったのが清右衛門先生の気に触ったらしく、半ば強引に“里の白雪”という洒落た名前へ変更されてます;。なんと言いますか、名づけにはやはり性格が出るんだな~と妙に感心した一幕でした^^;)。

 その後、予想以上に美味で見た目にも風情のある“里の白雪”を心底気に入った清右衛門先生は約束を守ると言ってくれた為、澪ちゃんは「先生の戯作を下さい。いえ、書くのをやめていただくだけでもいいのです」と必死に直談判します。
 さすがにこれには清右衛門先生も迷ったようですが、澪ちゃんと‘あさひ太夫’こと野絵ちゃんが水害で生き別れた友達同士だと知り、最終的にはきっぱり執筆をやめてくれました(正直、かかったお金も労力も並大抵ではない作品を公表しないのは身を切るように辛かったと思いますが;、ちゃんと守ったあたりが律儀な先生らしいとほんわかした気持ちになりました)。
 そしてそれだけではなく、清右衛門先生は今から四年前、死んだ亭主の約束を守ってその女房が遊女の杣川という女性を身請けしたという吉原ではちょっとした事件だったお話を引き合いに出し、澪ちゃんへ次のように言い聞かせます。

―「あさひ太夫を、お前が身請けしてやれ」
―「どのお大尽に身請けされるよりも、お前に身請けされることが、太夫にとっての一番の吉祥」
―「お前が天満一兆庵の再建を果たし、料理で人を呼ぶ事が出来れば、叶わぬ夢ではあるまい」


 この一節を初めて読んだ時、一陣の風が吹いて目の前の暗雲が瞬く間に明るく切り開かれていったような清々しい感動を覚えたのを、当管理人は未だに忘れることが出来ません。
 一見すれば絶望的だった状況が、発想の逆転によって全くの幻ではなくなったこの瞬間は、今思い出しても胸が震えます。
 大げさかもしれませんが、この話を境に今では全く異なる道にいて互いに時が止まったようになっていた澪ちゃんと野江ちゃんの時計の針が、場所こそ遠く離れてこそすれまた再び同じ時を刻むようになったような気がしてなりませんでした。
 そして、さらにこの夢が叶うという事は、すなわちもう一つの最大の夢である「天満一兆庵の復興」を成し遂げる事ともイコールになる為、まさに澪ちゃんにとっては一石二鳥な妙案。
 かつて、不運としかいいようのない不幸の連続で手塩にかけて育ててきた店を失い自身の命を縮め、「無念や、無念でならん」と最期まで天満一兆庵の事を気にかけてこの世を去った親代わりの主・嘉兵衛さんの遺志を引き継ぐ事も、恐ろしい勢いで成長していっている澪ちゃんの腕次第では、もはや荒唐無稽な夢ではなくなっているのです。
 考えれば考えるほど遠い道のりですし、この後も澪ちゃんは様々な苦難を迎えていますが、雪が静かに降り続くこの日、いつもは皮肉屋で意地悪ばかり言う清右衛門先生が不器用ながらも珍しく澪ちゃんやその周囲の人達を思いやって示した未来絵図を、澪ちゃんには是非現実の物としてもらいたいと強く感じたエピソードでした。


 最近、温かくなったかと思えばすぐに雪が降って凍えるほど寒くなる日が続いている為、滋養をつけつつ体を温める為にも早速再現してみようと思います。


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下準備。鯛(又はヒラメ)はサクのサイズに合わせてやや大ぶりな三~四等分に切り分け、塩を全体に薄く振って少し放置してます。態の表面にうっすら水分が滲み出してきたら熱湯でさっと湯引きし、余計な水気をしっかり拭き取っておきます。
 ※作中で使用されているのはヒラメでしたが、清右衛門先生が「何故、鯛にしない」と起こったり、澪ちゃん自身その非を認めていた為、鯛を使うことにしました。
里の白雪1
里の白雪2
 一方、カブは皮をむいて目の細かい卸し金ですりおろし、ザルにあけて水分をきります(なお、カブの皮は刻み昆布・輪切りの赤唐辛子・塩を合わせて揉んでしばらく放置しておくと、美味しい浅漬けに変身します)。その後、カブは優しく軽く水気を絞っておき、そこへ清潔な布巾で漉しておいた卵白と塩を加えてよ~くかき混ぜておきます。
里の白雪3
里の白雪4
里の白雪5
 次は、蒸し作業。底が深めの器に鯛を数切れ置き、その上から先程のすりおろしたカブを小さい山を作るかの如くこんもりと盛り付け、強火にかけて湯気がシューシュー出ている蒸し器で約十五分前後蒸します(ただ、蒸し器によって時間が変わってきますし、蒸しすぎてしまうとガビガビに固まった卵白が浮いて興ざめな出来になってしまいますので、十分経つか経たないかの頃に何度か覗いて見た方がいいかもしれません)。
里の白雪6
里の白雪7
里の白雪8
 その間、カツオ節と昆布でやや濃い目にひいておいた出汁を入れた小鍋を火にかけ、酒、みりん、塩、醤油を入れて味付けします。やがて煮立ってきたら火を止め、水で溶いておいた葛粉を円を描くように士ながら投入して混ぜ、滑らかなとろみがついたのを確認したら再度火にかけて沸騰させます。これで、上にかける特製あんの出来上がりです。
里の白雪9
里の白雪10
 カブと鯛がいい頃合に蒸しあがったら取り出し、その上から熱々のあんをたっぷりかけて最期におろしわさびをちょんと飾れば“里の白雪”の完成です!
里の白雪11
 器を手に取ると驚くほど熱く、冷えた手がどんどん温まっていくのが分かります。作中に書かれていた通り、あんによって湯気が封じ込められている為見た目はそこまで厚そうに見えないのですが、顔を寄せると蒸した物特有の暑さ空気越しに伝わり、寒い時期には何よりのご馳走だと感じました。実はかぶら蒸しを食べるのは生まれて初めてなので、一体どんな味がするのか楽しみです。
里の白雪12
里の白雪13
 それでは、冷めないうちにお匙ですくっていざ実食!いただきます!
里の白雪14

 さて、味の感想ですが…どこまでも優しく儚げな旨さが強く印象に残る一品。あっという間に舌に溶けていく様は、まるで本当の淡雪のようです。
 食べた途端、雪の如くふわりはらりとほどけて口の中でホロホロと溶け去っていく極上の舌触りを持つカブに、火傷しそうな程熱々でとろりとしたあんが絡んで混然一体となっていくのが恍惚物で、思わずとろみの強いカブの和風ポタージュを飲んでいるような不思議な感覚に陥りました。カブをおろした物は大根おろしと同じくらいフワフワ感があるのに、大根おろしよりもずっと身に旨みと存在感が残っているので立派なメインの具になりえる食材だと思います。何より、他の野菜にはないカブならではの上品かつ透明感のある深い甘さが最大限に引き出されているのが魅力的で(野菜には珍しいくっきりした甘味です)、寒い季節にはたまらないカブ料理でした。また、卵白が入っているせいかより柔らかくふっくらと蒸し上がっているのがよかったです。
 中に埋もれているタイも、カブの身と水分とで半ば蒸し煮になったような味わいになっており、しっとりジューシーな口当たりが美味でした。白身らしい品のいい旨味と、さすがタイともいうべき貫禄ある脂分がカブの淡い味と相性ぴったりな上にコクを付け足しており、それによってボリューム感を持たせているのに感心です。途中、カブの甘みがやや効きすぎてきた時にはわさびを溶き崩してから口に運ぶと、ツンと舌を刺す辛みと鮮やかな香りが味をちょうどよく引き締めてくれる為、非常にバランスがいい蒸し物だと感じました。

 見た目の美しさもさることながら、味わいの方も寒い日にもってこいな非常に温かな美味しさですので、ちょっと贅沢な晩酌用の肴として作るのは勿論、来客時におもてなし用としてお出ししてもよさそうです。何気にわさびがいい仕事をするので、気持ち多めに乗せることをお勧めいたします。

○追記:tomy様、わざわざ事後報告をして頂き誠にありがとうございます。お申し出の件ですが、このような駄ブログでよろしければ是非お役立てください。今後も何卒宜しくお願いいたします。

●出典)『今朝の春―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『デザートはあなた』の“オイルサーディン丼”を再現!

 最近本棚に本がおさまらなくなってきた為、仕方なくあまり読まなくなった本を段ボールに詰めては自室の隅に置くようにしているのですが、はっと気がつくとまるで引越し寸前の住人の部屋みたいになっていて少し焦りました;。内心、床が抜けてしまわないかとひやひやしています…。
 どうも、掃除のたびに重い段ボールを移動させなければいけない為慢性的な筋肉痛になりつつある管理人・あんこです。

 本日作る再現料理は、『デザートはあなた』にて主人公・大西俊介さんが意中の女性・乃里子さんの家にあるあり合わせの材料でちゃちゃっと作った“オイルサーディン丼”です!
デザートはあなた 森 瑶子
 小説『デザートはあなた』とは、大手広告代理店のTV企画制作部に勤めている一見プレイボーイ風(けれども毎回口説きは不発に終わり、結果すごすごと一人寝ばかりの毎日を過ごす三枚目な役回りです;)な三十九歳の主人公・大西俊介さんが様々な才色兼備の女性達といい仲になろうとして悪戦苦闘しつつ、趣味である料理作りに励む日常を描いた短編集。一見ただのコメディ風味な恋愛小説に見えますが、作品の根幹には大西さんが若い頃に見て以来すっかり虜となっているバルセロナのサクラダ・ファミリア協会への情熱と、あと数十年は続くその建築事業に尽力している日本人の彫刻家・今井田勲氏のパトロン探しという壮大なテーマとして存在している為、物語に厚みがあります。また、作中の至る所で「石は生きているんですよ。不用意にノミを深く入れすぎると、石が‘痛い’と叫ぶのが聞こえるんだ」「口説いたりすかしたり、なだめたり、時にはじれて罵ったり、怒鳴ったり、また口説いたりと、釣りは女性を扱うのに酷似している」など、なかなか味のあるシリアスな名言が時折ぽっと出てきて感心したかと思えば、美食家で己の料理にプライドを持つ大西さんが高級食材を何時間もかけて煮込んで作成した力作・“牛の胃袋のポモドーロ風煮込み”を「オイ俊介よ、白い飯ねえのか?この煮込み、白い飯にかけて食べたら旨いに決まってる(゜∀゜*)」「次からは、トンカツソースとケチャップ持参で来る」と極めて庶民的な評価して絶句させる二十年来の仲の友達・宮脇三四郎さんとのギャクテイストなシーンもあったりする為、どちらに重点をおいても楽しめる良作です。ちなみに、当管理人的にはキャビアのパスタにフランスの白ワインを合わせるというゴージャスな食生活を送る大西さんより、駅前スーパーで買えるキャベツのおまけがたっぷりついてくる肉コロッケで白ご飯をもしゃもしゃ食べる三四郎さんの食生活の方が、正直共感&興味を持ちました;(ただ、肉コロッケの方がいいと言い放つ三四郎さんに対して「お前、帆立貝だぞ。隠し味にウオッカを使ったレモン風味のスパゲティだぞ。それに、牛の胃袋をとろけるまで煮込んだヤツだぞ、ホッペタがおちるぞ!」と必死に食いつかせようとする大西さんの姿はちょっと微笑ましかったです^^)。
 今回ご紹介するエピソードは、そんな大西さんがベテランの壁画家・安達乃里子さんの為にお昼ごはんを作るというお話。前々から乃里子さんに目をつけて狙っていたものの、半年くらい連絡が途絶えていてすっかり疎遠になっていた大西さんはある日、唐突に「何か美味しい物が食べたい」と乃里子さんから電話がかかってきたのをチャンスだと考え週末に遊びに行く事になります(なお、電話を受けたのは会社で近くでは部長がジロリと睨みを効かせたようでしたが、大西さんはびくともしていませんでした;。ここまでプレイボーイぶりを徹底されると、もはや天晴れです)。
 そして休日、大西さんはいそいそと乃里子さんの部屋へ遊びに行くのですが、そこで乃里子さんの気を引こうとして「家にあるあり合わせの材料だけで昼食を作る」と豪語してしまいます。が、実を言いますと乃里子さんはかなりの料理嫌いで、家にあるのはオイルサーディン缶・干からびかけたネギ・七味唐辛子・醤油・お米くらいという散々なもので、大西さんは自業自得とはいえ頭を抱えます;(それにしても、スパゲティみたいな乾麺すらないのが普段料理をしない女性のリアルさを巧みに表現していて何とも言えません^^;)。
 けれども、それまで食べてきた色んな料理を思い出していくうちにピンと閃いた大西さんが即興で手早く作り上げたのが、この“オイルサーディン丼”!作り方は本当に簡単で、オイルサーディンを七味唐辛子と醤油で味付けして炒めた物をご飯の上にかけ、仕上げに刻みネギ、柑橘類の果汁(カボス、柚子、レモンのどれでもOK)をかけたらもう出来上がりです。大西さんが言うには、出来立てを三~四度かき混ぜて一気にかっ込むのが理想との事で、熱いうちに食べきるのが美味しさの秘訣だそうでした。ちなみにお味のほうは、最初はからかい半分で意地悪く「男の想像力とチャレンジ精神で、どうぞ何かおいしい物を作ってちょーだい」と言っていた乃里子さんに「あんたって、もしかしたら天才かも」と感心させてしまうくらいおいしいのだとか。ここまで好感触に終わったのなら、大西さんの狙いはうまくいきそうなものなのですが…大西さんのある趣味が災いして、とんだトホホな結果に終ってしまいますorz。なので、結末は是非本作にてご確認してみて下さい(^^;)。
 オイルサーディン缶はいまや相当に高騰した値段になっているので再現を躊躇していたのですが、近所で破格の見切り品(賞味期限が近いという事で、何と298円!)を見つけたので、早速ホクホク顔で再現してみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、各食材の準備。オイルサーディンは缶を開けて中から月桂樹の葉を取り出しておき(意外とカットしたのが入っている缶詰が多いです。ただ、ない場合は開けとくのみで大丈夫です)、レモンは表面を水洗いした後真っ二つに切り、小ネギは細かく刻んでおきます。その間、ご飯を炊いておきます。
 ※厳密に言うと、作中で実際に作られたレシピはレモンは使われていなかったり、ネギは太い長ネギの方だったりするのですが、作中で大西さんは「これをこう出来たら自分好みでもっと美味しいのに…」と何度も呟いていたので、そちらのレシピの方で再現してみました;。
オイルサーディン丼1
 次は、炒め作業。ご飯が炊き上がる寸前になったらフライパンに先程のオイルサーディンを中のオイルごと全て加え、中火にかけます。オイルが煮立ってサーディンの方もこんがり香ばしく焼けてきたら醤油を回しかけ、フライパンをゆすってオイルと醤油をよく混ぜ合わせながらサーディンに味をしみこませます。
オイルサーディン丼2
オイルサーディン丼3
 弱火にしてオイルと醤油を少し煮詰めさせたら、七味唐辛子を自分好みの分量だけ投入してさらに混ぜ(ただ、辛いもの好きな方でしたら「やりすぎかな?」というくらいかけた方がもっと美味しくなります^^)、サーディンに絡ませます。これで、ご飯の上にかける具は出来上がりです。
オイルサーディン丼4
オイルサーディン丼5
 丼に炊き立てのご飯をよそい、その上にさっきのオイルサーディンをお箸で一つ一つ丁寧に飾ってフライパンに残っているオイルをドバッとかけ、刻みネギを惜しげもなくたっぷり小山状になるまで盛り、最後にレモン汁(是非とも、絞りたての物を推奨します!)をやや多めにかけます。
 ※レモンではなく、カボス、柚子、すだち、シークワサーを使ってもOKです。
オイルサーディン丼6
オイルサーディン丼7
 具を全て乗せたら冷めない内に急いで机へ運び、傍らへお箸を添えたら“オイルサーディン丼”の完成です!
オイルサーディン丼8
 こんもり乗っかかっているネギといい、香ばしく焼けたオイルサーディンやレモンの爽やかな匂いといい、七味唐辛子と醤油の色が溶け込んだオイルが染みたご飯といい、見ているだけで食欲が沸いてくるのが分かります。缶のオイルを全部使うと知った時は油っこそうだと心配していましたが、そこまでテカテカした感じではなかったので安心しました。確かにこれは、熱々の内が一番美味しそうです。
オイルサーディン丼9
 それでは、何度かお箸で全体をざっと混ぜていざ実食!いただきまーす!
オイルサーディン丼10

 さて、味の感想はと言いますと…ありあわせで作ったにしては上出来な美味しさ!熱々の所を一気にハッホッとかっこむとたまらないです!
 イワシの旨味エキスがたっぷり溶け込んだオイルと焦がし醤油の奥深い塩気、そして七味唐辛子のピリ辛な刺激が混然一体となって炊きたての白いご飯にねっとり絡み、和風なのにどことなく洋風を思わせる洒落た味わいに変身しています。例えるとするなら「にんにく抜きの和風ペペロンチーノご飯」という感じで、このこってり濃いめなご飯の後口を絞りたてでこの上なくフレッシュなレモンの酸味と爽快な香気がスカッと引き締め、キレのよい物にさせているのが食べやすくてナイスでした。どっさり入っている青ねぎが絶えず口の中でシャキシャキザキュッと鮮やかな食感を主張してくるのも爽やかさをさらに増幅させていて、単調さを防ぐ程よいアクセントになっています。
 オイルサーディンはサイズこそ小さいのですが、食べてみるとちゃんといわし特有の濃厚な脂分、青魚らしい一癖ある旨さがギュッと濃縮されており、立派なメインとしての力を持っていました。噛み締めるとこんがり焼けて少し硬いようで不思議に柔らかい口当たりな上、サバよりも癖がなくアジよりガツンとくるコクがご飯にぴったり合っています。また、七味唐辛子に含まれるチンピの清々しさ、山椒のスパイシーさ、黒ゴマの香ばしさなどが複雑に入り組んだ様々な香りの合唱がオイルサーディンやご飯の味へさらなる奥行きを与えており、内心舌を巻きました。

 とにかく、ネギを大量に準備する事をお勧めしたいです。夜中に小腹がすいた時の夜食や、休日にサッとお昼を済ませたい時などに向いている丼でした。オイルサーディンの値段が高騰している時はかえって高くつくご飯ですが、缶詰が安く買える時には間違いなくお得な料理なので、色んな方にお勧めしたいです(^^*)。

●出典) 『デザートはあなた』 森瑶子/角川書店
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『丼なモンダイ!』の“米粉のビーフドリア丼”を再現!

 最近、うちの近所では鶯が鳴いたかと思えば吹雪が吹き荒れるというような極めて激しい気候の変化が襲ってきているのですが;、近頃ようやくピークの寒さが過ぎ去ったせいか雪を楽しむ余裕が出てきました(九州はそこまで豪雪に襲われる事はないという事情も関係しています)。空が暗い時に雪が降ると「水墨画みたいな風景になるな~」、空が明るい内に雪が降ると「キツネの嫁入りならぬ、タヌキの嫁入りとでも呼ぼうかな?」という感じで紛らわせていると、その内本当に気分が和らいでくるので不思議な物です。
 どうも、駅前に小さな手乗りサイズの雪だるまがちょこんと佇んでいたのを見て思わず頬が緩んだお気楽人間な管理人・あんこです。

 本日再現する漫画料理は、『丼なモンダイ!』にて主人公・米野国嵩さんの良きライバルである湯浅さんが米粉料理コンテストで出品した“米粉のビーフドリア丼”です!
米粉のビーフドリア図
 『丼なモンダイ!』とは、現役公務員であるものの農林水産省初の試みとして米余り問題を解決する為に開店させた国営の丼専門店・<丼ぶり一丁>に配置され、料理人として腕を振るうようになった米野国嵩さんと及川栞さんがW主人公として活躍するお役人系丼料理漫画。当初、<丼ぶり一丁>は職員達の中でも実質上の左遷用として作られた部署だとすっかり信じ込まれており、同様に閑職だと思い込んでいた上司によって半ば厄介払いであるかのように飛ばされた米野さんと及川さんでしたが、元々料理人を夢見ていた経緯があった米野さんの手によって<丼ぶり一丁>がどんどん評価され、最終的に一年で閉店予定だったのが無期限で存続される事が決定するまでの過程がなかなか小気味よいです。丼漫画と言えば、ユニークな丼が次から次へと紹介される『旬~味彩の匠~』の存在も忘れられないところですが、『丼なモンダイ!』は各お客様のニーズに合わせた戦略的な丼を多々生み出している所が特徴ですので、違った視点から楽しめるのが面白いです(´∀`)。
 今回ご紹介するのは、そんな凄腕の料理人である米野さんとよきライバルである大手牛丼チェーン店<吉田亭>の料理人・湯浅さんが考え出した、何と米粉を有効活用した創作丼(湯浅さん初登場のお話はこちら)。ある日、米野さんと及川さんは農林水産省が米粉利用拡大の為に大手外食産業をターゲットにして開く事にした米粉料理コンテスト・「Komeko-1グランプリ」(国家開催企画にしては随分可愛らしい大会名だな~と少し微笑ましかったです^^;)のお手伝いとして細々とした雑用に参加する事となったのですが、参加申し込み手続きの場で偶然湯浅さんと再会し、湯浅さんがグランプリに参加する意思のある事を確認して大いに盛り上がります。
 実を言いますとこの時、湯浅さんは米粉を片栗粉代わりに使ってとろみをつける中華丼のアイディアを既に頭の中で練っていて構想がやや固まりかけていたものの、それを聞いた米野さんから「もっと味わいを強調し、米粉ならではの強みを引き出せればいいのですがね…」というアドバイスをもらって逆に焦りを深める結果となっていたのですが、逆にそれがヒントとなって「米粉ならではの強みを一番活かすことが出来れば、この大会は勝てる!」という事実に気付く事ができます。ちなみにその際、湯浅さんは一方的に逆恨みをしてきていたイタリアンチェーン店<サングリア>の代表シェフ・町田さんから「米飯の上に米粉を振りかけたところで、米の味しかしませんよ」という痛烈な皮肉を言われて言葉に詰まっているのですが、正直当管理人も初見時「確かに…」と町田さんの意見よりでした;。炭水化物に炭水化物を組み合わせるというのは最近ようやく世間で認知されてきた観がありますが(例:焼きそばパン、ポテサラサンド、ソバ飯、ラーメン&チャーハン定食など)、それでも未だに抵抗感を抱く方は少なくないですし、実際にその組み合わせを食べてみると結構おなかにずっしりきたり、体調によってはまるで重いボディーブローを叩き込まれたようなダメージを食らった感覚に陥る為、全面的に肯定しづらいというのが本音ですorz。
komekoグランプリは、当初から波乱の予感がぷんぷんしていました;
 けれども、湯浅さんはそんな固定観念を打ち砕くような素晴らしい丼を出して一大センセーションを巻き起こします。それが、この“米粉のビーフドリア丼”!作り方はそこそこお手軽で、バターを溶かした鍋に米粉入りの牛乳を注いで煮詰めて作ったホワイトソースをグラタン皿にひいたガーリック風味の牛肉やご飯の上にかけ、その上からさらにチーズを乗せてオーブンで焼き上げるだけでもう出来上がりです。作中での米野さんの説明によると、米粉は粒子が小さいのでホワイトソースに使ったり何かに混ぜ込んだりしても非常にダマになりにくいのだそうで、おまけに火にかけると独特のとろみがつくので料理をする側にとってはとても助かる便利な食材との事でした。その上、牛乳の量に対して使う米粉の量はほんのわずかで済むので炭水化物の組み合わせにありがちなしつこさも感じにくいそうですし、最初にこの米粉ホワイトソースを考え付いた方は金一封を贈られてもいいんじゃないかと初めて読んだときは感動したのを覚えています。
何と、米粉でものすごく簡単なホワイトソースが作れちゃいます!
 実は、こんなにも簡単な米粉ホワイトソースを各有名外食産業が集う「Komeko-1グランプリ」で湯浅さんが出したのには、ちゃんとした理由があります。それは、家庭でも是非この米粉ホワイトソースを気軽に作っていただき、米粉のよさを一般家庭の間に広めて着実に根付かせたいという狙いがあったから。確かにプロが腕によりをかけて作った米粉料理はおいしいでしょうし、家では味わえない味を求めてお店に来るお客様の間で米粉の価値を高めるのも米粉普及の為には効果的な一手段ではありますが、湯浅さんは「米粉のよさを広めるには単に店舗で美味しいメニューを出すだけでは不十分だと考えたのです」という逆転の発想で米粉を普及させようと思い、あえて不利になりかねない“米粉のビーフドリア丼”を出したようでした。結果、審査員達や一般審査員の間で湯浅さんの開放的な考え方に賛同する声が相次ぎ、見事に湯浅さんは第一回「Komeko-1グランプリ」のチャンピオンの座に輝くのでした(尚、イタリアンの町田さんはモチモチ美味そうな米粉のピザを出してましたが、今ひとつ目立てず敗退していました;。気の毒です)。
わざと簡単に家で作れる物を紹介し、米粉の普及を目指します
 米粉のパンやお菓子は数年前から好んで食べている為、最初に読んだときから絶対再現しようと考えていました。近所のスーパーでも米粉はいろんな種類の物が取り扱われるようになって入手しやすくなったので、早速作中の描写を元に再現してみようと思います(詳しいレシピがない為、多分に想像が入ります;)!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、ドリアの具作り。にんにくと油を入れて香りが出るまで熱したフライパンに牛薄切り肉を投入し、表面に焦げ目がつくまで炒めます。牛肉全体の色が変わったら、炒め過ぎない内にデミグラスソース、ケチャップ、醤油、塩、こしょうをお好みで加えて味付けします。ソースが煮詰まってきたら、ガーリック風味の牛肉は出来上がりです。その間、別のフライパンではエリンギを軽く焼いて冷ましておきます(作中では言及されていませんでしたが、完成図を見るとそれっぽい具が入っていたので用意してみました;)。なお、エリンギから出た汁気はガーリック風味の牛肉にあわせておくと旨味がさらに倍増します。
米粉のビーフドリア1
米粉のビーフドリア2
米粉のビーフドリア3
 次は、米粉のホワイトソース作り。ボウルに牛乳と米粉を入れて泡だて器でよ~く混ぜ合わせておき(米粉は小麦粉よりもずっと粒子が細かいので、特にふるいにかけなくても大丈夫です)、混ざってきたら中火にかけてバターを溶かしておいた小鍋へ一気に注ぎ、気ベラか泡だて器で丹念に混ぜながら熱を通します。時間がたつにつれ、火が通ってきた米粉にとろみがついてくるので塩、こしょうで調味し、絶えずかき混ぜてソース状になるまで火にかけたら米粉のホワイトソースは準備OKです。
 ※米粉の量が多すぎてしまったらごく稀にダマっぽくなることもありますが、ザルで一回漉したら信じられないほどあっけなく滑らかなソースに変身するので大丈夫です。粒子が細かいせいか、やり直しがききやすいのがこのホワイトソースのメリットです(^^)。
米粉のビーフドリア4
米粉のビーフドリア5
米粉のビーフドリア6
 ここまできたら、いよいよ焼き作業。耐熱皿(又はグラタン皿)にバターをぬり、そこへ白いご飯→ガーリック風味の牛肉→焼きエリンギ→米粉のホワイトソース→ピザ用チーズの順に具を重ねていき、そのまま二百度くらいに熱したオーブンで十分~二十分前後焼きます。
米粉のビーフドリア7
米粉のビーフドリア8
米粉のビーフドリア9
 チーズの表面がこんがり焼きあがってきたらオーブンからだし、上からみじん切りにしたパセリをバラリと散らせば“米粉のビーフドリア丼”の完成です!
米粉のビーフドリア10
 個人的に「ドリアはこってりした茶色」というイメージがあったんですが、このドリアはチーズとホワイトソースが主体な為グラタンを連想させるような白っぽい色が特徴的です(^^*)。こんもり盛り上がった見た目やコンガリした焼き目が食欲をそそる感じで、早くスプーンを突き立てたい衝動に駆られました。香り自体はごく普通のホワイトソースとほぼ同じなので、どういう違いがあるのかとても楽しみです。
米粉のビーフドリア11
 それでは、焼き立て熱々の内にいざ実食!いっただっきま~す!
米粉のビーフドリア12

 さて、味の感想ですが…ほっと安らぐ、どことなく和を感じる旨さ!ボリュームがあるのに重くない為、スイスイスプーンが進んでしまいます!
 普通のホワイトソースが「トロトロ」とするならこの米粉ホワイトソースは「モチトロ」って感じのまったりマイルドな舌触りで、尚且つ粉っぽさが皆無でよりサラッと滑らかな口溶けなのが特徴的です。同じお米同士なせいか白ご飯とのなじみがよく、そのせいかバターのコクが程よく効いているにも関わらずあっさりと頂く事が出来ました。口に含んだばかりの時はぽってりもっちりした口当たりですが、徐々に淡く優しいお米の滋味がすっと溶けていき、安らかな気持ちになります。また、ドリアというと大抵はバターライスなどの味付きご飯が使われるのでこってりした料理だと思われがちですが、このレシピだと白ご飯&淡泊な味わいの米粉ホワイトソースを使用しているので、胃への負担が軽めなのに感心しました。
 にんにくがガツンと効いたこっくりと奥深いデミグラスソース味をまとった牛肉(甘さをぐっと抑えた大人向きのハヤシライスに入っていそうなイメージ)、旨味たっぷりのおつゆとシコシココリコリした小気味良い歯応えが堪えられないエリンギ、表面が香ばしく焼けてとろ~り糸を引く濃厚なコクを持ったチーズがこの米粉ホワイトソースと相性抜群です。牛肉は重厚な味わいで結構濃いめなのですが、米粉ホワイトソースが後からまったりと包み込んで味を緩和させていく為、見た目よりも後口がすっきりしていました。

 正直、当初は「米粉でホワイトソースを作ったら、しつこくなりそう」「米と米の組み合わせは、反発しあわないだろうか…」と不安だったんですが、実際に食べてみると拍子抜けするくらい軽い仕上がりで尚且つ本物のホワイトソースに似た旨さだった為、ちょっとした感動を味わいました。濃いのに素材の味わいを引き立てるソースですので、鶏肉や白身魚、野菜のグラタンなどに使っても相性がよさそうです(^^)。

●出典)『丼なモンダイ!』 原作:花形怜 作画:吉開寛二/日本文芸社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『キングスウヰーツ』の“想い出のミルフィーユ”を再現!

 先日、『マコちゃん絵日記』4巻はぬいぐるみ付きの限定版があった事を初めて知り、よく調べずもせずに通常版を買った事をものすごく後悔しました…orz(百体限定で、もう完売との事)。作中のあるキャラ同様、思わず衝動的に切腹したくなってしまいます(´・ω・`)。こうなったら、もう自分で自作するしかないか…と考えている今日この頃です。
 どうも、不器用で面倒くさがり屋な性質が災いとなって過去に自分用のマフラーを完成させるのに約二年の歳月を費やした事がある管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『キングスウヰーツ』にて主人公・赤川アラタ君があるおばあちゃんの為に見事再現してみせた“想い出のミルフィーユ”です!
想い出のミルフィーユ図
 漫画『キングスウヰーツ』とは、幼い頃に自分のせいで交通事故にあって記憶喪失した上に行方不明になってしまった天才お菓子職人の父・赤川次郎と、その記憶を取り戻させる為に必要な「お菓子の王様」を探して日本中を放浪するパティシエ・赤川アラタ君が様々なケーキを通して成長していく情熱系料理漫画。アラタ君は若干二十二歳とは思えないほど熟練された腕と知識、そしてプロのパティシエが認めるほどの独自の感性を持っており、今までに食べて記憶したケーキの数は何と千個以上(!?)だと自称していました;。
 パティシエが主人公として登場するお話は少女漫画が圧倒的に多く、可愛らしい女の子達が繊細なケーキや恋愛などの人間関係の火種に囲まれつつ切磋琢磨していくというストーリーがほとんどなんですが、『キングスウヰーツ』は青年誌(今は休刊となっているヤングサンデー)で連載されていたせいか少々毛色が違っています。温かなタッチで描かれているキャラクター達が恋愛要素一切抜きで、華やかなだけではない一種の力強さを感じさせるケーキを軸に繰り広げる己のアイデンティティーを賭けた戦いが見所で、「各々が持つ理想のケーキ像」を形にしようとあがく青春群像劇がとても魅力的でした。ケーキの描写が他のパティシエ漫画と一、ニを争う程とにかく秀逸なので、ケーキ好きな方には是非おすすめしたい漫画です。
 さて、実を言いますとアラタ君が放浪していた時期は三年とごく短く、一巻の第五話では早くも父の次郎氏が働いていたパティスリー・<ETOILE du SEPT>を見つけ出してパティシエとして働く事になり、「お菓子の王様」のヒントを探そうと躍起になるのですが、そこでアラタ君は早くもパティシエとしての技量を問われる難しいお願いを聞いてあげる事になります。
 そのお願いは北海道からはるばるやってきたおばあちゃんからの物で、内容は二十年以上前に<ETOILE du SEPT>で食べた当時の味そのままのミルフィーユを食べたい、そしてそれを孫の結婚式に持っていってあげたいという切実なもの。何でも、今から二十年前に町内会の旅行で<ETOILE du SEPT>に立ち寄ったおばあちゃんは、そこで「ケーキ店のよさは、パイ生地とクレーム・パティシエールの出来で分かるといいます。もし、差支えがなければ…」とシェフからお勧めされて食べたミルフィーユの味にすっかり虜になった上、お土産として持ち帰った折に結婚前の娘さんと未来のご主人との三人で一緒に食べてとても幸せな気持ちになった記憶が忘れられない為、今度は娘の娘であるお孫さんご夫婦にも結婚式に食べてもらいたいと思ってまたはるばるやって来たのだとの事でした。それにしても、親子三代の想い出を彩るミルフィーユだなんてロマンティックな響きですね(´Д`*)。
 しかし、おばあちゃんはミルフィーユを一口食べるなり「当時の味と違っているような…」と戸惑い、当時のレシピを知るシェフ(実は、このお店を創設したオーナー本人でした;)が明後日まで慰安旅行に出かけて帰ってこないと知ってからはがっかりして他を当たってみようと帰ろうとしてしまいます。が、アラタ君は寂しそうにしているおばあちゃんを見過ごす事が出来ずに「俺が作ります!」と約束し、おばあちゃんがお孫さんの結婚式へ出席する為に北海道へ帰ってしまう二十四時間以内に何とか昔のミルフィーユを再現しようと奔走する事になります。
想い出の味を求め、かつて立ち寄ったケーキ屋に立ち寄ったおばあちゃん
 おばあちゃんの証言と、現在のミルフィーユを試食した感想とを慎重にすり合わせた結果、アラタ君は昔おばあちゃんが印象に残った「ほのかに香る、親しみのある優しい甘さ」「すぐにもう一つ食べたくなるような上品な味のクレーム・パティシエール」という感想こそが現在のレシピとの唯一の違いだと何とか気付きます(現在の<ETOILE du SEPT>の味は、上品というよりはクリームの甘さがしっかり口に残る感じの強い余韻が特徴的だとの事)。クレーム・パティシエールとは、いわゆるカスタードクリームをフランス語読みにした単語で、別名「お菓子屋さんのクリーム」菓子職人にとっての名詞代わりにもなる程重要なクリームな上、今でもフランス菓子業界では基本にして究極のクリームだと言われているくらい特別なのだと作中で説明されていました。正直、この作品を読むまではカスタードクリームはどんな作り方をしてもそこまで味に大差がないのでは…と考えていたのですが、材料や配合一つとっても作られた数だけ個性があるみたいですので、初見時は断然興味を抱いたのを覚えています。
カスタードクリームを上品にさせた謎の食材とは、一体…?!
 その後、卵・牛乳・小麦粉など色々な材料から何が変わったのかを推測して夜遅くまで試作をしたもののイマイチ成果が上がらないアラタ君でしたが、職場で偶然「あのドラマの主役は大根だ!」「ちがうもん、大根役者じゃないもん!」「いーや大根野郎だね!」という他愛ない言い争いから大根→砂糖大根=ビート→甜菜糖という連想が頭の中で閃き、ようやく「上品な味」の秘密が甜菜糖である事に行き当たって何とか昔の味を再現する事に大成功します(くだらない理由かもしれませんが、案外こういうひょんな事で意外な事実が分かったりするので、世の中はえてしてこういうものなのかも知れません^^;)。
 こうして、アラタ君が若さゆえの情熱と執念と根性で一晩中かけて完成させたのが、この“想い出のミルフィーユ”です!作り方は通常のミルフィーユとほぼ同じですが、クリームに甜菜糖をふんだんに使うのが唯一にして最大の特徴で、こうする事によって上品な甘さのミルフィーユに仕上がるとの事でした。ちなみに、おばあちゃんはこのミルフィーユを二十四時間以内に再現する為にアラタ君を始めとする<ETOILE du SEPT>のスタッフ一同が協力してくれた事に心底感極まり、「あの想い出の味に、皆さんの優しさと想いが加わってきて、もっともっと…おいしくなっているのですよ」と涙しています。正直、“想い出のミルフィーユ”自体も確かにいい贈り物になると思いますが、自分達や自分の大事な人に対してこれだけ親身に接してくれる人たちがいたのだという感動こそが、後々何よりの結婚祝いになるのではないのかな~としみじみさせられた一話でした。
上品な味の秘密は、何と大根から出来た甜菜糖!
 甜菜糖を使ったクッキーを作ったことはありましたが、クリームのように砂糖の味がストレートにぶつかってくる物に甜菜糖を使用したことはなかった為、一体どういう味になるのか前々から非常に気になっていました。せっかくですので、作中の所々で紹介されているレシピを参考にして早速作ってみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずが、甜菜糖のクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)作り。小鍋へジャージー牛乳、さやから包丁でこそげとったバニラビーンズ、取った後のさやを投入し、ごく弱火でじっくりゆっくり温めていきます。沸騰したらせっかくの風味が飛んでしまって台無しになるので、ギリギリの加減で熱するのがコツです。
想い出のミルフィーユ1
想い出のミルフィーユ2
想い出のミルフィーユ3
 その間、ボウルに甜菜糖と卵黄を入れて泡だて器で白っぽくなるまでよ~~くかき混ぜ、やがて卵黄と甜菜糖が空気を含んでよくなじんできたら薄力粉をふるいにかけながら少しずつ合わせつつ慎重に混ぜ合わせます。この時、小麦粉を一気に入れて雑に混ぜてしまうとすぐにダマになるので、要注意です。
想い出のミルフィーユ4
想い出のミルフィーユ5
想い出のミルフィーユ6
 甜菜糖・卵黄・小麦粉が完全に混ざったら、そこへ先程温めておいたバニラビーンズ入りの牛乳を漉し器で漉しつつ三~四回に分けながら加えていき、丁寧かつ均一になるように混ぜて別の小鍋へ移します。小鍋は弱火~中火の間くらいの火にかけて泡立て器で底をこそぐようにして丹念に混ぜ、やがてつややかな色合いともったり重い手ごたえになったら火を止めます。そのまま冷まして荒熱を取り、ボウルに入れて冷蔵庫で一晩寝かせたら甜菜糖のクレーム・パティシエールの出来上がりです!
想い出のミルフィーユ7
想い出のミルフィーユ8
想い出のミルフィーユ9
 今回、ポピュラーなサトウキビの砂糖を使ったクレーム・パティシエールと色々比較してみたかった為、ほぼ同時に上白糖を使ったクリームも作って寝かせてみました。二枚目の画像が出来たばかりの上白糖のクレーム・パティシエール、三枚目の画像が二種類のクリームの比較図(上が上白糖、下が甜菜糖)ですが、こうしてみて見るとはっきり色の違いがわかって面白いです。見た目だけだと、甜菜糖のクレーム・パティシエールはキャラメルクリームっぽい感じがしました。
想い出のミルフィーユ10
想い出のミルフィーユ11
想い出のミルフィーユ12
 ただ、作中の記述通りクレーム・シャンティ(生クリーム)を各々混ぜ合わせて見ると、色の違いはそこまでわからなくなりました。そのままの状態で使っても勿論可だそうですが、クレーム・シャンティを合わせる事によって旨味はそのままにしつつ口当たりを軽く出来るとのことなので、勉強になります。これで、ミルフィーユに使うクレーム・パティシエールは準備OKです。
想い出のミルフィーユ13
想い出のミルフィーユ14
 次は、組み立て作業。高温のオーブンで香ばしく焦げ目がつくまで焼き、食べやすい大きさに切り揃えておいたパイ生地→クリーム→パイ生地→クリーム→パイ生地の順に材料を重ねていき、クリームがはみ出たらバターナイフなどで形を整えておきます。なお、一番上のパイ生地にはチョコペンで斜め線の模様をいれていきます。
想い出のミルフィーユ15
想い出のミルフィーユ16
 チョコペンで模様を書き終えたらその上に生クリームといちごを乗せ、そのままお皿へ乗せて傍らにフォークを添えれば“想い出のミルフィーユ”の完成です!
想い出のミルフィーユ17
 いかにも素人が作った感じのボロボロな出来栄えになってしまいましたが;、かすかに漂うカスタードクリーム・いちご・パイ生地の香りがとてもおいしそうです(´Д`*)。幾重にも重なるパイ生地と、断面からトロリと顔を覗かせるカスタードクリームの対比がたまらない感じで、果たしてどんな味がするのかワクワクしてきます。
想い出のミルフィーユ18
 それでは、出来たての内にいざ実食!いっただっきまーす!
想い出のミルフィーユ19

 さて、味はと言いますと…サラリとした口どけの大人向けな美味しさ!本当に、通常の砂糖で作ったカスタードクリームとははっきり異なります!
想い出よりも、ずっと美味しくなっているミルフィーユに涙されていました
 食べ比べてみた結果、通常のサトウキビを使った砂糖だとリッチで強いコクやこてっとした甘味が時間が経っても舌の上でくっきりと存在を主張してくる傾向にあり、それに対して甜菜糖は全体的にあっさりした感じでした。こっくりとした膨らみのある優しい甘さ、口に含むとスッと鼻腔に立ち上ぼってくる黒糖に似た趣のある香りが印象的で、控え目ではあるんですが確実に記憶に残る味わいです。
 
作中でアラタ君やおばあちゃんが言っていた通り、確かに「深いのに口の中ですっと溶けて、すごく透明感のあるすぐにもう一個でも食べたくなるような上品な味」が特徴的でした。不思議な事ですが、カスタードを舐めると感じやすい小麦粉っぽさを意識させるもったり感がこの甜菜糖のクリームには全くなく、まるで生クリームを舐めているかのような滑らかなな舌触り終始楽しめるのが驚きだったです。また面白い事に、カラメルっぽさに通じる焦がし砂糖みたいな風味がわずかに漂っていて、それが奥行きをさらに高めている感じがしました。
 全体的に大変マイルドな後味なので、果物や卵の良さを際立たせたお菓子を作るには最適な砂糖なのではと感じました。サクサクした香ばしいパイ生地と、舌へ滑るように溶けていく素朴なカスタードクリームの対比が見事で、噛むごとに幾重にも重なった香り高いバター風味のパイ生地がサクサク砕け、トロリとしたカスタードクリームに包み込まれていくのにうっとりさせられる、まさに定番となるのにふさわしい名ケーキです。

 サトウキビの砂糖を使ったクリームみたいにはっきり明確な甘さも勿論美味ですが、甜菜糖のように上品で素材の味を引き立てるのに向いている甘さのクリームもおいしい!と一気に気に入りました。洋菓子だけではなく、和菓子向きの砂糖なようにも思います。俄然甜菜糖を使用したお菓子作りへの興味が再熱して来ましたので、今度はアイスクリームやホットケーキにも試してみる予定です(^^)。

●出典)『キングスウヰーツ』 大石普人/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『華中華』の“豆腐の餡かけチャーハン”を再現!

 その昔、ある少女漫画雑誌のおまけ冊子にて「漫画家おすすめの夜食メニュー」という特集があったのですが、その中で中森衣都先生(代表作:「エプロンまま子のお元気レシピ」)という方がご紹介されていたぐちゃぐちゃ豆腐丼の美味しさに衝撃を受け、未だに私の中では定番メニューとなっています;。作り方はものすごく簡単で、温かいご飯の上に冷奴、ネギ、カツオ節のふりかけ、醤油をかけてぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べるという見た目が極悪な丼なんですが、味は浅いようで深いので混ぜご飯系メニューがお好きな方に是非推奨したいです。
 どうも、家でカレーを食べる時は途中で全部ガーッと混ぜてから食べてしまうという下品な食べ方がデフォルトな管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんが幼い日の記憶をヒントにして作った三百円チャーハンシリーズ第三弾・“豆腐の餡かけチャーハン”です!
豆腐の餡かけチャーハン図
 前回のお話から少し経った頃、ただでさえ寒いというのにさらに強い寒波が横浜中華街で猛威を振るうになり、その影響でハナちゃんのいる満点大飯店では島野さんがホールで披露しながら作る熱~いふかひれ餡に人気が集中するようになって連日大賑わいになります。島野さんが言うには「寒波で凍りつきそうな日は、おこげみたいな餡かけ料理は体の芯から温まる」だからこそふかひれ餡のおこげは美味しさが倍増・その真価を発揮してお客様から余計人気が出るのだそうで、最近厨房での雑務だけではなく実演販売も時々するようになったハナちゃんは、その時々の状況によってお客様に喜ばれる料理を考えながら作ることの重要さを肌で感じ取ります。実演販売はお客様の目の前で作る分疲労の度合いが激しそうですが、お客様の正直な声や生の反応を確認できるという利点もある為、ハナちゃんにはいい刺激になった模様です(^^)。
 この事からハナちゃんは、早速上海亭でも三百円の餡かけチャーハンを作ってお客様の体も懐も温かくさせたいと考えるようになるのですが、三百円で採算が取れ、尚且つがっかりされない餡かけの具のアイディアがなかなか思い浮かばず苦悩します。確かに、五百円の餡かけチャーハンだったら海鮮物や肉類のどちらかを足してボリュームを出したりとか、もしくは代わりに野菜を盛りだくさんにするとかなど色々工夫のしようがありそうですが、チャーハンに使うご飯や卵の代金もひっくるめて三百円となると、用意できる食材は相当制限されるのでかなりの難題だと思います;。かといって、ただ単に素の餡だけかけて出したら見るからに痛々しいチャーハンになりそうですし…これは正直、プロでも悩むのでは?と初見時には感じました。
 そんな時、ハナちゃんは道端でリヤカーでの行商をサボって商品である豆腐を凍らせてしまった豆腐屋の青年&青年の不注意に大激怒している父親らしき豆腐屋の主人と偶然出会います。豆腐屋の主人曰く、凍った豆腐は「全体にスが入り、黒っぽい気泡が一杯で売り物にならない」との事で途方に暮れていましたが、ハナちゃんは凍った豆腐を見て突如新しい餡かけチャーハンのレシピが閃き、破格の値段で凍った豆腐三十丁を全て買い取る事にします。ちなみにその価格は一丁当たり十円で、合計金額にしても何とたった三百円!普段はあまりにもお人よし過ぎるハナちゃんですので、見ているだけでハラハラさせられる事が多いのですが(例:一ヶ月の給料が三万円、CM出演のギャラを海老一箱で済まされる等)、今回は珍しくお得な買い物をしていたのでほっと胸を撫で下ろしたのを覚えています;。
餡かけの具に悩んでいたハナちゃんは、凍った豆腐を見てぴんと来ます
 その後、ハナちゃんが幼い日の記憶を紐解きながら作り上げたのが、この“豆腐の餡かけチャーハン”!作り方は餡かけにしては比較的簡単で、しょうがの香味油・豆板醤・ホタテエキスパウダー・日本酒・醤油・こしょうなどの調味料で長ネギと水気をきった凍った豆腐を炒め、水溶き片栗粉を入れて餡にした後基本チャーハンの上へかけたら出来上がりです。ポイントは凍った豆腐の下処理で、そのままではなく手で挟んでぎゅっと水を絞ってから料理に使うのがコツとの事。こうする事により、凍った豆腐は俄然プリプリした食感になる上、味が格段に染みこみやすくなるのだとか。具は二種類だけですのでちょっと寂しい感じに見えますが、物が豆腐なだけに腹持ちがよさそうですし、味付けに工夫が凝らされているので三百円にしては十分良心的なチャーハンだと思います。
 何でも、ハナちゃんは小さい頃実家の中村食堂のお手伝いをしていた時にうっかりお店の豆腐を全部凍らせてしまった事があったそうなのですが、ハナちゃんの失敗を知ったお父さんは怒るどころか「誰にも間違いはあるんや。これから気ぃつければいいんじゃ!」「あはははは。なーに、凍ったら使えんと限ったもんやあらへん!」とおおらかに笑い飛ばし、上記の凍った豆腐の再利用法(肉豆腐に使用するなど)をハナちゃんに教えてくれたのだそうです。このエピソードを読むと、ハナちゃんの臨機応変で柔軟なお料理の数々はお父さんの教えや姿勢によるものも多分にあるのではないかと感じさせられました。
 この“豆腐の餡かけチャーハン”は上海亭のお客さんにはもちろん、怠け者だった豆腐屋の青年に豆腐の良さを再確認させてしまうほど大好評で、ハナちゃんの試みは無事成功に終るのでした(^^*)。
件の豆腐屋の息子さんも感心した出来栄えです^^
 豆腐の餡かけだったら何度か食べたことがあるのですが、凍った豆腐を使った餡かけは生まれてこの方一度も食べたことがない為、前々から気になっていました。面白そうなので、早速巻末レシピ通り作ってみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、豆腐の下準備。豆腐は冷凍庫に入れて一晩放置して凍らせ、カチンカチンになったのを確認したら冷蔵庫に保管場所を移し丸一日かけて自然解凍させます(お湯で無理やり解凍させる方法もあるにはありますが、舌触りがガクッと落ちるので自然解凍の方がお勧めです)。中まで解凍出来たのを確かめたら両手で挟み込み、潰しすぎないよう気をつけながら水気をギュ~ッと絞り出します。
 ※木綿豆腐、絹ごし豆腐のどちらでもOKです!絹ごし豆腐だとなめらかで滑るような食感が楽しめ、木綿豆腐だと豆腐の味が際立つ感じでより迫力満点に仕上がります。
豆腐の餡かけチャーハン1
豆腐の餡かけチャーハン2
 次は、餡作り。フライパンにスライスしたしょうがと油を入れて弱火にかけ、油に香りがついて香味油になったのを確認したらしょうがを取り除いて豆板醤を加え、軽く火を通しながら混ぜます。豆板醤の赤色が香味油に溶け込んでスパイシーな匂いがしてきたら斜め切りにした長ネギを投入して混ぜ合わせ、そこへ先程の水気をきった凍り豆腐を丸ごと入れ、お玉(または木ベラ)で砕き崩しながら炒めます。
豆腐の餡かけチャーハン3
豆腐の餡かけチャーハン4
豆腐の餡かけチャーハン5
 豆腐が大雑把に崩れたら、ホタテエキスパウダー、日本酒、醤油、こしょうを加えてやや濃い目に味付けし(水分が少なすぎる場合は、お水をちょっとだけ足すのもありです)、水溶き片栗粉を三回に分けながらダマにならぬよう丁寧に混ぜ、自分好みのとろみをつけます。これで、餡の出来上がりです!
 その間、中華鍋(又はフライパン)で以前に作り方をご紹介したハナちゃん流基本チャーハンのレシピ通りに作った基本チャーハンを用意し、お皿へ丸く整形して乗せておきます。
 ※餡が濃い目なので、バランスが良くなるよう基本チャーハンは少し薄味に作った方がいいです。
豆腐の餡かけチャーハン6
豆腐の餡かけチャーハン7
豆腐の餡かけチャーハン8
 基本チャーハンの上へ熱々に温めなおした凍り豆腐の餡をたっぷりトロトロ~ッとかければ、“豆腐の餡かけチャーハン”の完成です!
豆腐の餡かけチャーハン9
 凍った豆腐は予想以上に砕けやすく、結果写真の通りやや細かくなり過ぎてしまったので少し落ち込みましたorz(パッと見なら、色の薄い鶏ひき肉に見えなくもないです;)。しかし、香りそのものはホットな感じでとても食欲をそそる感じで、見るからに体が温まりそうでした。麻婆豆腐とも普通の餡かけとも違う印象なので、実食タイムが楽しみで仕方がありません!
豆腐の餡かけチャーハン10
 それでは、熱い内にいざ実食!いただきま~す!
豆腐の餡かけチャーハン11

 さて、味の感想ですが…ピリ辛で刺激的なのに、どこか懐かしく優しいお味。ゆるめの餡がチャーハンにトロトロ絡むのがたまりません!
 餡かけチャーハンはがっつり濃いめなオイスターソース味が多いイメージがありますが、このチャーハンは海鮮餡かけ等によくあるあっさりシンプルな塩味系の味付けな為、比較的軽くスルッと頂く事が出来ます。普通の餡かけ豆腐みたいなツルンと柔らかい食感とはひと味違うふんわりした淡い不思議な口当たりで、強いて言うなら卵白入りの中華あんにちょっと似た捉えどころのないフワフワ加減が印象的な餡でした。凍らせた豆腐を食べるのは初めてですが、高野豆腐の気泡の密度をもっと少なくさせて尚且つ瑞々しくさせたようなプルプルした舌触りがよかったです。気泡が幾重にも重なって層となっている為、普通に煮た豆腐よりもスープをジュワッとたっぷり含んでいるのが特徴的でした。
 中華あん豆腐と麻婆豆腐を足して二で割ったような複雑な味わいで、豆板醤のピリリとくるドライな辛さとホタテエキスの甘いお出汁がうまく調和した餡がスタンダードなチャーハンにぴったりマッチしています。麻婆豆腐に比べると肉や甜麺醤が入っていない分かなりさっぱりした後味で、ホタテの旨味が効いた塩気が口の中に広がった後舌へジワジワ辛味が響いてくるという何とも言えないバランスに感嘆しました。長ネギのシャキシャキ感がいい箸休めになっていますし、体がすぐに温まるのでお気に入り決定です!

 作中で島野さんが言っている通り、凍りつくそうなくらい寒い日に食べる餡かけ料理は最高です。それまでうっかり凍らせてしまった豆腐は、渋々湯豆腐にした後温玉+ポン酢に絡ませて食べていたのですが、ギュッと絞って餡かけにした方がぐっと美味しくなると思いました。安上がりですし、当分お世話になりそうなレシピです。

●出典) 『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

Copyright © あんこ