『最後のレストラン』の“焼き味噌ご飯の和風ドリア”を再現!

 先日、徳川家康が食べた鯛の天ぷらは南蛮風にスパイス味付けした鯛のさつま揚げみたいなもので(しかもニラ入りのソースまでかけていた模様)、現代でよく食べられている天ぷらとは全く別物だった事が分かり、びっくりしました。
 戦国時代の人でも、現代人が日常的に酒の肴にしていそうな物で一杯飲んでいたのかと思うと、不思議と親近感が沸いてきます。

 どうも、どんな味かちょっと食べてみたくなった管理人・あんこです。


 本日作ってみる漫画料理は、『最後のレストラン』にて主人公・園場凌さんがタイムスリップしてきた織田信長にリクエストされて作った“焼き味噌ご飯の和風ドリア”です!
焼き味噌ご飯の和風ドリア図
 漫画『最後のレストラン』とは、亡き父から引き継いだイマイチ流行っていないフランス料理のレストラン<ヘブンズドア>のオーナー兼シェフ・園場凌さん(28)が、アルバイトとして雇っているウエイトレスの有賀千恵さん(17)と前田あたりさん(19)の二名と共に、運命のいたずらで死の直前にタイムスリップしてきた偉人達の無理難題なオーダーにその都度応じ、ご希望通りの料理を出して満足してもらうという新感覚のタイムスリップ系グルメ漫画です。
 どういう訳か、園場さんがお店を経営するようになってから<ヘブンズドア>には時空の裂け目ともいうべきゲートが開いた模様で、それが原因で次から次へと歴史上の有名人物が現れる事になるのですが、お互いに話がチグハグしながらも絶妙なバランスで勝手に納得し合って話が進み、過去の世界に知られたらまずい致命的な証拠や情報が全く流れないようになっているのが見ていて面白いです。
 ある時は「ここは奥州の言い伝えにある迷い家では?」と推測してくれたり、またある時は「処刑人の心遣いで用意された最後の晩餐の場所」と解釈してくれたりとタイムスリップした事実にすら気付かず帰っていきますが、毎回スレスレ過ぎで冷や汗をかかされるので、ちょっとしたスリルを味わえます;。
 似た系統の料理漫画をあげるとするなら『信長のシェフ』がありますが、あちらは料理人の方が戦国時代にタイムスリップして足りない材料に四苦八苦するのに対し、こちらは現代のお店に別世界のお客さんがタイムスリップするという料理人に有利な立場で物語が進行する為、食材や調理法に縛りがない分「現代だからこそ作れる、その人にとって夢のような料理」が園場さんの高い調理技術よって自由に作られていく様子が、読んでいて楽しいです(^^)。

 オムニバス形式でストーリーは進行し、料理に満足した偉人達がお店のドアを開けて元の世界へ戻る事により一話完結して終わるのですが、短いながらも藤栄道彦先生が「こんな人だったのでは?」と資料を調べた結果生まれた個性豊かな偉人キャラは非常に活き活きとしており、思わずこんな人だったかも?と思わせるような魅力があります。
 死ぬ前に突然やって来るという設定なのでラストはしんみりする終り方になる事も多々あるのですが、食べたいものを食べて去って行く偉人の去り際は幸せそうで、皆園場さん達に感謝して帰っていくため後味は悪くないですし、基本的にコメディタッチの明るいお話がほとんどなので色んな方にお勧めしたい作品です。
現代にタイムスリップしてきた人間の集うレストラン
 ちなみに、料理漫画に出てくる主人公は大抵が情熱的で前向きなタイプが多いのですが、園場シェフはその間逆をいく感じで、悲観主義・マイナス思考・根性なし・そのくせプライドだけは高いという前代未聞の主人公;。
 お店に全くお客が来ない時は「どうせ今日もお客は来ないんだ!最後にレストランごと華々しく燃やして散ってやるんです!」と体中に花火を巻きつけたり、かと言ってお客がいっぱい来たら来たで「計算したら、死ぬまで働いていくら稼げるか見えてしまいました…夢も希望もなくなりましたよ」とこの世の終わりのような顔になったりするなど、作中で有賀さんが言った通り「ダメ人間だなぁ」「殴ってもいいですか?」と言いたくなるような残念な大人に描かれています(正直、一番料理人になったらいけないタイプだと思います;)。
 しかし、園場シェフはその名通り「その場をしのぐハッタリを考え付く事が得意」という類稀な特技の持ち主で、尚且つ料理の腕とポリシーは奇跡的にしっかりしている料理人。
 その為、常識的な料理人なら追い出すか逃げ出しそうな珍妙な客人達を目の前にしても、何だかんだ言いつつ受け入れてはまるで知恵比べみたいな注文を捌いて最終的に満足してもらっているので、「性格は確実に難ありだけれど、正直イカサマすれすれな手段も使えて腕もある園場さんだからこそこの漫画の主人公が務まるんだろうな~」と妙に納得してしまいます。

 また、元気で明るく楽天的な性格の女子高生・有賀さんは場の空気を和やかにするマスコットキャラクター的ムードメーカー、豊富な知識を持つクールビューティーな謎の女子大生・前田さんは語学に疎い園場さんや有賀さんに変わって偉人達と意思疎通する交渉役として登場し、話に華を添えているのがミソ。
 オーナーと従業員というよりはもはや兄妹みたいなノリになっており、料理以外は今ひとつ頼りない園場さんをしっかり補佐して助けているのが読んでいてほほえましいです(正直、この三人で繰り広げられるテンポがいいノリツッコミな会話がなければ、もっと暗いお話になっていたと思います;)。
 特に、前田さんはどんな偉人でも正確に把握して様々な歴史を知っている上幅広い語学力をも兼ね備えており、『魁!男塾』における雷電みたいな解説役と言っても過言ではない活躍ぶりな為、個人的には前田さんの正体も気になるところです;。
園場さんが主人公で、前田さんと有賀さんが準主役みたいなものです
 今回ご紹介するエピソードは、第一回目に来店した織田信長ご一行のお話。
 本能寺の変で追い詰められた織田信長は、妻の濃姫や家来と共に脱出しようと寺内を歩いていた時に<ヘブンズドアー>へ続くドアを開け、「普通に営業しているのにどうしてお客が来ないかな~」とぼやいていた園場さん達の前に現れます。
 当然最初はお互いに混乱していたものの、園場さん側は「映画の撮影中にやって来た俳優さんが演技の練習をしているのかな?」と強引に思い込み、織田信長側は濃姫から聞かされた迷い家の言い伝えで「ここがそうかもしれない」と受け入れた事によって、話は少々の緊張感を持ちつつ進行します。
 なお、織田信長は園場さんが白装束を着ていると誤解して「死を覚悟して、丸腰でこの信長の前に立つか!」と心の中で感嘆していたのですが、こんな発言を臆病者の園場さんが聞いたら即効その場から逃げ出していた事が容易に想像できる為、初っ端からぎりぎりセーフな展開にヒヤッとしました;。
 この時、織田信長が園場さんに出したオーダーは「どこの誰も食べた事のない、空前絶後の料理を持ってまいれ!」という曖昧かつ難解な物で、園場さんは「具体的に何?!どーいう料理よ!」と混乱して苦悩します。
記念すべき第一回目のお客様は、何と織田信長!
 その後、園場さんがリクエストに答えるべく知恵を絞っている最中に前田さんが漏らした「信長は焼き味噌の湯漬けが好物だったそうです」という一言で思いつき、織田信長本人に台所へ立ってもらって手順を指示しつつ作ってもらったのが“焼き味噌ご飯の和風ドリア”です!
 作り方は簡単で、味噌やみりんを焦がした物で味付けした干ししいたけとご飯・刻んだ長ネギ・ゆるめに煮立てたホワイトソースをグラタン皿に入れてパン粉を上から乗せ、高温のオーブンで焼いたら出来上がりです。
 何故これが「どこの誰も食べた事のない、空前絶後の料理」かと言うと、園場さん曰く「これは信長様自らがお作りになった料理だからでございます。天下無二の方がお作りになったのですから、天下無二の料理に決まっています。天下開闢以来いかなる天子・聖人も口にした事がなく、これからも出来ない料理でございます」というのが根拠だそうで、初見時は策士だな~と感心したのを覚えています。
 もっとも、織田信長自身はこの解答に納得しつつも心に残る言葉で園場さんを諌め、己の腕を信じられるようもっと鍛錬せよとアドバイスします。
 ここら辺の下りは織田信長の器の大きさが見事に描かれている上、ラストもほんの少しの切なさを感じさせつつうまくまとまっていますので、興味のある方は是非ご一読される事をおすすめします。
何と、信長直々に台所に立ってもらうという前代未聞な展開に!
 ただでさえ具が少ないのに、そのうえチーズまで使わないとはどんな味がするんだろうと、初めて読んだ時から興味を持っていた一品です。
 詳しいレシピはないものの、大まかな作り方は作中に記されていましたので、そちらを参考にしつつ再現してみようと思います。


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下準備。熱したフライパンにバターを入れて溶かしたら小麦粉を入れて手早く混ぜ合わせ、一体化してフツフツいい出してきたら牛乳を一気に投入し、ダマにならないようガーッと力いっぱい混ぜあわせます。
 牛乳を全部入れ終わってとろりとしてきたら、さらにまた牛乳、塩、こしょうを加えてゆるめのソース状になるまでよく混ぜ合わせ、火を通し終えたらボウルへ入れて荒熱を取っておきます。
 その間、干ししいたけを水で戻してみじん切りにし、長ネギを千切りにします。
焼き味噌ご飯の和風ドリア1
焼き味噌ご飯の和風ドリア2
焼き味噌ご飯の和風ドリア3
 次は、味噌味の焼き飯作り。
 中火に熱したフライパンに、お好みの味噌(当管理人は今回、合わせ味噌を使用しました)とみりんを入れて軽く焦がしながら混ぜ、いい香りがしてきたら冷ご飯と先程の干ししいたけを投入してよく混ぜ合わせます。
 味噌がご飯全体に行き渡り、味見して塩気がちょうどいいのを確認したら火を止めます。
 ※チーズを使用しない分、塩気はやや強めにしておいた方がいいです。
焼き味噌ご飯の和風ドリア4
焼き味噌ご飯の和風ドリア5
焼き味噌ご飯の和風ドリア6
 ここまで来たら、いよいよ焼き作業。
 オリーブ油を塗ったグラタン皿へ、先程の味噌味の焼き飯→長ネギの千切り→ゆるいホワイトソースの順に具を重ね入れ、最後にたっぷりのパン粉を振りかけます。
 パン粉をかけ終えたら高温に熱したオーブンに入れ、表面がこんがりするまで焼きます。
 ※全て火が通っているので、短時間で済みます。
焼き味噌ご飯の和風ドリア7
焼き味噌ご飯の和風ドリア8
焼き味噌ご飯の和風ドリア9
 パン粉が所々キツネ色になってきたらオーブンから取り出し、仕上げに刻み海苔を振りかければ“焼き味噌ご飯の和風ドリア”の完成です!
焼き味噌ご飯の和風ドリア10
 一見した所、ホワイトソースに覆われているので何が入っているのか分かりませんが、味噌の芳しい香りが漂ってくるので和風な印象を与えられます。
 チーズを使わないドリアは初めてなので心配でしたが、実際に作ってみるとそこまでおかしな出来ではなかったのでほっとしました。
 一体どんな味がするのか、予想が全くつかないだけに楽しみです!
焼き味噌ご飯の和風ドリア11
 それでは、焼きたてふつふつの内にいざ実食!
 いただきま~す!
焼き味噌ご飯の和風ドリア12


 さて、味の感想ですが…想像以上に本格的な出来栄えで旨し!和と用がバランスよく調和しています!
 サクサクに焼き上がったパン粉と、トロトロにとろけるホワイトソースがお焦げ付きの香ばしい味噌ご飯と殊の外相性がよく、チーズなしでも十分ボリュームがありました。
 あっさりめかと思いきや結構こってりした濃密な味わいで、それでいてさっぱりした後味なのが印象に残ります。
 意外な事に、牛乳たっぷりなホワイトソースの豊かなコクと、味噌の熟成された塩気が口の中で合わさる事によってまるでチーズそっくりな旨味が楽しめる為、チーズなしでもちゃんとドリアっぽくなっていのに感動しました。
 蒸し焼きにされた長ネギのくたくたシャッキリした歯触りと、さらに増した甘味が味噌にもホワイトソースにもよく合っており、やや強めの塩味がついたご飯を和らげてくれるのがよかったです。
 下の味噌ご飯も、干ししいたけの出汁が効いているせいかみりんと味噌だけの味付けとは思えない程複雑な甘辛味に仕上がっており、一言で言うなら「田舎の炊き込みご飯風味噌チャーハン」という感じの美味しさでした。
 干ししいたけの軸のコリコリした食感、身のプリプリした歯触りがいいアクセントになり、噛めば噛む程香り高い風味やきのこ特有の深い旨味エキスがブワッと広がるのが堪えられません。
 ドリア全体の感想を述べるとするなら「干ししいたけとネギの精進料理風味噌ドリア」というイメージの、非常にユニークな料理でした。


 ホワイトソースと味噌の組み合わせがチーズのような味わいになるとは予想外だったので、かなりびっくりしました。
 この組み合わせを色々応用したら面白い料理が出来そうなので、いつか試してみたいです。

●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『てぬのほそみち』の“てぬてぬバナナケーキ”を再現!

 当管理人のいる地域では、二十年くらい前から「てつおじさんのチーズケーキ」という一ホール五百円(今は六百円以上に値上がりしましたが;)と激安なのに美味しいスフレチーズケーキを売るお店があるのですが、先日大阪銘菓「りくろーおじさんの焼きたてチーズケーキ」も存在すると分かり、俄然食べたくなりました。
 調べた所、最近では他にも「よしおじさんのチーズケーキ」、「ジャージーおじさんのチーズケーキ」、「ダディのチーズケーキ」というスフレではないチーズケーキを売っているお店もあるそうですので、機会があれば食したい…と空想にふけっています;。

 どうも、個人的に和歌山市にあるという「ワンダおばさんのチーズケーキ」が気になっている管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『てぬのほそみち』にて作者・須藤真澄先生が簡単で失敗しないケーキとしてご紹介していた“てぬてぬバナナケーキ”です!
てぬてぬバナナケーキ図
 漫画『てぬのほそみち』とは、本書の作者であり進行役でもある須藤真澄先生が、体育会系でいいツッコミ役の担当編集のとりやまさん(後におっとり者な担当編集・てしろぎさんにバトンタッチ)をアシスタントにし、毎回「料理」「手芸」「工作」のどれかに関する色んな物を手作りしては適当に作り方を説明していくという、手抜き至上主義的手作り漫画です。
 「一から手作りする」と聞くと、時間がかかりそう・面倒臭そう・道具がいっぱいいりそうというマイナスイメージがどんどん湧いてきがちですが、須藤先生の手作り教室は「手を抜ける所は抜いて、おいしい、かわいい、おされを目指しましょう」がモットーなだけあり、道具がなくても手軽にサクッと作れるものばかりで感心します。
 何でも、題名にある『てぬのほそみち』の「てぬ」は「手抜き=てぬき=てぬ」と短略化して誕生した言葉だそうで、記念すべき第一回目では「面倒くさい事が嫌いだ。本を見ながら作るのが、分量をはかるのが、いっぱい道具を使うのが、嫌いだ嫌いだ嫌いだ!―そんな同志と歩きたい」と、力のこもったメッセージが載っていたのには大いに共感したのを覚えています(^^;)。
 例えば料理の場合、ほとんどが身近な材料で作れて三十分以上かからない物ばかりで、初心者でも挑戦しやすい分かりやすさが特徴的(冷やすだけで出来る“てぬてぬヨーグルトケーキ”、電子レンジで作れちゃう“てぬてぬ田舎まんじゅー”と“てぬてぬデコレーションケーキ”など)。
 手芸の場合は編み棒がなくても手織物を編める方法などアイディアが光る物が目立ちますし、工作の場合は何とカッター&ボンドで作れるプチ棚の作り方など、見ているだけでも「こんなに簡単なら、自分にも出来そう…」と手作り気分を刺激される物ばかりなので、本当に挑戦する人は勿論、読むだけでも充分楽しめる仕上がりになっています。
 あと、手作り作品だけでなく須藤先生と担当編集・とりやまさんの活き活きしたやり取りが面白いのもこの作品の魅力の一つ。
 自称「二時間しか根気が持たない」「タイムフリー」な体質の須藤先生がのんびりマイペースで適当に手作りしていく様子を、時には「あんたすっげー不器用だろ実は(#゚Д゚)!」と突っ込んだり、「も~やだ、あんたの担当(つД`)」と嘆いたり、「ささ先生、きりきりお仕事しましょ」と釘を刺したり、「あ、じゃあ今月お休みにしましょ。とりちゃん夏バテで食欲ないし~」とわざと突き放して須藤先生を慌てさせたりと、思わず吹き出してしまうシーンがいっぱいで、正直とりやまさんがいるからこそ話にメリハリが出ていたと言っても過言ではない程かなり重要な役割を果たしていました。
 もちろん、作中でのやり取りはほぼフィクションですが( 『平野レミのアイデアクッキング』と同じく、実在人物が一見ドキュメント風に話を進めるフィクション作品です)、おまけ漫画で描かれていたとりやまさんとのリアルなやり取りもほぼこんな感じだったので、日頃からこういうズバズバした会話をしているからこそストーリー展開にもそれが出たのかな~?とつい色々想像してしまいます。
根気は二時間しか持たないものの、手作りは大好きと語る須藤先生
 今回作ってみるのは、第二話でご紹介された“てぬてぬバナナケーキ”!
 実は、とりやまさんはお菓子作りをする度に必ずといっていい程失敗していたそうなのですが、後日須藤先生のレシピで作ってみたところ初めて一発で成功したとの事で、「絶対失敗するかと思ってたけど、やりました~!」と作中で大喜びしていました(←どうやら、これは実話っぽいです;)。
 作り方はお手軽で、ボウルにバター・砂糖・卵・バナナ・くるみを入れて手で混ぜ、小麦粉とベーキングパウダーをヘラでさっくり混ぜ合わせ、マドレーヌ型に流し込んでオーブンで焼いたらもう出来上がりです。
 このケーキのポイントは「道具を使わない」「手で混ぜる」ことだそうで、粗いものを最小限に抑えて尚且つ簡単に作るにはこれが一番の方法だと書かれていました。
 正直、使わなくて済む道具は泡だて器だけなので、「道具をつかわない」というのは少々オーバーかもしれませんが;、作中で須藤先生達が童心に返って泥んこ遊びみたいにグネグネグニュグニュとバナナや卵を手で混ぜている作業は読んでいて本当に楽しそうだったので、「これはやってみたい…!」と読むたびに胸が高鳴ります;。
道具をほとんど使わず、手でこねて作る画期的なバナナケーキです!思わず童心にかえってしまう程、泥んこ遊びに似ている模様
 ちなみに、“てぬてぬバナナケーキ”のレシピを一通り書いた後、「あたしちょっぴりお菓子作りに自信がつきました!これからも先生について行きます!」とウキウキしているとりやまさんに対し、須藤先生はサラッと「あ、もーお菓子編終わりなの」「おねいちゃん、もー作れるお菓子尽きたし」という爆弾発言をしています。
 実際には、後々ちゃんとお料理レシピも手芸作品や工芸作品に混じってちらほら登場するので、結果的にこの発言はなかったことになるのですが、まさか若干二個のお菓子が紹介された所で料理編は終わりだと宣言されるとは予想もつかなかったため、初めて読んだ時は「えええ~?!」と驚いたものです;。
 その為、最後のコマでハリセンを持ったとりやまさんと、鼻血を出した須藤先生の図を見た時は、ほんのちょこっとだけスッキリしたのを覚えています(←須藤先生、すみません;)。
何と、連載第二回目にして作れるお菓子が尽きたと暴露されてました;
 久々にバナナケーキを食べたいと思っていた上、近所のスーパーでバナナが一房五十円と激安で売られていたのもあり、再現を決意しました。
 詳しい分量が載ったレシピもある事ですし、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、生地作り。室温に戻したバターを滑らかになるまで手でつぶしながら混ぜ、クリーム状になったら砂糖を投入し、全体が白っぽくなるまでこね合わせます。
 バターに砂糖がなじんできたら卵を加えて、指でほぐしながらよく混ぜます。
 ※ここまでの流れは、泥んこ遊びというよりは砂遊びっぽい感じです(砂糖のザラザラ感が、よりその感覚を増長させました;)。卵は冷蔵庫から出したばかりの物を使うとなかなか混ざりにくいので、これも常温に戻しておいた方がいいです。
てぬてぬバナナケーキ1
てぬてぬバナナケーキ2
てぬてぬバナナケーキ3
 バターの色合いが黄色っぽくツヤのあるものになったら、皮を剥いたバナナを入れてグニュグニュッと大雑把につぶしながら混ぜ、さらに刻んだくるみを投入して混ぜ合わせます。
 ※バナナを入れた途端、手の中で鈍~く潰れるバナナの手触りがまさに泥んこ遊びそっくりの感覚になるので、俄然面白くなります;。ただ、バナナを潰しすぎると食感がつまらなくなるので、程ほどでやめる自制心が必要です。
てぬてぬバナナケーキ4
てぬてぬバナナケーキ5
てぬてぬバナナケーキ6
 生地全体にくるみが行き渡ったら手を洗って平常心に戻り、一緒にふるいにかけておいた小麦粉とベーキングパウダーを加え、ゴムベラでさっくり手早く混ぜます。
 この生地を、薄くて小さめのマドレーヌ型に流し込み、180度に熱したオーブンで約十五分~二十分かけて焼きます。
 ※100円ショップに売っている使い捨ての型で大丈夫ですが、ある程度固さのある物でないと型が横に広がって生地がデレ~ッと垂れる事もままあるので、要注意です。
てぬてぬバナナケーキ7
てぬてぬバナナケーキ8
てぬてぬバナナケーキ9
 中にまで火が通っているのを確認したらオーブンから取り出し、荒熱が取れる(もしくは冷やしてもOK)のを待てば“てぬてぬバナナケーキ”の完成です!
てぬてぬバナナケーキ10
 火の入ったバナナ特有の、何ともいえない甘~い香りがケーキから漂うのがたまりません。
 バナナケーキはうまく作らないとネチャネチャした感じになる事も珍しくないのですが、切って断面を見たところさっくりした出来栄えだったのでほっとしました。
 手で混ぜたケーキは、果たして泡だて器で作ったケーキと遜色ない味なのか…実際に試食して確かめてみようと思います!
てぬてぬバナナケーキ11
 それでは、一つ手にとっていざ実食!
 いただきま~すっ!
てぬてぬバナナケーキ12


 さて、味はと言いますと…ほのぼの安心出来る旨さでナイスッ!家庭的で温かな印象のホームメイドケーキです!
 一口かじった途端にバナナのねっとり濃厚な甘さと、クルミの香ばしい風味が口の中にゆっくり広がり、初めて食べるはずなのに不思議と懐かしい気持ちになります。
 小さい頃、母がよく作っていたバナナホットケーキをさらに余韻深くしっとりさせたような味わいで(分かりにくい例えですみません)、派手はないものの生地を噛むごとにバナナのフルーティな甘味が徐々に深みが増していくのが印象的でした。
 手で大まかに崩したのが功を奏し、バナナの大きさにばらつき出て食感に変化が出ているのが食べていて楽しい感じで、大抵は小さいカットで生地になじんでいるのがほとんどですが、時々「お!大きい塊!」と分かるゴロンとしたバナナを噛み当てるとちょっぴり嬉しい気分になります。
 この大きいバナナはギリギリ生に近いジューシー感が残っている為、他のバナナケーキに比べると比較的フレッシュな美味しさだと思いました。
 モフモフのクッションを連想するような適度な柔らかさと、どっしりした重めの食べ応えが両立した生地で、そのままだったら単調な味になりかねないのを、ザクザクのクルミがいいアクセントを与えて飽きを防いでいるのがたまらなくいいです。
 シンプルながらもバナナとクルミの滋味を堪能出来る、素朴な旨さが印象的な田舎風ケーキでした。


 簡単にすぐ出来る上、失敗なく作れるのが嬉しいお手軽ケーキです。
 出来たてでも冷やしても美味しいので、前日の夜に砂糖控えめで作って翌朝の朝食として頂くのもありだと思いました。

●出典)『てぬのほそみち』 須藤真澄/秋田書店
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『心星ひとつ―みをつくし料理帖』の“賄い三方よしの豆腐丼”を再現!

 とうとう、今日の記事で再現料理数の合計が五百個目になりました(^^;)。
 三百個目に突入したくらいの時、「五百個くらい再現したら満足するはずなので、その時は本や映画のレビューサイトにしようかと…」という事を前置きに書いていた記憶がありますが、まだ満足していないのでもうちょっとだけ続く事になりそうです。
 我ながら呆れますが、食べたい&再現したい料理が尽きぬ限り、引き続き再現料理をご紹介していきたいと思います。
 
 どうも、こんなに食欲だけが突出していたら将来餓鬼道に落ちるんじゃなかろうかと心配している管理人・あんこです。


 本日作る再現料理は、『心星ひとつ―みをつくし料理帖』にて主人公の澪ちゃんがりうさんの為に作った“賄い三方よしの豆腐丼”です!
心星ひとつ―みをつくし料理帖 
 小説「みをつくし料理帖」シリーズの第六巻にあたる『心星ひとつ―みをつくし料理帖』は、澪ちゃんにとってまさに激動の時期だった二十一歳の年、七月から十月にかけて起こったエピソード四話をまとめた作品です。
 ―身分の高さを隠して<つるや>へ通う御膳奉行・小松原様への決して叶わぬ淡い恋。
 ―吉原にて懸命に生きているかつての幼なじみ・野絵ちゃんを取り戻したいという切なる願い。
 ―かつての主・嘉兵衛さんから託された<天満一兆庵>再建の夢。
 ―数年前から消息不明の芳さんの息子・佐兵衛さんの情報と行方探し。

 これまで澪ちゃんの行動理念となってきた四つのテーマが、ここにきて一気にストーリーに絡んでくるようになり、それに従って何度も厳しい選択を突きつけられるようになった澪ちゃんは、その都度大いに苦悩することとなります。
 中でも胸が痛んだのは、ラストに近づくにつれて迫られる「料理人として生きるか、それとも恋に生きるか」という究極の問いに対して、自問自答する澪ちゃんの姿。
 どちらかを選べば確実に誰かを永遠に失ってしまうという、心優しい女性にとってあまりに酷な事態に直面した澪ちゃんは、それでも辛うじて一度はきっちり結論を出すのですが、次々と断ちがたい人達の「澪ちゃんには、幸せになって欲しい」という優しく悲しい思いやりの心に触れるにつれ、身を引き裂かれるような気持ちを味わいます。
 そして、最終的に澪ちゃんは、自分の中心に「これだけは譲れない」と存在する生きる標―心星をやっと見つけ出し、物語は大きく進展します…。
 これまでの巻は、澪ちゃんの優しさと心意気、そして料理への情熱によって問題が解決していったせいか、ほろ苦い展開のお話があっても結果的には勧善懲悪物を読み終えた後のように爽やかな読後感で本を閉じる事が出来たのですが、『心星ひとつ―みをつくし料理帖』は「本当に、これでよかったのか?」というやるせなさと、心臓をギュッと掴まれたような重く切ない気持ちに襲われる、初めての巻になりました(第七巻目の『夏天の虹―みをつくし料理帖』もそれまでとは異なった読後感でしたが、「切なさ」というよりは「衝撃」が強い巻だったので、これまた違ってきます)。
 自分の幸せよりも周囲の人たちの幸せを一番に考える澪ちゃんだからこそ応援したくなる気持ちも確かにあるのですが、「お前には心底、失望した」と深い哀しみを込めて言った清右衛門さんの気持ちも、澪ちゃんと片方ずつ大切に持ち合っていたはまぐりの片貝を返してきた野絵ちゃんの気持ちも、双方理解出来るだけにやりきれませんでした。
 作中で芳さんは「あちこち欠けて傷ついて、それでも人は生きていかなならん。何と難儀なことやろか」と小さいため息をついていますが、第七巻を読んだ今になって考えてみると、皮肉にもこれは澪ちゃんのその後を不気味なくらい予言した言葉のように思えてなりません。
 一読者としては、二つの選択を迫られたら全く新しい三つ目の案を出して「これなら、みんな幸せになるのでは?」と言えるくらい、澪ちゃんにはいい意味で図太くなって欲しいと願っています。

 今回ご紹介するのは、第二話「天つ瑞風」のエピソード。
 ある日、<つるや>はほぼ同時期に大きな話が舞い込み、大混乱になります。
 というのも、<翁屋>の桜主・伝右衛門さんからは「吉原で<天満一兆庵>を再建しないか」、<登龍楼>の主・采女宗馬さんからは「神田須田町の<登龍楼>を居抜きで売るので、<つる家>として営業しないか」と妙にうまい話が二つもきた為。
 当初は罠かもしれないと身構えていた澪ちゃん達ですが、条件だけ見るならば決して悪くない話である事が次第に分かってきたのもあり、種市さんと芳さんは澪ちゃんにお話を受けた方いいとそれぞれ打ち明けてくるにまで態度を軟化させるようになります。
 実を言いますと、澪ちゃんは少し前に名店<一柳>の老主人・柳吾さんから「このまま<つるや>にいたら、あなたの料理人としての器はここまで。小さいままですよ」という言葉を投げつけられてショックを受けていたのもあり、本心はこのまま<つるや>にいたいと考えつつも、料理人として成長するにはどちらかを選んだ方がいいのだろうかと悩みに悩み抜きます。
 そんな時、澪ちゃんから相談されたりうさんは「与えられた器が小さければ、自分で大きくすりゃあすむ事ですよ」「‘ここまで’かどうかを決めるのは他人ではなく、自分自身でしょう」といとも簡単に言い、澪ちゃんが決意を固めるきっかけを与えていました。
 何でも、りうさん曰く「男も女も人生の仕組みが分かるのは七十過ぎてから。六十代なんざ、まだ青臭い若造ですとも」だそうで、六十半ばの柳吾さんを「若いわね~」と笑い飛ばしていました;。
 いやはや、相変わらずりうさんの言葉には説得力と凄みがありまくりです(^^;)。
 実をいいますと、<翁屋>も<登龍楼>も裏の本音はトンでもなかった事が後に判明しており、もしこの時りうさんがみんなをクールダウンさせていなかったらかなりえらい事になっていた可能性がある為、それを思うと背筋に寒いものを感じた回でした…;。
 大人の陰謀の黒さと、「うまい話にはご用心」という教訓を実感すると同時に、最後には短くも濃密な再会を果たした澪ちゃんと野絵ちゃんの儚い逢瀬が記されていますので、第二話「天つ瑞風」は、『心星ひとつ―みをつくし料理帖』の中で個人的に最も大好きなお話です。
 ちなみに、これらのお話をする前にりうさんが澪ちゃんに作ってもらって食べていた夜食が、今回再現する“賄い三方よしの豆腐丼”。
 作り方は素っ気ないほど簡単で、塩入りのお湯でゆっくり火を通した柔らかい豆腐・刻みネギ・カツオ節・しょうがを冷や飯にどっさり乗せ、仕上げに醤油をかければ出来上がりです。
 澪ちゃんが言うには、この“賄い三方よしの豆腐丼”は<つるや>では定番の賄い飯との事で、「質素な上にお行儀も悪く、人に出せるものではないのだが、賄いでこれを口にすると、何とも幸せになる」と語られていました。

 元々豆腐丼は大好きで、人前はともかく家では何度も作っている料理だった為、「この豆腐丼はどんな味なんだろう」と再現を決意しました。
 巻末にある詳細なレシピを参考に、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、豆腐の下準備。水を張った鍋に寄せ豆腐を入れて弱火にかけ、クツクツ沸いてきたら塩を加え、そのまま豆腐の中心にまで熱を通します。
 ※澪ちゃんが実際に使った豆腐は、作中にて「豆腐を作る途中で早く重石を外しすぎた出来損ない」、「普通の豆腐よりは遥かに柔らかいが、淡雪豆腐などの柔らかさには到底およばない」とそこそこ詳しく表記されていましたが、どういう種類の豆腐かは正確に書かれていない為、何を使うべきか少々悩みました。
 ただ、レシピ欄には絹ごし豆腐と表記されている事と、普通の豆腐よりは柔らかいという表記を考慮して、豆腐を作る途中にふわふわ固まってきた豆乳を圧縮せずにそのまま箱に入れてふんわり固めた寄せ豆腐を代用品として使用する事にしました。
賄い三方よしの豆腐丼1
 豆腐全体が暖まったらすぐに火からおろし、鍋から豆腐を形を崩さぬよう気をつけながら引き上げ、水気を切ります。
 なお、豆腐のかけらが残って少々にごったこのお湯は味噌汁に再利用出来ます(豆腐の甘みを感じる、美味しい味噌汁になるのでお勧めです)。
賄い三方よしの豆腐丼2
 次は、盛り付け作業。
 丼茶碗に冷や飯(炊き立てのご飯をよそい、そのままラップをして冷ました物がいいです)、その上へ大き目の匙ですくった寄せ豆腐を乗せます。
 そこへカツオ節と刻みネギを「ちょっと多いかな?」と心配になるくらいたっぷり散らし、おろししょうがを乗せます。
 ※何気にしょうがが重要な役割を果たしていたので、余程苦手でない場合は気持ち多めに乗せる事をお勧めします。
賄い三方よしの豆腐丼3
賄い三方よしの豆腐丼4
賄い三方よしの豆腐丼5
 具を乗せ終えたら醤油をお好みでかけまわし(おろししょうが自体にもちょっとかけた方がいいです)、お箸と共に机へ運べば“賄い三方よしの豆腐丼”の完成です!
賄い三方よしの豆腐丼6
 しょうが醤油の爽やかな香りと、かつおぶしのふくよかな香りが、豆腐からほのかに立ち上る湯気によってふわりと鼻腔を刺激してくるのがなんともいい感じでした。
 あっさりした食材ばかりなので、食欲がない時でも「これなら…」と手が伸びそうです。
 火を通した割には思ったよりも豆腐が柔らかいままだったので、これは味期待が持てます。
賄い三方よしの豆腐丼7
 それでは、豆腐が熱々の内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
賄い三方よしの豆腐丼8


 さて、味の感想はと言いますと…シンプル・イズ・ベストという言葉を痛感させられる美味しさ。食欲がなくてもサラサラ~ッと喉を通ります!
 まるで絹のように滑らかでプルプルした舌触りの温かい豆腐と、シャキシャキシャリシャリした小気味良い食感の刻みネギの取り合わせが格別で、ふっくら感を残しつつひんやり冷えたご飯と徐々に合わさり、最初はバラバラだったのが口の中でほんのりぬくい温度に変化していくのが心地よいです。
 大抵、火を通した豆腐はどんなに柔らかい物を使ったとしても僅かながら固くなるものですが、慎重に煮たのが功をなし、上出来な湯豆腐のようにフワッとした口当たりになった為満足しました。
 出汁は全く使っていないものの、噛めば噛む程たっぷり振り掛けたカツオ節から濃密な旨味エキスがグイグイ染み出てくるので、十分ちょうどいい味付けになっていくのがよかったです。
 寄せ豆腐はザル豆腐のような濃厚感を持っているくせ、それよりは適度な硬さを持っている為食べやすく、個人的にはどの豆腐よりも好みでした。
 塩によって大豆本来のふくよかな甘味がさらに引き立った豆腐と、冷えた事によって素朴な甘さが際立ったご飯が相乗効果で旨さがより膨らんでいくのを、しょうが醤油のキリリとした辛味と清涼感のある風味がいい塩梅に引き締めてくれるのが何とも言えず美味で、冷や奴好きには堪えられない一品だと思います。


 寄せ豆腐が一番お勧めですが、手に入らない場合は普通の絹ごし豆腐やざる豆腐で作ってみても充分美味しいと思います。
 あと、しょうがの代わりにわさびやもみじおろしを乗せてもなかなかよかったです。

○追記(2012.9.25)
 これは、コメント欄では無記名さん・リアルでは知人からメールで言われて分かった事ですが(kawajunさん、ご指摘ありがとうございます!)、確かに『花のズボラ飯』に出てくる“ハナさん流明太子丼”と“賄い三方よしの豆腐丼”は材料が結構似ています;。
 ただ、“ハナさん流明太子丼”は冷ご飯ではなく温かいご飯をさらに電子レンジにかけて熱々にしたり、明太子をいっぱい乗せたり、おまけにしょうがはかけてなかったりと細かい点での差異が目立ちますし、なんと言ってもあちらでは発案者の青年が「バターが超重要!」と力説しているように、バターがあるかないかでは「もはや別物…」と言いたくなるくらい味が違っていたので、個人的にはほぼ別料理だと思いました。
 なので、機会があれば食べ比べしてみるのも面白いかもしれません(^^;)。

●出典)『心星ひとつ―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『パンむすめ』の“秋の味覚さんまパン”を再現!

 先日、相方さんから萩尾望都先生の作品集を何冊か借りたのですが、その中の一作『エッグ・スタンド』に何ともいえないやるせなさを感じました。
 萩尾望都先生の作品は、時折分かるようで分からないような終わり方をする作品もままあるのですが(これは、大島弓子先生の作品にも言えることだと思いますが;)、この『エッグ・スタンド』に出てくる三人の主人公達と、終わりがあるのかないのか分からないゆるやかな死の世界観は掴みやすく、それゆえに心に染み入りました。

 どうも、最近めっきり涼しくなったと実感した管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『パンむすめ』にて主人公・熊飼ちはるちゃんが発案して秋に売り出した新作・“秋の味覚さんまパン”です!
秋の味覚さんまパン図
 漫画『パンむすめ』とは、生まれた時から超がつくほどパンが大好きな明るく元気な主人公・熊飼ちはるちゃんと、製パン学校時代からのよき相棒である男前なクールビューティー・森本夏緒ちゃん(通称なっちゃん)のお二人が、一旦ちはるちゃんのおじいちゃんが腰を痛めて閉店してしまった実家のパン屋・<こぐまベーカリー>をリニューアルオープンさせ、日々美味しいパンや愉快な常連客に囲まれながら試行錯誤しつつ頑張る日常系パン屋コメディ漫画です。
 とにかく出てくるパン全てがおいしそうで、アンパンやチョココロネといった定番商品はもちろん、パネトーネを筆頭とするクリスマス商品、すぐに売り切れてしまうデニッシュ・ショコラ、商店街の名品ばかりを詰め込んだ春限定の巨大バゲットサンド、栄養があって夏バテ撃退出来る特製カレーパンなど、読み終わる頃にはパンを食べたくてしょうがなくなる事請け合いなので、空腹時にはかなり危険な作品です;当管理人が初めて読んだのは深夜だった為、朝まで我慢するのが大変でしたorz)。

 ボケ役のちはるちゃんとツッコミ役のなっちゃんが繰り広げる漫才風のやり取り、そして常連客・ご家族・商店街の人々との温かな交流が読んでいてほのぼのする感じで、時折飛び出すトンデモエピソードも面白いです。
 前オーナーであるおじいちゃんが出した、「オープン日から一年間の収入がおじいちゃん時代の平均収入を越えなかったら、お店をたたんで嫁に行くこと!」という条件をクリアーする為、そしてちはるちゃん自身の目標である「十年後の理想のお店計画」を実現する為全力で突っ走っているのを見ると、「ああ、目一杯青春しているな~」と眩しい気持ちになります。
 夢を叶える為、可能性の塊である若い女の子達が懸命に努力する姿は、ただただほほえましいの一言に尽きます(^^*)。
パン生地担当のなっちゃん、具材担当のちーちゃんが本作の主人公
 が、実を言いますと、ちはるちゃんにはパン作りに関して最大の弱点があった為、当初おじいちゃんから「熱意は認めるが、無理!」とパン屋を継ぐ事を大反対されていました。
 その弱点とは、作るパン全てが謎の物体になってしまう事!
 ベーコンエピを作ればレモンも一突きできる硬くてとがった物体、五センチのプチパンを作れば全部くっついて一メートル近くになった風船みたいに浮かぶ物体、バゲットを作れば見事に反り返ったイナバウアー状態の物体など、ネタならともかく商品化は絶望的なパンばかりで、その腕前は製パン学校時代にはもはや伝説となる程…。
 その為、さすがに前向きなちはるちゃんも学校卒業間近には「やっぱり私は、パン屋さんにはなれないのかな…」と途方に暮れるのですが、幸いちはるちゃんの描いた「十年後の理想のお店計画」に成績優秀ななっちゃんが賛同(まあ、半ばちはるちゃんに引っ張られてですが;)してついてきてくれたので、ちはるちゃんはオーナー兼具材担当・なっちゃんはパン生地担当という事で何とか<こぐまベーカリー>は開店する運びとなったのでした;。
 このエピソードを読むと、「狂おしいほど好きでも、残酷なくらい才能がない場合もままある」という極めてきつい現実を痛感させられるので、なかなかシビアな設定だな~と思います(´Д`;)。
 けれども、ちはるちゃんのこの能力はなっちゃんを<こぐまベーカリー>に引き寄せるキッカケになってますし、ラストの伏線になっていると言えなくもないので、「人生何が幸いするのか分からないのだから、最初から諦めちゃいけない」という言葉を噛み締めさせられます。
もはや、パン作りに限定したスタンド使いなのではないかと思います;
 あと、基本的にはほのぼのコメディがベースにはなっていても、経営は素人同然のちはるちゃんが担当・先代のファンも根強い二世店・先代のしなかった新しい試みもする・商売を広げるという難しい課題を抱えた新生<こぐまベーカリー>は大きな壁にぶつかる事も多く、決して甘くはない商売の世界が垣間見えます。
 その為、様々な問題に直面しては慌てたり、焦ったり、ぶっ倒れたりと、ハラハラする展開もてんこもりになっています;。
 けれども、そんな時には周囲の人達が時には厳しく(主におじいちゃんが担当;)、時には優しく、絶妙の間合いでアドバイスしてくれるのですが、そのどれもが含蓄のあるものばかりで、参考になります。
 特に、当管理人の心に残ったのは、売上げが伸びて舞い上がっているちはるちゃんに対しておじいちゃんが言った「商売人はな、自分だけ儲けたらいかん!」
 自分達が利益を上げる事も大切だけれども、それだけしか目に入らないようでは長く商売は続けていけない。
 自店だけではなく他店にも、商店街にも、公共施設にも、そして最終的には町全体が栄えるようにと間接的に協力し合い、共存共栄すれば結果的に商いは長く続けられると自らの行いによって教えるおじいちゃんは、色んな意味ですごく魅力的なキャラだな~と感じます。
 最近はこういう相互扶助的な「商い」より、あくまで自社の上部のみ得をする方針の「ビジネス」という考えの方が一般的なので、『パンむすめ』を読み、改めて色々考えさせられました。
自分だけ儲けようと考えるのではなく、共存共栄をモットーに
 今回作ってみるのは、秋の新作としてちはるちゃんが開発した“秋の味覚さんまパン”!
 作り方は意外と簡単で、三枚におろしてハーブとにんにくで味付けした焼きサンマを、普通のコッペパンにレタスと一緒に挟んだら出来上がりです。
 ちはるちゃん曰く、トルコ名物であるサバサンドをヒントに思いついた創作パンだそうで、香ばしいサンマが意外にもパンによく合うとみんなにおすすめしていました。
 焼いたサンマとパンという組み合わせは結構冒険だな~とはじめは思いましたが、ご飯に合うおかずは大抵パンにも合っちゃうものなので、なかなかいい着眼点だな~と思います。
 ただ、<こぐまベーカリー>の厨房でいざ焼こうとしたらあやうく店中にサンマの匂いが染み付きそうになったり、お持ち帰りしたある少年の袋からサンマの香りが猛烈に漏れてその場にいる全員のお腹を鳴らせたりと、一種の兵器とも言えなくもない人騒がせなパンなので、定番商品にするのは難しいかもな~と感じました;。
「秋と冬はパン屋の稼ぎ時!」と張り切るちはるちゃんあまりにもいい香りすぎるサンマフレーバーで、あちこちで波乱が;
 最近、一時期手に入りにくかった生サンマがやっと手に入るようになってきたので、これをいい機会に再現しようと思い立ちました。
 正直パン焼きの腕は素人なので、なっちゃんの焼く極上パンには敵うべくもないですが、出来る範囲で作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、コッペパン作り。ボウルに強力粉、薄力粉、砂糖、ドライイースト、塩(砂糖から離して入れたほうがいいです)、人肌くらいに温めた牛乳を入れて手で混ぜ、粉っぽさがなくなって一つの塊にまとまるまでこねます。
秋の味覚さんまパン1
秋の味覚さんまパン2
秋の味覚さんまパン3
 粉がまとまったら清潔な台に乗せ、手の付け根でググッと力を込めて押し出すようにしてよくこね、バター(又はマーガリン)を加えてさらにこねます。
 バターと生地がなじんで表面にツヤが出てきたら、つなぎ目が下にくるよう再度ボウルに入れ、ぬらしたキッチンペーパー(又は清潔な濡れ布巾)とラップをかけ、暖かい場所で一時間程度かけて一次発酵させます。
 ※バターとパン生地はかなり混ざりにくく、最初の内は手の熱で溶け出したバターが生地の表面をはじき返されるだけで面倒な事この上ないですが、めげずにこねまくっていると次第にしっとりまとまってきますので、諦めない事が大事です。
秋の味覚さんまパン4
秋の味覚さんまパン5
秋の味覚さんまパン6
 生地がふっくら膨らんでいたらガス抜きをして六等分に丸めてわけ、ぬらしたキッチンペーパー(又は清潔な濡れ布巾)とラップをかけて約十五分のベンチタイムさせます。
 ベンチタイムが終ったら、手のひらで横長の長方形に伸ばし、手前から奥に向けて優しく巻いて両端と巻き終わりをきっちりとじます。
秋の味覚さんまパン7
秋の味覚さんまパン8
秋の味覚さんまパン9
 クッキングシートを敷いた天板に巻き終わりを下にして生地を置き、またぬらしたキッチンペーパー(又は清潔な濡れ布巾)とラップをかけて、暖かい場所で約三十分~四十分かけて二次発酵させます。
 生地が心持ち膨らんでいたらキッチンペーパーとラップを外してオーブンに入れ、190度のオーブンで二十分前後焼き上げます。
 焦げかけたらアルミホイルをかけつつ中までふっくら焼けたら、コッペパンの出来上がりです!
秋の味覚さんまパン10
秋の味覚さんまパン11
 次は、サンマのハーブ焼き作り。
 生のサンマから頭・内臓・ヒレ・尾を取り除きつつ三枚下ろしにし、流水で汚れを落としてキッチンペーパーで水気を拭き取ったらある程度切り揃え、塩とこしょうを振ります。
 ※サンマは新聞紙の上で捌くと、後片付けが楽です!あと、ゴミ袋にそのまま捨てると虫の発生が怖いという場合は、ごみ収集所へ持っていく直前まで冷凍庫で凍らせて保管すると安心です。
秋の味覚さんまパン12
秋の味覚さんまパン13
秋の味覚さんまパン14
 その上から、粉末状のタイム、ローズマリー、バジル、パセリをふりかけて全面に軽くはたいてなじませ、少々時間をおきます。
 ハーブの香りがサンマに染みたら、スライスしたにんにくとオリーブオイルを入れて熱しておいたフライパンへ並べ(海の魚なので、皮ではなく身から入れた方がいいです)、両面がこんがりキツネ色になるまで焼きます。
秋の味覚さんまパン15
秋の味覚さんまパン16
秋の味覚さんまパン17
 サンマが焼きあがったら荒熱を取り、カリカリになったにんにく、レタスと一緒に切れ目を入れておいたコッペパンへ挟めば“秋の味覚さんまパン”の完成です!
秋の味覚さんまパン18
 ちょっと膨らみが足りなくて中が一部空洞化したり、表面がやや焦げかけていたりなど、所々に素人臭漂う一品にorz。
 これは毎回パンを焼くたびに感じる事ですが、毎日同じクオリティでパンを焼ける職人さん達は本当に凄いと痛感させられます(^^;)。
 しかし、焼きたてコッペパンの香ばしいバターの香りや、焼きたてサンマの猛烈なフレーバーは充分胃袋を鷲掴みする感じで、見た目はともかく味の方は期待が持てます。
秋の味覚さんまパン19
 それでは、出来立てほやほやの内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
秋の味覚さんまパン20


 さて、味はと言いますと…新しいお惣菜パンとして十分通用しそうな旨さ!ジャンクなようで体に優しい味わいに感心です!
 小麦の淡い甘さが噛む度に伝わってくる素朴なコッペパンに、程よく脂がのっていてジューシーなさんまがばっちりの相性で、確かにサバサンドに通じる物がある組み合わせだと感じました。
 焼きサバに比べると焼きさんまはよりあっさりしてさほど癖はない為、サバやイワシみたいにパンチのあるこってりした食べ味は期待出来ませんが、それらに匹敵するくらいコクのある甘い肉汁がたっぷりで、ホットドックを食べたのと同じ満足感があるのに肉を使っていない分、ぐっとヘルシーな後味なのがよかったです。
 コッペパンの切れ目ににんにくとハーブの風味が漂うオリーブオイルと、さんまのさっぱりした脂分が混じり合ってじんわり染み込んでいるのがまたよく、コッペパンだけかじってもしみじみ美味しい仕上がりになっていました(ハンバーガーのバンズのような醍醐味が楽しめます)。
 さんま自体はシンプルな塩味ですが、にんにくの力強い香り、タイムの鼻とすっと通る爽快な香り、ローズマリーの甘やかで魅惑的な香り、バジルの目が覚めるようなキレある香りが混然となっているせいかかなり複雑な旨さで、魚特有の臭みがきれいに消えていました。
 作中でちはるさんが「ハーブとガーリックの香ばしさ、たまらない!」とイチ押ししていたのも、もっともです。
 水分が抜けてカリカリ状態になったにんにくの食感と、シャキシャキパリッと張りのあるレタスの歯触りが、単調さを防ぐアクセントになると同時に後口を爽やかにしている為味のバランスが取れている感じで、一口食べたら病み付きになる素敵な一品でした。


 確かにサンマの匂いが強烈に漂ってくる為(本品はもちろん、キッチンやリビングにもしばらくこびりつきます;)、商品化は難しそうですが、自宅で作る分には充分ありだと思います。
 サンマではない青魚で作るのもおいしそうですし、パン作成が面倒な場合はコッペパンだけ買って手軽に済ますのもよさ気です。

●出典)『パンむすめ』 樹るう/芳文社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

『華中華』の“笑顔の生コーン・チャーハン”を再現!

 先月末、お気に入りだったラーメン屋さんが知らない間に潰れていた事が最近分かり、ちょっとショックでしたorz。
 ただ、おかしな事に相方さんが「あれ~?今月初めに、一度行った記憶があるんだけど…」と不思議がっていた為、「とっくに閉店しているはずなのに、何故か開いていたお店…まるで、怪談話のようだ」と少し空想にふけりました(まあ、十中八九相方さんの記憶違いだと思います^^;)。

 どうも、世の中にはパイナップルラーメンが存在すると知って驚愕した管理人・あんこです。


 今回再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんの大叔父である竹三郎さんが娘の奈可子さんに作った“笑顔の生コーン・チャーハン”です!
笑顔の生コーン・チャーハン図
 お盆も過ぎ、八月もあと少しで終りそうな頃、<満点大飯店>の実質的なオーナーである奈可子さんは、久方ぶりに前オーナーである父・竹三郎さんの元へ、今は亡き母にお線香をあげに訪れます。
 親子といえど、経営方針を巡って少し疎遠になってきていた奈可子さんに対して竹三郎さんは複雑な表情にしかなれず、「今日はなんだい?お母さんに線香をあげに来ただけじゃないだろ」とやんわり真意を聞き出そうとします。
 すると、奈可子さんは前回のお話以来感じていた、「昔、お父さんは上海亭のようにお客様に支えられるお店を目指していた」「今の<満点大飯店>は、かつてお父さんが実践していた経営理念からずれてきている気がする」という不安と、一生懸命やっている物のなかなかうまくいかないという本音を正直に話し、ここにきて先代の原点を知りたくなったと必死に訴え、竹三郎さんに「やっとそこまで到達してくれたか…」と一種の感慨と安堵感を抱かせていました。
 これまでの奈可子さんは、そこそこやり手ではあるものの一代目を越えようとするあまり勇み足を繰り返すシーンばかりで、何かとツメの甘い夫・計太郎さん同様頼りない印象を持っていたのですが、この時素直に自らの拙さを認めた事がきっかけで、<満点大飯店>共々急に大成長をしていきます。 
 日頃から、竹三郎さんは「娘の奈可子と、<満点大飯店>の先行き、そしてハナちゃんの成長を影ながら見守る事が生き甲斐」だと言いつつ、経営は奈可子さんと計太郎さんに譲り渡したのであちらから来ない限りはしゃしゃり出るわけにはいかないと口出しはずっと我慢していた様子だった為、親子がようやく歩み寄ったこの場面にはほっとしたのを覚えています。
 ※ちなみに、上記のセリフ↑はかつて竹三郎さんの相棒をしていた事もある楊貴妃さんが、「横浜幽霊会、そろそろ竹三郎ちゃんも参加するかい?ウフフ…( ´,_ゝ`)」という洒落にならない勧誘をした際、竹三郎さんが「いやいや、私はまだ死ねませんよ、楊貴妃さんヽ(;´∀`)ノ」と必死でかわす為に返した言葉の一つだったりします;。
 まあ、正直こんな風に死後の世界の安寧が約束されているのなら、死はそこまで恐ろしい物ではないだろうな~と、やや羨ましいです;。
お父さんが一代で築いたお店を大事に継ぎたいと願う二代目・奈可子さん
 そして、竹三郎さんは奈可子さんにいつか話そうと考えていた、<満点大飯店>が出来るまでの道のりを淡々と語りだします。



 昭和二十八年の四月、まだ十五歳だった竹三郎少年は、将来は料理人になろうと決意。
 そこで、当初は東京にて洋食の修行をしようと徳島から汽車に乗ったものの、横浜駅で汽車が故障し、当分動かなくなるというアクシデントに遭遇します。
 せっかくなので、異国情緒溢れる横浜で観光を楽しもうと思った竹三郎少年は中華街へ足を踏み入れるのですが、その内の一軒<満腹楼>で初めて餃子を食べ、「世の中にこんな旨いものがあるのか」とすっかり感動し、洋食料理人から一転して中華料理人になろうと飛び込みでその店に弟子入りします。
 最初は失敗ばかりで、いつも皿洗いや雑用ばかりだった竹三郎少年でしたが、「あのうまい餃子をいつか作らせてもらえる」という一念だけで真面目に努力した結果、ついに三年目で餃子を作る試験を受けることに。
 張り切った竹三郎少年は、お客様に喜んでもらいたい一心で餡をギュウギュウに詰めた具沢山餃子を作り、ドキドキしながら師匠に差し出します。



 …ここまで聞いた奈可子さんは、「お父さんの事だから、その餃子誉められたんでしょ?」と尋ねるのですが、竹三郎さんは苦笑して否定し、その理由を話します。
 当時の師匠曰く、餃子は正月料理で福が来るようにと願いを込めて、閉じる縁を白い歯に見立てて笑っているように包むのが原則だそうで、竹三郎少年の餃子のように縁が小さい、別物にしか見えないものは中華料理として認められないと諌めたとの事。
 その言葉を受けた竹三郎さんは、三年もいて中華料理の表面的なことしか学び取れなかったと大いに悔しがり、この事を戒めとする為に「料理人として生きるなら、どんな辛い時でも悲しい時でも、料理する時は常に笑顔を持って作ろう」と心に誓ったと懐かしそうに語っていました。
 後に、三十三歳で<満点大飯店>を持って独立した時にはさらにその想いを強め、中華街中から「お客様だけでなく、弟子や従業員にも決して怒鳴らず、常に笑顔で指導する人」と尊敬の念を持って評価される人物になってお店もどんどん大きくなっていったそうです。
 
 その昔、某ドキュメンタリー番組にてある経営者が「働いている人間が笑顔でないのに、お客さんが笑顔になる訳がない。従業員を大事にする事は、お客様を大事にする事に自然と結びつく」と話していた事があったのですが、竹三郎さんの経営理念も重なる部分があるな~と感じました。
 とすると、今のところ<満点大飯店>の経営理念に一番忠実なのは、やはりいつも笑顔で周囲にも明るさを振りまいている主人公・ハナちゃんだと言えそうです(^^*)。
偶然止まった汽車が、その後の人生を大きく左右しました
 その後、竹三郎さんが奈可子さんの為に<満点大飯店>の経営理念である「笑顔」を表現して作った昼食が、この“笑顔の生コーン・チャーハン”です!
 作り方は簡単で、生とうもろこしからそぎ取ったとうもろこしの粒を醤油で味付けして炒め、基本チャーハンの仕上げに投入して混ぜ、盛り付けの際に茎付きとうもろこしとゆで卵とで笑顔になるよう飾り付けたら出来上がりです。
 普段はシリアスなシーンで登場する事が多い竹三郎さんが、まさかこんな遊び心を発揮するとは思ってもみなかったので、初めて読んだ時は「そうきたか~Σ(´∀`;)!」と衝撃を受けました;。
 ともあれ、このチャーハンを食べて以来、奈可子さんは心を入れ替えて<満点大飯店>をいい方向へと舵取りして行くようになった為、個人的になかなか重要なエピソードなのでは…と感じた回でした。 
生とうもろこしを醤油味で香ばしく炒めるのがポイント!
 生とうもろこしが近所で安売りされていた為、これを逃したら再現は来年に延びてしまう…!と慌てて作る事にしました;。
 なるべく巻末のレシピとおりになるよう、頑張ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、とうもろこしの下ごしらえ。とうもろこしはなるべく新鮮な生の物を準備し、茎ごと切った一センチ幅の輪切りとうもろこしと、残りを包丁でそぎ落とした粒状とうもろこしの二種類を用意します。
 なお、輪切りのとうもろこしはさらに半分に切って半月状にしておきます(これが、チャーハンの口部分になります;)。
笑顔の生コーン・チャーハン1
笑顔の生コーン・チャーハン2
 この二種類の生とうもろこしを、コーン油を引いた中華鍋(又はフライパン)で軽く炒め、醤油でやや濃いめに味付けします。
 やがて、シャキシャキ感を残しつつとうもろこしに火が通ったのを確認したら、すぐに別皿へ移しておきます。
笑顔の生コーン・チャーハン3
笑顔の生コーン・チャーハン4
 次は、仕上げのチャーハン作り。
 あらかじめ、以前に作り方をご紹介したハナちゃん流基本チャーハンのレシピ通りに中華鍋(又はフライパン)で基本チャーハンを作っておき、先程の粒とうもろこし(半月切りの物は入れません)を投入してざっと混ぜ合わせます。
 ※あんまり炒めすぎてしまうと、せっかくの生とうもろこし特有の爽やかな食感がなくなってしまうので要注意です!
笑顔の生コーン・チャーハン5
笑顔の生コーン・チャーハン6
 とうもろこしがチャーハン全域に混ざったら火から下ろしてお皿へ盛り、最後に輪切りにしたゆで卵を目、半月切りのとうもろこしを口になるよう飾れば“笑顔の生コーン・チャーハン”の完成です!
笑顔の生コーン・チャーハン7
 当管理人が不器用なせいで、妙に胡散臭いお面みたいな笑顔のチャーハンになりましたorz。
 ただ、香りはとうもろこしと醤油が焦げた何ともいえない香ばしい匂いが最高です。
 ビールやチューハイと言うよりは氷入りの麦茶が似あいそうなチャーハンで、どんな味がするのか楽しみです!
笑顔の生コーン・チャーハン8
 それでは、冷めてしまわぬ内にいざ実食!
 いただきまーす!
笑顔の生コーン・チャーハン9


 さて、味の感想ですが…季節感溢れるチャーハンで旨しっ!生のとうもろこしの良さがヒシヒシと伝わってきます!
 実を言いますと、それまでとうもろこしが生かどうかという事はあまり気にせず食べて来たのですが、実際にもぎたて生のとうもろこしを調理して食べてみて「断然美味しい」と驚愕しました。
 うまく言えないんですが、とにかく口の中でプチプチシャキシャキ弾ける張りの良さが印象的で、素朴で強い甘味が塩気の強い香ばしいチャーハンと相乗効果で引き立っている為癖になりそうな味わいです。
 例えるとするなら「縁日の屋台で食べる焼きとうもろこしを、そのままチャーハンにしちゃいました」というべき懐かしい味で、焦げた醤油の深みのある風味が染み込んだチャーハンやとうもろこしでじんわり甘じょっぱいのが乙な夏にぴったりな一皿でした。
 とうもろこしの粒が弾けるたび、ジュワッと旨味たっぷりなエキスが飛び出てチャーハンに絡むのが美味で、これは旬だからこそ楽しめる期間限定な料理だと感じました。
 口の部分の茎付きとうもろこしはさらにジューシーで、ほぐされたものとはまたひと味異なる趣なのもいい感じです。
 茹で卵のホクホク感もいい箸休めになって単なる飾りに終わっていませんし、単純ながらも飽きのこない美味しさとはこの事なのだな~とほんのり和まされました。


 生のとうもろこしが手に入ったら、一度は作りたい夏限定チャーハンです。
 シンプルなレシピなので、とうもろこしは新鮮なものを使用される事をおすすめします。

●出典)『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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