『鉄鍋のジャン!』の“刈衣式スーパープディング”を再現!

 数ヶ月前、オリンピック報道が過熱していた頃の事。
 あるTV番組にて、イギリス現地で生中継していたリポーターさんの発言に釘付けになりました。
 スタジオにいるアナウンサーさんが「イギリス料理は不味いと評判ですが、実際のところはどうでしたかー?」と聞いた所、リポーターさんは「いいえ、そんなことないです!すごくおいしかったです!」と力説したんですが、「へえ~、そうなんですか!何が美味しかったですか?」と尋ねられた所、「到着した晩にイタリア料理店に行ったんですが、一品一品がとてもよかったです!あと、中華料理店や日本料理店も意外に美味しくて~」と、天然なのかギャグなのか分からない発言をしていました;。
 案の定、アナウンサーさんも困った顔になって「いや、あの、イギリスで食べる料理ではなく、イギリス料理の事を言ってるんですが~…」と苦笑交じりに言ったのですが、程なくして別のコーナーに変更になってうやむやになっていました。

 どうも、リポーターさんの名前をメモしなかった事を非常に悔いている管理人・あんこです。


 今回再現する漫画料理は、『鉄鍋のジャン!』にて主人公・秋山ジャンや<五番町飯店>の面々に挑戦者・刈衣花梨さんが出したびっくりデザート・“刈衣式スーパープディング”です!
刈衣式スーパープディング図刈衣式スーパープディング 小分け図
 『鉄鍋のジャン!』とその続編・『鉄鍋のジャン!R頂上作戦』には、ゆうに三十人以上もの中華料理人が登場しており、ジャンと対戦するか、もしくはトーナメント戦で別の相手にその腕前を発揮するかしているのですが、はっきり言って数人を除くとジャンに敵うようなキャラはほとんどいません;。
 正直、どの料理人もかなり腕が立つ一流料理人ばかりで、一般的な料理界ではそれなりに名前が知れ渡っている人物なので、決して実力不足なわけではないんです。
 ただ、ジャンが最凶過ぎるんです。
 実を言いますと、『鉄鍋のジャン』界では卑怯かつ非道な手を使う挑戦相手が結構登場するのですが、技術も戦略も性格も相手の一枚も二枚も上を行く百戦錬磨のジャンに太刀打ちするには役者不足な観が否めず、最終的にはほぼ95%の確率でジャンの容赦ない罵倒によってズタズタにされる為、読むごとに「やめて!もう相手のHPはゼロよ!」と言いたくなるシーンが連発される事もしばしばでした;。
 但し、本当に外道なチンピラキャラや姑息な手段を使うキャラがぎゃふんと言わされた時はスカッとするので、慣れたら癖になります。

 そんなダークヒーロー兼ツンデレ料理人(←一見きっつい性格ですが、意外に優しい所もあるのです)なジャンですが、如何に彼とても連戦常勝だったわけではなく、何度か苦戦したり負けを喫した事もあります。
 その中でも「これはジャン、負けるかも…」と思わず不安になった有名な対戦相手を挙げるとすると、「裏食医」と名乗る薬膳使い・五行道士「料理は半歩先」がモットーの天才・黄蘭青が真っ先に思い浮かぶのですが、とりわけ印象に残っているのは、一般人の素人という異色さでありながらジャンに「有能な料理人」とまで言わせしめた女性・刈衣花梨さんです!
 元はといえば、湯水財閥当主でありながら色んな事に才能を示して遊びまくっているスグル坊ちゃんに幼い頃から仕える執事さん(というより、もはや恋人同然の熱々ぶり;)なのですが、将来お役に立ちたいと思うあまりに料理・科学・物理・人体生理学・武道を一通りマスターし、その結果皮肉にもスグル坊ちゃんよりも料理のアイディア力がついてしまっている凄い女性でした;。
 当初は誰も刈衣さんの実力に気付いていませんでしたが、スグル坊ちゃんと料理勝負をする内にその事実をいち早く見抜いたジャンは「オレはあんたと勝負してみたい!」と名指しで勝負をもちかけ、唐突な発言に当たり前ですが刈衣さんは困惑。
 けれども、刈衣さんをかばって反対するスグル坊ちゃんに「ひょっとしてお前、三連敗する主人より執事の方が料理がうまかったらどうしようとか考えてビビってんじゃねーの?!」とジャンが猛烈に痛い所を突く暴言を吐いたのを聞くや否や、忠誠心の強い刈衣さんはカッとなり、即座に挑戦を受けていました(^^;)。
 それにしても、上記のやり取りを見ていると主人公サイドは一体どちらなのか分からなくなりますね;。
 しかし、この悪も善も超越した神発言やストーリー展開こそ、『鉄鍋のジャン』クオリティ!
湯水家に代々仕える執事の家系出身・刈衣花梨さん
 その後、刈衣さんは体力のなさと手際の悪さというハンデを持ちつつ「料理は学問!」という信念の元合理的な料理を作り、何と第一戦目でジャンに勝利します(興味深い勝負なので、詳しい内容は是非『鉄鍋のジャン!』13巻にてご確認を!)。
 当然、思わぬ敗北にジャンは悔しさと怒りを体を震わせますが、持ち前のポジティブさで「まぁ、オレ様の読みは的中したわけだな!やっぱただ者じゃなかったわけだ、その刈衣って女は!」とすぐに立ち直り、自信満々な刈衣さんに向かって「だけど学問だけでオレに勝てると思うなよ!」「最高の料理は、科学だの人体生理学だので作るもんじゃない、鍛え上げたこの腕が作るんだぜ!!!学者のお遊びとは違うんだよ!」と真っ向から宣言します。
 一見傲慢な物言いですが、料理人として日々サボらず鍛錬してきた自分の腕と勘に絶対の自信と誇りを示す内容なので、逆に言えば多少の事では揺らがない程がっちり努力してるんだな~とジャンを頼もしく思います。
スグル坊ちゃんの執事・刈衣さんとジャンの、仁義無き闘い編開幕です!
 が、敵も然る物で、刈衣さんは一向に動じずあるデザートを勝負の合間に差し入れします。
 それが、この“刈衣式スーパープディング”です!
 作り方は比較的お手軽で、バター・砂糖・卵黄・小麦粉・レモン汁・レモン皮・バニラエッセンス・牛乳・泡立てた卵白を混ぜ合わせて型に入れ、お湯を張った天板において高温のオーブンで湯せん焼きにしたらもう出来上がりです。
 このケーキの最大の特徴は、一つの生地をそのまま器に入れて焼くだけなのに、ケーキとカスタードの二種類が同時に出来てしまうという事!
 刈衣さん曰く、これは比重が関係しているんだそうで、焼いている内に空気を含んだ軽い卵白が卵黄と小麦粉を少量連れてきながら浮いて直火で焼かれる事によりスポンジケーキに、そして下に残った牛乳と卵黄は湯せんのやや低めの温度によってカスタードクリームになるとの事で、科学を応用すれば手間要らずで簡単に二層式ケーキが作れてしまうと作中で説明していました。
 ちなみに、この“刈衣式スーパープディング”に似たお菓子としては、中華の甜点心でスポンジとカスタードを何層も重ねて作る“カスタードあんの重ね蒸し”が挙げられるようですが、“カスタードあんの重ね蒸し”はスポンジとカスタードを別々に用意してさらに何回も積み重ねるという非常に手間のかかるお菓子であるのに対し、“刈衣式スーパープディング”は一つの手間で同じような味が作れる為、「これは面白い」と総料理長の弥一さんは絶賛しています(ただ、面白いと連呼する割に弥一さんの顔がずっと真顔だったのには苦笑;)。

 今ではすっかり定着した感じの二層ケーキですが、『鉄鍋のジャン!』にて紹介された時にはまだ一般的ではない製造方法だったので、初めて単行本で見た時には「へえ~!」と素直に感心したのを覚えています。
最初から混ぜて入れるだけでスポンジとクリームを同時に作れました比重によってスポンジとクリームの二種類に分離したと説明する刈衣さん
 我が家には深みのある天板がなかったので、再現はずっとお預け状態だったのですが、最近ちょうどいい大きさのアルミ製天板を見つけた為、再現を決めました。
 お菓子作りは正直苦手な方ですが、単行本にはちゃんと分量つきのレシピが記載されているので、それに沿って早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、肝心の生地作り。ボウルにバターと砂糖を入れて一体化するまでよく練り混ぜ、そこへ卵黄を一個ずつ加えながら分離しないよう注意して混ぜ合わせます。
 卵黄がバターと砂糖全体になじんだら、小麦粉、レモン汁、レモンの表面を摩り下ろした皮、バニラエッセンス(バニラビーンズでもOKですが、今回はレモンが主役のような物なのでエッセンスの方がお勧めです)を投入してさらに混ぜます。
 ※単行本通りの分量だと結構甘めに仕上がるので、甘さ控えめの方がいい方はお好みで砂糖の量を調整するのが無難だと思います。
刈衣式スーパープディング1
刈衣式スーパープディング2
 以上の材料がしっかり混ざったら、今度は牛乳を少しずつ入れながら丹念に混ぜていき、最後にあらかじめ砂糖を入れて腰がつくまでよ~く泡立てておいた卵白を入れ、泡が潰れぬよう気をつけながら軽く合わせます。
 これで、特製の生地は出来上がりです!
 ※あんまり混ぜなさ過ぎるとキレイな二層になりにくく、かと言って混ぜすぎてしまうとスポンジがうまく焼きあがらないので、混ぜ加減が難しいですorz。
刈衣式スーパープディング3
刈衣式スーパープディング4
刈衣式スーパープディング5
 次は、仕上げの焼き作業。
 バターを塗ったキャセロール(耐熱ガラスの器、アルミホイルで底を補強したケーキ型でも可)に先程の生地を流し込み、二センチのお湯を張った天板に置いて高温のオーブンで湯せん焼きにします。
 ポイントは二度焼きすることで、最初は170度で三十分前後かけて焼き、時間がたったらそのまま続けて130~140度で約十五~二十分に調節して焼きます。
 ※途中、スポンジだけ焼けすぎて焦げる可能性が高いので(当管理人も危なかったです;)、様子を見ながらアルミホイルを上部にかける事を推奨します。
刈衣式スーパープディング6
 スポンジとカスタードクリームに火が通っているのを確認したらオーブンから出し、短時間放置して荒熱を取れば“刈衣式スーパープディング”の完成です!
刈衣式スーパープディング7
 メレンゲたっぷりの生地なせいか、普通のスポンジに比べてやや湿り気のある焼き目ではあるものの、こんがり焼けている上に芳しい香気があるので味に期待が持てます。
 断面を横から見てみると、作中の描写と同じように上からスポンジ→境目→カスタードクリームとちゃんと分かれていて、「本当だ…!」と思わず胸が躍りました。
 レモンの香気といい、スフレのようなふくらみといい、見事に分かれた断層といい、一体どんな味がするのか非常に楽しみです!
刈衣式スーパープディング9
刈衣式スーパープディング8
 それでは、一人前分だけ大きいスプーンで取り分けて、いざ実食!
 いただきま~すっ!
刈衣式スーパープディング10
刈衣式スーパープディング11


 さて、味の感想ですが…二層どころか三層になっていて旨し!別々に作ったのとは、また違う良さがあります!
 試食前は「砂糖とバターたっぷりだから、こってりしてそう」と予想していたのですが、意外にもさっぱり頂けた為驚きました。
 表面は少しペトペトしたカステラ風の湿り気のある焼き目で、内側はふんわり優しいスフレ風の柔らかい舌触りのケーキなのですが、中央はスフレとカスタードクリームが入り交じったようなフルフルホロッとした極上の口溶けで、生地でもクリームでもない混然とした味わいにうっとりします。
 一方、下のカスタードクリームは、ソースとクリームの中間のとろみで普通のカスタードクリームよりもややあっさりめなのが特徴的で、比較的サラッと食べられました。
 この軽やかな口当たりの秘密はずばりレモンで、レモン汁のすっきり爽やかな酸味と、レモン皮の鼻をスーッと抜けていく清々しい風味がケーキ全体を爽快な後口に仕上げており、おかげでそこそこ濃厚なのに夏場でもつい手が伸びてしまう不思議な魅力に溢れた一品になっています。
 特に、下部分のカスタードクリームはレモン特有の切なくなるような甘酸っぱさがギュッと濃縮されつつ、卵黄のコクでまろやかにまとめあげているのが秀逸な為「とろとろレモンカスタードソース」として別のお菓子に使いたくなる程いい出来栄えでした(冷やして食べると、カスタードクリームは甘味がさらに強くなってしっかりする感じで、ママレード風クリームというべき味わいに変化するのがまたよかったです)。
 このクリームに、シフォンのきめ細かさとスフレの淡い食感を併せ持つケーキがぴったりの相性で、リッチな旨味と儚い口当たりを見事に融合させた上品な味わいが印象的でした。


 レモンの上品な香りが充分活かされたケーキなので、どちらかといえば盛夏~初秋向けのおやつではないかと思います。
 よーく冷やしてアイスティーと一緒に食べると、暑さで食欲が減退している時でもすぐに元気回復するような心地になるので、今の時期に是非お勧めしたいケーキです。

●出典)『鉄鍋のジャン!』 作画:西条真二 監修:おやまけいこ/秋田書店
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
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