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『なんちゃって駅弁』の“有田焼カレー”を再現!

 先月、一度も行った事がないもののおいしいと評判の居酒屋で家族と飲んだのですが、そちらのお品書きに「松田さんの笑顔(レア出勤)」という謎のメニューが載っており、その場にいた全員頭の中がはてなマークだらけになりました;(←念の為、仮名にしています)。
 一瞬、昔マクドナルドにあった「スマイル ¥0」みたいなものかな?と思ったのですが、こちらは¥7,800(税込)という妙に強気な価格設定で、ネタで頼むにはリスキーな分ものすごく気になりました…。
 結局、その日は勇気が出なくて注文出来なかったのですが、今度行ったら「今日、松田さん来てますか?」と夜のお店で指名するかの如くスマートに問いかけてみるつもりです。

 どうも、某漫画のように「“笑顔”ですね…かしこまりました、こちらへどうぞ」と合い言葉的に別室へ通されたら面白いのにな~とちょっとワクワクしている当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『なんちゃって駅弁』にて森口さんと宮本さんが元気をなくしている亀さんの為に作った“有田焼カレー”です!
有田焼カレー図
 それは、主人公の一人である宮本寿乃さんがまだ入社してまもなかった頃のこと。
 七十歳になったばかりの亀さんは、周囲で不幸が重なったり、胸焼けや食欲不振といった体の不調のせいでイマイチ気分が優れない日々を過ごしており、とうとう息子である専務から病院での検査をすすめられます(←頑丈そうに見えますが、こう見えて歯痛・ぎっくり腰・胃潰瘍でひと騒動起きた事あり。一度など、家族団欒の夢を幸せ気分になっている隙に亡くなった奥さんからあの世へ連れて行かれそうになるという、いい話風に見えてホラーな臨死寸前体験までしています;。あやうく、「奥様は魔女」ならぬ「奥様は死神」になる所でした (((( ;゚Д゚)))ガクブル)。
 しかし、あまり深刻に考えていなかった亀さんは「そんなヒマはない!まあそのうちいくよ」と適当に返すのですが(←本当は行く気がない時の常套句;)、内心心配していた専務は「…お父さん!そろそろ引退を考えられたらどうですか?」「あなたはもう年だ、老人です。会社も若返る必要があるんです!」とついきつい言葉で引退を迫り、その結果「お前にはまだ無理だ!」「無理なのはそっちでしょ」「会社は譲らん、クビだ!」「次の取締役員会で引導をわたしてやる!」と喧嘩になってしまいます。
 会社の今後が関わっている話なので深刻かつ壮大な内容に見えますが、言い合いの内容は「お前の母ちゃんでべそ!」レベルの他愛ない家族喧嘩で苦笑します;←専務は推定四十代~五十代くらいなので充分頼りになると思うのですが、亀さんからしたらいくつになっても「まだまだ頼りない子ども」という存在なんでしょうね…)。
 リアル系バトル漫画界やスポーツ選手界だと、体力や持久力が若い頃と同じではないと数値や感覚で分かりやすいせいか、実際に戦って負けた時に「後は頼んだ!」とすっぱり引退出来る方が多い印象ですが、亀さんの場合は現場を駆けずり回る体力勝負がない分衰えが実感しづらく、それで「まだ引退しなくても大丈夫!」となるのかな?と思います(^^;)。
いまいち体調が優れない父に対し、少々きつめに譲位をお願いする息子さん;
 その時、宮本さんと森口さんは「このところ社長、まるで元気がないのよ。お昼に駅弁を食べるのが唯一の楽しみだって言ってたのに…」「確かに心配だな。あの食い意地の張った人が食欲がないなんて…」と話し合っており、珍しくお弁当をいらないと言い出した亀さんを心配していました(←駅弁大会があると、まるで大量の戦利品で崩壊寸前の紙袋を両手に持って帰るコミケ参加者状態になる亀さんですので、そう言いたくなる気持ちは分かります。同人誌と違ってお弁当は日持ちしないのに、一人であれだけ買い込むなんて天晴れと言う他ありません;)。
 どうやったら亀さんの食欲が出るのか、二人して考えるのですが、その時宮本さんが妙案を思いつきます。
 それは、特製カレーの差し入れ!
 宮本さんが小さかった頃、ウイルス性胃腸炎にかかって治ってるんだか治ってないんだか分からない程苦しんだ時期があったようなのですが、そんな時お母さんがカレーを作ってくれたそうで、匂いを嗅ぐ内に食欲が湧いてやっとご飯を食べられたとのこと←病気で意識が朦朧としている時にやっとの思いで食べる温かな食事って、特別感があるせいか妙に印象に残る気がします。当管理人の場合、治りかけると出てくるご飯入りの鍋焼きうどんが好きでした^^)。
 一番きつい時だったらかえって逆効果かもしれませんが、確かにカレーは病み上がりで食欲不振をズルズル引きずっていても一気にお腹をすかせるパワーがありますので、ナイスアイディアだと思いました(←とても存在感のある香りの為、食べる場所によっては新幹線でジェットボックスシウマイを温めた五郎さんの如く「ジェットのせいで歯車がズレたか…」状態になりかねない危険性がありますが)。
 実際、薬膳料理でもあるカレーは刺激や油脂に気をつけさえすればいい回復料理になるみたいで、最近では喉の痛みを和らげる効果まであるのが判明しているのだとか。
幼い頃、病気が治りかけている時にカレーの香りをかいで食欲が湧いた宮本さん
 こうして、森口さんと宮本さんが亀さんの食欲を取り戻そうとして二日がかりで作ったなんちゃって駅弁が、この“有田焼カレー”です!
 作り方は手が込んでおり、玉ねぎ・牛スジ肉・赤唐辛子・にんにく・生姜をホール状のスパイス類と一緒に圧力鍋で約二時間煮込んで特製スープを作り、そのスープに赤ワイン・砂糖・カレールー・デミグラスソースを入れて一晩寝かせ、翌日に紫ウコン・クミン・コリアンダー・チリパウダー・山椒・インスタントコーヒーを加えてさらに煮込み、ご飯にチーズと一緒に乗せてこんがり焼いたら出来上がりです。
 ポイントは、カレールーもチーズも二~三種類ブレンドして使うこと、ホールスパイスは割ったり潰したりしてから入れること、ご飯を盛る時はふんわりではなく少し固めるようにしてよそうことの三点で、こうするとより本物に近くなると作中で語られていました。

 有田焼カレーとは、2007年に地域活性化を願って有田駅で発売されて以来、年間約10万個を売り上げる人気ぶりで様々な賞を受賞している、日本初にして唯一のカレーの駅弁。
 28種類のスパイスをブレンドして一週間煮込んだ本格的な味わいが特徴で、ついてくる器も本物の有田焼なのでお得感があります(←毎年新しいデザインの器に変わるのがコレクター心をくすぐります)。
 特筆すべきは、欧風カレーなのにちっとも胸焼けしないところで、マクロビと薬膳の知識を活かして「おいしい」と「体にいい」を両立した味に仕上げ、薬効の高い紫ウコンやレモングラスの力で健康食といっていい程のカレーを実現されたのだそうで、まさに弱っている亀さんにぴったりな駅弁だと感じました。

 おかげで、体調不良と喧嘩が重なって不機嫌だった亀さんは、「いやーっ、うまい!熱くて辛くてスパイシーで!!」と一転して食欲を取り戻し、やっと元気になっていました。
 ちなみに、この時使った器は有田焼カレーの器ではなく、専務が一晩中車を飛ばして実家へ取りに行った、幼き日の亀さんが使っていたキレイなカレー専用のお皿。
 亀さんにとっては、今は亡き母との思い出が詰まった特別なお皿で、その話を覚えてわざわざ取りに行ってくれた専務に感謝し、無事仲直りするのでした(←憎まれ口ばかりで素直にごめんを言えない分、行動で思いやりを示したんだろうな~と思うとほっこりします)。
ちょっと値は張りますが、器は本物の有田焼ですごく使い勝手がいいです!カレーには珍しく炒め作業は一切なく、ひたすら煮込んで作りますわざわざ一晩かけて静岡の実家へ行き、亀さんお気に入りのカレー皿を取りに!
 ずっと気になっていたものの、色々と材料が不足していて作れなかったのですが、最近やっとスパイスや調理器具が揃ったので再現する事にしました。
 作中には詳細な分量つきのレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、ルーのベースとなる特製スープ作り。
 圧力鍋へホールのシナモン、カルダモン、クローブ、ローリエ、ローズマリー、ケッパー、レモングラスを入れてきっちり縛った小袋とお水を加えて火にかけ、少し煮込んでスパイスの香りをお湯に移します。
※ホールスパイスは手で適当な大きさに割ったり千切ったりしてから入れた方が、より鮮烈な香りがにお湯に溶け出るようになります。
有田焼カレー1
有田焼カレー2
有田焼カレー3
 いい香りが漂ってお湯が色づいてきたら、縦に薄くスライスした玉ねぎ、下茹でして洗った後ザク切りにした牛スジ肉、赤唐辛子、みじん切りにしたにんにくと生姜を投入します。
 こまめにアクを取りながらさらに煮込み、アクが出なくなったら圧力鍋のフタをしっかり閉じて加圧していき、二時間以上かけてじっくり煮込みます。
有田焼カレー4
有田焼カレー5
有田焼カレー6
 時間が経ったらフタをあけてザルでスープと肉&玉ねぎ片に分け、スープは計量カップで正確な量を計り、肉&玉ねぎ片はなるべく小さくなるようざっくりほぐしてから再度お鍋に戻し入れてまた火にかけます。
 これで、特製スープは準備完了です。
有田焼カレー8
有田焼カレー7
有田焼カレー9
 次は、カレー作り。
 特製スープへ赤ワインと砂糖を加えて煮溶かし、沸騰してきたら一旦火を止めてカレールーを少しずつなじませながら合わせていき、デミグラスソースも投入してよく混ぜ合わせます。
 調味料が行き渡ったら火をつけて約十五分程煮込み、荒熱が取れたら冷蔵庫に入れて一晩寝かせておきます。
※作中のレシピでは、カレールーは市販の物を二~三種類ブレンドして使う事を推奨されていました。ですので今回、ネットでお勧めされていたハウスのザ・カリー(辛口)グリコのZEPPIN(中辛)の組み合わせを採用してみました。普段はジャワカレー派ですが、たまには他の味も試してみたかったので…;。
有田焼カレー10
有田焼カレー11
有田焼カレー12
 翌日お鍋を火にかけ、煮立ってきたらパウダー状の紫ウコン(←別名:ガジュツ。生薬として使われることが多いスパイス)、クミン、コリアンダーを少しずつなじませながら合わせ、インスタントコーヒーを加えてかき混ぜます。
 この時、辛味が物足りなかったらチリパウダーと山椒をお好みで投入して味の微調整を行い、コトコト煮込みます。
有田焼カレー13
有田焼カレー14
有田焼カレー15
 ここまできたら、いよいよ焼き作業。
 やや硬めに炊いた白ご飯をお好みの有田焼カレーの器へよそい、優しく形を整えながら丸く固めて盛り付け、上から熱々のカレーをまんべんなく注ぎます。
 この中央に二~三種類ブレンドしたとろけるチーズを乗せ、高温に熱したオーブン(又はオーブントースター)へ入れて三分前後かけて焼きます。
※当管理人の場合、ごく普通のピザ用チーズに、スライスタイプのモッツァレラチーズをブレンドしてみました。濃い目のカレーなので、淡白で癖の少ないチーズが向いていると思います。
有田焼カレー16
有田焼カレー17
 こまめに焼き具合をチェックしてチーズがとろけてきたらすぐに取り出し、そのまま急いでテーブルへ運べば“有田焼カレー”の完成です!
有田焼カレー18
 チーズの色合いが微妙に違ってしまいましたが、それ以外は見た目といい香りといいほぼ同じ感じに仕上がり、ほっとしました。
 本物の有田焼カレーは既に五回以上食べていますが、一向に飽きないというすごい魅力の美味しさですので、なんちゃっての方は一体どんな感じなのか非常に楽しみです!
有田焼カレー19
有田焼カレー20
 それでは、チーズがトロトロの内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
有田焼カレー21


 さて、感想は…かなり本物に近い美味しさで感動!プロのカレーと遜色のない出来映えで満足です!
思いがけぬカレーの駅弁に、体調悪もふっとんで喜んで食べる亀さん
 格式高いレストランで出される本格欧風カレーという感じのこれ以上ないくらい濃厚なコクが特徴的で、牛肉の旨味がたっぷりと贅沢に効いたこってりした王道の味付けにうっとりします。
 具はコンビーフみたいに柔らかい繊維状になり、簡単に舌でほどける程ホロホロになった牛すじ肉と、ほぼ溶けてトロトロのペースト状になった玉ねぎのみですが、両方ともしっかりした味なのでむしろこれがちょうどいいくらいで、口の中で白ご飯と合わさって噛み締めると程よく中和し、渾然一体となって絡み合うのがたまりません。
 本物を食べる時、まるで老舗洋食屋のビーフシチュー風カレーと言いたくなるような圧倒的に深い甘辛さと、重厚なのにとろけるようなまろやかさに圧倒された物でしたが、それは牛すじ肉の骨太な出汁とデミグラスソースの熟成された旨さのおかげだったんだなと実感しました。
 ここにまったりとした酸味と複雑な塩気が効いたこんがりチーズが加わると、これ以上ないくらいリッチでスパイシーなビーフカレードリアになる感じで、ルーの濃さがやや緩和する為そのまま食べるよりもかえって甘味や美味さが引き立つのがナイスです。
 こんなにも濃い味わいなのに、紫ウコンを始めとする漢方薬チックなスパイスや油を極力控えた調理法のせいか不思議と胃にもたれない為、見た目によらず体に優しい後口なのが印象的でした。
 焼いて表面から水分が飛ぶと、少し煮詰められる分ルーがキリリと締まって味がぐっと凝縮される感じで、何とも言えない香ばしさがプラスされているのがよかったです(←お皿のハンバーグと鉄板ハンバーグの違いみたいなイメージ)。


 よーく味わうと、個々のスパイスの割合が少しずつ異なって微妙に違う風味になっていたり、こちらの方がやや辛めだったりと細々した差異はありましたが、家でここまで肉薄した物が作れるならたいしたものだと思います(←改めて、レシピを作り上げた原作の守靖ヒロヤ先生を尊敬!)。
 正直、近頃は濃い欧風カレーを食べるとやや胃が重くなっていたのですが、こちらのカレーはびっくりするくらい負担がかからず、最後までおいしく頂く事ができました。
 夫にも確認した所、「本物とそっくりで旨い」と喜んでいました。
 手間と時間と費用がかかるのでそう頻繁には作れませんが;、時々無性に食べたくて仕方がなくなる味です。


P.S.
 ましろさん、鯵仙人さん、無記名さん、無記名さん、コメントを下さりありがとうございます。


●出典)『なんちゃって駅弁』 原作:守靖ヒロヤ 作画:上農ヒロ昭/実業之日本社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

『どんぶり委員長』の“くん製づくしの香り高きネオ親子丼”を再現!

 先日、ふと思い立ってスマホで過去に撮った写真をずーっとさかのぼって見直してみたのですが、ごく一部のイベント写真を除くとほとんどが食べ物と猫とネタ画像ばかりで、恥ずかしくなりましたorz。
 我ながら食い意地が張っていて情けないのですが、一見するとただの料理写真でも「これを食べてる時、こんな番組をみてたな」「このお店では、あんな出来事があったな」など、意外と細かい事を連鎖して覚えている感じで、文章なしでもここまで記憶って残るものなんだな~と人間の脳の仕組みに感心しました。

 どうも、時々全然撮った覚えがない謎の画像が残っているのを発見しては推理に没頭している当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『どんぶり委員長』にて吉田君が林間学校へ行った際に委員長の為に作った“くん製づくしの香り高きネオ親子丼”です!
くん製づくしの香り高きネオ親子丼図
 ある夏の日、吉田君と委員長は林間学校に参加します。
 自由行動の際、ほとんどの生徒は周囲の探索へとアグレッシブに出かけたようでしたが、委員長は大自然の中で静かに読書、吉田君は炊事場で燻製作りとバリバリインドアな過ごし方をしており、一見正反対でも本質的には似たもの同士だな~と苦笑しました;。
 通常、こういう時学校側は「登山だ!」「カヌーで川下りだ!」「天体観測だ!」「キャンプファイアーだ!」とパリピやリア充ばりにを賑やかなスケジュールを詰め込んで生徒に息つく暇も与えないのがデフォなはずなのですが、よくも悪くも吉田君達の高校はのんびりしているみたいで、こういう生徒の個性に特化した遊びをさせる林間学校もありかも…と感じたものです。

 それにしても、燻製器があるなんて珍しい宿泊施設だと思いましたが、何とこの燻製器は吉田君がお父さんから誕生日にプレゼントしてもらった自前の物で、林間学校で思いっきり試したいと考えてわざわざ持参したとの事(←小学三年生にして都々逸が得意なちびまる子ちゃん並に渋い高校生ですね)。
 おかげで当初は引いていた委員長ですが、出来立てのスモークチーズを食べた途端、 「な…何これ!?すっごく美味しい…!!」「アタシが今まで食べてたあのチーズと全然違う…!!」と一気に燻製の虜になり、熱い手の平返しをしていました;。
 普段は自他共に学校の規則に厳しいクールキャラなのに、おいしい料理を食べると「ふああああ!」とすぐに食欲の暗黒面落ちするその様は、さながらバイクに乗ると人格が変わる『こち亀』本田速人さんのようです。
誕生日に買ってもらった燻製器を使い、スモークチーズやスモークチキンを作る吉田君
 実を言いますと、吉田君は自分用にスモークチキンを作っている最中だったのですが、それを聞いた委員長は「チキンもさっきのチーズのように美味しく進化するというのかしら…!?」ロマンティックが止まらない状態になり、燻煙が立ち上る中「アタシのためにスモークチキンでどんぶり作ってくれる!?」喪黒福造ばりのドーン!なポーズをして依頼していました(←関係ないですが、煙の中から登場するキャラって強キャラ感が凄い気がします。例えば『ドラゴンボール』のギニュー特戦隊編で、ベジータが連続エネルギー弾を山程食らわせても、爆煙の中から「ハーイ!」とかわいいポーズで現れたリクームさんとか)。
 とはいえ、丼に必要なお米も器もないので難しいと吉田君は断りかけるのですが、何でも委員長はお米もマイどんぶりももしもの時の為に持ってきていたそうで、あまりの準備のよさに今度は吉田君が引いていました;。
 「聞くな! 俺は文具屋だ」と言ってセロテープ・特殊ワイヤー・スタンガン・豚肉・味噌をドラえもんの如くポッケから取り出していた『彼岸島』の西山君かと心の中で突っ込んだものです。

 ちなみに、この時吉田君は「これで作りたいどんぶりには卵が必要なんだ~」と言って尚も断ろうとしていたのですが、「さっきここに来る途中に養鶏場があったからお願いしてもらってくる!!その間に飯盒でお米炊いといて!!」とさっきまで日焼けを嫌がって室内にいたのが嘘みたいに行動的になっており、吉田君を呆れさせていました。
 食にこだわる事では定評のある『ミスター味っ子』の陽一君ですら、林間学校中は周囲からせっつかれるまで大人しくしていましたので、ある意味委員長の丼愛は陽一君を超えるものがあるな~と妙に感心させられました;。
燻製器の煙で燻されつつも、いつも通り丼作成の依頼を出す委員長;
 こうして、委員長がわざわざ養鶏場で分けてもらった(←作中の様子から察するに、こっそり盗んだ疑惑が濃厚ですが)卵とスモークチキンを使って吉田君が作ったのが、この“くん製づくしの香り高きネオ親子丼”です!
 作り方はとても簡単で、サクラチップで鶏もも肉を燻して作ったスモークチキンを食べやすい大きさに切って丼ご飯の上に乗せ、同じくサクラチップで燻製にした生卵と醤油をトッピングしたら出来上がりです。
 ポイントは、鶏もも肉はなるべく水分をきっちり拭き取ってから燻すこと、卵は半熟状に仕上げる為燻しすぎないよう注意する事の二点で、こうするとジューシーで香り高い燻製に仕上がると書かれていました。
 鶏肉や卵ならともかく、醤油を燻すなんて初耳でしたが、仕上げの際にちょっと使うだけで味が激変する魔法の調味料として前から有名だそうで、スモーキーな香り付けが出来る上、味醂のような甘みや照りを料理につけられて便利なのだとか。
 事実、このオール燻製尽くしの丼は今までに類を見ない味わいだったようで、感動のあまり委員長は「芳醇な香りと、濃厚な旨みが加わった至極の味に!!」「そして、このじっくりといぶされたたまごと醤油が、ごはんとチキンを丸ごとくん製の香ばしさで包み込んでくれる架け橋になっている…!!」「アタシはこの味に…どんぶりの未来を感じずにはいられないっ…!!」『孤独のグルメ』の五郎さんみたいなナレーションで絶賛していました。
丼欲に支配された委員長の目には、吉田君がすっかり王子様に見えていました
 近所のホームセンターへ行った際、燻製用のサクラチップを発見して再現する事にしました。
 作中には分量つきの詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、鶏肉の燻製作業。
 中華鍋の底にアルミホイルを敷いてサクラチップを乗せ、その上にアルミホイルを空気の逃げ道ができるよう適度に隙間を作りながらかぶせ、さらに網をセットします(←生の肉類を燻す時、下に肉汁等が滴って非常に焦げ臭い匂いがつきやすいので、アルミホイルでガードする作業は不可欠です)。
 この網の上へ、塩を軽く振って水分を少し抜いた後に水気をしっかり拭いておいた鶏もも肉を乗せ、一旦強火で煙をおこしてすぐにフタをして弱火にし、二十分以上かけて燻します。
くん製づくしの香り高きネオ親子丼1
くん製づくしの香り高きネオ親子丼2
くん製づくしの香り高きネオ親子丼3
 時間が経ち、肉の内部まで熱が通ってしっかり燻せたら取り出し、包丁で鶏もも肉を食べやすい大きさにカットします。
くん製づくしの香り高きネオ親子丼4
くん製づくしの香り高きネオ親子丼5
 次は、醤油と卵の燻製作業。
 中華鍋に新しくアルミホイルとサクラチップと網をセットし直したら(←今度は上にアルミホイルをかぶせなくてOKです)、それぞれ小皿に入れた醤油と生卵をこぼさぬようそっと乗せます。
 材料を乗せ終えたら、さっきと同じように一旦強火で煙をおこしてフタをし、弱火で約二十分かけてじっくり燻します。
 燻し終えたらすぐに取り出し、熱が通り過ぎないようにします。
※下の画像だとプロセスチーズが一緒にのってますが、これは自分達の晩酌のつまみ用今回の再現に全く関係ないのでスルーして下さい;。
くん製づくしの香り高きネオ親子丼6
くん製づくしの香り高きネオ親子丼7
 炊き立てご飯を丼容器によそったらその上に先程のスモークチキンを並べ、真ん中に燻製した半熟卵を落として燻製醤油を回しかければ“くん製づくしの香り高きネオ親子丼”の完成です!
くん製づくしの香り高きネオ親子丼8
 部屋中に色濃く漂う燻製特有の芳しい香りがたまらなく、この空間が既に料理の一部となっているな~と感じました。
 具は鶏肉と卵のみ、味つけも醤油だけという硬派さですが、果たして本当に親子丼として成り立つのか…早速食べて確認してみようと思います!
くん製づくしの香り高きネオ親子丼9
 それでは、半熟卵を絡めていざ実食!
 いっただっきまーす!
くん製づくしの香り高きネオ親子丼10


 さて、感想は…予想の斜め上を行く美味しさで感動!燻すという一手間だけでここまで味がガラリと変化するとは、びっくりです!
じっくりと燻された醤油と卵が、本っ当にいい仕事をしてるんです!
 鶏皮はコリコリシコシコとした歯触り、肉はふっくら柔らかでさっくりと簡単に噛みきれる食感で、まるで醤油系の下味をつけて蒸し焼きにしたようなこってり濃厚な味わい。
 ある程度油分が落ちているので基本あっさりとしているのに、濃厚な脂が舌の上でじゅわっと溢れ出すのがワイルドな印象で、肉の回りにほんのり燻しのベールをまとっているせいか、蒸した時よりも肉の旨味が濃く封じ込められているように思いました。
 市販のスモークチキンだと、保存の問題かどうしても水分が抜けて硬い食感になりがちですが、こちらはチキンステーキばりに肉汁が残ってジューシーでよかったです。
 噛むごとにスモークチーズにそっくりな深みのある香ばしい旨さがじわじわとにじみ出てくるのが酒の肴っぽく、ご飯にもビールにももってこいな仕上がりでした。
 燻製醤油は火を通す前よりもぐっと甘さが増し、塩気は大分抜けてまろやかになっているのが特徴的で、たまり醤油や刺身醤油に近い熟成されたコクのある甘味と、燻香の香り漂うほろ苦さが合体して生まれた複雑な塩気が絶品です。
 燻製卵は、白身トロトロで黄身ねっとりのちょっとやわめの温泉卵で、卵自体にがっつり匂いが染み込んでいる訳ではないのですが、後口でふわりと優しく香る程度なのが上品な感じで、燻製の風味が強い食材の中、ほっと癒される箸休め的な存在になっていました。
 例えるとするなら「焼き鳥屋さんが作った醤油ベースの燻製照り焼き風親子丼」というイメージで、炭火で焼いた鶏肉に近い香ばしさが出ているのにうっとりです。


 想像していたよりも燻製するのは簡単だった上、味も市販品を越える美味しさだったので大満足しました(←個人的には、醤油でもちゃんと燻すことができるのにびっくり)。
 夫も「お、ちゃんと燻製になってる!味が深い!」とパクパク食べながら感心していました。
 下味はせいぜい軽く塩を振るくらいなのに、燻すだけで調味料ではつかない複雑な奥行きが生まれるのが衝撃で、しばらくハマりそうです。


P.S.
 ねこさん、kawajunさん、ご指摘とご説明のコメントをして下さり感謝です。
 当管理人は未だ料理や食材の事は勉強中で知識不足な為、教えて頂けて大変ありがたいです。
 いつもありがとうございますm(_ _)m。


●出典)『どんぶり委員長』 市川ヒロシ/双葉社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

『ミスター味っ子』の“劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮”を再現!

 去年ディズニーシーへ行った際、 蝶ネクタイのスーツを着込んだリアル絵の魚がレストランでワインを片手にローストビーフやパンを食べるという、シュールなワンシーンを描いた広告が某レストランの前にデカデカと飾られているのを発見し、驚きました;(←アメリカンウォーターフロントという、二十世紀初頭のアメリカ合衆国の街を再現した一角にありました。その際撮った画像がこちら)。
 絵の下には「they don't get any fresher」という文が載っていたのですが、後々調べてみると「彼らはこれ以上新鮮な物を食べる事は出来ない(=ここは一番新鮮な食材の料理を食べられるお店です)」という意味があるのだそうで、なるほどレストランの宣伝か~と感心しました(←それにしては魚の絵が写実的すぎて食欲が湧くような代物ではなかry)。
 ちなみに、そのレストランの売りは魚料理だそうで、「魚のお客様を豪華な肉料理で太らせた後、今度はディズニーシーのお客様に食べてもらうという趣向なのかな?」「だとしたら、宮沢賢治の『注文の多い料理店』みたいな不気味さとえげつなさを感じる…」とほんのりホラーな気持ちになりました;。

 どうも、こういうブラックジョークがエッセンスとして効いているからディズニーワールドはやめられないと思う当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君のライバル・劉虎峰君が味皇GPで作った“劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮”です!
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮図
 『ミスター味っ子』では陽一君を筆頭に様々な天才料理少年が活躍していますが、その中で唯一の外国人キャラが中国人の劉虎峰君!
 弱冠十六歳という若さなのに、香港で一、二を争う有名店のトップに君臨している凄腕の中華料理人で、その後もどんどん地位が上がっていき、最終的には中国版味皇ともいうべき「味仙人」の称号を継いでいました←ある意味、作品中最も料理人として出世したのは彼だと思います)。
 陽一君や一馬君よりも一歳年上で、初登場時は「どこの馬の骨かわからないただの子供」といきなりディスってくる程気が強くて喧嘩っ早かったですが、勝負が終わる頃には陽一君をよきライバルだと認め、やや落ち着いた性格になっていました←大人からすれば十五歳も十六歳も似たような物ですが、確かに当時は学年が変わるとたとえ一歳違いでもぐっと大人に見えましたので、陽一君相手に兄貴風を吹かせたくなったのも分かるような気がしたものです)。

 当時はもう没落していましたが、元は中国皇帝の食膳を代々司る料理番の家系という由緒正しい名家の跡継ぎだそうで、そのせいかかなりプライドが高く、性格が軟化した後でも「皇帝の料理番、劉家筆頭の劉虎峰」と名乗り続けて「おのれは毎回それを言わんと気がすまんのかい!!」一馬君から突っ込まれていました;。
 金田一少年と同じで、偉大なご先祖をプレッシャーに感じるどころか誇りに感じて武器にする心臓の強いキャラで、頼もしい限りだな~と思います(←名門出身でプライドが高くて好戦的なライバルキャラと聞くと、真っ先に思い浮かぶのはやはりベジータ。一馬君もそんな感じですし、陽一君はさしづめ料理界の悟空という所でしょうか?明るくあっけらかんとして、強すぎるがゆえにうっかり無神経な事をいう所がそっくりで、『ミスター味っ子 幕末編』でとうとう一馬君から「お前のその上から目線の物言いが、ホンマ昔っから腹が立つんや(゜д゜♯)!!」とキレられているくらいですし;)。
先祖代々皇帝の料理番の家系だったという中国版ミスター味っ子・劉虎峰!
 そんな虎峰君が、第29回味皇GPの三回戦で出された課題料理が、お雑煮!
 日本人である自分達ならともかく、中国人である虎峰君に対してあまりに不公平ではないかと抗議をする陽一君や兵太君でしたが、「君たちの思いやりには感謝する」「しかし中華はそれほど底の浅い料理ではない。たとえどんな料理、どんな材料であろうと最高の美味に仕上げる自信がある」と言い切った虎峰君は、そのまま課題を受け入れて勝負に挑む事を宣言します。
 初見時は「一度決まった事をグズグズ文句言わないなんて、潔いな~」と思っただけでしたが、よくよく考えれば中国は「四つ足のものは机以外何でも食べる」という言い回しがあるくらいどんな未知の食材でも貪欲に研究する国ですので、それに比べたら一応はノウハウがあるお雑煮作りくらい、本当に大した事ではなかったのかもしれません;。
 その後、独自にお雑煮についてリサーチした虎峰君は、「雑煮というのは聞けば聞くほどおもしろい料理だ。同じ名前がついていながら、日本全国、極端には一つ一つの家にまったく違う料理法、材料が当たり前のように存在している」「つまり、決まった型がなく日本人にすら統一的な料理のイメージがない。そこに異邦人であるこの僕にも、新しい工夫を加える余地がある」と認識し、圧倒的不利なはずの立場を逆にチャンスだと捉えます。
 確かに、お雑煮の分布図を見ていると「戦国時代の武将勢力図か!」と突っ込みたくなる程個性豊かで多種多様レシピが全国各地に点在しており、「こんなお雑煮は邪道だ!」という言いがかりはつけられないカオスな状態になっている為、虎峰君の考えも一理あると感じました。
 地域によって味や形が全く違う所はカレーやラーメンに通じる物がありますが、両者よりも遥かに歴史が長い所がお雑煮の最大の特徴といえそうです。
短期間でお雑煮を調べ上げ、自分なりのオリジナル雑煮を作ろうと取り組みます
 そんな中、「もちの味わいが勝敗を決する最大のポイント、工夫と技術を生かす鍵となる」「ならば僕はこのもちを、もち米をまったく使わない独自の製法で作りあげる!!」と考えた虎峰君が生み出したオリジナル雑煮が、この“劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮”です!
 作り方はそこそこ簡単な方で、大根おろしとくわいの粉末を練って蒸して焼いて作った大根もち・鮭の切り身・鶏手羽先を辛い豆板醤スープで煮込んだら出来上がりです。
 ポイントは、大根おろしに加えるのはくわいの粉末だけで他には一切何も加えないこと、お雑煮は熱持ちのいい鉄鍋でじっくり煮込んでそのまま出すことの二点で、こうするともち米で作ったお餅よりもはるかに口当たりがよくて出汁がよく染みた仕上がりになると語られていました。
 通常、大根もちは千切りにした大根に片栗粉や米粉を和えて粘りを出し、干し海老・干し椎茸・中華ソーセージ・青ネギなどを足して風味付けするのがポピュラーのなレシピみたいですが、虎峰君はあえてシンプルに作る事で大根の甘みを引き出し、おいしくて消化にいい医食同源の考えにのっとった大根もちに仕立てた模様。
 実際に食べた審査員曰く、「こりゃーうまい!!」「サクッとやわらかい歯ごたえが実にさわやかですね!!」「この豆板醤の辛いスープが、意外とこのもちに合うわね」な味わいだったらしく、「外国人だからこそひらけた、この味覚の新次元。劉虎峰や恐るべし!」と満場一致で絶賛されていました。
大根おろしとくわいの粉末を使ってさっぱりもちもちの大根もちを実現!豆板醤をベースにとびっきり辛くしたスープに、鮭と鶏手羽先をトッピング
 先日、なかなか見つけられなかったくわいの粉末を手に入れることが出来ましたので再現する事にしました。
 作中には大体の作り方が記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、大根もち作り。
 皮を取ってすりおろした大根おろしの水気を適度にきり、くわいの粉末(=馬蹄粉)を投入してよく練り上げ、団子状にまとめられるまで硬さを調節します。
※粉は多すぎるとカチカチ、少なすぎるとデロデロになりますので、一口大に丸めた物をその都度蒸し上げて確認してから作ると失敗しにくいです。
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮1
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮2
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮3
 この生地を両手でキャッチボールみたいに叩きつけて表面を滑らかにしつつ平たく伸ばし、蒸気が出るまで熱した蒸し器に入れて約十分かけて蒸し上げます。
 蒸し上がったらラップを敷いたまな板の上に取り出し、角餅の形になるよう整えながら包丁で切り分けます(←この切れ端がまたおいしいので、そのまま食べたり、一緒にスープで煮てもOKです)。
※厚さは好みが分かれるところですが、普通のお餅の半分くらいの厚みにした方がスープが絡みやすく、硬さもちょうどいいように思いました(←普通のお餅と同じサイズでもボリューム満点で美味ですが…)。
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮4
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮5
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮6
 全て切り終えたら、ごま油を薄く敷いて熱したフライパンへ並べて両面をこんがり焼き上げます(←出来れば切断面も焼いたほうがカリッとしていいです)。
 これで、大根もちは準備完了です。
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮10
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮11
 次は、お雑煮のスープ作り。
 油を薄くしいて熱したフライパンへ、塩をすり込んで下味をつけた鶏手羽先と、紹興酒を少量かけてなじませた甘塩鮭を並べ入れ両面を軽く焼き、紹興酒を振り入れてしっかり香り付けします。
 そこに豆板醤を加えて炒め、唐辛子の風味が増してきたら中華風鶏がらスープ、醤油、紹興酒、塩、こしょうを投入し、具材に味が染みるまでグツグツ煮込みます。
※今回、こちらのレシピを参考にしました。ありがとうございます。
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮7
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮8
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮9
 煮えてきたら大根もちを加えてさらに煮込み、あらかじめ熱して温めておいた鉄鍋(又は石鍋)にスープごと具材を移してさらにじっくりと火を通し、テーブルへ器ごと運べば“劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮”の完成です!
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮12
 火力がなくなってもグラグラとマグマのように湧き上がるスープが迫力満点で、テーブルの上でもますます具が煮えていくのが頼もしいです。
 作中では「いかによく練りこまれた大根もちといえど、普通のもちに比べその粘度は低い」「それを熱持ちのいい鉄鍋でじっくり煮込みすぎたために、もちが煮くずれてしまったのです」という理由で負けてしまった虎峰君ですが、思ったよりも大根もちは強度があり、鉄鍋以上に熱持ちがいい石鍋でも全然煮崩れていませんでした(^^;)。
 しかし、一番肝心なのは味がどうなのかという点ですので、実際はどうなのか食べて確かめてみようと思います!
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮13
 それでは、熱々の内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
劉虎峰特製大根もちと豆板醤スープの雑煮14


 さて、感想は…想像以上に正統派な味わいで食べ応え満点!ごつい見た目とは裏腹にヘルシーな美味しさのお雑煮です!
 大根もちは普通のお餅のようなむち~っと伸びる弾力や滑らかな粘りはないのですが、ざっくりもちもちした不思議と爽やかな歯触り、表面のツルンとした透明感のある舌触り、ふんわりトロリとした口当たりが特徴的。
 細切りタイプとは違いすりおろしにして練ったせいか、表面が少しほわっとしてざらついているですが、このざらつきが鹿の子包丁の如くスープを絡めて染み込ませるのが食べやすくてよく、まさに煮込み料理向きの大根もちだと思います。
 強いて言うなら、やや荒い噛み応えの浮き粉生地の蒸し餃子みたいな食感で、例えるとするなら「艶やかな食べ味のさっぱり水晶大根もち」というイメージでした。
 大根特有の優しい風味と強い甘味が噛むごとに口の中で膨らんでいくのが体を癒す感じで、いくら食べても胃に重くのしかからないのが有り難く、やや辛めのスープとも非常に相性がよかったです。
 作中では粘性が低い為煮崩れやすいと指摘されてましたが、こちらは柔らかに見えて実はしっかりとコシがあるせいか結構煮込んだのに全く崩れておらず、逆に鮭や鶏手羽の出汁がじっくり浸透して鍋の締めのお餅のように味わい深いのが印象的でした。
 スープの味付けは「激辛鶏ガラ澄まし汁」という感じで、辛さの中に鶏のコクや大根の甘さがじんわり響く旨辛い味わいで、意外にも後口はあっさりしています(←大根と鶏の煮物の煮汁を四川風にしたような味っぽくて、どこか馴染みのあるおつゆ)。
 こんな癖の強いスープですが、こってりジューシーな鶏手羽先ととろけるような脂分を持つ鮭は力負けするどころか逆に辛さで旨さが倍増して癖になる仕上がりになっており、大根もちがご飯代わりになってよく合って調和していました。


 片栗粉や小麦粉を使っていないせいか粉っぽさがほぼなく、粘りも前者使用の大根もちよりも大分強めのように感じました(←おかげで調理が難しかったですorz)。
 一応はお雑煮の汁ですが、旨味が濃いので中華麺やマロニーちゃんを入れて締めにするとまた最高で、いっそのこと餅入り中華鍋として倍量作ってもよさげだと思いました。
 個人的に、このスープには豚バラ・肉団子・水餃子・海老・白菜・長ネギ・豆もやし・豆腐・きのこ類が合いそうだとにらんでいます。


P.S.
 ほーりーさん、ノリスケさん、コメントを下さりありがとうございます。


●出典)文庫版『ミスター味っ子』8巻 寺沢大介/講談社
     文庫版『ミスター味っ子』10巻 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

『クッキングパパ』の“まもるチャウダー”を再現!

 先日、近所にある大型スーパーへ行って買い物をしたのですが、魚売り場の結構目立つコーナーに何とエスカルゴが置いてあり、びっくりしました;。
 そもそも、エスカルゴって魚介類扱いでいいのだろうか?と疑問に思い調べてみたのですが、どうやらエスカルゴは分類学上「陸に住む貝」とされている巻貝の一種らしく、立派な魚介類だと結論付けられているとの事。
 一番近い仲間はサザエらしく、食感的にはつぶ貝やバイ貝の方が似ていそうなのにな~と意外に感じました。

 どうも、去年のハロウィンの時にサーモンと海苔で怖い顔のかぼちゃランタンをかたどった刺身盛が売られているのを見て感心した当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『クッキングパパ』にて上田守君が調理師専門学校の卒業制作発表の場で作った“まもるチャウダー”です!
まもるチャウダー図
 同じアパートのおばちゃんに教わったいなかパイがきっかけで料理人を目指し、それなりにこだわりがあった髪の毛をばっさり切って調理師専門学校に入学した守君ですが(←詳しくはこちら)、数年経っていよいよ卒業制作に取り掛かることになります。
 実を言いますと、この時守君は既に自分の得意料理であるクラムチャウダーにもっと磨きをかけて提出しようと考えていたのですが、他の仲間と一緒に過去の卒業制作作品集を見てその想いは大きく揺らぎます。
 というのも、卒業した先輩方の作った料理はどれも煌びやかで見栄えが良く、新人の料理というよりは一流料理店のスペシャリテとして言ってもおかしくない程の完成度を誇っていたからで、ただでさえ合格できるか心配だったのにますます自信喪失します←これが悟空みたいな少年漫画的主人公だったら、「こいつすごいな~!でも、オラも負けねえぞ!」とより燃えるシーンですが、守君はクリリンみたいな努力派の常識人タイプなせいか、逆効果だった模様;)。
 学校によっては赤点さえ取らなければ卒業できる所もあるみたいですが、守君の所は「採点はきびしいわよ。いいかげんな料理だったらビシビシ落としますからね」と先生が釘を刺すくらいスパルタ方式みたいで、こんな事を言われたら『ミスター味っ子』の天才料理少年でない限り不安になっても仕方がないだろうな~と同情しました;。
 ちなみに、実際はどんな感じか気になって調理師専門学校の卒業作品展のページを拝見したのですが、本当に目もくらむような艶麗繊巧な料理ばかりで圧倒されました(←こちらこちら)。
過去に合格して卒業した先輩達の素晴らしい料理の数々!過去の合格した先輩達の料理を見て、すっかり自身喪失した守くん;
 帰宅してからもずっと悩んでいた守君は、「いいと思うけどなっ。あたしはまもるが作るクラムチャウダー大好きよ」「きっと合格するわよ、先生たちあまりのおいしさにびっくりするかもネ」と言って勇気付けようとするひとみさんの言葉を素直に受け取れず、「なんにも知らないくせに!」と当たって家を飛び出してしまいます。
 「見苦しいなオレ…せっかくひとみが励ましてくれてるのに…」と自己嫌悪に陥った守君は、事あるごとに色んな助言をしてくれる荒岩主任の元に自然と足が向き、卒業制作に出す料理について相談します(←兄の康巳さんは、田中君に似てちゃらんぽらんでイマイチ頼りにならないせいか、すっかり荒岩主任が心の兄貴役として支えになっている感じです;)。
 守君としては、「クラムチャウダーなんて、地味でしょうもない料理じゃだめだなと思って…。何か、ほかに見栄えのする料理はないかな…と…その…アドバイスを…」という気持ちで来たみたいですが、荒岩主任は「まもるくん、そんなアドバイスはできないなっ」と一刀両断します。

 荒岩主任曰く、「料理にしょうもないものなんてないんだよっ!!クラムチャウダーだって奥は深い」「下ごしらえひとつにしても工夫のしかたはいくらでもある。キミの努力しだいで世界にふたつとない素晴らしいクラムチャウダーが作れるはずだ」「がんばれっ。先生たちだってそんな見ためだけで採点はしないさっ」との事で、すっかり元気付けられた守君は早速帰宅し、「ただいまーっ。ひとみ、さっきはごめんな」「オレ、やっぱりクラムチャウダーを作るよ」「最高にうまいヤツができるまで、何度でも研究しなおしてみるぜっ」と言って試作に励んでいました。
 荒岩主任の言う通り、クラムチャウダーは一見単純に見えて奥深い定番料理で、オーソドックスなミルク味のニューイングランド風・牛乳の代わりにコンソメやトマトを使うマンハッタン風・すまし汁仕立ての歴史あるロードアイランド風・酸味のあるサワードウというパンをくり抜いて器にするサンフランシスコ風など、地理学的にもなかなか興味深いスープ。
 『美味しんぼ』でも、基本的な料理の一つであるカルボナーラを「単純だが、うまく作るのは難しい」と表現していますので、簡単な物ほど完璧に作るのは一番難しいのだと改めて思います。
地味な料理でも、工夫次第でいくらでも評価されるとアドバイスする荒岩主任
 こうして二日後、徹底的に自分オリジナルのクラムチャウダーのレシピを見直して改良した守君は、卒業制作試験当日にベストを尽くして料理します。
 その際、守君が自信を持って出したのが、この“まもるチャウダー”です!
 作り方はそこそこ手間がかかり、アサリ・ハマグリ・カキ・白ワイン・お水をお鍋で煮て出汁を取り、ベーコン・玉ねぎ・セロリ・ボイルホタテ・甘塩鮭・小麦粉・じゃがいも・お水・オレガノを炒めて煮込んだお鍋へ投入し、生クリーム・バター・塩・こしょうを加えてさっと煮たら出来上がりです。
 ポイントは、貝類(←特にカキ)は火を通しすぎないよう気をつけること、煮込んでいる時に出るアクは完全に取り除くこと、生クリームを加えてからは絶対に煮立たせないことの三点で、これらさえ守れば絶品に仕上がると書かれていました。
 こういうミルク味のクラムチャウダーは牛乳をベースにしたり、使う貝はアサリやハマグリのみというレシピがほとんどなのですが、守君は贅沢にも生クリームだけをベースにし、カキとホタテもプラスしてよりご馳走感を高め、見た目の大人しさからは考えられない程ゴージャスなスープに仕上げているのが特徴的でした。
 幸い、この控えめながらも大胆な取り組みは、この日たまたまアメリカからやって来ていた有名ホテルの料理長・ジョン=スミスさんに鋭く見抜かれており、大勢の生徒の中で唯一の「ベリィナイスッ!!コレカラモガンバリナサイッ」という賛辞を受け、見事トップ合格を果たしていました。
アメリカからやってきた有名シェフから絶賛されて驚く守くん
 先日、スーパーで珍しくハマグリが扱われていたので再現する事にしました。
 作中には分量つきの詳細なレシピがきっちり記載されていましたので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、貝類の下処理。
 小鍋へ砂抜きしてからよくこすり洗いしたアサリとハマグリ、白ワイン、お水を入れてフタをし、中火にかけて殻が全部あくまで放置します。
まもるチャウダー1
まもるチャウダー2
 全ての殻が開いたら火を止めてアサリとハマグリを取り出し、再度沸騰させて生食用のカキを投入し、さっと湯がいて取り出します(←カキは大根おろしをまぶして軽くもみ洗いしたり、牛乳につけて臭みを抜いてから使ったほうがいいです)。
 残ったスープは清潔なガーゼ等を敷いたザルでしっかり漉し、アサリとハマグリは殻から身を取り出して食べやすいサイズに切ります。
まもるチャウダー3
まもるチャウダー4
 次は、炒め作業。
 大きめのお鍋へバターを入れて中火にかけ、一センチ角に切ったブロックベーコンを加えて炒め、薄くスライスした玉ねぎとセロリを投入してさらに炒め合わせます(←この時、焦がさないよう注意してこまめに混ぜた方がいいです)。
 野菜類がしんなりしてきたら、一センチ角に切ったボイルホタテと甘塩鮭(←骨と皮は取っておきます)を加え、ざっと炒めます。
まもるチャウダー5
まもるチャウダー6
まもるチャウダー7
 そこへ小麦粉をふりかけて全体へ絡めながらよく混ぜ、一センチ角に切ったじゃがいもとお水を投入して沸騰させます。
 グツグツ煮立ってきたら弱火にし、アクをしっかり丁寧に取り除きながら約十五分かけて煮込み、途中オレガノを少々入れて香り付けをします。
まもるチャウダー8
まもるチャウダー9
まもるチャウダー10
 時間が経ったら、アサリ、ハマグリ、カキ、漉したスープを入れて弱火のままゆっくりと温め、生クリームを注いで混ぜ合わせます(←煮立ったら分離して味がガクンと落ちますので、絶対に沸騰させないように気をつけて下さい)。
 最後にバター、塩、こしょうを加えて味を調えます。
まもるチャウダー11
まもるチャウダー12
 味の微調整が終わったらすぐに火を止め、スープ皿へ具と一緒に注いで上から刻んだパセリをぱらりと散らせば“まもるチャウダー”の完成です!
まもるチャウダー13
 作る前の予想ではもっと濃い色をしていそうだと思っていたのですが、実際はオフホワイトを基調としたエレガントな色合いで、見るからに美しい仕上がりだな~とちょっと見とれました。
 温かな湯気からアサリやハマグリの心とろかす香りがふわっと漂ってくるのが食欲をそそる感じで、どういう味になっているのかすごくドキドキします!
まもるチャウダー14
 それでは、出来立て熱々の内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
まもるチャウダー15


 さて、感想は…美味しすぎて静かに衝撃を受け、思わず襟を正したくなるような味わいで圧倒!貝の旨さを惜し気もなく贅沢に活かした、高級レストラン風の上品でリッチなスープです!
 アサリだけではなくハマグリ・ホタテ・カキの貝汁が何層にも渡って複雑に重なり合っているせいか、磯の旨味をギュッと凝縮したような海そのものな塩気と、貝類特有の舌に深く響く甘味が大波の如くどっと押し寄せる迫力満点のスープで、前菜というよりもはやメインといっていい程重厚感のある一皿。
 牛乳ではなく生クリームを使っているせいか、普通のクラムチャウダーよりも濃密なコクが効いて口当たりがさらにまろやかになっており、海の幸の繊細かつ力強いエキスを包みこんでさらに洗練したご馳走スープに昇格させているのに感心しました。
 様々な貝の出汁がガツンと攻めてきてさらりとした飲み味の為、バターの芳しい香りが効いたミルク味で完全に洋風だというのにどことなく潮汁を彷彿とさせる感じで、初めて食べるはずなのに懐かしい気持ちになります。
 具をたっぷり取って口にすると、アサリやハマグリのプリプリシコシコした艶やかな食感、ホタテのしっとりコリコリした弾力、鮭のホロリとした柔らかさ、ベーコンのジューシーな噛み応え、じゃがいものホコホコ感、玉ねぎやセロリのしんなりシャグシャグした歯触りが一気に溢れ返って賑やかになる感じで、飲むと言うよりは海と陸の恵みを丸ごと食べるスープというイメージでした。
 牡蠣に至っては、半熟のクリーム煮状態になる事でより濃く甘くとろけるようにミルキーな味わいに仕上がっており、もうこれだけ別に出しても立派な一品料理になる完成度で唸ります。
 魚介類は個性が強いので臭みやえぐみが出やすいという弱点があるのですが、こちらはオレガノのほのかに苦味を帯びた清涼感溢れる緑の香気が後口をやんわり引き締めている為、海鮮の純粋な旨味だけが抽出されたような澄み渡った味わいが印象的でした。


 ブイヤベースが華やかなお祭り騒ぎの「陽」の味わいとするなら、こちらは一見地味でも心の底にしみじみと染み渡る「静」の味わいという感じです。
 一旦完全に冷めてしまうと、完璧な状態に温め直すのが非常に難しいという弱点がありますが、一回食べたら何度でもおかわりしたくなるので、すぐに食べきってしまえると思います。
 夫も飲んだ帰りでそれなりにお腹が満たされていたはずなのに、「うまいっ(゜∀゜*)!」と言って大皿におかわりまでしましたので、色んな方にお勧めできる一品だと感じました。


P.S.
 青子さん、kawajunさん、コメントを下さりありがとうございます。


●出典)『クッキングパパ』 うえやまとち/講談社
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※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

『銀平飯科帳』の“銀次流出世スキヤキ”を再現!

 日本では高級魚として知られている鯛ですが、何と海外では下魚扱いされて好まれていないと知り、驚きました。
 アメリカでは「何でも食べる釣りゲーム用の魚」、イギリスでは「ユダヤの食う魚」、フランスでは「貪欲に食らいつく下魚」と呼ばれているようで、めでたい時に鯛を掲げて喜ぶ人々の画像がアップされると「何やってるんだろう?」と不思議な気持ちになる方もいるのだとか。
 淡白な味よりも濃い味の方が評価されるという海外ならではの事情もあるのでしょうが、おいしいのにここまでフルボッコにされている鯛を思うと不憫に感じると同時に、「鯛からすれば、食べられなくてありがたいのかもしれない…」と複雑な気持ちになったものです。

 どうも、鯛の皮付きのお刺身がすきなのですが、最近なかなかお目にかかれなくて切ない想いをしている当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『銀平飯科帳』にて銀次さんが江戸時代で食べたあるお鍋をヒントにして現代で生み出した“銀次流出世スキヤキ”です!
銀次流出世スキヤキ図
 江戸時代に行っては「祖父の記した番付表をベースに、新しい飯科帳を作る」という目的がある半蔵さんと様々なお店を巡る銀次さんですが、タイムスリップに慣れてしばらく経った頃、もう一人の飯友ができます。
 その人物とは、何と江戸幕府第11代将軍・徳川家斉
 歴代の征夷大将軍と比べても稀な五十年という長い在職期間中、途中まではよかったものの厳格すぎて成果があがらなくなった寛政の改革を終わらせ、「改革なんか上下ともに迷惑、あんなことやるものじゃない」という意思の元、よくも悪くも放任政策を取る事で江戸の町を活性化させ、浮世絵・滑稽本・歌舞伎・川柳を始めとする町人文化の最盛期を迎えさせた、終焉を迎えつつある江戸時代に最後の花を咲かせた立役者の一人でもあります。
 スケールこそ小さいですが、いい時期に放蕩三昧してそこそこ長生きした所といい、好色で子沢山な所といい、ルイ十五世みたいな生き方をした将軍で、ある意味最も恵まれたお殿様だったのでは?と思っています;(←後々、そのツケを真面目な跡継ぎ達が払わされる所までそっくりなのが、また何とも…orz)。

 史実では政治に無関心だったようですが、『銀平飯科帳』ではなかなかの名君っぷりで、作中では平蔵さんに「苦しかった幕府の財政を立て直し、火の消えたような江戸市中を一気に活気づかせた大英断!私から見れば、家康様と並ぶほど優れた君主である!」と絶賛されており、初めて登場した時も真面目そうな感じでした。
 しかし、城内で庶民に扮して焼き鳥焼きごっこをしている時、偶然銀次さんに出会って「食い物に下賤も高貴もないでしょ!あるのは旨いか不味いかだけ!」と言われたり、マグロ・鰻・天ぷらそばなどお城では禁じられている料理を実際食べて食に目覚め、生来のお茶目な面が出てきてからはどんどん陽気で柔軟な性格になっており、今では平蔵さんが表のヒロインとするなら裏のヒロインは家さん(=徳川家斉)と断言できるくらいかわいいキャラになっています。
 正確には現代の葉瑠さんも入れてトリプルヒロインと言うべきなんでしょうが、年々理不尽系言葉の暴力ヒロインと化して恋の脈も心停止状態ですので、もうダブルヒロインと認識していいと思います←当初はメインヒロイン役でも段々雲行きが怪しくなり、しれっと後出しヒロインと主人公がゴールインする『究極!!変態仮面』的終わり方って、最近はそう珍しくもないですし)。 
銀次さんのあっけらかんとした現代的食事観に感銘を受け、色んなものを食べることに!
 『暴れん坊将軍』の吉宗公は市井にはびこる悪を懲らしめる為に貧乏旗本の三男に姿を変えていましたが、家さんの場合は完全に庶民が愛する江戸グルメ食べ歩きが目的で、窓際族の下級武士に変装しては銀次さんと城下町を『ちい散歩』チックにぶらぶら歩き、将軍家ご法度の食材に舌鼓を打ったり町人達と交流を持ったりと、至極平和に江戸ライフを楽しんでいます。
 江戸時代が題材の作品だと、まるでお約束だと言わんばかりに斬り合いシーンが登場して人が死ぬストーリーが多いですが、今の所『銀平飯科帳』で活躍する刃物は包丁のみですので、ほのぼの見ることが出来ます(←『志村けんのバカ殿様』の城下町お忍びコントに近いのどかな雰囲気です。お色気シーンがないという最大の違いがありますが;)。
 史実では生姜と白牛酪(←チーズのような乳製品)が好物だったそうですが、作中では美味しければ何でも食べる好奇心旺盛な食いしん坊で、お城では毒見やら何やらで時間が経つ為食べられない出来立て料理を堪能しては感動していました。
 初めの内は「ワシが将軍だと知ってしまえば、今のような気楽な付き合いはできんじゃろう」という理由で銀次さんに身分を隠しており、いつバレるかヒヤヒヤしていましたが、ひょんな事がきっかけで将軍だとバレても「それはそれ、これはこれじゃない」「ま、ちょっと驚いたけど、オレ別に武士じゃないし。お城にいる時は将軍さんで、こっちでは家さんでいようよ!」と今まで通り友達付き合いが続いており、今ではすっかりツーカーの仲になっています(←大物なのか、図太いのか…;)。
家斉将軍こと家さんとはすっかりツーカーの仲の飯友になっています;四巻で正体がバレましたが、現代人の銀次さんはおかまいなしで交流続行してました
 今回ご紹介するのは、家さんとある料理屋で食べたブリの出世鍋(←よくあるしゃぶしゃぶタイプではなく、煎り焼きという技法で作られてました)を参考にし、銀次さんが現代で作った“銀次流出世スキヤキ”!
 作り方は簡単で、オリーブ油を入れて熱した鉄鍋ににんにくと玉ねぎを入れて焼き、割り下・バジル・トマトを入れて柔らかくなるまで煮込み、仕上げにブリの切り身を入れて火を通して豆苗を加えたら出来上がりです。
 ポイントは、ブリを入れる時は沸騰している時にすること、ブリと豆苗にはあんまり火を通しすぎないことの二点で、こうすると臭みのないジューシーなブリになると書かれていました。
 調べた所、トマトと醤油は旨味の元が同じグルタミン酸で、イノシン酸を多く含むブリを相乗効果で高めてくれる為非常に相性がいいみたいで、たまたまとはいえ見つけた銀次さんすごい!と感じました(←あと、醤油には酸味に丸みを与える特性があるので、酸っぱいトマトをマイルドにする効果もあるのだとか)。
 銀次さん曰く、「豆苗も、さやえんどうからグリーンピースと名を変える出世野菜だからな」という理由でこの組み合わせを思いついたそうで、それがトマトベースの醤油味にうまくハマってくれたようです。
使われる葉野菜が豆苗なのは、さやえんどうからグリーンピースに変わる出世野菜だから割り下とブリが合うのはブリの照り焼きなどからわかりますが、まさかトマトと合うとは…!
 脂の乗ったブリをお手頃価格で手に入れられたので、再現してみる事にしました。
 作中には大体のレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、焼き作業。
 鉄鍋にオリーブ油をひいてみじん切りにしたにんにくを弱火で炒め、いい香りがしてきたらやや厚めの輪切りにした玉ねぎを入れ、両面をこんがり焼きます。
 玉ねぎが焼けてきたら、醤油、みりん、日本酒などで作った割り下を加え、手で千切った生バジルを投入して煮ます。
※当管理人のように鉄鍋をお持ちでない方は、仕上げて食べる直前までフライパンで調理し、最後の段階で土鍋へ移して頂く事をおすすめします。土鍋で一から調理する事もできなくもないですが、非常に焦げやすいので要注意です。
銀次流出世スキヤキ1
銀次流出世スキヤキ2
銀次流出世スキヤキ3
 割り下が沸騰してきたら小さくザク切りにした生トマトを加え、木ベラ等で押しつぶしながら煮込み、柔らかいペースト状になってきたらブリの切り身を入れてさらに煮込みます。
 ブリは骨をあらかじめ取り除いたり、ぐらぐら煮立っている時に入れた方が良いです(←弱火で少しずつ煮ると、臭みが出てしまうので気をつけてください)。
銀次流出世スキヤキ4
銀次流出世スキヤキ5
 ブリの身が程よく煮えてきたら食べやすく切っておいた豆苗を入れてさっと火を通し、急いでテーブルへ運べば“銀次流出世スキヤキ”の完成です!
銀次流出世スキヤキ6
 見た目が真っ赤なので一瞬激辛鍋に見間違えそうになりますが、何ともいえない甘やかな酸味を帯びた香りが漂う為、すぐに「トマト由来の色か」と分かって安心します。
 目にも鮮やかな豆苗の緑とトマトの赤の配色がキレイで、食欲をそそられます。
 トマト鍋自体は何度も見たり食べたりした事がありますが、それにブリや豆苗を使うのは初めてですので、どんな味がするのか楽しみです!
銀次流出世スキヤキ7
 それでは、出来立て熱々の内に取り分けていざ実食!
 いっただっきまーす!
銀次流出世スキヤキ8


 さて、感想は…魚と野菜だけとは思えぬボリューム感で美味し!ブリとトマトがここまで合うとはびっくりです!
 にんにくがガツンと効いたパワフルなイタリアン煮込みといったおいしさで、生トマトならではの爽やかでフレッシュな甘酸っぱさと、割下の熟成された醤油味が組み合わさる事により、まさにトマト味のすき焼きといった甘辛くて癖になる味付けに仕上がっています。
 トマトの密度が濃いのでスープとパスタソースの中間くらいのとろみがつき、ぶりから出たこってりした出汁、バジルのすっきりした香り、玉ねぎの優しい甘味が溶け込んだおつゆはとても奥深く濃厚で、カプリチョーザのトマトとにんにくのパスタから辛味を抜いた旨さにちょっと似ているな〜と思いました(←もしくはマリナーラ風)。
 基本、魚肉は煮るとどうしてもパサつきやすくスカスカな味になるケースが多いのですが、ブリは脂分が桁外れに多いせいか逆に獣肉のような力強い食べ応えに変化し、青魚界の大トロともいうべき豊潤なコクが口の中でとろけていくのがたまりません。
 例えるとするなら、飛びきり身ほぐれがよくて柔らかいあっさりした身質の鶏肉に、脂の旨味が濃い豚肉を足して二で割った感じの味で、マグロと匹敵するくらい火を通すと肉っぽいな〜と改めて実感です。
 ブリとトマトのエキスを吸って凝縮させたトロトロ玉ねぎは、すき焼きやネギマ鍋に入っている長ネギに似た醍醐味があり、煮込みというよりはちゃんと鍋の具っぽくなっているのが印象的でした。
 あと、すき焼きは砂糖たっぷりなのでどうしてもくどくなりがちなのが欠点ですが、こちらはトマトがベースだからか後口さっぱりで、そのせいかブリの臭みもほぼ消えて純粋な旨味の塊だけ頂けるようになっていたのがよかったです。
 豆苗の豆もやしを彷彿とさせるザクシャキした食感と、豆の生命力溢れる瑞々しい汁気もトマトやブリとぴったりで、個性的な具やスープに負けていませんでした。


 夢中になってスープと具を全て平らげてしまったのでこの時は無理でしたが、残ったスープに茹でたてのパスタを絡めたらさぞかし絶品だったはずです! 
 豆苗はそのままだとなかなか箸が進みませんが、このお鍋にくぐらせると本当にいくらでも入る感じで、追い豆苗を何度もしてしまったほどでした。
 普段、そこまで魚好きという訳でもない夫もおいしいと言っていっぱい食べていましたので、ブリが好きな方もそうでない方にも是非おすすめしたい調理法です。


P.S.
 恭さん、無記名さん、無記名さん、コメントを下さりありがとうございます。


●出典)『銀平飯科帳』2巻 河合単/小学館
     『銀平飯科帳』3巻 河合単/小学館
     『銀平飯科帳』4巻 河合単/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
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・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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