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『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”を再現!

 その昔、「頑固親父のラーメン屋」というジャンルが一世を風靡した事がありますが、そういえば「頑固親父のパスタ屋」というのは見た事がないと気づきました。
 よくよく思い返せば、店主の写真もラーメン屋さんだとムッと一文字に口が結ばれている物が多いのに対し、イタリアンだと落合務シェフ片岡護シェフのように満面の笑みの物が多い感じで、不思議です。
 同じ小麦粉で打った麺同士なのに、かたや怖そうなイメージ、かたやにこやかなイメージ…いずれ研究してみたいテーマです。

 どうも、「チョコケーキから食べたらダメだ、プリンの味がわかんなくなっちまう!」「まだいちごは旬じゃないから、ショートケーキはないよ。春になってから来てくれ」とズケズケ言う頑固親父のケーキ屋さんがあったら面白そうだと考えた当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『最後のレストラン』にて主人公・園場凌さんがナポレオンの為に作った“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”です!
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”図
 歴史上の有名人物が最期の時の直前にお店にタイムスリップし、奇妙な注文をするのも半信半疑ながら慣れてきた頃、園場さん達の前にすごい大物がやって来ます。
 その人物とは、ナポレオン=ボナパルト
 イタリアはコルシカ島の貧乏貴族として生まれつつも、己の才覚とカリスマ性を武器にフランス皇帝の座についた、まさに立身出世の極みのような人生を送った偉大なる軍人皇帝。
 熱狂的に支持してくれた民衆のおかげでのし上がったものの、最終的に自身を失脚させる大きな一因となったのもまた、ロシア遠征大敗やこれまでの専制君主と変わらぬ姿に猛反発した民衆の力で、何とも皮肉な物を感じます。
 民衆=ファンの力で地位を押し上げられて支えられた、ある意味人気稼業なその人生を見ていると、何だかアイドルみたいな生き様だな~と思います←国民投票で皇帝に選ばれるとか、まさにAKB48のシステムを連想させます。握手券があったら、さらに票数は倍増したはずです)。

 なお、圧倒的な能力ゆえに孤高にならざるを得ない英雄というと、他にはアレクサンドロス大王ハンニバル織田信長源義経あたりが思い浮かびますが、ナポレオンの場合実家の家族を大事にして丸ごと抱え込み苦労した事が判明している為、「魅力的な一人の異性」というよりは「一家の大黒柱のお父さん」っぽいイメージ。
 一生懸命頑張って尽くしている割にはあまり報われているように見えない所もまた、ほとんどのお父さん方に通じる物があり、哀愁が漂って見えます(←ナポレオンが退位して没落した後、母と一人の妹以外は誰も助けようとしませんでした)。
 その為、藤栄道彦先生が描かれた晩年の疲れきった『スナックバス江』にいそうなおじさん風ナポレオン像は、すごくしっくりきたものです。
晩年のすっかり病んでしまったナポレオン様がご来店
 この時<ヘブンズドア>へやって来たナポレオンは、監視役の島の提督・ハドソン=ロウから腐ったワインを飲まされそうになったり、食事会で「ボナパルト将軍」と呼ばれて笑い者にされたり、家の前に衛士を置いて常に見張られるなどされてストレスがK点超えしており、胃痛に苦しんでいました(←まるで、『羅刹の家』に出てくる壮絶な嫁いびりをする鬼姑の如き仕打ちで、ドン引き。陰湿すぎて、「水とりぞうさんダースで持ってきて~!」と言いたくなる案件です)。
 おかげで食欲が全くなく、『ちびまる子ちゃん』山根君の如く胸をおさえて呻いていましたが、千恵さんが渡した「ガ○ター10」のおかげで、ほんの少しだけ食事をとる余裕が生まれます。
 そこで、ナポレオンが希望した料理が「人類の歴史と英知を味わえる一皿」
 ナポレオンが言うには、「もし人がピラミッドのように40世紀も永らえるのならば…どれほどのロマンを体験できるものか」「数千年の人類の歴史、それを味わえるような料理があれば良いのだが」だそうで、自身の終焉が近い事を予知していたようでした←処刑や自殺直前のお客様以外でそれを察知していたのは、今の所ナポレオンだけです)。

 けれども、園場さんはナポレオンの好物だった“鶏のマレンゴ風”←現代ではトマト・海老・卵などが入った豪勢な料理になっていますが、初出のレシピを見ると、ナツメグ風味の質素なチキンソテーみたいな印象)を引き合いに出し、「その時に使われた最高の調味料。今となっては、これがもう手に入らない」と言います。
 その調味料とはズバリ「空腹」で、「具合の悪い人というのは食欲も落ちています。どういう物を出せば<おいしい>と思ってもらえるのか…」と、大いに悩みます。
人類の叡智を感じられる料理をと希望され、悩む園場さん
 実はこの頃、発酵食品を使った料理について色々研究していた園場さんは、たまたま用意していた食材を使ってある料理を作り上げます。
 それが、この“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”です!
 作り方は簡単で、バニラビーンズを混ぜた塩麹にステーキ用の牛フィレ肉を一晩かけて漬け込み、塩麹を取り除いて両面をソテーしたら出来上がりです。
 ポイントは、塩麹に漬ける事で染み出た水分をさっとでいいので軽く拭き取ること、塩麹に漬けたお肉は焦げやすいので弱火でじっくり焼き上げることの二点で、こうするとカリッとしつつ柔らかく焼けるそうです。
 通常、お肉はそのまま焼くとどうしてもそれなりに硬くなりますが、塩麹に漬けると噛まずに飲み込めそうなくらい柔らかくなる為、胃がボロボロなナポレオンでもスッと食べられていました←バニラビーンズで臭み消しをしたおかげで独特の癖がなくなり、その上トゲトゲしくない塩気までプラスされるので、フランス人のナポレオンでも塩麹を受け入れられていました)。
 園場さん曰く、「発酵と腐敗は本来同じものでして、人間にとって好ましい結果を生むものを発酵として区別しているだけです」「そうは言ってもどうすれば好ましい結果を出せるのか、それは人類にとって、試行錯誤の歴史であったはずです」との事で、その答えにナポレオンも「見事!」と納得していました。
塩麹とバニラビーンズを混ぜたものに漬けこんでやきます
 塩麹にバニラビーンズというだけでも想像がつかないのに、さらにお肉を漬け込むなんて前代未聞だった為、どんな味か知りたくて再現する事にしました。
 作中には大体の作り方が書かれていますので、早速その通りに作ってみようと思います。


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、牛肉の下ごしらえ。
 バットへ塩麹とバニラビーンズを入れてよく混ぜ合わせ、そこにステーキ用の牛フィレ肉を置いて全面にまぶすようにして塗りつけます。
 まぶし終えたらラップをして冷蔵庫に入れ、そのまま一晩寝かせます。 
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”1
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”2
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”3
 一晩たったら冷蔵庫から取り出し、出てきた水分をよくきって塩麹を指でさっとこそげ取ります(←あんまり水っぽい時はキッチンペーパー等で拭いてもいいですが、できれば塩麹がちょこっとだけ残った状態のまま使った方がいいです)。
 これで、牛フィレ肉は準備OKです。
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”4
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”5
 次は、焼き作業。
 よく熱して薄く油をひいたフライパンに牛肉を入れ、弱火でじっくりゆっくりと両面を焼きます。
※塩麹に漬けたお肉は、火力が強いとすぐ焦げてしまいますので、トロ火で時間をかけて焼いた方がいいです。あと、何度もひっくり返さないようご注意下さい。
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”6
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”7
 中がミディアムレアくらいになるまで焼いたらすぐ火からおろし、温野菜を飾り付けたお皿へ移せば“牛のフィレ肉のポワレ~ヘブンズ・ドア風~”の完成です!
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”8
 塩麹よりもバニラビーンズの香気の方が目立ちますが、不自然な感じは一切なく、ステーキの香ばしい匂いと相まって心とろかすような仕上がりになっています。
 弱い火力で焼いた割には意外とカリッとした焼き上がりですし、これは味が楽しみです。
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”9
 それでは、熱々の内に切り分けていざ実食!
 いただきまーすっ!
『最後のレストラン』の“牛のフィレ肉のポワレ ヘブンズ・ドア風”10


 さて、味の感想は…この上なく官能的で貴族っぽい品格のあるステーキでうっとり!予想の斜め上を行く相性のよさです!
 塩漬け肉みたいに程よく水分が抜けている為、ギュムッと引き締まった口当たりなのですが、噛むごとにジュワジュワと肉汁が出てくるフレッシュなジューシーさも兼ね備えています。
 私の腕が未熟なせいか、噛まずに飲み込めそうな程とはいかないものの、唇でしなやかに引きちぎれるくらい柔らかな仕上がりでした。
 表面は少しねっとりとした、まろやかに甘辛い塩気のベールを纏っている感じで、内側の肉のエキスも隅々まで熟成されたような奥深さがあります(←分かりにくい例えですが、始めはぶどうジュースだったはずなのに、いつの間にかワインになっていたマジックを見せつけられたようなイメージ)。
 最も似ている味の料理を挙げるなら牛の味噌漬け焼きですが、それよりも数倍垢抜けたエレガントな旨さで、濃厚で舌がとろけそうな程コクが強いのに後口がすっきりしているのに感心。
 肝心のバニラ風味ですが、意外にも塩麹の癖とぴったり調和して複雑なスパイシーさが生まれており、不思議と塩味とよくマッチしていました。
 塩麹のほのかな甘味がバニラと結び付き、何とも芳しい香りが肉に染み込み、牛肉特有の臭みや麹のツンとくる匂いを巧みにかき消しています。
 バニラアイスに醤油をかけたら妙に合っててびっくりしたみたいな面白い美味しさで、軽さと重さが両立した肉料理だと感じました

 バニラと牛肉が本当に合うのか半信半疑でしたが、食べてみて考えを改めました(←ただ、牛肉や豚肉ならともかく、淡白な鶏肉に合わせるのは難しいと思います)。
 普段、こういう甘さ+お肉の組み合わせが苦手な夫も、「うまい!これはいい」と認めて食べていましたので、実際の男性にも受けがいい味わいだと思います。
 ローストビーフのタレに使ってみても面白そうだな~と感じた再現でした。


P.S.
 銀猫さん、キンメさん、kawajunさん、コメントを下さりありがとうございます。
 大変遅くなってしまいましたが、今年も当ブログの記事を読んで下さり、誠にありがとうございます。
 来年もまた、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。


●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


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