『最後のレストラン』の“豆のガレット豆腐クリーム乗せ”を再現!

 最近、仕事帰りの電車の中で時々マンガボックスを読んでいるのですが、面白い作品が沢山あって退屈しません。
 主にチェックしているのは『タチコマなヒビ』『高遠少年の事件簿』『人間でした』(←三作品とも現在は終了していますが、連載中はずっとチェックしていました)『蛙のおっさん』『アコヤツタヱ』『初恋心中』『天空侵犯』『ホライズン』『でぶせん』『グリーンワールズ』『チャリに乗れない!』『穴殺人』『邪風のストラ』『たわら猫とまちがい人生』なのですが、中でも一際続きを楽しみにしているのは『アコヤツタヱ』と『初恋心中』で、これからどんな展開になるか楽しみです。

 どうも、また『タチコマなヒビ』が本誌で連載が再開される事を切に望んでいる管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『最後のレストラン』にて園場さんがガンディーのリクエストに応えて用意した“豆のガレット豆腐クリーム乗せ”です!
豆のガレット豆腐クリーム乗せ図
 それは、安徳天皇こと言仁君(←読み方は「ときひと」で、諱です。有賀さんは「言君」と読んでおり、弟感覚で可愛がっています;)が有賀さんの実家へ引き取られ、数か月が経過した頃のお話。
 前回ご紹介した新メニュー・“ふわふわフレンチ風親子丼”が当たって<ヘブンズドア>は大繁盛し、御奴さん達はてんてこ舞いになりながらもお店が上り調子になってきたのを喜ぶのですが、お客さんが来すぎて休みが激減したのに不満を持った園場さんが「待遇の改善を要求します!」「私に休息を!経営者に未来を!」と主張し、ハンストを宣言します。
 園場さんがこういう面倒な事を言い出すのはいつもの事ですので、有賀さん達は「まかないは四人分でいいわね」「言君が来るから五人前でお願いします」と軽やかにスルーするのですが(←休みの要求だけならまだ同情の余地がありますが、極端な手段に出られると呆れの方が勝りますので、無視されてもやむなしだと有賀さん達に共感したものです;)、奇遇にもこの時、ちょうどハンスト中だった歴史上の有名人物がタイムスリップしてきます。

 その方の名は、マハトマ=ガンディー
 死の直前、ガンディーはインドとパキスタンが分離独立した事が原因で激化した宗教暴動を防ごうとし、断食という手段で双方に争いを収めるよう呼びかけていた為、案の定有賀さんから心配されるほど弱っていたのですが、当初は自らの信念を通して食事を取ろうとはしませんでした。
 そのせいか、同じくハンストをしている園場さんにも「君も私の考えに共感してくれるのだね」と親しみを感じていたようなのですが、前田さんからハンストの真の理由を聞かされると「バカモーン!」「個人的な利益を実現するための断食など…己の意志を他人に強要するための手段。暴力と変わらん!」と大激怒して波平さんタッチの顔になり、園場さんへゲンコツを食らわしていました;。
 作者の藤栄道彦先生曰く、ガンディーは「伝記とか見てみると結構言ってる事はマッチョと言うか、頑固親父といった感じですね。一般の人にはちょっと真似できないんじゃないかなぁ」な人物だそうで、なぜ波平さんっぽく模したのかと言いますと「しかし特徴を押さえて描くと、どうしてもあのキャラになる…」だったからだそうですが、正直波平さんに似せて描かれた事によってガンディーの特徴がすんなり頭に入って来ましたので、このアイディアは大当たりだと思いました;。
著書を見ると、穏やかと言うよりは頑固おやじなイメージを受けた為このキャラが思い浮かんだのだとか
 とはいえ、始めはこのシーンに園場さんと同じく当管理人も「あれ?非暴力じゃないんじゃ…」と疑問に思ったのですが、作中の説明によると「ガンディーの提唱した非暴力とは、<悪法には従わないが、法を破った罰は甘んじて受ける>というもの」「非暴力は暴力よりも優れてるが、臆病と暴力ならば私はむしろ暴力をすすめる。許しは最上だが、許すというのは罰する力を持つ者のみが口にできる台詞だ」「インドがいくじなしで、はずかしめに甘んじて、その名誉ある伝統を捨てるよりも、わたしはインドが武器をとってでも自分の名誉を守ることを望んでいる」こそがガンディーの考えだったとの事で、初見時は「これなら世間的に流布されている非暴力理論よりも、納得出来る!」と大いに共感したものです。
 特に、後者の理論は『北斗の拳』にてラオウが遭遇した無抵抗村のエピソードを思い出します。
 この村人たちも一応は非暴力を謳っていますので、その代表的提唱者であるガンディーまでもが貶められている場面をネット上で時折みかけるのですが、罰する力もないのに許している気になっている、なのに「笑顔」の信念や名誉を最後まで貫き通す勇気も意地もない、そのくせ自分の命に対する卑小なまでの臆病さだけは旺盛という「非暴力」者達を見たら、むしろ一番激昂するのはガンディーなのでは…と感じたものです。

 ※ちなみに、ガンディーは暗殺者によって三発の銃弾を撃ち込まれ、絶命する寸前すらイスラム教で「あなたを許す」という意味を持つ動作をとっています。この逸話を知った際、自らを殺そうとする者にすら慈愛を向けるのかと感銘を受けたものでしたが、実際はそれだけではなく、著書で「許しは罰よりも、さらに雄雄しい勇気と力がいることを知っている」と述べている事から、ガンディーはこれが最後の時だと分かってしまったからこそ、未だ不安定なインドを残して逝く前に「インドもこうあって欲しい」と、半ば祈るような気持ちで雄々しい勇気と力を自ら示して世を去ったのではないだろうかと思えてなりません。
ガンジーは非暴力で知られていますが、実は「臆病よりは暴力」という言葉を残しています
 ちなみに、この時ガンディーは「そう何でもかんでも否定されてたら、人類は進歩出来ないんですけど」「矛盾した欲望をどう解決するかで人間は知恵を絞ってきたわけで」と少し反論した園場さんに興味を示し、「私は欲望に基づく食事はせんが、確かに空腹でもある。この矛盾を解決する料理が君にできるかね?」という難しいリクエストをし、園場さんに頭を抱えさせています;。
 なお、ガンディーは牛乳や成熟して下に落ちた実くらいしか口にしないというかなり厳格な菜食主義を実行していたようで、余計園場さんを悩ませていました。
 個人的に、一部の菜食主義の方がおっしゃる「植物を食べるなら命を奪わなくて済む」という意見には猛烈な反論がある為、ガンディーはどういうタイプなのか気になっていたのですが、調べた所ガンディーは「殺されるのを嫌がっているものは食べない」というこだわりを持ち、しっかり根付いている植物は一切食べず自然に地面へ落ちた物しか口にしなかったとの事。
 その為、園場さんの言う「菜食主義だから命を奪わないなんて大間違いです。農耕や牧畜の過程で、直接でなくとも間接的にたくさんの命が奪われているんですから」という意見に同調しつつも、その意志の強さは尊敬に価すると感じたものです。

 園場さんがこの自論を発表した際、ジャンヌさんは「なぜ人は他の生命を奪わないと生きていけないのでしょう」とこれまた難しい問いをぶつけているのですが、一瞬悩みつつも園場さんは「傲慢にならないためですよ」「人間は単体では存在できません。立つ大地、仰ぎ見る空、全てがあるから生きている。それを忘れないためです」「人は犠牲になった命の重さに見合う存在にならないといけません」という至言を残しています。
 よく「いただきます」「ごちそうさま」という言葉の意味について議論されていますが、当管理人としては奪われた命に対する言葉というよりは、当たり前すぎて日頃忘れてしまいがちなこの真理を忘れないようにするための自戒の意味合いが一番強いのでは、と考えています。
菜食主義にして「命を奪わず生きられる」と考えるのは、ちょっと傲慢なように思います
 その後、園場さんがガンディーのリクエストに応えるべく作ったのが、この“豆のガレット豆腐クリーム乗せ”!
 作り方は簡単で、お好みの豆類(エンドウ・いんげん・空豆等)を茹でてオリーブ油で和えたものをそば粉・小麦粉・お水で作ったガレットの中央に乗せて折り畳み、最後に上からミキサーで木綿豆腐・レモン汁・メープルシロップを滑らかなクリーム状になるまで混ぜて作った豆腐クリームをかけたら出来上がりです。
 園場さんが言うには、このガレットは元々ルイ十三世の王妃・アンヌがブルターニュへ狩りに出かけた際に現地の住民が食べていたものを偶然口にして気に入ったという伝説が残る食べ物だそうで、「何も贅沢だけが料理ではありません。粗末な食材の味を引き出し、価値を高める。それは食材への敬意というものです」という自分なりの料理に対する信念を語るのに役立てていました。
 何でも、豆腐を十分にクリーム状にする事によって豆の臭みが消えて柔らかな味わいが残るのだそうで、甘い味わいにする事によって豆の旨味が違った味で引き出させる為、塩味でも美味しいのをあえてメープルシロップで味付けしたと語っていました。

 ちなみに、園場さんは同じ料理を空豆が苦手な安徳天皇こと言仁君にも出しており、わざと「いやじゃ食べぬ!空豆が入っておる!」「(ガンディーを指さして)この者も食べぬ!」という言葉を引き出させ、ガンディーに「なるほどなるほど、そう来たか」と真意を読み取らせ、言仁君に豆の滋養を教える為、「このひと口は…欲望のためではない…他者に想いを伝える…その為のひと口…」という理由で“豆のガレット豆腐クリーム乗せ”を自発的に食べさせるのに成功していました。
 おかげで、言仁君は不承不承ながらも“豆のガレット豆腐クリーム乗せ”をちゃんと食べているのですが、思いのほかガレットは言仁君の口にあったみたいで、後々有賀さんが小豆のクレープをお土産に持って帰った時などは「クレープ!?」と目を輝かせるまでに成長を遂げていました;。
ガレットはフランスの宮廷料理の一つに数えられてますが、元は農民の料理だったという説が
 当初は「緑色の豆を使ったクレープ?」と今一つしっくりこない感じがしましたが、かえってどんな味になるのか木になりましたので、新鮮な豆が手に入る今再現する事にしました。
 作中にはおおむねの材料やレシピがきちんと掲載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、豆類の下ごしらえ。空豆はさやから取り出し、筋なしいんげんは両端を少し切って、絹さやとスナックエンドウは筋を取り、塩を入れて沸騰させたお湯でざっと茹でます(豆はすぐに火が通りますので、面倒でしたら同時に入れてもいいですが、出来ればいんげん&空豆→スナックエンドウ→絹さやの順に時間をずらして投入した方がいいです)。
 豆類が茹で上がったらすぐにザルにあけて水気をきり、粗熱が取れたらオリーブ油をまぶして軽く混ぜます。
 これで、豆は準備OKです。
豆のガレット豆腐クリーム乗せ1
豆のガレット豆腐クリーム乗せ2
 次は、豆腐クリーム作り。
 ミキサー(又はフードプロセッサー)へ、茹でて冷ました後徹底的に水切りした木綿豆腐を入れてクリーム状になるまでスイッチを押し、段々滑らかになってクリームっぽくなってきたらレモン汁とメープルシロップを加え、さらにスイッチを押してよく混ぜ続けます。
 豆腐全体にザラザラした感じがなくなり、まるですったクリームチーズのように艶やかな光沢のあるクリーム状になるまで混ぜられたら、豆腐クリームは出来上がりです。
 ※木綿豆腐は元の大きさの三分の一以下になるまで水切りしないと、豆の臭みも消えない上に水っぽい仕上がりになりますので、要注意です。
豆のガレット豆腐クリーム乗せ6
豆のガレット豆腐クリーム乗せ7
豆のガレット豆腐クリーム乗せ8
 ここまできたら、今度はガレット作り。
 ボウルへそば粉と小麦粉を混ぜた物をふるいにかけて入れ、水を少しずつ注ぎながらダマにならないよう泡立て器で丁寧にかき混ぜます。
 粉と水がよく混ざって生地が出来上がったら、薄く油を引いて熱したフライパンへ垂らして薄く広げ、両面をちょっとだけ焦げ目がつくまで焼きます(←小麦粉のみのクレープに比べるとやや厚めになりやすいですので、気を付けた方がいいです)。
 焼けたら大皿へ取り出し、粗熱を取ります。
豆のガレット豆腐クリーム乗せ3
豆のガレット豆腐クリーム乗せ4
豆のガレット豆腐クリーム乗せ5
 このガレットをお皿へ広げ、中央にオリーブ油で和えた豆類を置いて四角い形になるよう折り目をつけながらしっかりたたみ、上から豆腐クリームをかけたら“豆のガレット豆腐クリーム乗せ”の完成です!
豆のガレット豆腐クリーム乗せ9
 ほんのりとそば色のようなこげ茶のようなに趣のある色合いに染まっているクレープと、瑞々しい緑色の豆、そして豆腐クリームの白色の取り合わせが美しいです。
 豆の臭みはほとんど匂わず、逆にメープルシロップの芳しい香りの方がふわっと漂う為、かろうじてデザート風だと分かりました。
 今までに出会った事がない組み合わせですので味の想像が全然つきませんが、覚悟を決めて確認してみようと思います。
豆のガレット豆腐クリーム乗せ10
 それでは、手で直接つかんでいざ実食!
 いっただっきま~すっ!
豆のガレット豆腐クリーム乗せ11


 さで、味の感想ですが…一言では言い表せない不思議な味わいですが、決して不味くはないです。ただ、人を選ぶ一品ではあります;。
 当初は「デザートにえんどう豆?」と怪訝になりましたが、実際に食べてみると「メープル風味の煮豆風フランス仕立て」というイメージの味付けで、意外とそこまで抵抗感はなかったです。
 元が木綿豆腐だったとは信じられないくらいぽってりかつなめらかなクリーム状になった豆腐は、見た目よりもずっと大豆特有の濃厚なコクがギュッと凝縮されており、茹でた豆に負けないくらい力強い旨さなのが特徴的でした。
 メープルシロップのカラメルみたいに少し焦がしたような独特の甘味が、豆の瑞々しさを際立たせるのに成功しており、妙な美味しさを生み出しているのに頭が混乱します。
 このクリームと合う順に豆を挙げるとするなら、スナックえんどう・空豆・絹さや・いんげんで、特にスナックえんどうのジューシーな甘い汁気はメープルシロップのサラッとしてべとつかない甘さとよく合っていました(←空豆に豆腐クリームが合わさると、「ちょっと青っぽくて爽やかな食感の甘納豆や金時豆」と例えたくなる味になります)。
 そば粉のクレープは小麦粉で作るクレープよりもどうしてもやや厚めになりますが、モチモチした噛み心地と香ばしい風味が豆腐クリームとも豆ともしっくり馴染んでいて、最後まで頭を傾げたくなりますが「これはこれでありなのかな…?」と思いました。


 そば粉のクレープには卵&チーズを合わせるのが至高だと思っていましたが、甘い物とも合うと知り満足しました。
 煮豆がお好きな方にはたまらないものがあると思いますので、おすすめです。

●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
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 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
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