『食べる門には福来る』の“カマ揚げ豆腐”を再現!

 ある日、母が買ってきたイモけんぴをおやつ代わりに食べていたのですが、ふと袋を見てみると「高知県地場産業賞受賞」「芋剣秘」「東経120度、北緯20度付近から日本へ北上し、一度も大気に触れていない海洋深層水の塩を使用しております」というすごい宣伝文句が書かれており、思わず気軽にムシャムシャ食べていた手を一度止めてしまいました。
 まさかスーパーで百円で売られてたイモけんぴにそこまですごい背景とドラマがあるとは思っていなかった為、今後はよくよく袋に書かれた内容を見ながら慎重に食さねばならないな~と思いました;。

 どうも、「剣を秘めた芋」とはなかなか洒落た当て字だな~と感じた管理人・あんこです。 


 本日再現する漫画料理は、『食べる門には福来る』にてあるペンション経営者の奥さんが起死回生をかけて考え出した“カマ揚げ豆腐”です!
カマ揚げ豆腐図
 今回ご紹介するエピソードは、潰れかけたペンションで苦悩しているあるご夫婦のお話。
 ご主人は<CheeseStar>という西洋風の白い壁と赤い屋根がかわいいペンションを経営しており、他に従業員を雇わずご夫婦二人で切り盛りしているのですが、一日に来るお客さんは一~二組という有様で家計は火の車な為、このままだと潰れるのは時間の問題という状態にまで追い込まれています。
 その理由は奥さんによるとご主人の前時代的な経営方針で、お客さんには自家製ナチュラルチーズだけが主役の夕食を出し、手作りジャム・クッキー・ハーブティーを一緒に食べさせながら自分達と雑談してもらい、最後は寝る前にご主人が弾くギターの調べに合わせて繰り広げられる山登りや天体観測のお話を聞いてもらうという、ご主人の理想とするおもてなしプランがお客さんの負担になってリピートに繋がらないからでは…と予想していました。 
 確かに、かなり心のこもったおもてなしですので合う方には合うと思いますが、山登りや天体観測にあまり興味がなく食後はゆっくり過ごしたい方にしてみれば、泊まっている間中ご主人のミニライブ付き長話に付き合わされるというなかなかハイレベルな拷問にしか感じられないと思いますので、これは人気がでなくても仕方ないだろうな~と苦笑しました;。
 当管理人自身、お話好きなインドカレー店の日本人店主から食事中にあれこれ話しかけられ、最終的には厨房奥から連れてこられた手乗り文鳥とインコも交えて一時間以上お話をした事や、深夜に立ち寄った初対面の某とんこつラーメン屋台のご夫婦から「いくつ?結婚しないの?」等突っ込んだ人生話をされた事など、フレンドリー過ぎるお店の方によってくつろげなくなった&ほとほと困った経験は結構ありますので←内心「交流事故」と呼んでいます;。ただ、交流は程々ならむしろ大歓迎ですので、難しい所です)、さっさと自室に引き上げたお客さんを残念に思って「呼んでこようかな」と立ち上がったご主人を「やめなさい、迷惑よ」と奥さんが一喝したシーンは、心から「グッジョブ!」と言いたくなったものですorz。
 正直、カマンベールチーズとゴルゴンゾーラチーズを始めとする何種類ものチーズを毎月自分で作って熟成させているのは、技術や設備はもちろん労力的にも相当すごい事ですので、このチーズをもっと効果的に売り出せばいくらでも突破口がありそうでしたが、ご主人はあくまでも「古きよき時代のペンション」像に浸りたい様子で全くその考えには至っておらず、奥さんをイライラさせていました;。
手作りチーズ、フォークソング、星座の観測などを売りにしたペンションは時代遅れと豪語する奥さん;
 ある日、とうとう奥さんは「もう時代遅れなのよ、あなたの考えているようなペンションはっ」と怒り、困惑したご主人は「じゃあどーすれば…」と渋々意見を聞くのですが、そこで奥さんが提案したのは「もっと個性を出さなきゃ」「例えば食事を手作りチーズを使った和食にするとか」というもの。
 当然、ご主人は「わ、和食?そんなのペンションじゃないよーっ」と反論するのですが、奥さんは一向に意に介さず「だからそーゆー考えを捨てなさいって」と跳ねのけ、次々と試作品を作ってご主人に味見してもらいます。
 その際、奥さんが一番目に考案して用意したのが、この“カマ揚げ豆腐”です!
 作り方は簡単で、水気をきった木綿豆腐の中央にカマンベールチーズを一切れ埋め込み、片栗粉をまぶして熱した油で揚げた後、和風出汁を張った小鉢に入れて上から粉チーズと刻んだネギを散らしたら出来上がりです。
 スライスしてそのまま頂くのが一般的なカマンベールチーズを揚げてしまうとは、一見大胆な調理法に見えますが、調べてみると比較的淡泊な味わいのカマンベールチーズはどんな料理にもそこそこ相性がいいらしく、居酒屋界ではすでにカマンベールチーズフライなるメニューを出すお店が増え始めているとの事で、驚きました(←HPで紹介されているお店もあります)。
 また、豆腐と合わせてしまうというのも意外でしたが、考えてみれば日本では既に何年も前からチーズ豆腐なる食べ物が世に出て定番化しつつありますので、案外いけるのかもしれないな~と奥さんの先見性に感心しました。
大量に余った手作りチーズを消費する為、オリジナリティのある和風チーズ料理を提案する奥さん
 その後、奥さんはチーズと和風出汁の香りに誘われて食堂へ戻ってきたお客さんにも“カマ揚げ豆腐”と、ゴルゴンゾーラチーズと牛ひき肉をはんぺんに挟んで作る“はんぺんブルー”、イワシとごぼうに甘辛つゆ・溶き卵・ピザ用チーズをかけてオーブンで焼いた“イワシの柳川風グラタン”をお出しするのですが、どれも「おいしー」「うめー」と好評で、自信をつけた様子でした。
 その上、この時お客さんの一人が言った「何だか日本酒が飲みたくなるなぁ」という呟きによって新しい商売のアイディアが舞い降りた奥さんは、レトロでメルヘンチックなペンションへ赤ちょうちんとネオンを飾り、内装を完全に居酒屋風へとリニューアルして店名も<居酒屋ペンション チーズ亭>に変えて新装開店するのですが、これが大当たり!
 連日、奥さんの作る日本酒と相性ぴったりなチーズ和食目当てに宿泊客がひっきりなしに訪れ、やっとペンションの経営は軌道に乗り始めた為、今ではすっかり女将姿が板についた奥さんは満面の笑みでせっせとお運びをしていました。
 しかし、理想のペンションがすっかり様変わりしてしまった事に落ち込んだご主人だけは浮かぬ顔で、未だに納得できない様子で「ちがう…こんなのペンションじゃない…ペンションじゃなーい!」とお店の片隅でギターを挽きながら寂しそうに叫んでいました;。
 ご主人の何とも言えない悲しい気持ちも分かる気がしますが、とりあえずこのまま稼ぎ続けていたら後々自分好みのペンションを二号店として建て、趣味で利益度外視の経営をする事も夢ではないと思いますので、どうか落ち込まずに頑張ってほしいな~と密かにエールを送りました;。
その後、ペンションはチーズ居酒屋に変身して大成功しますが、ご主人は不満でした;
 先日、安いカマンベールチーズを見つけた為再現する事を決意しました。
 作中には詳細なレシピが記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、チーズと豆腐の下準備。木綿豆腐は電子レンジにかけて(又は熱湯で茹でて)水気をきり、キッチンペーパーに包んだ後数時間置いて適度に水分を抜き、表面の水滴を拭き取ります。
 この豆腐の中央に包丁で軽く切れ込みを入れ、そこへカマンベールチーズを一切れ埋め込み、前面にまんべんなく片栗粉をまぶします。
 ※切れ込みを入れて押し込むだけではどうしても豆腐が派手に割れて崩れやすいので、やや小さめの穴を開けてチーズをギュウギュウに押し込むやり方の方がより多くチーズを詰められていいかもしれません。
カマ揚げ豆腐1
カマ揚げ豆腐2
カマ揚げ豆腐3
 次は、揚げ作業。
 先程のチーズ入り豆腐を170度~180度にまで熱した油へ入れ、表面に軽く揚げ色がつくまで揚げ、揚がったらキッチンペーパーへ引き上げて余分な油分をきります(茶色に色づくまで揚げるのは上げ過ぎですのでご注意!)。
 その間、別のお鍋に用意した鰹節と昆布で取った合わせ出汁へ醤油や塩を加えて味付けをし、揚げ出し豆腐用のお出汁を作っておきます。
カマ揚げ豆腐4
カマ揚げ豆腐5
カマ揚げ豆腐6
 さっきのお出汁を深めの器へ張って上がったチーズ入り豆腐を崩さぬようそっと浸し、その上から粉チーズと刻んだ万能ネギを振りかければ“カマ揚げ豆腐”の完成です!
カマ揚げ豆腐7
 合わせ出汁のほっとする香りや刻みネギの鮮やかな風味と共に、熱される事によって増したカマンベールチーズのふくよかな香りがたまらず、思わずため息がこぼれます。
 和食にチーズの組み合わせは果たして合うのか心配になっていましたが、実際に作ってみるとそこまで違和感はなく、とりあえず一安心です。
 真っ二つに割ってみると、中からトロ~とカマンベールチーズがこぼれ出るのがそそる感じで、味の方はどうなのか気になります。
カマ揚げ豆腐8
 それでは、熱々の内にいざ実食!
 いっただっきま~す!
カマ揚げ豆腐9


 さて、味はと言いますと…チーズを使っている割には日本酒にぴったりな味わいで旨し!和と伊の完全なコンビネーションが見事です!
 実は、前からカマンベールの皮の何とも言えない癖が少し苦手だったのですが、揚げる事によって癖が艶かしい香ばしさへと変化し、まるで湯葉のような食感になっていた為とても食べやすかったです。
 出汁がかかっていない所はさっくりカリッと、かかっている所はもっちりツルンとしている片栗粉の衣を噛み破った途端、熱が加わる事によって甘味がより際立ったふんわり柔らかな豆腐がホワッとほどけ、カマンベールチーズのまろやかで濃密なコクと、こってり深いのにしつこくない優しい脂分がまったりとろけ、混然と絡みあっていくのがたまりません←絹漉しだと品がいい分チーズの個性に呑まれてしまいそうですが、木綿は大豆の力強い風味と油分が活きていますのでチーズに全く負けておらず、互いに調和していました)。
 時折、粉チーズの塩気が効いた上品な和風出汁を啜ると、やや油っぽくなった口の中をさっぱりと洗い流しつつもチーズと豆腐の淡泊な旨味をさらに増幅させていく感じで、地味ながらも良い仕事をしていました。
 カマンベールチーズは酸味が弱くクリーミーなので豆腐の味とあまり喧嘩しない上、とろみに腰がないので豆腐とすぐに一体化するのがいい感じで、チーズ豆腐に似ているものの全部がチーズ味になっていない分、メリハリがあって飽きがこないのがよかったです。


 正直、これは本当に居酒屋で出したらそこそこ人気が出そうだな~と感じる程完成度が高かったです(お出汁は衣の油が溶け出たせいか、複雑なコクが生まれていたのがよかったです)。
 日本酒だけでなく、ビールにも合うのが飲兵衛には嬉しい一品でした。


P.S.
 無記名さん、前記事でのご指摘ありがとうございます。当管理人も、「実は私、日本に逃がされてたんだよ」という楊貴妃さんの説明は初期の頃に読んでいましたので、頭がの中が「?」となったのですが、前回ご紹介したお話では完全にその話は無かったことにされ、正史通り殺されたことになっていました;。どちらが本当か今では分かりませんが、もしかしたら単に西先生がその設定を忘れていたのかもしれませんね(^^;)。

●出典)『食べる門には福来る』 ラズウェル細木/ぶんか社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2014.04.20 Sun 00:06  |  

チーズと日本酒、西洋と和の文化で合わないような気がしますが、どちらも同じ発酵食品、実はとても相性がいいのですよ:)
逆もまた然り、ワインとお醤油の相性もいいですよ〜

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
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 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
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