『くーねるまるた』の“畑の魚(ポルトガル風天ぷら)”を再現!

 近頃、仕事関係の事で頭が痛くなる時は、いつもTOKIOの『宙船』を聞いて己に喝を入れています。
 この曲が発表された当時は「いい曲だな~」くらいの感想だったんですが、年を経るごとに「おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールを任せるな」の一句が特に胸に沁みるようになりました。
 今後も、こんな感じで歌詞の意味が実感で分かるようになってくるかと思うと、ちょっと楽しみです。

 どうも、その昔二歳年上の相方さんがえらく大人に見えたものの、今はむしろ同い年くらいに思えてきた管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『くーねるまるた』にてマルタさんがある日本文学作品を参考にして作った“畑の魚(ポルトガル風天ぷら)”です!
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)図
 ある夏の日、家で三浦哲郎の『盆土産』(この作品集に収録)を読んでいたマルタさんは、作中に出てきた「口の中に入れると、しゃおっ」と音が鳴るえびフライのシーンに差し掛かるや否や、えびフライが食べたくて仕方がなくなってしまいます。

 『盆土産』とは、お盆に出稼ぎ先から帰省した主人公の父親が、当時はまだ珍しかった大きな冷凍えびフライをお土産として持ち帰ってきた時の思い出を描いた短編小説。
 今では「特別なご馳走」というかつてのイメージは消え、いつでも当たり前に食べられる定番料理になったえびフライですが、昭和初期の田舎に住まう主人公や他の家族にとっては「見た事も聞いた事もない、でも素晴らしく美味しいんだろうな~」という漠然とした印象しかない未知のご馳走で、父が帰ってくる直前まで主人公が「河にいる小エビは知ってるし、給食で鯖フライは出るから<えび>と<フライ>は分かるけど、その二つが合わさった物は想像もつかない」「かき揚げみたいに揚げるのかな、それともコロッケみたいにして揚げる?」と頭の中がグルグルになりながらも待つ様子が、ひたすら愛おしいです。

 父が帰省前に手紙で「土産は、えびフライ。油とソースを買っておけ」←この台詞、妙にかっこよくて好きです…そこはかとなく漂う家長の頼もしさがあって。ただ、現代でこの手紙を渡してもごく普通のおつかいメモにしかならないのが切ない;)と送ってきて皆が内心ザワ…ザワ…となるシーンも味があってよく、インターネットという物がなかった当時、<家>という小さな繭の中で色んな空想を繰り広げ、表立って見えずともさりげなく支え合う家族の様子が感じられるのがいいです。
 あと、いざ父が帰省してきて本物の冷凍えびフライを見て「いつも見るエビより肥えてる…!」と姉と二人目を丸くして驚く主人公のシーンも可愛いですし(←幼い頃、活きてぴょんぴょん跳ねる車海老が家に贈られてきて「こいつ…動くぞ!」と衝撃を受けた記憶が蘇りました;)、早速揚げて実際に食べた後「かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで」とあまりの美味しさに無我夢中になったシーンも微笑ましいので、「初めて食べた○○」の記憶を思い出したい方に是非お勧めしたい作品です。
三浦哲郎の『盆土産』を読んでからというもの、急にエビフライモードになってしまうマルタさん;
 結局、読書後もえびフライ熱が冷めなかったマルタさんは、神保町にあるお気に入りの洋食店へえびフライランチを食べに行くのですが、折悪く移転していたことが発覚してショックを受けてしました;。
 しかし、どうしてもカラッと揚がったエビを食べたい!と思ったマルタさんは方針変更し、次はえび天丼の美味しいお店へ行こうとするのですが、今度は長い行列ができていてすぐに店内に入れなかった上、急に大雨が降ってきて並べなくなり、やむなく近くの古本屋さんへ非難するという災難に見舞われてしまいますorz(←マルタさんは美味しい物に関してはかなりの強運を発揮しますので、ここまでツイていないのは珍しいです;)。
 とはいえそこまで長居する気はなく、あくまでも雨がやむまでの暇つぶしのつもりだったんですが、運がいいのか悪いのか三浦哲郎の短編『とんかつ』が載っている作品集を発見してどうしても読みたくなってしまい、泣く泣くえびを食べる為に持ってきていた八百円の内五百円を手放して購入していました;。
 いつもなら食べ物最優先なマルタさんですが、この時ばかりは読むたびに何度も美味しそうなとんかつが脳裏に蘇る本の方を優先したみたいで、こういうシーンを見ると文学少女だな~と思います
海老フライだけでなく、とんかつにまで興味を持ってしまい、また本を買ったマルタさん;
 おかげで雨が止んだ後も天ぷら屋さんを素通りし、揚げ物モードなお腹を抱えつつすごすご帰ろうとするマルタさんでしたが、偶然通りかかった八百屋さんで特売のいんげんを発見し、ある料理を閃きます。
 こうして帰宅後、その日の夕食にマルタさんがいんげんを使って作った“畑の魚(ポルトガル風天ぷら)”です!
 作り方はとても簡単で、いんげんを下茹でして食べやすい大きさに切り、小麦粉・オリーブ油・卵・塩・こしょう・ビールをさっくり混ぜて用意した衣を二本ずつつけて二度揚げしたら出来上がりです。

 マルタさん曰く、「昔は内陸だと魚が手に入りにくかったから、形だけでもって考え出されたんだろうなぁ」という由縁で生み出されたポルトガル料理らしく、いんげんを魚に模して天ぷら状に揚げるから「畑の魚」という洒落た呼び名なのでは…と推測していました。
 ポイントは、一度衣をつけて揚げた後また引き上げて衣をつけて二度揚げする事で、どうやらマルタさんは衣はなるべく分厚い方がお好みみたいでした(←作中でも「しっかりした衣好き」と話しています;)。

 そんなこんなで最終的にえびフライは食べられなかったマルタさんでしたが、「日本人風に言うと、これが夏の味ってヤツかな?」「とんかつ食べてみたいな~」と心もお腹も大満足だったみたいで、ほっとしたエピソードでした。
その昔、内地のポルトガルでは生の魚に手に入りにくかった事からこの料理が生まれたのでは?と推測してました
 スーパーでいんげんが大量に安売りされていた為、迷わず再現を決意しました。
 作中にも詳しい作り方や大体の分量が載っていましたので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下ごしらえ。いんげんは水洗いした後に筋を取り(「筋なし」の表記がされている物はそのままでOKです)、お湯を沸騰させた小鍋へ入れて十秒そこそこ茹でてからすぐにザルにあけます。
 さっと流水をかけて冷やし、水気を丁寧に拭き取ったら食べやすい大きさに切っておきます。
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)1
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)2
 次は、衣の準備。
 ボウルへ小麦粉、オリーブ油、卵、塩、こしょう、ビールを入れ、お箸でさっくり混ぜ合わせます(←混ぜすぎると粘りが出て、揚げた時にべっちょりした生地になりますので要注意!)。
 ビールを注ぐとシュワ~!となかなか派手な音が出て泡が膨らみますが、気にせずグルグル混ぜちゃって大丈夫です;。
 これで、食材は用意万端です。
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)3
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)4
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)5
 ここまできたら、いよいよ揚げ作業。
 先程のいんげんを二本菜箸で取って衣をつけ、高温に熱した揚げ油でさっと揚げ、軽く揚がった所で一旦キッチンペーパーの上へ引き上げます。
 この一度揚げたいんげんへさらに衣をまとわせたら、再度揚げ油に投入し、さっくりと二度揚げします。
 ※作中で「コルクを入れてから揚げると、油がはねなくなる」という小ネタがありましたが、残念ながら手元になかったので試せませんでした;。もし気になった方がいましたら、是非試してみてください。
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)6
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)7
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)8
 二度揚げし終えたいんげんをキッチンペーパーでしっかり油切りし、敷紙を引いたお皿へ順々に並べれば“畑の魚(ポルトガル風天ぷら)”の完成です!
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)9
 二度揚げする為、なるべく衣は薄めにつけようとしたんですが、それでも結構ぽぼってりとした衣の天ぷらに仕上がりましたorz(←マルタさんはむしろ大喜びかもしれませんね;)。
 見た感じではビールが入っているとは分かりませんが、普通の天ぷらよりもやや濃い香りのする天ぷらですので、何かがちょっと違うな~とは薄々分かる感じです。
 ビール入りの天ぷらは以前食べた事がありますが、二度揚げした物を食べるのは初めてですので、一体どんな味になっているのか非常に気になります。
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)10
 それでは、揚げたての内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
畑の魚(ポルトガル風天ぷら)11


 さて、味はと言いますと…すっきり食べられる初夏の天ぷらって感じで美味!確かにこれなら、いくらでも入りそうです!
 程よく火が通ったさやいんげんのシャキシャキシャクッと爽やかな食感を、フリッター風のふんわりフカフカした天ぷら生地が引き立てており、そのギャップがたまりません。
 当初は「こういう分厚い天ぷらは、ベチャッと油っこくなりがちだけど…」とやや不安だったんですが、実際に食べるとビールの効果かすごくカラッと油切れのよい生地で、内側が柔らかいのに対して外側はカリッとクリスピーな口当たりなのがよかったです(←恐らくこれは二度揚げしたから生まれた独特の歯触りで、一度にさっと揚げて繊細に薄く仕上げる天ぷらとはまた違った魅力がありました)。
 あと、オリーブ油と卵が入っているおかげで普通の天ぷらよりもぐっとまろやかでコクのある味わいで、材料が似ているせいかマヨネーズ入りの衣と風味が非常に似ている気がします。
 比較的濃いめな味の洋風衣なので、噛むごとにさやいんげんの瑞々しい汁気が飛び出すのがよりフレッシュに感じられ、和の天ぷらだと隅っこに追いやられているイメージの野菜天ぷらが、これだと一気に準主役へとのしあがっているように感じました。


 作中の擬音通り、本当に「しゃおっ!」とした食感なのが感動的で、ビールと一緒にすいすい食べられました。
 この衣はいんげん以外にも、本物の白身魚をくぐらせて揚げても合いそうでしたので、近々試してみようと思います!

P.S.
 七師の権兵衛さん、コメント欄でのご指摘ありがとうございます。おっしゃる通り、せんげい→せんべいですorz。どうやらこの記事を書いてるとき、相当焦ったものと思われます;。ご協力感謝いたします。

●出典)『くーねるまるた』 高尾じんぐ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2014.06.24 Tue 20:06  |  えんびフライ

あんこさん、こんばんは。何だか久しぶりにコメントします。

「盆土産」は確か中学校の国語の教科書に載っていて、読んだ
記憶があります。最後に父との別れの際、主人公が父に
「えんびフライ…」とつぶやき、お土産を要求するように
見せて、父との別れを惜しみ、早期の再会を望む様子を見せる
描写が心に残っています。訛っているのが良いセリフです。

「くーねるまるた」には小学館のある神保町の実在店をモデル
にしたお店が度々登場します。今回の洋食店は小学館ビルの
地下街にあるお店がモデルですね。小学館ビル立て替え工事で
移転した事もそのままです。続いて登場したお店も神保町に
実在する天丼専門店(天丼1杯500円!)そっくりです。
その他、らっきょうが美味しいカレーのお店や、まだ単行本に
なっていない、お爺さんの作る中華料理店も神保町にある
お店がモデルですね。ちなみにまるたさんが餃子の大食いに
チャレンジしたお店は、巣鴨の「ファイト餃子」というお店
がモデルみたいです。

長々と蛇足知識、失礼しました。では、また〜。

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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
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