『華中華』の“糸蒟蒻と長葱チャーハン”を再現!

 実は、個人的には深夜よりも早朝の方が怖いと思っています(←ただ、これは室内に限りますし、周囲に誰かがいたら平気です)。
 その理由は、小学生の時に図書館で読んだ漫画版『雨月物語』に収録されていた「吉備津の釜」という話を読み、震えあがった為。
 冒頭はよくある怪談話で、裏切られ続けて遂には生霊となった妻に追い詰められた浮気性の夫が、陰陽師から「死にたくなければ、このお堂から四十二日間出るな」と言われたのを聞き入れ、外から怨念の声が聞こえるのに怯えながら四十二日間やり過ごそうとしたというお話なんですが、真に恐ろしいのはその結末。
 やっと四十二日が過ぎ、心配してお堂の外に付き添っていた親戚の彦六も、やっと朝の陽ざしが自分に降りかかるのを感じほっとして門をくぐろうとし、夫も安心して戸を開けるのですが、その瞬間彦六の背後から身の毛のよだつような悲鳴が。
 驚いた彦六は振り返るのですが、恐ろしい事に先程まではしらじらと明るくなっていたはずの空は再び真っ暗な夜に戻っていて、肝心のお堂の中には既に夫の姿はなく、その代わり夫の髷とおびただしい量の血が飛び散っていた…というのです。
 夜を朝に見せかけるという力技を使ってまで夫を呪い殺したいと思った妻の執念が悲しいと同時にとても怖くて、おかげで今でも早朝一人で部屋にいると「騙されているのではないか…」と内心ビクビクしています。

 どうも、明かりの絶えない現代にでも十分怖い話を後世に残した上田秋成はすごいな~と尊敬した管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんが危うく犯罪に手を染めそうになった青年を改心させるために作った“糸蒟蒻と長葱チャーハン”です!
糸蒟蒻と長葱チャーハン図
 ハナちゃんが満点大飯店を退職してしばらく経ち、上海亭と義実家を往復する日々に慣れてきた、ある初夏の日の事。
 仕事を終えたハナちゃんは、信用金庫に売上金を入金したいと言うおばあさんと一緒に駅方面へ歩いていく事になるのですが、ちょっと目を離した隙におばあさんが引ったくりにあってしまい、「今日の夕飯は初鰹にしようかな」と和やかムードになっていたお二人は、一瞬にして緊迫した空気に包まれます。

 幸い、その日は楊貴妃さんだけでなく幽霊仲間の船長さんやシンちゃんも傍におり、「犯人はアタシが捕まえるから、おばあさんを頼んだよ」とすぐに追跡してくれた為、引ったくり犯は呆気なく発見されていました(←幽霊ならどんなに狭くて閉ざされた所でも簡単に追いかける事が出来ますので、ある意味警察やヘリコプター以上に頼もしい存在だと思います;)。
 まだお金には手を付けていない状態だったので、楊貴妃さんはひとまず船長さんとシンちゃんに引ったくり犯の上へ乗ってもらって身動きが取れなくなるようにし、バックを取り返してハナちゃんにどう処分するのか聞きに上海亭へ戻っていましたが、ハナちゃんは「警察にでも突き出すかい?」という楊貴妃さんを遮って「いいえ、私に考えがあります」と言い、現場へと向かっていました。
 正直、当管理人は「ひったくり犯=怖い」という認識で、出来る事ならばなるべく関わりたくないと考えている為、仮に幽霊達がいるとしても一対一で会おうと考えたハナちゃんは度胸があるな~と感心します。
今回活躍したのは、幽霊仲間の船長さんとシンちゃんで、逃げないようがっちり押さえてくれてました;
 その後、ハナちゃんは船長さんとシンちゃんにひったくり犯の上からどいてもらうようにお願いし、そのまま上海亭へと連行して詳しい話を聞きます(←ちなみに、一度「サンキュー!」と言って逃げようとしていましたが、再度幽霊達によって押しつぶされて確保されていた為、それからはすっかり大人しくなってました;。今のハナちゃんなら、スタンド使いとだって戦えそうな気がします;)。
 ひったくり犯の名前は丸山貴志君、年齢は十九歳で、出身地は群馬県。
 去年までは自動車会社の工員だったものの、突然解雇されて困窮し、家に置いてくれた悪い先輩から命令されて今日初めて引ったくりしたとの事で、同情の余地がある分もう二度とこんな事をしてほしくないと思ったハナちゃんは、丸山君にあるお願いをします。
 そのお願いとは、「チャーハンを作ってお金をいただく事の大変さを、その目と身体と心で知って」もらう為、「明日の朝8時にこの上海亭に来て、わたし達と一日一緒に働いて下さい」という物で、その条件を飲むのであれば引ったくりの事は許しますと語っていました(←ただ単に許すのではなく、心を入れ直してくれるよう色々働きかけるのは相当難しい事なので、ハナちゃんの心の広さには頭が下がります…)。

 ちなみにこの時、ハナちゃんは丸山君に体が動かなくなったのは「丸山君の心の中にある罪悪感というか、良心みたいなものが、体を縛り付けたのよ」「今回が初めての引ったくりだったんでしょ?だから、悪い心より良い心の方がまだ強かったんだと思うの」と巧みに言い聞かせており、丸山君に残っていた良心を強く刺激するのに成功しています。
 楊貴妃さんと出会った当初は頼りない初心な少女だったハナちゃんも、こんな機転がきくようにまで成長したんだな~としみじみさせられる一コマです;。
ある日、ハナちゃんと楊貴妃さん達は危うく犯罪に手を染めそうだった青年をすんでのところで止めます
 こうして、ハナちゃんが丸山君の心を動かす為、上海亭に泊まりこんで一晩中試作しまくった末に考え出したチャーハンが、この“糸蒟蒻と長葱チャーハン”です!
 作り方はやや手間がかかる感じで、ごま油をひいたフライパンで牛ひき肉・糸蒟蒻・長ネギ・赤唐辛子・オイスターソース・醤油・こしょうを水分がなくなるまで炒め合わせて具を作り、基本チャーハンに混ぜ合わせたら出来上がりです。
 ハナちゃん曰く、蒟蒻芋と長ネギを栽培する農家を実家に持つ丸山君に、少しでも故郷を思い出してほしくて作った一品との事。
 ポイントは、塩を入れたお湯で糸蒟蒻を軽く下茹でして臭みを取り食感を良くする事と、その糸蒟蒻を米粒くらいのサイズになるまで丹念に刻む事の二つで、これをするのとしないのとでは味が断然違うと書かれていました。
 牛肉と蒟蒻は一緒に火を通すと固くなるので心配でしたが、調べた所、下茹でしてある程度カルシウム分を抜いてからざっと炒め合わせる分はそこまで影響は出ないとの事で、安心したのを覚えています。
実家は群馬で、実家は蒟蒻を作っていると聞いていた為、ハナちゃんはそれを生かしたチャーハンを作ってました
 結局、丸山君が上海亭に来た頃にはほとんどの準備が終わっていた為、おじさんが長ネギを刻んだり、おばあさんがお米をといだり、ハナちゃんが料理する所をみるだけで精一杯だったんですが、たった三百円のチャーハンといえど手を抜かず、心を込めて作業をしているハナちゃん達の姿を目の当たりにし、丸山君は自分がどれだけひどい事をしようとしていたのか、朧気ながらもやっと理解します。
 どうやら、ハナちゃんは最初から丸山君に雑用をさせる気はなく、上海亭の精神を感じてもらうのがお手伝いの目的だったみたいで、なかなか考えたな~と感心しました(←何だか、『北風と太陽』を思い出しました。声を荒げてきつい罰を与える=北風よりも、自らの行動で静かに教え諭す=太陽の方が、効果的な場合もあるという事ですね)。

 そして開店前、丸山君は“糸蒟蒻と長葱チャーハン”を試食させてもらうのですが、「うめ~よ!!」「オレなんかにこんな美味しいチャーハンを作ってくれた…お姉さんやおじいさん、おばあさんの優しさを思ったら…涙が…」とすっかり改心し、完食後はおばあさんの代わりにチャーハン運びをしていました。
 その上、どうやらハナちゃんの影響で料理人になる夢まで芽生えたらしく、しばらくは上海亭で出前係として働くことまで決まっており、初見時はあまりの急展開ぶりにびっくりしたものです;。
 出前まで出来るようになってさらにパワーアップした上海亭がどうなるのか…続きはまた次回の記事でご紹介したいと思います! 
お客さんの為に一生懸命頑張るハナちゃんやおじいさんたちを見て改心した丸君は、その後上海亭で働く事に
 先日、特売の国産糸蒟蒻と地元産の長ネギが手に入った為、再現する事を決意しました。
 作中には詳細な分量つきレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、具の準備。塩を入れて沸騰させたお湯に糸蒟蒻を投入してさっとゆがき、表面がプリンとしたらすぐにザルにあけ、ご飯粒くらいの大きさになるまで丹念に刻みます。
糸蒟蒻と長葱チャーハン1
糸蒟蒻と長葱チャーハン2
 一方、ごま油を引いて中火に熱したフライパンで牛ひき肉を軽く炒めておき、全体が色づいてきたら先程の糸蒟蒻を加え、水分がなくなるまでよく炒めます。
 この時、炒め方が不十分だと調味料の絡みが悪く水っぽくなりますので、要注意です。
糸蒟蒻と長葱チャーハン3
糸蒟蒻と長葱チャーハン4
糸蒟蒻と長葱チャーハン5
 糸蒟蒻から水分が完全に飛んだのを確認したら、食べやすく刻んだ長ネギ、輪切り唐辛子、オイスターソース、醤油、こしょうを入れてしっかり味付けし、今度は長ネギの水分が飛ぶまで炒め合わせます。
 やがて長ネギがしんなりし、味見して塩加減がちょうどいいのをチェックしたら、具は準備完了です!
糸蒟蒻と長葱チャーハン6
糸蒟蒻と長葱チャーハン7
糸蒟蒻と長葱チャーハン8
 次は、チャーハン作り。
 熱した中華鍋(又はフライパン)で、以前ご紹介したハナちゃん流基本チャーハンのレシピ通りチャーハンを作り、仕上げにさっき用意した具を投入してざっと混ぜ合わせます。
糸蒟蒻と長葱チャーハン9
糸蒟蒻と長葱チャーハン10
 チャーハン全域に具が行き渡ったら火からおろし、丸く形作ってお皿へ盛り付ければ“糸蒟蒻と長葱チャーハン”の完成です!
糸蒟蒻と長葱チャーハン11
 牛ひき肉、糸蒟蒻、オイスターソースと色が黒っぽくなる条件は十分整っているのに、赤唐辛子の赤、長ネギの緑、卵の黄が利いているせいか、そこまで殺風景なチャーハンにならずに済みました;。
 オイスターソースの食欲をそそる濃厚な香りが、期待感を高めてくれます。
 糸蒟蒻がこんなに沢山入っているチャーハンを食べるのは初めてですので、一体どんな効果をもたらしてくれるのか楽しみで仕方がありません。
糸蒟蒻と長葱チャーハン12
 それでは、熱い内にいざ実食!
 いただきま~すっ!
糸蒟蒻と長葱チャーハン13


 さて、味はと言いますと…ヘルシーさとがっつりした美味しさが両立していて感心!これはビールに合います!
 オイスターソースのこっくりと奥行きのある牡蠣エキスが効いたピリ辛醤油味のチャーハンに、牛肉の濃厚な味わいがぴったりの相性で、力強い旨味同士互いに引き立て合ってぐっとメリハリのある仕上がりになっているのがたまりません(材料が似ているからか、「甘さを抑えた牛肉のオイスターソース炒め風チャーハン」と例えたくなる味付けになってました)。
 ご飯粒くらいになるまで刻んだ為、最初の内は糸こん蒻の存在感は薄く、入っているかどうかよく分からなかったんですが、噛めば噛む程口の中のあちこちで控え目ながらも「プリプリ」「クニクニ」と自己主張してくるのがいい感じで、ちゃんといるな~と何だか頬が緩みます。
 そのせいか、火を通すとややしっかりめの歯応えになる牛ひき肉がたっぷり入っているにも関わらず、糸こん蒻がクッション代わりになって口当たりがほんわりと柔らかいのが特徴的で、いくらでも食べられそうでした。
 全体的に塩気の強い濃いめの味つけですが、炒り卵のふんわり優しい味や長ネギのシャキシャキ感、そして糸こん蒻に癖がないおかげで俄然あっさりした後口になっており、ちょうどいいバランスだったのがよかったです。
 あと、糸こん蒻は水分が抜けた分色んな旨さを吸い込んでいる為、いつまでも噛んでいたくなるくらい味わい深いのもナイスでした。


 ダイエット中の方は、牛ひき肉とご飯を減らして糸蒟蒻を多めに入れ、醤油を控え目にするとより効果的だと思います。
 糸蒟蒻の太さによって出来栄えが大分違ってきますので、色々なメーカーの物で試してみると面白そうです。

●出典)『華中華』15巻 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
     『華中華』16巻 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
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 …『夢色パティシエール』


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