『ハルの肴』の“マグロのゴマ揚げ‏”を再現!

  先月の初め、本屋さんの新刊コーナーで小川悦司先生の『すしいち!』一巻がいつの間にか発売されているのを見つけ、すかさず購入しました。
 読んでみますと、江戸時代末期を舞台に名店「菜の花寿司」で心も握ると評判の凄腕職人・鯛介が活躍する、人情味あふれるお話が五話ほど収録されていたんですが、主役であるお寿司がおいしそうなのはもちろん、相変わらず旨さの表現シーンが突き抜けていて素晴らしく、大満足しました(←個人的に、穴子・マグロ・車海老の話が食欲をそそられました)。
 寿司漫画といったら最近は『将太の寿司2 world stage』が有名で面白いですが、個人的に一番好みなのは昔ながらのお寿司に少し手が加わったくらいの創作寿司ですので、『すしいち!』はこれからも長く続いてほしいな~と願っています。

 どうも、いつか某老舗のうなぎ屋さんで特上うな重にチャレンジしたいと思っているものの、勇気がなくて並しか注文できない当管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『ハルの肴』にてハルちゃんがお詫びの意を込めて常連さんに作ったお通し・“マグロのゴマ揚げ‏”です!
マグロのゴマ揚げ‏図
 それは、「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」と呼ばれる初冬の頃のお話。
 常連客の永和さんが、志賀直哉の『小僧の神様』を読み返したのをきっかけに、江戸前の仕事をしたネタを肴にして飲みたくなったと聞いたイチローさんは、その代表格であるマグロのヅケを作る事を約束し、翌朝ハルちゃんを連れて築地へ仕入れに行きます(←単なるお手伝いとして駆り出したのではなく、どうやらハルちゃんに築地の人達との繋がりを作り、色々教わって勉強してほしいという思惑もあった模様。商売をされる方にとって、信用やツテはある意味お金以上に重要な要素なんだな~と感じます)。

 イチローさんには行き慣れた場所でも、ハルちゃんにとって築地は初めて足を踏み入れる未知の世界で、好奇心いっぱいの瞳で辺りをきょろきょろ見渡しているのが微笑ましかったですが、動きの速いターレに危うくひかれかけたり、職人らしさが皆無だったのが災いして一般客に間違われ、「場内見学は9時以降からでお願いします」とお巡りさんに注意されたりなど、早くもトラブル続きで苦笑しました;。
 朝の築地の慌ただしくも活気のある、刺激的な様子が見事に描写されていて、これはハルちゃんでなくても熱気にあてられて無理はないと思います;。

 おかげで、最後の方は目が回って少し疲れていたハルちゃんでしたが、イチローさんの知り合いである小出料理長から「慣れればここは味方になってくれるから」「仕入れの事だけじゃなくて、旨い食べ方も教えてくれたりね…」「…世の中で一番、魚を知ってる人たちだからさ」と声をかけられ、築地の奥深さとイチローさんの心遣いを改めて実感していました。
ハルちゃんは一見初々しいお嬢さんですので、一般客に間違われて注意されていました;
 そして<大門>へ帰った後、イチローさんとハルちゃんは早速マグロのヅケ作りに取り掛かり、後は漬けるだけで完成という所まで仕上げるのですが、ここでちょっとしたハプニングが起きます。
 それは、イチローさんが午後2時半に「…5時にはタレからあげとけ」と漬け時間を指定して休憩に入り、ハルちゃんがその通りに漬けた後に発覚したのですが、どうやらイチローさんは「15時」と伝えたつもりでその場を離れたらしく、最終的にマグロは漬け過ぎで失敗に終わってしまい、激怒します(←康造さんは臨機応変型ですので、「生のを長い時間漬けてネットリした口当たりにするやり方もあるんだから」と取りなそうとしていましたが、一徹職人型のイチローさんは「それじゃ別の料理だってんです」とあっさり却下しており、康造さんは拗ねてました;。普段は康造さんにほれ込んで尊敬しているイチローさんですが、元板前なせいかレシピを忠実に再現する事に関してはどうしても譲れないタイプらしく、僭越ながらもその気持ちは「忠実再現命!」な当管理人にも少し分かるような気がしました)。

 正直、そんな大事な事を聞こえるか聞こえないかの声で新人にややこしく伝えたイチローさんにもやや責任はあると感じた為、イマイチ納得し切れていないハルちゃんを気の毒に思ったものでしたが、その際に康造さんがハルちゃんに同情しつつも「上のモンのクセ覚えるのも仕事のうちだ」といった言葉も頷ける真理な為、何ともやりきれなくてトホホとなります。
 ちょっと理不尽なように見えるかもしれませんが、自分も振り返ってみればそういう理不尽が却って己を鍛えてたくましくさせ、「理不尽がつけ入る隙がないよう、効率的に仕事をするにはどうしたらいいか」と考える力も養われたな~と思い返される為、そう悪い事でもないのかもしれません(←もちろん、度が過ぎたら話は別ですが;)。
ちょっとした聞き違いや判断が命取りとなり、マグロのヅケは失敗に終わってしまいます
 結局、口ではきつく言いつつも「自分にも非があるし、部下の責任は上司である自分の責任」と考えていたイチローさんは、その夜マグロのヅケを楽しみにしてやって来た永和さんに「すいません…いいモンが用意できなかったんで、また」と自分の不手際という事にしてお詫びを入れ、てっきり責められると想像していたハルちゃんは衝撃を受けます。

 おかげで一睡もできず、「失敗して、そればかばってもらって…このままだら、情けねぇ」と焦燥感に駆られたハルちゃんは、まだ夜も明けない内から徒歩で築地市場へ直行し、イチローさんの馴染みの仲卸・<堺浜>のご主人にマグロを買い付けに行きます。
 最初は迷っていたご主人でしたが、ハルちゃんの真っ直ぐな瞳に心打たれてマグロを売り、その上周囲にいた仲卸さん達も事情を知るや否や、「それ(ヅケ)もいいけどね、いろいろ食べ方あっから」「そうだなぁ、普通じゃやらないのも面白いな」と様々な調理法をアドバイスしてくれていました(←このシーンを見るたび、「世の中で一番魚を知ってる人たち」という台詞に説得力を感じます)。
マグロの事だけでなく、料理法についても親身に相談に乗ってくれていました。
 こうして、ハルちゃんが築地の人達から知恵を借りてその日の<大門>で作ったお通しが、この“マグロのゴマ揚げ‏”です!
 作り方は簡単で、日本酒と醤油で下味をつけたマグロの切り身に、片栗粉(小麦粉)→卵白→白ゴマの順に衣をつけ、油で手早く揚げたらもう出来上がりです。
 ある仲卸さん曰く、「マグロって意外とゴマが合うんだぜ」との事で、ゴマの香りがマグロの旨味をさらに引き立ててくれると作中で語られていました。
 個人的に、ゴマと相性がいいのは鯛のように淡泊な脂の魚だと信じていた為びっくりしましたが、考えてみればマグロ丼は時々ゴマ醤油ダレをかけて出される事もありますし、むしろこってりしたマグロの方が白ゴマをどっしり受け止めて迫力のある旨さになりそうだと、興味津々になったのを覚えています。

 その後、自分の穴を埋めようとヅケを作り直したハルちゃんはイチローさんに合格点をもらって、めでたく永和さんに供する事が出来、「この強い魚の風味を酒で流す瞬間が<気分>なんですよぉ」と無事満足してもらえてました(←マグロのように個性が強い魚は、日本酒を流し込んだ時に鼻腔にたちのぼる香りがぐっと骨太で濃く、白身の繊細な風味とはまた違った魅力があるのを思い出します)。
 ただ、ヅケよりも永和さんの心に「お!」と目新しい感動を与えたのは“マグロのゴマ揚げ‏”だったみたいで、「ビューですよぉ」と最高の褒め言葉をもらえており、この時点でやっとハルちゃんは安心した笑みを浮かべていました。
築地でアドバイスをしてくれた男性のアイディアなんですが、これが思いがけず好評でした
 先日、マグロの赤身が思いがけず安く手に入ったので再現する事にしました。
 作中には大体の作り方がざっと書かれていましたので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、マグロの下準備。マグロの赤身のサクを軽くキッチンペーパーでぬぐってドリップを取り除いたら、よく切れる包丁でやや大振りの刺身状になるようそぎ切りにし、ボウルの中で日本酒と醤油を揉みこんで少し味をなじませます。
 下味をつけ終えたら、今度は片栗粉を入れておいた袋に入れてしっかり振り(←小麦粉でもOKです)、全面に粉をしっかりまぶします。
マグロのゴマ揚げ‏1
マグロのゴマ揚げ‏2
マグロのゴマ揚げ‏3
 次は、衣をつけて揚げる作業。
 先程のマグロによく溶いてコシをきった卵白をつけたら、まんべんなく白ゴマをまぶして全面を覆い、ほどほど高温に熱した油でさっと揚げます(←あんまり火を通し過ぎるとガチガチになって美味しさが半減しますので、マグロがプカッと浮いてきたら菜箸でそっと触れ、表面が固まったと思ったらすぐに引き上げた方がいいです)。
 あんまり高温だと白ゴマが跳ねまくり、低すぎるとぎっとりしますので、油の温度はこまめに調節する事をお勧めします。
マグロのゴマ揚げ‏4
マグロのゴマ揚げ‏5
マグロのゴマ揚げ‏6
 マグロにそこそこ火が通ったのを確認したらキッチンペーパーに置いて余分な油分をきり、くし型切りにしたレモンと一緒にお皿へ盛り付ければ“マグロのゴマ揚げ‏”の完成です!
マグロのゴマ揚げ‏7
 マグロよりも何よりもとにかくゴマの濃密な香りがすごく、この匂いに匹敵できるのは揚げたてのゴマ団子だけだと圧倒されます。
 また、ほんのりきつね色に揚がったゴマの色合いが食欲を呼び覚ます感じなのも素晴らしく、これは味にも期待が持てます!
マグロのゴマ揚げ‏8
 それでは、揚げたて熱々の内にいざ実食!
 いっただっきま~すっ!
マグロのゴマ揚げ‏9


 さて、味の感想はと言いますと…見た目以上に濃厚な美味さ!ゴマとマグロの相性がこんなにいいとは、驚きです!
 揚げる事によってさらに芳しくなったプチプチのゴマの衣をザクッと噛み締めた途端、ちょうどいい塩梅に火が通ってふっくらと仕上がったマグロの身が優しくほどけ、徐々に一体化していくのが心地いいです。
 醤油味のヅケ状態になったマグロのあっさりしたコクと、ゴマの強烈に香ばしい油分が互いを引き立て合い、魚料理のはずなのにまるでとびきり柔らかくて癖のない牛肉の竜田揚げを食べている気分になりました。
 通常、マグロの赤身は焼いたりするとすぐにガチガチになりますが、これは片栗粉と卵白に守られてしっとりした口当たりのままで食べやすかったです。
 その上、パン粉を使っていない分吸う油の量が最小限に抑えられ、揚げ物にあるまじきさっぱりヘルシーな後味なのが印象的でした。
 あと、いりごまは注意深く噛まないとなかなかはっきりと砕けないものですが、揚げて表面が脆くなったおかげで、豪快なザクザク感と軽く砕けるサクサク感とが見事に両立したクリスピーな歯触りに仕上がっているのもナイスで、ゴマ好きにはたまりません。
 ここにレモンを絞って食べると、爽やかな風味とすっきりした酸味のおかげで和風から洋風へガラッとイメチェンするのが楽しく、一度で二度おいしい料理でした。


 マグロの筋は熱で溶けていた為全く気にならず、赤身の刺身にありがちな筋が歯に障るあの感じがなくてよかったです。
 揚げる時間とマグロの厚さを調節して半生に仕上げたら、また違った味になって面白そうです。

●出典)『ハルの肴』 原作:末田雄一郎 作画:本庄敬/日本文芸社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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2014.09.08 Mon 18:43  |  管理人のみ閲覧できます

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・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
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