『残月―みをつくし料理帖』の“鯵の棒寿司”を再現!

 先月、もう十五年以上ぶりに別府へ温泉旅行に行ってきたのですが、町並みは多少変われども相変わらずの湯けむりモクモクっぷりに安心しました。
 お酒も魚介類も地元野菜も美味、肝心の温泉も大満足で、ますます温泉地愛が高まりました(←行く前に『テルマエロマエ』を読んだおかげで、露天風呂をより楽しむことができました)。
 湯布院の女性向けな感じもいいですが、個人的には別府の昭和な雰囲気もいいな~と思います。

 どうも、旅行から戻った後は『みをつくし料理帖』後半のキーパーソンとなるある料理を試行錯誤中の当管理人・あんこです。


 本日作る再現料理は、『残月―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんがを迎えた鯵を使って作った“鯵の棒寿司”です!
『残月―みをつくし料理帖』
 それは、澪ちゃんが“面影膳の謎の揚げ物”を考え出す少し前の日の事。
 常よりも長く続いた梅雨が明け、ようやく夏の始まりを告げる強い陽光が辺りを照らすようになるのですが、この時江戸では「疾風」と呼ばれる疫病が猛威をふるって幼い子供たちの命を奪っていっていた為、周囲は暗い空気に包まれます(←ちょうどその頃、<つる家>の面々はある人の死によって落ち着かない毎日を過ごしていた為、気づくのが遅れていたようでした)。
 終わりの見えない弔い行列、日に日に増していく暑さに、さすがのひねくれ戯作者・清右衛門先生も少し気が滅入っていたようで、いつもならお代わりをするはずが一皿だけで席を立つシーンがあるなど、こちらまで沈んだ気持ちになったのを覚えています(←但し、例の憎まれ口だけは健在で、澪ちゃんに「湿っぽいのは沢山だ」「お前は料理人だ。あれこれと余計なことを考えず、まずは旨い肴を出して、わしを喜ばせることだ」と言い放って皆から呆れられていた為、ちょっとほっとしました;)。

 そんな時、種市さんが仕入れてきた飛びっきり新鮮な鯵を使って澪ちゃんがお昼に振る舞っていたのが、この“鯵の棒寿司”。
 作り方はお手軽で、鯵を軽く酢締めにし、みょうが・しょうが・合わせ酢を混ぜて作った酢飯と一緒に巻きすでくるりと巻いて成形し、食べやすく切ったら出来上がりです。
 本当は、刺身にしておろししょうがと一緒に食べるのが一番なくらい活きがよかったみたいなんですが、暖簾を出すのにまだ時間があって鮮度が落ちるのを危惧して、最低限手を加えられるこの料理にしたようでした。
 ポイントは、関西風の砂糖をきかせた甘めの酢飯を使う事と、鯵はなるべく軽めの酢締めにする事の二つで、暑くて何かを食べるのが億劫な時でも、つい手が伸びてスルッと胃に収めりやすいようにと気を使っている様子が伺えます。
 棒寿司といえばサバが有名ですが、鯵はサバよりも脂が控え目でさっぱりしている分夏向けな気がしますので、「脂の載った鯵の切り口の瑞々しいこと、酢飯の断面の艶々と旨そうなこと。飯に混ぜ込まれている茗荷の薄紅と生姜の淡い黄がちらりと覗くのも、また美しい」という描写に、すっかりノックアウトされたものです;。

 澪ちゃん曰く、「炎天下を歩いてきて、どんな料理が出てくると嬉しいだろうか」「湯気の立つご飯は辛い。(中略)来たるべき更なる暑さに備えて、充分に身体を作っておけるような、そんな料理が良い」とあれこれ考えを巡らせて用意したそうなんですが、結果は大当たりで、当初はおずおず食べていたお客さんも、途中からは満ち足りた表情になって「何もかもに嫌気がさしていたところへ、こんな旨いものを食わせてもらった」「まだまだ踏ん張らないと罰が当たる」と感謝している様子が描かれていました。
 前巻の『夏天の虹』が暗い展開の連続だった分、『残月』の冒頭でわずかとはいえほのかな明るさと、心慰められる展開が早々に見られた事はありがたく、初見時は随分ほっとした記憶があります。

 先日、いつものスーパーで新鮮な鯵を安く手に入れられたので再現する事にしました(鯵の旬は五月~八月ですので、ギリギリセーフでした;)。
 作中にはざっくりとした作り方が紹介されていましのたので、早速それを参考にして作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、鯵の下ごしらえ。三枚おろしにして皮をむき、血合いや骨を丁寧に抜き取った鯵の身の両面に塩をしっかりまぶして約四十~五十分置き、身が締まって水分が抜けてきたらさっと表面を洗い流して、キッチンペーパーでしっかり水気を拭き取ります。
 この鯵を深めの容器へ移して、上からヒタヒタになるまでお酢を注いだらラップを乗せてまんべんなく身が浸かるようにし、今度は十五分程度お酢で締めます(←お酢の味が少しついたくらいの、さらに生っぽい鯵の方がお好みの方は、五分以上十分未満だけ浸けます)。
 これで、鯵は準備完了です。
鯵の棒寿司1
鯵の棒寿司2
鯵の棒寿司3
 次は、酢飯作り。
 昆布も入れてやや固めに炊いたご飯を大きな器へ移したら、熱々の内に合わせ酢を回しかけてしゃもじで切るようにして手早く混ぜ、そこへみじん切りにしたみょうがとしょうがを投入してさっくり混ぜ合わせます(←うちわで冷ましながら混ぜると、よりグッドです)。
 ご飯全体にお酢とみょうがとしょうがが行き渡ったら、酢飯は用意OKです。
 ※おそらく、澪ちゃんは酢飯も関西風に仕上げたのでは…と推測されましたので、砂糖を多めに配合した甘めの味付けにしました。
鯵の棒寿司4
鯵の棒寿司5
鯵の棒寿司6
 ここまできたら、いよいよ巻き作業。
 巻きすにラップを敷いたら、酢締めした鯵の身をなるべく均等になるように並べて上に酢飯を乗せ、切り口が四角状になるように巻いてそのまま三十分以上放置し、味をなじませます。
 ※出来れば、鯵の身は分厚い所(腹側の中央部分)を包丁でそぎ、右端のスペースを埋めるのに使うと全体の切り口が均一に仕上がるのでお勧めです。
鯵の棒寿司7
鯵の棒寿司8
鯵の棒寿司9
 時間が経って鯵と酢飯がなじんできたら巻きすとラップを外し、形を崩さぬよう包丁で食べやすく切ってお皿へ盛り付ければ“鯵の棒寿司”の完成です!
鯵の棒寿司10
 鯵の身の艶やかな切り口、鯵の皮の銀色の光、そしてみょうがの薄紅色が映えた酢飯の取り合わせが見るからにおいしそうで、思わず喉が鳴ります。
 クーラーもない蒸し暑い中だと、どうしても食欲が落ちて白いご飯が口に入りにくくなりますが、これならスルッと頂けそうな感じで、味が楽しみです。
鯵の棒寿司11
 それでは、醤油にちょんちょんとつけていざ実食!
 いっただっきま~す!
鯵の棒寿司12


 さて、感想はと言いますと…鯵と特製酢飯がよく合ってて旨し!お酢によって全体がバランスよく調和しています。
 鯵をやや軽めに酢締めし、瑞々しい肉質を残すという澪ちゃん流のやり方で下拵えした結果、外側はトロリと滑らかな舌触りながらもやや水分が抜けてキュッと引き締まった食感、そして中央は生ならではの新鮮なプリプリ感が活きたむっちりと弾力のある噛み応えに仕上がっており、そのギャップがたまりません。
 お酢の酸味で魚の臭みを消し旨味をぐっと凝縮している所は押し寿司風、見た目はしっかり固められていても口に含むんだ途端ハラリと優しくほどける酢飯は握り寿司風で、まさに双方のいい所取りをしているような印象を受けました。
 旬の鯵だからこそ堪能できる脂がたっぷり乗った身は、噛めば噛むほど豊潤なコクが溢れ出してきてうっとりします(←関西風の甘めな酢飯が、鯵と意外にも相性がいいのも嬉しい発見でした)。
 もともと鯵は、青魚にしては珍しく白身魚に似た上品な脂分と癖のない旨味が特徴的な魚の為、同じ系統のサバ寿司に比べるとどうしても重厚さは負けてしまいますが、その分あっさり頂けるのがよかったです。
 みょうがのシャリシャリした歯触りとシャープで清涼感のある香り、しょうがのキリリと爽やかな風味とわずかな辛味が鯵の脂をさっぱりさせ、キレのいい後口にしているのがナイスでした。


 酢飯の酸味と薬味の香気が効いたすっきりした出来で、蒸し暑い中でもこれなら食が進みます。
 このままでも十分いけますが、青ネギや白ゴマを足してみても美味でした。 

●出典)『残月―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2014.09.01 Mon 22:25  |  

いつも素敵なブログをありがとうございます
本当においしそう!!

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  • まいこ
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・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
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 …『花のズボラ飯』
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・再現料理を予定中の漫画:
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