『花のズボラ飯』の“ひとり芋煮”を再現!

 その昔、母が某化粧品会社に入社したての美容部員で、デパートの売り場に立っていた頃、憂鬱だった作業の一つに「閉店後のパフ洗い」があったという話を聞きました(←ファンデーションがこってりついて汚れた複数のパフを綺麗にするお仕事で、新人限定だった…というのが母談です;)。
 現在は安価な使い捨てパフがあるので、もしかしたら今は交換するだけでOKなのかもしれませんが、母の時代は従業員トイレの洗面台で毎日手洗いするのが常だったそうで、寒い冬の時期は手がガチガチに冷えたらしく、嫌だったと遠い目で語っていました;。
 ただ、同じ境遇の他メーカーの新人の方々と愚痴りあったり、情報交換するのもそれはそれで楽しかったみたいで、大変そうだけど羨ましいな~と聞いてて思ったものです(←ちなみに、こちらの作品に全く同じ体験談が掲載されていたのを発見して驚きました;。結構ポピュラーな作業だったんだと実感です)。 

 どうも、冬期に皿洗いする時は熱めのお湯&ビニール手袋がデフォという軟弱な手の平を持つ当管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『花のズボラ飯』にて花さんが実家のお母さんからアドバイスされて作った“ひとり芋煮”です!
ひとり芋煮図
 それは、“花さん流鮭茶漬けスパゲティ”のお話から少し経ったある冬の日の事。
 いい加減夕食がマンネリ化してきた花さんは、実家にいるお母さんに電話し、「何食べたらいいかわかんない。なんかない?パパッとできる夕食」といつものようにざっくりと質問します(親子丼の時といい、ズボラうどんの時といい、料理の発想に煮詰まった時は最終的に母を頼りにしている花さんですが、当管理人も似たような所がある為、激しく共感したものです;)。
 すると、お母さんも負けず劣らず「そーねぇ、寒くなったから…鍋でもすれば?」とこれまた適当に返し(←このゆるいやり取りが、気楽でいい感じです;)、ご自身の故郷・山形県の芋煮を一人分だけ作ってみたらどうかと助言し、花さんを驚かせていました。

 個人的に、芋煮には河原で大人数を集めて大量に作る」というイメージがある為、一人分だけ土鍋で作るという発想自体存在しなかったのですが、お母さんには作り方にそこまでこだわりがなかったみたいで、軽くお勧めしていました。
 しかしそんなラフなお母さんでも、「里芋は下処理済の物を使わず、必ず土付きの物を買って自分で皮を剥くこと」と強く言い渡していたみたいで、普段はズボラな花さんもこの時だけは真剣な表情で「ここは山形出身の母親を信じる」と言い、大きく無骨な里芋を野菜売り場で選んでいました(←ただ、それでもギリギリまで「皮むき済里芋(文系イケメンに擬人化)」「冷凍里芋(セレブイケメンに擬人化)」に心惹かれており、相変わらず下処理済野菜が大好きなんだな~と苦笑しました;)。

 『まかない君』の浩平君が作った宮城県の芋煮は豚肉+味噌味、『花のズボラ飯』のお母さんが教えた山形県の芋煮は牛肉+醤油味と、地域によって味付けや材料こそ多少は違いますが、不思議と「生の里芋から下処理する」という所だけは共通していましたので、もしかしたら東北地方にお住まいの方は、里芋に何か特別な思い入れを持たれている確率が高いのかもしれない…と、つい勝手な想像をしてしまいました;。
冷凍さといもや、皮むき済みさといもに惹かれるものの、母を信じて皮付きを選んだ花さん
 その後、帰宅した花さんがお母さんからのアドバイスを思い出しつつ作り上げたのが、この“ひとり芋煮”です!
 作り方は簡単で、水をはった土鍋へ里芋・こんにゃく・ゴボウ・しめじ・牛薄切り肉を入れてアクを取りつつ煮込み、日本酒・醤油・砂糖で味付けしてさらに煮、最後に長ネギとセリを乗せてさっと火を通したら出来上がりです。
 ポイントは、里芋は泥を落として丸ごと茹でた後にペりぺりと皮を剥くという「ズボラむき」をすること、こんにゃくとゴボウはアク抜きしてから使うこと、セリは茎だけ汁に沈めて葉は表面にぽさっと軽めに乗せて弱火で二分煮ることの三つのみで、手間がかかりそうな見た目に反して結構お手軽だな~と感心しました。

 実を言いますと、当初花さんはセリを入れる予定は全くなかったのですが、野菜売り場で目にした如何にも高貴な見た目にビビッときたらしく、「いいかも!VIPとしてぜひお招きさせて下さいませ」「来賓のご入場。セリー・アントワネット妃!!」と丁重にお鍋組へと迎え入れていました;。
 ズボラ料理と言うと、楽する事ばかりを優先させて味をおざなりにしているような悲惨なイメージがどうも先行しがちで、賛否両論の観がありますが、花さんのズボラ料理は楽さと美味しさと斬新さを両立させているのが読んでいて楽しく、作る側も食べる側も笑顔になれるよう配慮しているのに感心させられます。
里芋のズボラむきに半信半疑だったものの、いざやってみると驚きのずるむき加減で大興奮!
 その後、花さんは念の為セリが煮えた所で“ひとり芋煮”を味見をするのですが、スープを一口飲んだ途端「うっまーい!なにこの体の芯から温まるような遠赤外線的スープ!!」と少女漫画チックな表情で叫び、思わず味見を通り越して台所で立ち食いをしてしまいます(←作る人間だけの特権で悪い事をしている訳ではないのですが、当管理人は味見が過ぎる時、ちょっと後ろめたくて後ろを振り返る癖があります;)。

 さすがに数分立ったところでお行儀悪にハッと気づき、半ば駆け足でテーブルまで土鍋を運んでから本格的に食べ始めるのですが、それでも「ネギの香りとセリの食感が芋煮会を舞踏会に変えたわ!」「生里芋…デカイのウマイ!牛肉がその下にひざまずいて静かに美味しくなってる!!」と大興奮し、最終的には脳内で里芋王子がセリー妃と国境を超えたロマンスをしている妄想を繰り広げ、七味という名の深紅の紙吹雪を散らして二人を祝福していました;(←おそらく、『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットとフェルゼンをオマージュしていると思うのですが、野菜に扮装しているお二人の姿は犬が擬人化したアニメ・『名探偵ホームズ』を彷彿とさせて何だか可愛らしく、微笑ましかったです)。

 おかげですっかり満足した花さんは、そのままソファーに倒れこんで『孤独のグルメ』の五郎ちゃんのように寝落ちしちゃうのですが、その表情はとっても幸せそうで羨ましかったです。
遠赤外線的醤油スープに感動し、思わずマリーアントワネット調に変身する花さん
 芋煮といえば『まかない君』というイメージがあったのですが(こちらで再現済です)、花さんの提唱する芋煮にも興味がありましたので再現する事にしました。
 作中にはおおまかなレシピが記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、里芋の下ごしらえ。流水で里芋についている泥を丁寧にすすぎ洗い、切らずにそのまま水をはったお鍋に入れ、中火にかけます(←水から茹でるのがミソです)。
 十~十五分くらい経過した所でコンロからおろし、里芋にざっと冷水をかけたら指に力を入れ、実から皮をスライドさせるような感覚でペりぺりと剥いていきます。
 全ての皮を剥き終えた、包丁で四つ割りにカットしたら里芋は準備完了です。
 ※茹ですぎたり冷やしすぎたりすると、途端に実がグズグズ&皮がむきにくくなりますので、要注意です。
ひとり芋煮1
ひとり芋煮2
ひとり芋煮3
 次は、煮込み作業。
 水をはって火にかけた土鍋へ、先程の里芋、手でちぎってアク抜きしたこんにゃく、ささがきにした後アク抜きしたゴボウ、石突きを切り落としてほぐしたしめじ、食べやすく切った牛薄切り肉を投入し、アクをすくいながらコトコト煮込みます。
 段々アクが出なくなり、具も程よく煮えてきたら日本酒、醤油、砂糖で味付けし、斜め切りにした長ネギを上に乗せて少し煮ます。
 長ネギが少しだけしなっとしたら、ザク切りにしたセリも加えてフタをし、弱火で約二分程蒸らすようにして火を通します(←茎は汁に沈め、葉は表面にぽさっと軽めに落とす感じにします)。
 ※こんにゃくは下茹でしなくても、塩もみして洗うだけでも味が染みやすくなります。ゴボウは、面倒な場合は花さんのようにささがきゴボウを買って下処理スルーするのもありです;。
ひとり芋煮4
ひとり芋煮5
ひとり芋煮6
 フタを取ってセリがいい具合にしんなりしているのを確認したらすぐに火を止め、鍋敷きをセッティングしたテーブルへ運べば“ひとり芋煮”の完成です!
ひとり芋煮7
 見るからに味が深そうな薄茶色の透き通ったスープに、熱が通ってさらに鮮やかな緑色になったセリが映え、みるみるうちに食欲をかきたてられます。
 土鍋のフタを開けた途端、牛肉とセリと醤油の香りが入り混じった温かな湯気がまとわりつくようにして顔に当たるのが魅惑的で、湯気だけでこんなに美味しいならスープは如何ほどかとワクワクが止まりません!
ひとり芋煮8
 それでは、ぐつぐつの内に小皿へ取り分けていざ実食!
 いただきま~す!
ひとり芋煮9


 さて、感想はといいますと…花さんの言う通り、体の芯から温まるような遠赤外線的スープ!セリを噛み締める度に品のいい柑橘類を思わせる汁気が迸り、素朴な芋煮を一気に華やかにさせるのが素晴らしいです!
ひとり芋煮10
 以前、ゴボウとセリとしめじ抜きの醤油味芋煮を作ったことがあったんですが、たった三つだけ足しただけだというのに何倍にも深みが増しており、びっくりしました。
 牛肉の脂が溶けて表面に膜を張っているおかげで冷めにくく(←中華そばのスープに似た舌触りです)、あっさりした中にじんわりと舌に広がる濃い旨味に仕上がっており、寒い時期には格別の一杯です。
 野生的で荒々しい土の香りを帯びた出汁が出るゴボウと、上品な中に野趣溢れる清々しい香気が活きているセリの組み合わせは、一見正反対なようでかなり相性がよく、ほのかに甘くてちょっぴりすき焼きチックなコク醤油味のスープを、どことなくキリッと洗練させていたのが印象的でした(←二つとも土の影響が大きい野菜で力強い味がするという共通項がある為、そのせいかもしれません)。
 あと、ズボラむきした里芋は下処理をしていないにも関わらず十分ねっとりした口当たりで美味で、気のせいかホコホコとよりはしっとりした粘りのある歯応えが特徴的で、崩れずさっくりと噛み切れる感じがよかったです。
 セリのシャキシャキ、ゴボウのザクザク、ネギのトロトロ、コンニャクとしめじがプリプリと口の中で騒ぐのが小気味良く、つい食べ過ぎちゃいました;。


 本格的な芋煮もおいしいですが、こういう緩い感じの一人鍋みたいな芋煮もいいものだな~と、満足したお腹で考えました。
 個人的に、ここへうどんや卵を落として食べてもシメにいい感じで、ほっこり癒された再現でした。

●出典)『花のズボラ飯 2.5 完全保存版』 原作:久住昌之 作画:水沢悦子/秋田書店
 (エレガンスイブ 2014年 11月号 別冊ふろく)
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

Comment

2014.12.11 Thu 23:30  |  

これは……少し残ったら風流つまみ道場のアレですかな?w

  • #-
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2015.01.28 Wed 21:43  |  

芋煮をとりあげていだだけるとなんだかうれしい宮城県民です。
秋には各スーパーで大型なべが貸し出され(複数台あっても予約が埋まる)、河川敷やキャンプ場がにぎわい、山形派か宮城派かで熱く議論がかわされます。
おかずというよりキャンプファイヤーみたいなイベントアイテムですが、確かに里芋は生しかみたことないです、私のまわりは。

  • #-
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2015.09.13 Sun 09:13  |  

「おせん」でも里芋について熱く語ってましたね~。
作者さんは秋田県出身。芋煮ではなく「なべっこ」だ!とエッセイ漫画で主張していました。

このお鍋、真似してみておいしさにびっくりでした。
今度は鶏肉か豚肉で作ってみようと思ってます。(牛肉はちょっとダシが強過ぎて・・・)

  • #iTcdFNgE
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2015.11.22 Sun 00:21  |  芋煮→芋炊き

私のとこ、愛媛県では芋炊きといいまして、大洲から全県にわたっての秋の風物です。石手川の河川敷なんぞ夜桜さながらに宴会場になっております。愛媛では、肉は鶏で、油揚げ、コンニャク、大根、ニンジンなどなどで、ちょっとごった煮風。味付けは、醤油とミリンで甘め。
観月会と称して、芋炊きで宴会は、秋の定番です。

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
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