『美雪晴れ―みをつくし料理帖』の“立春大吉もち‏”を再現!

 先日、ある串揚げ屋さんへ行って色んな創作串を食べたのですが、どれもこれも今までに考えた事もない発想のものばかりで、とても面白かったです。
 中でも美味しくて楽しかったのが、タルタルソースとたっぷりのネギがかかった白身魚の串と、一見普通のナスのひき肉詰めに見えて実は隠し味にカレー粉が忍ばせてあった串の二つで、これは家でも試してみたいな~と感心しました。

 どうも、野菜天ぷらの中では蓮根とピーマンとナスとサツマイモが大好物四天王な当管理人・あんこです。

※注意:今回も多少のネタバレがございますので、未読の方はあらすじ部分を飛ばすことをお勧めいたします。




 本日作ってみる再現料理は、『美雪晴れ―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんが師走の二十日頃からお店で出した“立春大吉もち‏”です!
『美雪晴れ―みをつくし料理帖』
 それは、澪ちゃんが“麗し鼈甲珠”を考え出してしばらく経った、文化十三年の冬の事。
 昨年の十一月に小松原様との結婚話が白紙に戻って以来、澪ちゃんは悲しみのあまり味覚と嗅覚を失ったり、又次さんは吉原で起こった大火事から野絵ちゃんを救う為に無理したのが原因で亡くなったり、芳さんはようやく息子・佐兵衛さんが見つかったものの「この先、料理人として生きる事はない」と断言されて衝撃を受けたりと、<つる家>は辛い出来事ばかり雪崩のように押し寄せてどこか暗い空気に包まれていたのですが、時が経つにつれて問題が解決したり、気持ちが少しずつ落ち着くにつれ、<つる家>にはようやくかつてのような明るい空気が満ちるようになります。
 文化十三年の六月頃まで、自分が選んだ道とはいえ料理人としても、人としても生きる道標を示してもらった初恋の人との別れがあまりに辛く、それが料理にも知らず知らずの内に影を落としていた観のある澪ちゃん(←時期的に『夏天の虹』の時で、この頃は「特別な誰か」に向けた料理ばかりで、お客さんみんなへ向けた名物料理と呼べる一品を考えていなかった事に気づき、愕然としている様子が痛ましかったです…。恐らく、それまでの心の余裕や平衡感覚が失われるくらい、小松原さんの影響は大きかったのだと推測されます)。
 しかし、この頃になるとようやくかつての傷が疼く事も少なくなり、自分が成し遂げたい事は「真っ直ぐに己の料理道と向き合うこと」と「野絵ちゃんの身請け」の二つだと再認識するようになったせいか惑いがなくなりましたので、読んでいて「心の安寧が得られて、よかったな~」と目頭が熱くなりました(つД`)。
 個人的に『美雪晴れ』は、将来澪ちゃんの代わりに<つる家>をしょっていく事になる料理人・政吉さんと臼さんご夫婦が参入したり、芳さんが再婚して新たな伴侶・柳吾さんを得て長屋を出たり、美緒ちゃんが出産して娘をもうけたりと、「次の舞台へ出発」「世代交代」がテーマになっているように感じる巻で、話全部が温かな日差しが差し込んでいるような展開が多い為、久々に心から安心して読む事が出来たのを覚えています;。

 中でもその変化を一番喜んでいたのは、“とろとろ茶碗蒸し”が料理番付で初星を取って以来、無意識の内に澪ちゃんへ料理番付に名が載るようプレッシャーをかけてしまっていた種市さんで、その事を反省していた分今の平穏がありがたかったのか、ある日の午後、「何かよぅ、嫌なこと哀しいことの多かったこの一年を気持ちよく締め括れる料理を考えちゃあくれまいか」と澪ちゃんにお願いします。
 その際、澪ちゃんが縁起のいい材料をバランスよく加えて味も美味しく仕上げて生み出したのが、この“立春大吉もち‏”です!
 作り方は単純なようで手間がかかり、おろし蓮根・おろし蕪・えびのすり身・上新粉・卵白・塩をよく混ぜ合わせて軽く蒸し、一旦取り出してヘラでしっかり混ぜ合わせたら小判型に成形してまた蒸し器でさっと蒸し、最後にゴマ油で両面を焼いて醤油を回しかけて風味づけしたら出来上がりです。
 ポイントは、蓮根をすりおろす時は必ず絞り汁も全部取っておくことと(←お餅のように粘る素が汁に含まれているそうです)、二回とも決して蒸しすぎないことの二つで、当初はこれだけシンプルな食材でお餅みたいな料理が出来るなんて…
と衝撃を受けたものです。

 澪ちゃんが言うには、見通しを良くする吉祥な食材として蓮根、蓮根と喧嘩しない淡泊な味で風邪に効くとして蕪・「腰が曲がるまで元気に」という願いを込めてエビを混ぜ込んだのだそうで、これらを合わせると「もっちりとした不思議な味わいの一品」になると作中で語られていました。

 蓮根と蕪で作るお餅というのがどうしても想像がつかず、これは是非来年の吉祥を願って年内までに食べたいと思い、再現する事にしました。
 巻末には分量つきと詳細な工程付きの親切なレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下ごしらえ。蓮根は皮を剥いてから酢水にしばらく浸け、水気をふき取ってからすりおろし器ですります(←この時出る汁気は大事ですので、決して絞らないようにします)。
立春大吉もち‏1
立春大吉もち‏2
立春大吉もち‏3
 その間、えびは殻を剥いて背ワタを取り除から包丁で細かく叩いてすり身状にし、蕪はやや分厚く皮をむいてすりおろします。
 その際、すりおろした蕪は水分を軽く絞っておきます。
立春大吉もち‏4
立春大吉もち‏5
立春大吉もち‏6
 次は、生地作り。
 ボウルへおろし蓮根(←必ず汁ごと入れます)、おろし蕪、すり身状のえび、上新粉、卵白、塩を加えてよ~く練ります。
 全体がしっかり混ざったら器へ移し、蒸気が上がった蒸し器へ入れ、数分程蒸し上げます。
 ※単行本に詳しい蒸し時間が載っていますが、蒸し器や火力によって差が生じると思いますので、時々様子を見た方がいいと感じました。
立春大吉もち‏7
立春大吉もち‏8
立春大吉もち‏9
 やや固まってきたら一旦取り出し(←かなり熱いので、火傷に要注意です)、ゴムベラか木べらを使って、全体をまとめあげるようにしてよくこねあげます。
 生地に粘りが出てまとまったら何等分かに分け、手水を用いて小判型に成形し、再度蒸し器に戻して十分くらい蒸します。
立春大吉もち‏10
立春大吉もち‏11
立春大吉もち‏12
 ここまで来たら、いよいよ焼き作業。
 先程蒸しあがった生地を、ゴマ油をひいて熱したフライパンできつね色になるまで両面を焼き、最後に醤油を鍋肌に沿わせるようにして垂らして風味をつけます。
立春大吉もち‏13
立春大吉もち‏14
 全体に醤油の香ばしい風味と塩気がついたら火からおろし、熱い内に器へ並べれば“立春大吉もち‏”の完成です!
立春大吉もち‏15
 一見ゴマ油の香ばしい風味がする大根餅風に見えますが、よ~く匂いを嗅ぐ蓮根や蕪の甘やかな香りが強く香る為、少し頭が混乱します;。
 今までに食べた事がないタイプのお餅なので、一体どういう味がするのか気になって仕方がありません。
立春大吉もち‏16
 それでは、出来立てほやほやの内にいざ実食!
 いっただっきま~す。
立春大吉もち‏17


 さて、感想はといいますと…確かに餅っぽくて美味し!ここまで最初と最後で食感が違い、口溶けがいいなんちゃって餅は初めてです!
 一口目はモチモチムチムチしたコシのある弾力と、それでいて本物の餅よりもふんわり優しい噛み心地が印象に残る味わいなのですが、噛み進める内にすりおろした蓮根の涼やかなシャリシャリ感と、エビのほのかなプリプリ感が段々口の中に溢れ、気がつけば先程のむっちり感が嘘のように消えて大根おろしのようにホロリと柔らかに崩れていきます。
 同系統の大根餅と少し似ていなくもないですが、それよりも粘りがあって旨さの質が和風のあっさり味な為、ほぼ別物だと感じました。
 蓮根特有の滋養に満ちた甘やかな旨味エキスがじゅわ~っと舌に広がる為、蓮根の存在感が圧倒的に大きいイメージですが、作中にあった通り後から蕪の繊細で素朴な甘さが徐々に立ち上ぼり、蕪の甘味と合わさってグラデーションを描く為、奥が深いな~と思います。
 この淡泊な餅に、ごま油の香ばしい風味が効いたコクのある焦がし醤油味は抜群の相性で、「磯辺巻きから海苔を抜いて、中華風に味付けしたらこんな感じかな?」というイメージを持ちました。
 材料のほとんどが野菜なせいか、こんなにボリューム感があってお腹に溜まるというのに後口がさっぱり軽やかなのが素晴らしく、胃に負担がかからないのがよかったです。


 お餅に似ているのに、口溶けは全く真逆で、蒸野菜を食べた後みたいな後味がよかったです。
 今回、薬味はネギを使いましたが、淡泊な味を壊さないようこれは何も乗せて食べない方がいいのかな?と感じました。

●出典)『美雪晴れ―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

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2015.02.23 Mon 15:52  |  

お、おいしそー。独り身がかなしー泣

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
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