『薬膳仙女マダム明』の“鳥の甘酒蒸し”を再現!

 先日新しくオープンしたラーメン屋さんへ行くと、開店記念として特別に「燻製鶏手羽揚げ」という商品がサービスされ、「燻製?で、揚げ物?」と怪訝になりながらも頂いたのですが、一口食べてみると食べた事があるようなないような不思議な美味しさで、虜になりました。
 どうやら、軽く燻製にした鶏手羽を素揚げにしただけみたいなんですが、まるでスモークチーズみたいな味がする香ばしい皮をばりっと噛み破ると、何とも言えない塩気が染みた肉汁がブシュッと噴き出てとても美味で(←危うく服に飛びちりそうになりましたので、汚れていい服じゃないときつそうです;)、これはビールに合いそう…と興奮しました。
 残念ながらお持ち帰りは出来ないとの事でしたので、一度夜に立ち寄ってみたいな~と考えています。

 どうも、鶏手羽の軟骨はどこまで食べるのが礼儀なのかいつも悩むものの、結局ゴリゴリした部分まで食べてしまう当管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『薬膳仙女マダム明』にてマダム明がある女性の為にレシピを教えていた“鳥の甘酒蒸し”です!
鳥の甘酒蒸し図
 それは、まだ留華ちゃんが入店する前のこと。
 <桃源楼>の常連の一人である会社社長・太田和雄さんは、いつもならプライベートでこっそり一人で来店する方だったのですが、ある日珍しく二人連れで訪れます。
 お相手は、感じがよくて誠実そうな美人秘書・田所美知子さんで、表向きは「いつも良くやってくれるので助かっている」ので、そのお礼をする為の来店だったんですが、マダム明は一目見て「お好きなんですね、あの方を」と見抜き、田所さんが化粧直しをしにお手洗いへ行っている隙に、太田さんの恋の悩みを聞きます(←マダム明は、自分に向けられる恋心は少女漫画の主人公並に鈍感で全く気がつかないのですが;、他人に向けられている恋心は鋭い勘と洞察力でいち早く察知するという特技があります)。

 会社を興してからはずっと真面目に働き続け、10年前には奥さんを亡くし、お子さん達が全員巣立ってくのを見届けていく内に、いつの間にか60才を超えていたそうなのですが、そんな矢先に献身的にサポートしてくれた田所さんに恋心を抱いているのに気がついたとの事。
 とはいえ、太田さんがいうには、「わたしはもう年だよ…あの田所くんはまだ29才だ」「こんな年よりが愛をうちあけても田所くんは迷惑なだけだ」「だいいちわたしは社長だから、どう気配りしても立場を利用してせまっていると思われるに違いない」「そういうのは田所くんの気持ちの負担になるから何も言えないんだよ」という理由で躊躇していると語っており、マダム明は何とも言えずに静かにその話を聞きます(←本気で相談しているというより、どれだけ無理そうか誰かに聞いてもらう事で諦める気持ちを固めようとしている感じなのが切なかったです…)。

 しかし、マダム明はお手洗いから戻ってきた田所さんを見た瞬間、この恋はもしかしたらうまくいくかもしれない…と思い、微笑を浮かべます。
 それは、田所さんの化粧直しが「食事の際に落ちた口紅を直す」というだけの「通常マナー」を超え、まるで好きな人と食事している時のような、「この人の前できれいに装いたい」という気持ちが全身からにじみ出ているような、輝く仕上がりになっていた為(←口紅や髪を整えるだけではなく、お化粧を全体的に付け足し、ブラウスのネクタイも華やかにむすび直したりとかなり力が入っていたようですので、確かにこれは脈があるかも…と当管理人も思いました)。
 正直、お化粧直しは毎回丁寧にされるタイプの方もいらっしゃいますので、確実な見分け方ではないのが辛い所ですが;、それでも「会社での付き合い」と「好きな人」とではやはりどこか気合が違いますので、マダム明の観察眼に感心したものです。
<桃源楼>の常連である社長・太田さんは、秘書の田所さんに密かに恋してました
 それから数日後、今度は田所さんが一人で<桃源楼>へ来店し、「疲労回復」「体力増強」に効果がある食事を注文し、真剣な表情で一口一口味わいながら食べ始めます(←<桃源楼>では「○○に効くものを」と言えば、自動的に最適な食事が出てくるシステムですので便利だな~と思います。自分で調べてから注文するのも手ですが、毎回だと面倒なので長続きしないのが難点です;)。
 その様子を見たマダム明は、「ご自宅でも薬膳料理を食べたいのかもしれない」と思って微笑ましく感じ、「何でもきいてくださいませ」「作り方をお教えしますので、メモを取ってください」と話しかけます。
 当初は「…そんな、出していただいたものをメモにとるなんて失礼なこと…」と遠慮していた田所さんでしたが、マダム明としては「お客様の健康のお役にたつためなら本当は毎食食べていただきたいんですけど、そうもいきませんからどうぞ覚えて下さって、家でも召し上がってください」「日本のお客様に召し上がっていただくには、日本で手に入る素材を使うことが大切だと思っています。その人が生まれて暮らしている土地が産み出してくれたものが、その人の体を支えてくれるはずですから」という考えだった為、気にせずメモにしてくださいと言って様々なレシピを教えます(←儲けるのが目的ではなく、日本に薬膳を広めるのがお店の真の目的だという事と、「地産地消」って色んな意味で理に適っているんだな~という事を、改めて実感させられるシーンです)。

 その際、マダム明が「これならとても簡単にできます」とお勧めしてたのが、この“鳥の甘酒蒸し”です!
 作り方は本当に簡単で、小型の土鍋へ甘酒・塩・しょうが・鶏手羽肉・干しナツメの実を入れてフタをし、土鍋がすっぽり収まるサイズの大きい鍋へ入れてその回りに水を張ってからフタをし、間接的に蒸し煮にしたら出来上がりです。
 ポイントは、干しナツメの実は必ず水で戻してから入れることと、強火で沸騰させた後は弱めの中火にしてゆっくり火を通すことの二つで、初めて読んだ時は「材料を入れて火にかけるだけで出来るなんて…!」と感動したのを覚えています;。

 マダム明曰く、「体があたたまり血行がよくなり、鳥の皮や骨の成分が老化防止や骨・肌の強化になります」との事で、若々しさを保つのにいい一品だと説明していました。
 麹が体や食材にもたらす絶大な効果は最近になってようやく広まってきましたが、『薬膳仙女マダム明』の原作者である楊愛蓮先生は1998年当時に既にその素晴らしさに気づいていたらしく、その先見性には舌を巻いたものです。
このシーンを見ると、田所さん=生徒、マダム明=家庭教師みたいに見えてきます;
 実を言いますと、田所さんは自分の健康の為ではなく、太田さんが少しでも健康でいられるよう<桃源楼>の料理を研究しに来たみたいで、マダム明に「社長に召し上がっていただきたくて…秘書の身ですから、ご自宅で召し上がるものにまで口出しはできません」「せめて会社でおひるを召し上がる時とか、おやつの時間などに社長のお体に良い物を…と思って」と、真摯に話します(←ただ、それだとこの“鳥の甘酒蒸し”を太田さんに用意するのは難しそうだな~と、他人事ながら心配してしまいました。土鍋ごと持って行くのも、給湯室で作るのも難しそうですし…;)。
 そこで、ますます確信を深めたマダム明は「社長のことをお好きでいらっしゃるのですね」と直球に聞くのですが、案の定田所さんは「あ…わたしは秘書として社長のお体が心配なだけです。尊敬してますから、あの…」と顔を真っ赤にしており、マダム明は「まあ…口とはうらはらになんて正直な顔の色でしょう」と人の悪いニコニコ顔をしていました;。

 おかげで、恋のキューピットとして一仕事する気になったマダム明は、その後「もしNOと言われたら、それ以降気まずくなっていくかも…それならいっそ、今のままならとりあえず傍にいてくれるわけだし」「でもわたしはその…もしOKされてもその…あっちの方が」と消極的な太田さんに毎日すれば効果が出る簡単な体操を教えたり(←単行本に詳しく載っていますが、アダルト度ゼロですので人前でも気軽に出来ます;)、老化防止の菊酒をプレゼントしたり、お二人がいい雰囲気で会えるようセッティングしたり、最終的にはもじもじして煮え切らないお二人に「じゃあ、お二人とも相手がお嫌なんですね」と言って「いいえ!」と言い合うよう仕向けたりし;、何とかカップル成立させていました。
 マダム明によりますと、「男女の仲は<正直に素直に>が一番ですわ」だそうで、余程こじれない限りはそれが何よりの改善案だと話しており、単純なようでなかなか難しいな~と苦笑しました;(←意外にもマダム明は精神的な駆け引きはあまり好きではないみたいで、好感が持てます)。
幸運にもそれは田所さんの方も同じで、<桃源楼>へ薬膳料理を研究しにきてましたお二人をそれぞれ勇気づけたり、元気になる体操を教えたり、背中を押したりと、マダム明大活躍!
 一向に冷え性がなおらず、肌もパサパサになってきたので再現する事にしました;。
 作中には分量つきの詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、煮込み作業。小型の土鍋へ、甘酒、ブツ切りにしたしょうが、鶏手羽肉、水で戻した後種を取った干しナツメの実を投入し、塩で少しだけ加えて甘みを引きたてます。
鳥の甘酒蒸し1
鳥の甘酒蒸し2
 この土鍋を、フタ付きの大鍋の中央へ置き、その周りに水を張ってフタをし、強火にかけます(←土鍋よりも大分大きいサイズのお鍋じゃないと、土鍋が傷つきますので要注意です)。
 お鍋が沸騰し出したら中火にしてじっくり火を通し、鶏手羽肉に熱が通るまで時間をかけて間接的に蒸していきます。
鳥の甘酒蒸し4
鳥の甘酒蒸し3
 やがて、鶏手羽肉の中にまでしっかり火が入っているのを確認したら土鍋を取り出し、火傷しないよう鍋底についた水滴を拭き取ってテーブルへ運べば“鳥の甘酒蒸し”の完成です!
鳥の甘酒蒸し5
 表面に鶏の骨や皮から出た薄い琥珀色のエキスが膜を張り、下に乳白色の甘酒が沈んでいるのがきれいで、効能だけではなく見た目も嬉しいおやつだな~と感じました。
 今までに食べた事がない組み合わせなのでドキドキしますが、ナツメと甘酒が入り混じった甘やかな香りが素晴らしいので、これはいけそう…とワクワクも止まりません。
鳥の甘酒蒸し6
 それでは、別器へ取り分けて実食!
 いっただっきま~すっ!
鳥の甘酒蒸し7


 さて、感想はといいますと…おかずというより完全におやつな一品で美味し!甘い味付けなのに鶏と合うとは、びっくりです!
鳥の甘酒蒸し8
 最初は「甘い手羽先…」と少し怖かったのですが、実際に食べると「塩味控え目で醤油抜きの甘味が強めな照り煮風」というイメージで、そこまで違和感がありません(←手羽先は鶏の部位の中でも淡泊な旨味と柔らかな肉質が特徴的な所ですので、もしかしたらそれで反発しなかったのかもしれません)。
 二重の鍋の中でゆっくり優しく蒸したおかげで、今まで食べたどの手羽先よりもしっとりジューシーでプルプルに潤った肉質なのが素晴らしく、それがトロトロの甘酒とぴったりなじんでいてうっとりしました。
 ナツメのフルーティな風味、しょうがのすっきり清々しい香気、そして鶏の骨の滋味溢れるエキスが溶け込んだ甘酒は、濃密かつ素朴な甘さと共に薬効がじんわり染み渡る奥深い美味しさで、スープ風に生まれ変わったというよりは、「中華風薬膳甘酒」ともいうべき全く新しい飲み物へ進化したような感じです。
 鶏皮から出た油脂がまんべんなく混ざっているせいか、普通の甘酒よりもトロンと舌に纏わりつくようななまめかしい舌触りで、それでいてべっとり残らずサラッとした口溶けなのが官能的で、まさに大人のデザートといった趣でした。
 ナツメは見た目によらず酸味が控えめで、本体の味わいは乾燥させて戻した柿か杏っぽいのですが、エキスは蜂蜜そっくりのねっとりした甘味で、それが甘酒に蜂蜜を煮溶かしたような複雑な甘さをプラスしていてよかったです。


 土鍋に入っているので冷めるのが遅くて、最後までじんわり温かく、寒い日に飲むと体がほかほかに温まります。
 また、不思議にもナツメは餡子にも味が似ている感じで、そのせいかちょっと和風にも思えたのが面白かったです。

●出典)『薬膳仙女マダム明』 原作:楊愛蓮 作画:花小路小町/メディアファクトリー
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

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2015.01.21 Wed 03:21  |  なつめとナツメヤシ

いつも更新を待ち遠しく読ませていただいております。今回の鳥の甘酒蒸しの写真を見て一つ気がついたことをご連絡させてください。
管理人様の使った「なつめ」は「ナツメヤシ(デーツ)」というお菓子のなつめのようでしたが、薬膳で使う「なつめ」は別のなつめです。薬膳のなつめは「チャイニーズ・デーツ(大棗:たいそう)」というもっと赤っぽいものです。私も食べたことはないですが、そんなに甘くないそうです。入手は漢方薬をよく取り扱う薬局ならあるかもしれないです。私も以前盛大に間違えたことがあるのでお節介させていただきました。
ナツメヤシはお菓子やそのまま食べるのに向いています。おいしいですよね。
こちらのサイトをきっかけに読み始めた作品もたくさんあります。これからもよろしくお願いします。

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2015.02.22 Sun 12:17  |  管理人のみ閲覧できます

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
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※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
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