『せやしだし巻京そだち』の“うりの味淋漬入り卵かけご飯”を再現!

 京都で食べた外食の中で一番気に入ったのは、冨美家の冨美家鍋(←具だくさんの鍋焼きうどんです)で、あまりに好きすぎて二日連続で食べに行った程でした;。
 えび天の衣が分厚いのに最初は少し驚きましたが、あの衣を少しずつ溶かして食べるとお出汁にどんどんコクが増していくのが分かってからは、すっかり虜に。
 和菓子にも使われているという、くったりしなやかに伸びるお餅が二個も入っていると知った時は、「670円で、この満足感!」と衝撃を受けたものでした;。
 ふんわり柔らかいうどんに、ちょっぴり甘いお出汁がぴったりで、京都へ再訪した折はまた立ち寄りたいな~と考えています。

 どうも、おかげ様で帰宅してしばらくは晩ご飯が鍋焼きうどん続きだった当管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『せやしだし巻京そだち』にて著者・小林明子先生が昔から食べられている“うりの味淋漬入り卵かけご飯”です!
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯図
 小林明子先生の幼い頃の姿である小学生・アッコちゃんを主人公にして描かれた、1960年代京都の活き活きとした世界と独特の風習は、前回お伝えした通りとても面白いのですが、話の合間合間に挿入されている、ちょっとしたイラストと文章でまとめられたコラムもまた必見。
 京都では七五三よりも重視されているという十三詣りや、江戸時代から一昔前までは夏になるとあちこちで行われていた衛生掃除のお話も興味深かったですが、そんな中でも当管理人が特に注目したコラムは、やはり食に関するもの;。

 だし巻・鯖寿司・水羊羹といった食欲をそそる食べ物の絵もさることながら、長らく京都に住まわれている小林明子先生だからこそご紹介できる数々の名店も詳細に書かれており、参考になります←もちろん、他の京都本にもいいお店は沢山載っているのですが、地元の方が普段使いしているお店よりも観光客向けのお店がほとんどで、当然お値段も高め;。しかし、『せやしだし巻京そだち』では「普段家族で食べる物を買うお店」と「お祝い事orお客さんの為にここぞと買いに行くお店」の二種類がちゃんと分かりやすく書かれており、京都初心者には大変ありがたい構成になっております)。

 京都ならではの四季に合わせた和菓子もワクワクして眺めたものでしたが、個人的に読んでいて一番「京都らしいな~」と感じたコラムは、ぶぶあられに関するもの。
 なんでも、ぶぶあられはお茶漬けだけではなく昆布茶にも浮かべても合うみたいで、小林明子先生はお湯をかけてすぐのカリカリしたあられよりも、ふやけてグニグニになったあられがお好きだとおっしゃっていました。
 なお、今ではほとんどの方がご存知だと思いますので完璧な余談なのですが、有名な「ぶぶ漬けでもどうどす?」を実際に使う京都人はまず存在しないそうです;(京都ご出身のグレゴリ青山先生がおっしゃるには「語尾にどすって使うん、デビュー前の舞妓はんかデビュー当時の三田寛子ぐらい」との事で、「言葉にしろ風習にしろ、誤解されるともやっとすることってありますよね」と思いました←以上、「福岡県民は豚骨ラーメンに明太子をトッピングする」という地味なデマにびっくりした一市民よりorz)。
ぶぶあられはお茶漬けにかけるのは勿論、普通のお茶に浮かべて飲んでも美味だそうです
 今回ご紹介するのは、秋の章のコラムで小林明子先生が「わたしの好きな食べ方」として書かれていた“うりの味淋漬入り卵かけご飯”!
 作り方はとても簡単で、醤油をちょっとだけ垂らした卵かけご飯へ、みじん切り状に刻んだ味淋漬を加えてよく混ぜ、隣に八つ切りサイズの焼き海苔を添えたら出来上がりです(←頂く時、この焼き海苔に一口分だけくるんで食べます)。
 ポイントは、黄身の味を邪魔しないよう最小限の醤油に留めることと、なるべくふんわりとした混ぜ加減にすることの二つで、たったこれだけなのに随分特別感があるように見えるな~と感じました。

 小林明子先生がおっしゃるには、「漬けもの好きの私ですが、特に好きなのは、烏丸綾小路にある田中長の桂うりの味淋漬」「普通に5ミリほどにスライスしてもおいしいのですが、うちではさらに細かく刻んで小鉢に盛られて食卓に並ぶ」だそうで、この卵かけご飯は田中長の味淋漬の良さを100%堪能される為、幼い頃独自に生み出されたみたいでした。
 調べた所、田中長奈良漬店の味淋漬は「高級な奈良漬に自家製みりんの風味を加え、まろやかな香味を醸す、手間をかけた京都らしい奈良漬」として江戸時代に誕生したようで、往来の奈良漬けよりもぐっとまろやかな味がするのが特徴的なのだとか。
 この香り高い味淋漬に、醤油を控えた卵かけご飯が合わさると「卵の甘みと味淋漬のうまみが調和して」何とも言えない美味しさになるのだそうで、初見時は「こ、これはいつか食べてみたい…!」と喉を鳴らしたのを覚えています;。
漬け物好きな小林明子先生が特にお好きだったのが、田中長の桂うりの味淋漬小林明子先生のご実家では、奈良漬けはみじん切りにして供されていたとの事。
 先月、京都へ旅行した折に味淋漬をお土産として購入してきましたので、再現する事にしました(←感じのいい店員さん、その節はありがとうございました)。
 作中には大体の作り方が記載されていましたので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、漬け物の準備。 田中長奈良漬店うりの都錦味淋漬を用意し、袋から取り出して酒粕をさっと程度に拭き取り、薄めにスライスします。
 ※取った酒粕は味噌汁に入れて粕汁風にしたり、味噌に足して魚を漬けたりするなど、色々再利用できます。
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯1
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯2
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯3
 スライスした味淋漬をさらに細かく刻んでみじん切り状にし、使いやすいよう小鉢等に取り分けておきます(←このまま白ご飯にかけて食べても美味です)。
 その間、お茶碗へ炊き立てご飯を軽くよそい、お醤油をほんの少しだけ入れてかき混ぜた溶き卵を上からかけてさっくり混ぜ、出来るだけふんわりした卵かけご飯を作っておきます。
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯4
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯5
 この卵かけご飯へ先程の細かく切った味淋漬を多めに入れてよくかき混ぜ、仕上げに適度に炙っておいた焼き海苔を傍らに添えれば“うりの味淋漬入り卵かけご飯”の完成です!
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯6
 鼻を近づけると、酒粕由来の芳しい香りがふわりと優しく漂い、ただの卵かけご飯とは思えない程高級感が出ています。
 実を言いますと、醤油をあまり入れない卵かけご飯も、奈良漬けも、そこまで好きな方ではないのですが;、こちらは見るからに美味しそうな予感がプンプンしますので、己の勘を信じて食べてみようと思います!
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯7
 それでは、焼き海苔に一口分くるんでいざ実食!
 いっただっきま~す。
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯8


 さて、感想はと言いますと…極めてシンプルながらも、類をみない複雑なおいしさに衝撃!味淋漬の新しい魅力に病みつきになります!
 今まで食べてきた奈良漬は、あんまり品質がよくないお弁当の片隅にあるような物ばかりだったのもあり、グシュッとしたどことなく粘りのある歯触り、アルコール臭がギンギンに残った癖のある匂い、ひたすら甘々な味つけで苦手だったのですが、これはまさに「格が違う」といった風情。
 小さく刻んでもなお、カリカリパリパリシャキッと小気味良く歯を刺激する爽やかな食感、上等な日本酒の如く典雅なのにアルコール臭さが全くない香り、塩気と甘さがバランスよく入り交じった奥深い旨味が印象的で、一瞬ではまりました。
 強引に例えるとするなら、「塩をぐっと抑え目にした酒かす風味の高貴な味噌漬け」みたいな味わいで、二年間じっくり漬けたとは思えないくらいフレッシュな口当たりは、古漬けというよりはまるで浅漬けのようだと感じました(←味淋の香味は勿論、少しだけ醤油にも近い味もします)。
 不思議なことに後口が若干フルーティーで、それでいてキレがよく、はっきり濃いのに控え目で押し付けがましくなく、矛盾しているのに成り立っている混然とした旨さにうっとりします。
 黄身のまろやかな甘味が効いた淡い卵かけご飯に、味淋漬の上品かつ甘じょっぱいアクセントが効いているのがたまらなく美味で、焼き海苔をくるんですかさず食べると、香ばしい磯の風味がバリッと砕けて全体としっかり調和するのが絶妙で、まさに三位一体でした。


 おかげ様で今ではすっかり奈良漬が大好きになり、田中町奈良漬店の味淋漬けは当然、他のお店の奈良漬もお取り寄せしたいな~と思うようになりました(←それと同時に、もっと沢山買っておけばよかったと激しく後悔…orz)。
 但し、これは卵かけご飯が醤油多めだと途端にちぐはぐな味になりますので、本当にちょろっと香りづけ程度にのみ垂らす事を推奨します。


◎追記
 他にも、小林明子先生が作中にて「おかずにしては高価な品」とご紹介されていた永楽屋の一と口椎茸も購入し、アッコちゃん流に食べてみました。
 思ったよりも小ぶりだったんですがそれが愛らしく、最初は食べるのがもったいなくて迷ったくらいでした;。
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯9
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯10
 こちらもまた予想を上回るお味で、高級な一品なのにご飯がバクバク進みます(←現在、実家には三人しかいないので、一人一人に十分分配できました;)。
 濃厚な昆布のお出汁と、こっくりと甘辛い醤油味が芯までジュワ~ッと完全に染み込んでおり、それはお茶漬けの中でどんなに激しくすすいでもびくともしませんでした。
 市販の椎茸の旨煮よりも甘さはやや弱めなんですが、決して甘くないという訳ではなく、噛むごとにじんわりと強すぎず弱すぎず浮かび上がる品のいい甘味で、ご飯にぴったりです。
 また、大抵椎茸は煮込み過ぎると固くなる傾向にありますが、こちらはどこを食べても見た目通りかわいいプリプリ感で、しっとり柔らかく食べやすいのが特徴的でした。 
桂うりの味淋漬入り卵かけご飯11

●出典)『せやしだし巻京そだち』 原作:小林明子 作画:ハンジリョオ/140B
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
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