『ミスター味っ子』の“味吉陽一特製ナス巻きミートソーススパゲティ&丸井善男特製クルミ入りミートソーススパゲティ”を再現!
- Sat
- 18:00
- 再現料理
こういうよくある日常でも、あまりにもタイミングが同じだと一種のダンスみたいになるんだな~と妙に感心しました。
どうも、昔缶コーヒーのRootsのCMであった「運命の人が男と女だとは限らない」というフレーズを何となく思い出した当ブログの管理人・あんこです(※相手の方は年上の奥様でした)。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君と丸井さんが初めて対戦した時に作った“味吉陽一特製ナス巻きミートソーススパゲティ&丸井善男特製クルミ入りミートソーススパゲティ”です!


第一話で味皇様にその才能を見出された陽一君は、今度の定休日にでも遊びに来て欲しいという誘いを受け、数日後に味皇ビルへ足を運びます。
この時、偶然迷い込んだイタリア料理セミナーで味皇料理会イタリア料理主任・丸井善男さんと初めて出会うのですが、後々大の仲良しになるとは思えない程お互いの第一印象は最悪で、何とスパゲティの茹で方がきっかけで大喧嘩しそうになってました。
要約すると、「時間さえきっちり計って茹でれば誰でも簡単にアルデンテは作れる、経験や勘なんていらない」という至極当然の事を陽一君は指摘しただけなのですが、丸井さんが真剣に講義している最中にあくびをしたり、他の人が素直に丸井さんの教え通り作ってるのを見てクスッと笑ったり、「待ってなっ、もうちょいでばっちりのメンを作ってやっから!」「なんなら証拠見してやっかあ?」と指示をガン無視で正しいやり方をタメ口でレクチャーしたりなど、煽り耐性がないとちょっときつい場面がありましたので、初対面でこれだったら確かにカチンときても仕方ないかもしれない…と苦笑したのを覚えています;。
味皇様としては陽一君をゆくゆくは一部門の主任にしたいと思っていたのですが、丸井さんは自身が二十年かけて得た地位をぽっと出の僅か14歳の少年があっさり手に入れるのが納得できず(←常識的に考えたら、もっともな主張ですよね…)、「この子供と…私に勝負をさせていただきたい!!」「勝負は一週間後!!私のもっとも得意とするミートソーススパゲティでだ!!」と勝負を挑んでいました。
イタリア料理の素人に、この道三十年のプロが自分の得意料理で戦う…と聞くとかなり大人げなく思えますが、考えてみれば『ミスター味っ子』に出てくる大人はそんな大人気ないキャラばかりな事に今気が付きました(
むしろ、圧倒的な資金力を武器に陽一君をストーカーして潰そうとする味将軍グループの面々とか、町内での権力を維持する為だけにトロや海苔を買い占めてコンテストでごり押し優勝しようとするお寿司屋さんとか、確実に勝つ為に根回しして審査員を自分の味方で固めたお好み焼き屋さんとかに比べれば、一応小細工なしに勝負しようとしている分、まだ丸井さんは優しい方なのかもしれない…と感じたものです。

こうして丸井さんとなりゆきで勝負することになったものの、それまで炒めスパゲティしか作った事がなく圧倒的に経験不足だった陽一君は、母・法子さんに買ってきてもらった丸井さんの本「野菜ソースで作る本格的スパゲティ」のレシピを参考に、“丸井善男特製クルミ入りミートソーススパゲティ”を作ります(←ちなみにこちらのスパゲティ、本作の中で唯一全手順が絵入りで具体的に書かれており、すごく分かりやすいです。
丸井さん曰く、「タマネギ、シイタケ、シャンピニオン、セロリ、ニンジン、ニンニク、ローリエ、パセリ、ズッキーニ、タイム…さまざまの野菜をふんだんに刻みこみ、ソースベースを作る!」「それがっコクのある旨味をもった最高のソースの秘密なのだ!!」だそうで、そこに隠し味としてクルミをいれるのが独自の工夫みたいでした。
地味かもしれませんが、実際に試食した陽一君が言うには「一見小さなこの一粒一粒が、ミートソースに香ばしい香りと歯応えを与えているんだ…!」だそうで、さすが威張るだけの事はあると唸っていました。
調べた所、ナッツ系の中でもクルミは一番お肉と違和感なく合わさるようで、何とベジタリアンの間では肉代わりに使われている程だとか…さすが味皇料理会イタリア部主任、知識が幅広いです!
あと、現在ミートソースは日本オリジナルの料理でイタリアには存在せず、モデルとなった料理はボロネーゼではないかという情報は広く知れ渡っていますが、丸井さんのレシピは何だかんだで本場のレシピに近い感じで驚きました(←失礼;)。
本場ではボロネーゼに合わせるのはきし麺状のタリアテッレで、トマトより赤ワインの方を味付けのベースにする為ちょっとは違いますが、そこは日本人に好まれるよう多少アレンジしたと言われれば頷けるレベルですし、それまで「シーフードは専門外とか、本当にイタリアで修行したのかな…」と疑ったことを心から反省しましたm(_ _;)m。

こんな優秀な見本を見せ付けられた陽一君は、おかげですごく苦労することになるのですが、多くの試作でナスと肉がとても相性がいい事を発見し、やっとあの完璧なクルミのミートソースに対抗できると安心します(←これは、今では常識なくらい定番の組み合わせですね。肉の油を吸ったナスがトマトに凄まじく合うと思うのは海外の方も同じで、ムサカという伝統料理もあるくらいですし)。
しかし、今度はナスが多すぎたら水っぽくなる・少なすぎたら存在感がない・多く入れて強火で水分を飛ばしたら風味が消えるなど、肝心のナスの旨さを最大限に引き出す方法が見つからず、また振り出しに戻ります。
けれどもその日の夜、法子さんがベーコンで巻いたロールキャベツを夕食に出したことから陽一君は全てが解決するアイディアを思いつき、勝負の日に自信を持って出します。
それが、この“味吉陽一特製ナス巻きミートソーススパゲティ”です!
作り方はお手軽で、にんにく・玉ねぎ・にんじん・セロリ・牛豚合い挽き肉・塩・こしょう・トマトソース・ブイヨン・赤ワインを煮こんで作ったミートソースをお皿へ敷き、その上へ半分に折って茹でた後ソテーしたナスで包んだスパゲティを飾り付ければ出来上がりです。
ポイントは、ナスはなるべく大きいものを使ってスパゲティをしっかり包むようにすること、牛豚合い挽き肉は牛:豚=3:7の割合にすること、ナスでスパゲティを包む時は目にも止まらぬスピードですることの三つで、こうするとスパゲティは肉汁が最大に出る配合で作られたミートソースにも力負けすることなく調和し、食べる時にのびのびにならずに済むと作中で語られていました(←『マトリックス』のエージェント・スミスやEXILEの「Choo Choo TRAIN」を彷彿とさせる分身術は必見!)。
ミートソースに入れて味が損なわれるなら別に添えたらいい、そしてどうせならなかなか巻きつかずに食べにくいスパゲティを一口で食べられるよう半分に切り、ナスでまとめてしまえばいいという斬新な発想で作られたこの創作スパゲティは、味皇様を始めとする審査員の各主任達にも大好評で、丸井さんも衝撃を受けつつ絶賛していました。

当管理人はものすごくトロいため、ちゃんとスピーディーに作れるか心配でずっと躊躇していたのですが、陽一君のミートソースも丸井さんのミートソースもずーっと食べてみたくてしょうがなかったので、最近の勢いに乗って再現することにしました!
作中には大体のレシピが記載されていますので、早速ルネッサンス情熱を抱いて作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、二種類のミートソースのベースとなる野菜炒め。
油をひいたフライパンへにんにくのみじん切りを入れて弱火で火を通し、いい香りがしてきたらみじん切りにした玉ねぎ、にんじん、セロリを投入し、しっかり炒めます。
全体がしんなりして少しカサが減り、玉ねぎがほんのりキツネ色になってきたら、ベースの野菜は用意OKです(←二種類分ですので半分こにしますが、丸井さんの方は後々野菜をプラスする事を考慮し、陽一君の方がやや多めになるよう分けておきました)。



次は、陽一君のミートソース作り。
先程のベース野菜が入ったフライパンへ牛豚合い挽き肉を加えて中火で炒め、塩と胡椒で味付けします(←挽肉に火が通ってから入れた方が、お肉の内部に肉汁が残ります)。
※牛:豚=3:7の割合になるようブレンドされてある物を使用したほうが良いです。


ここにトマトソース、ブイヨン、赤ワインを加えて弱火~中火の火加減でじっくり煮込み、全体がとろりとして煮詰まってきたら陽一君のミートソースは出来上がりです。


今度は、丸井さんのミートソース作り。
先程のベース野菜が入ったフライパンへ、みじん切りにした椎茸、シャンピニオン(=マッシュルーム。今回はブラウンマッシュルームを使用しました)、パセリ、ズッキーニ、枝から指でしごいて葉だけにしたタイム、ホールのローリエを入れ、中火で炒めます。
全体がしんなりしてきたら牛豚合い挽き肉を加えて炒め、塩と胡椒で味付けして混ぜ合わせておきます。



ここにトマトソース、ブイヨン、赤ワインを加えて弱火~中火の火加減でじっくり煮込みます。
全体がとろりとして煮詰まってきたらローリエを取り出して火を止め、細かく刻んでおいたクルミを投入してざっと混ぜ合わせたら丸井さんのミートソースは出来上がりです。
※クルミは軽く炒り、薄皮を出来るだけ取り除くとさらに香りが増します。



ここまできたら、いよいよスパゲティとナスの準備。
厚さ数ミリにスライスしたナスを薄い塩水に浸けてアクを抜き、キッチンペーパー等で水気をよく拭いたら、油をしいて熱したフライパンで両面をこんがりと焼いておきます。
その間、塩を入れて沸騰させた大鍋にスパゲティを入れて規定時間より一分短く茹で、ザルで湯きりしたら半分はそのままお皿へ盛り付け、半分はオリーブ油をまぶしておきます。
オリーブ油をまぶしたスパゲティは長さが大体揃うようまな板に並べ、両端を少し切ってからさらに半分に切り、それぞれさっきソテーしたナスをきゅっと巻きつけます(←切り落としたスパゲティはあまったミートソースに絡めて食べました。クスクスっぽくて美味です!)。
※有名な包丁でスパゲティをズダーン!!のシーンも再現しようとしたんですが、茹でる前のパスタの硬さは本当に岩のようで、そんな事はないと思いつつ包丁の刃が痛みそうで怖かった為断念しましたorz。ズダーンできた方、いらっしゃいましたらコツの伝授をお願いします…。



お皿に盛ったスパゲティの方へ丸井さんのミートソースをたっぷりかけ、別皿へ陽一君のミートソースを平たく盛ってその上にナス巻きスパゲティを乗せれば、“味吉陽一特製ナス巻きミートソーススパゲティ&丸井善男特製クルミ入りミートソーススパゲティ”の完成です!


思ったよりも手間どったので少し冷めてしまいましたが、『ミスター味っ子』好きの当管理人はこのビジュアルを間近で見れただけでもう感激、大満足でした(つд`)。
陽一君のミートソースもいい香りでしたが、丸井さんのミートソースはお店っぽい感じで「おお!」と感心する薫り高さで、これは両方とも味に期待が持てます!


それでは、これ以上冷めない内に急いで実食!
いただきま~すっ!


さて、料理の感想は…両方ともいい勝負でおいしい!陽一君のは王道的で間違いのない日本人好みの味、丸井さんのはオリジナリティー溢れる本場風の味という感じです!
陽一君のミートソースは「老舗洋食屋さんの不動の看板メニュー」というイメージのどこか安心する味わいで、野菜が少ないせいかかえって肉のジューシーな旨味とトマトの甘さが際立っている所がよく、舌へダイレクトに伝わる昔懐かしい甘酸っぱさにほっと癒されます。
別添えにしたナスには煮込んだナスほどの一体感はありませんが、その分ソテーして油を吸ったナス特有のぐっと濃縮したとろけるような甘味と、じゅんわりシャグシャグした瑞々しい食感が活きており、ナスも肉も主役!って感じの濃厚な旨さになってました。
一口あたりのナスの量が多い為どことなくリッチな仕上がりで、満足感がすごいです。
あと、整然と並んで短いパスタは一気にブツブツッ!と噛み切れるのが爽快で、スパゲティというよりは新しいショートパスタみたいな口当たりになっており、古いようで新しい味になってるのが面白いです。
一方、丸井さんのミートソースはたっぷり入れた野菜の甘やかな風味と、口の中で溢れ返りそうな程の濃いエキスがガツンときいたフルーティーな味わいで、よりボロネーゼに似た本格的な出来映えになっています。
マッシュルームと椎茸の深い出汁、タイムやローリエなどハーブ系の華やかな香気、ズッキーニのナスに近い甘味があわさっているおかげでさらに複雑な美味さになっており、国は違いますがプロバンス風っぽいなと思いました。
意外だったのは刻まれたクルミの存在感の強さで、噛むごとに香ばしいコクとカリカリサクッとした歯触りが弾け、単調になりがちなミートソースの後味を一気にリフレッシュさせるのがナイスです(←陽一君のミートソースは、その役目をナスが担ってました)。
クルミの油分が合い挽き肉とよく馴染み、普通のミートソースとは一味違うプロっぽい味になっているのが印象深かったです。
ナスはちょっと煮込むとすぐドロドロに溶けて存在が希薄になりますが、陽一君方式だとナスのおいしさがしっかり残りつつミートソースの味をグレードアップしてくれるので、一石二鳥です。
また、クルミとミートソースも予想を上回る相性のよさで、これは他に何か応用したいな~と考えました(←市販のミートソースにかけて頂くだけでもその威力は分かって頂けると思います)。
嬉しい誤算で、冷めてもイタリア製パスタの底力なのかコシはそこそこ保たれており、そこまでのびていなかったのがありがたかったです(←バリラは時間がたってもコシがあり、時間にシビアではないので大変助かります)。
ちなみに、試食してもらった夫はどちらも好きでおいしいと言っていましたが、美味しさの持続力という点で陽一君の方が僅かに勝っていたと評価していました。
P.S.
波多野鵡鯨さん、ミトナリさん、HALさん、あめふらしさん、おもちさん、kawajunさん、Sullaさん、けんたっきーさん、コメントを下さりありがとうございます。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
Comment
2018.08.14 Tue 08:42 | キターーーー!!!!
あんこさん、こんにちは!
コメントは初めてですが実は何年も前から大ファンで、特にあんこさんの味の表現が大好きです。
ついにミスター味っ子のこのスパゲッティーの再現!!!写真最高です!!素晴らしいです。いつも楽しませてもらっていますが、今回もすごく楽しませてもらいました。いつもありがとうございます!!!あまりの興奮についにコメント書いてしまいました。
ついでに、あんこさんのストーリーやキャラクターの分析も大好きです。性格も大好きです。大好きだらけです。これからも楽しみにしています❤️
- #-
- AKH
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2018.08.16 Thu 20:52 |
あんこさん、こんばんは。
トマトとナスのコンビネーションはたまりませんね!ムサカと言えば、クッキングパパの話で東山常務が病気で寝込んだ奥さんに初めて作った料理、ほっこりする話で印象に残ってます。
それでは、無理をなさらずに…。
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- キンメ
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