『ミスター味っ子』の“味吉陽一特製パン包み串焼きハンバーグ”を再現!
- Sun
- 23:00
- 再現料理
最初は雲一つないキレイな夜空で花火もよく映え、夫共々夢見心地になって歓声を上げていたのですが、無風だったせいか途中から煙で花火が見えにくくなるという事態になり、非常にもったいなく感じました;。
長年色んな花火大会を見ていますが、周囲からあれ程悲嘆と苦笑いとどよめきの声が上がる花火大会は初めてです。
後半の花火は基本そんな感じでしたが、よりによって「状態がよかったら、圧巻の美しさだったろうな…!」と容易に想像できる大きくて派手で構成のいい花火ほど嫌がらせなくらい煙が邪魔し、単なる色付きの点滅雲になっていた時は思わず悲鳴を上げたくなりました。
これ程もどかしい光景はそうそうない為、つい心の中で「頑張れー!」と花火師さんを応援し、風乞いの祈りを天に捧げたものです(←当管理人は穢れなき乙女でも霊験あらたかな巫女でもなかったので、全く通じませんでしたが…)。
どうも、順調に進む旅よりも思いがけないトラブルを乗り越えて楽しんだ旅の方が不思議と記憶に残るという事に気付いた当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君がある老舗洋食店さんのピンチを救う為に考え出した“味吉陽一特製パン包み串焼きハンバーグ”です!

ステーキ勝負が終わってしばらく経った頃、陽一君は常連の一人である老舗洋食店<トロイメライ>の若旦那から、大手ファミレス<ジェネシス>にお店を売らなかった報復として目の前に凄腕のシェフのハンバーグが売りのレストランを開店されてお客を取られ、お店を潰されそうになっていると相談を受けます。
そのハンバーグが絶品だと聞いて興味を抱いた陽一君は若旦那と一緒に<ジェネシス>へ偵察に行くのですが、そこで味将軍グループの中核に位置する料理人・阿倍二郎と出会って早々「確かにおいしかった。でもオレだったらもっと工夫するけどね!このハンバーグには大きな欠点があるよ!!」「おもしろい…ならオレもちっとは本気を出させてもらうか」とお店のど真ん中で煽りあい、一週間後にお互いの店でハンバーグフェアを開いて勝負することになっていました。
味皇様曰く、味将軍グループは味皇グループと料理界を二分する勢力、日本全国の料理店を支配下におくのが目的で金で物をいわせる手段を選ばない集団だそうで、陽一君はこれ以後も味将軍につけ狙われることになります(←下記の如何にもな絵面のせいか、ヤ○ザ同士の抗争みたいでちょっと怖かったです。
ちなみにこの時、陽一君は大勢のお客さんが阿倍さんのハンバーグを楽しんでいる中、「煮こむことで確かに中までやわらかくはなるけどさ、結果として外側がべとつきすぎて焼きあがった時の肉の香ばしさがない!!」「表面のべたつきといい、見た目の悪さといい、本来のハンバーグの味わいを大きく失っているってことさ!!」と大声で言った上に親指を下げるという、まるで「この豚バラ煮込みはできそこないだ、食べられないよ」とわざわざ店員を呼んで言い放った『美味しんぼ』初期の山岡さん並にえげつない行為をしていました(←『孤独のグルメ』の五郎さんがこの場にいたら、「人の食べてる前であんなに怒鳴らなくたっていいでしょう」「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで…」と諭してくれていたかもしれません。つくづく、五郎ちゃんは殺伐としがちなグルメ漫画界の良心だと思います…)。
正直、一応は法を守っている<ジェネシス>に比べて<トロイメライ>の方が悪質な営業妨害をしているように見えなくもなかったので、お店の人に通報されずに済んでほっと胸を撫で下ろしたものです(^^;)。

こうして陽一君は<ジェネシス>に打ち勝てるようなオリジナルハンバーグ作りに励み、最終的に七輪で炭火焼きにしたふっくらハンバーグを勝負の日に出す事にします。
途中、七輪で焼くと中央にまで火が通らない・肉汁が落ちてパサパサになってしまう・三個もハンバーグがあるとボリュームがありすぎて飽きそうなど色んな問題が出てきていましたが、試行錯誤の結果、金串を使って中までしっかり熱を通す・パンを巻いて肉汁を全部吸わせる・挽肉の配合を少しずつずらして微妙に味を変えるなど、有限実行で様々な工夫をしており、口先だけではなく理想のハンバーグをちゃんと形作っていってました(←だからこそ『ミスター味っ子』は面白いし、陽一君も憎めないキャラになっているのだと思います)。
ハンバーグのソースも陽一君らしい独創性で、一般的なソースだと肉汁たっぷりのハンバーグの良さが活きてこないのに苦戦していた中、若旦那が差し入れしてきたアイスクリームのトッピングを見て、何と粒胡椒を挽かずにそのままハンバーグにまぶすというとんでもない解決策を閃いていました。
破天荒なアイディアにも思えますが、試食した若旦那が言うには「噛んだ瞬間口の中でぱちっとはじける辛味、その刺激が鮮やかなだけそのあとの肉汁の旨味は倍増する!」「水っ気のない粒こしょうをそのまま使ってるから、ソース味がぼけることなく肉の本来の旨味がとろけるように伝わってくるんだ!」との事で、大絶賛していました(←発想としては、粉ドレッシングに近いものがあります。あちらも水分がない分材料にまんべんなく絡らんで味がつき、食感の変化をもプラス出来るという事でヒットしていますので、陽一君の考えはまさに時代の先をいっていたのだと思います)。
※…実を言いますと、粒胡椒はそのままかじると悶絶するほど辛く、舌触りもゴロっとしてとても食べられたものじゃないという事が分かっていますので、リアルでお店に出してしまったら大負け必至なのですが…orz。一応、『ミスター味っ子』ワールドではおいしかったという事で話を進めますね;。

そして一週間後、陽一君が<トロイメライ>で万全を期してお客さん達に振舞ったのが、この“味吉陽一特製パン包み串焼きハンバーグ”です!
作り方は意外とお手軽で、よく練ったハンバーグのタネにチーズを埋め込んで俵型に成型した物を三つ用意し、それぞれ粒胡椒をまぶして耳を取った食パンに包んで玉ねぎと一緒に金串で刺し、こんがり焼いたら出来上がりです。
ポイントは、第一のパテは牛肉6:豚肉4(肉汁が多いこってり系)、第二のパテは牛肉7:豚肉3(旨味と肉汁のバランスがいい)、第三のパテは牛肉8:豚肉2(品のいいさっぱり系)になるよう挽き肉の配合を微妙に変える事で、こうすればしつこく感じることなく最後までおいしく食べられるハンバーグになると陽一君は語っていました。
どんなにおいしい料理でも、食べ続けているとおいしく感じなくなってしまう…というのは今となっては有名な話ですが、『ミスター味っ子』を読み始めた頃は初耳だったので、感心したものです(←しかし以前、この話を逆手にとって「好きなお菓子を飽きるまで食べる=嫌いになって食べなくなる=ダイエット促進!」と毎日お菓子を食べた事があったのですが、一向に嫌いにならず体重も増えました。世の中ままなりませんね)。
あと、チーズとハンバーグの組み合わせですが、これはいわゆるイノシン酸+グルタミン酸という旨味を相乗効果で倍増させる最強の組み合わせでもありますので、かなり有効な作戦だと感じました(←鰹節と昆布の組み合わせが有名ですね)。
おかげで、<ジェネシス>のハンバーグを食べた後でも楽々食べられると評判を得た<トロイメライ>は無事お客さんを取り戻し、味将軍グループを撃退するのでした。


長年気になってはいたものの、既に色んな方がおいしくアレンジして再現されていたので、当管理人がしても今更感が強いだろうな…と思い、ずっと放置していました。
しかし最近、粒生こしょうという驚きの新調味料を発見し、これなら原作通りの見た目に作れて尚且つおいしいのではないか…と考え、一念奮起して再現することにしました。
作中には大体のレシピが図解で記されていますので、早速ルネッサンス情熱を抱きつつその通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、パテの準備。
ボウルへ牛挽き肉と豚挽き肉をそれぞれの配合で入れて塩と胡椒をふり、白い糸が引いて粘りが出るまでしっかりと力をこめてよく練ります。
※小さいボウルには牛肉6:豚肉4(一番目に食べるパテ)、中間のボウルには牛肉7:豚肉3(二番目に食べるパテ)、大きいボウルには牛肉8:豚肉2(三番目に食べるパテ)の割合で挽き肉を配合して練り合わせましたが、練る手触りも練り終えた見た目もほとんど変わらず拍子抜けしました;。きっと味に変化があるものと信じてます!


挽き肉を練り終えたら、バターで炒めた後冷ましておいた飴色玉ねぎ、牛乳に浸しておいたパン、溶き卵をそれぞれのボウルへ投入してさらに混ぜ合わせます。
※つなぎの分量の違いで味がばらつかないよう、それぞれの挽き肉に対して同じ割合になるよう計量しながら混ぜました。この作業は地味に時間がかかって大変でしたので、他の方はされなくても大丈夫ですorz。


パテが出来上がったら、真ん中にチーズを埋め込んで俵型に成型し、粒生こしょう(収穫したての胡椒の実を岩塩に漬け込んで保存した生タイプの黒胡椒。ない場合は粗挽き黒胡椒で代用して下さい)を全面に程よくまぶします。
※今回の再現は、この粒生こしょうが何よりも重要!乾燥タイプの粒胡椒はそのまま使うとゴロゴロした硬さと猛烈な辛さが食材の味を殺してしまう為味わうどころではないですが、こちらは生というだけ合ってプチプチと皮が柔らかく、辛さよりも香りや旨味がダイレクトに舌に響く為、そのまま噛み締めても全然平気です(全く辛くないわけではないので、辛いのが苦手な方は無理かもしれませんが…)!当管理人は今回、こしょう本舗様の商品を使用しました。



このパテを耳を切り取って少し伸ばした食パンで包み、くし形切りにした玉ねぎと一緒に焼き串に刺し、ホイルなどを敷いた天板に並べて高温のオーブンでじっくり焼きあげます(←パンの部分が焦げかけてきたら、ホイルを上に被せて下さい)。
※原作通り七輪で焼こうかどうか迷ったのですが、偉大なるミスター味っ子再現の先駆者・mayuさん(現在はサイトを閉鎖なさっていますが、当管理人が再現料理を作るようになったのは紛れもなくこの方のおかげです!)はホイルをしてもパンが焦げて中まで火が通らないというアクシデントに見舞われ、最終的には電子レンジにかけて焼かれていた為、怖気ついた当管理人は文庫版のレシピ通りオーブン使用にしてお茶を濁しました…。忠実再現でなくてすみません!


その間、付け合わせであるグリーンピースのマッシュ作り。
塩茹でしたグリーンピースを漉し器にかけて丁寧に裏漉しし、ペースト状になったらアイスクリームみたいに丸く形作って小さいお皿に盛り付けておきます。
※そのままだと味が薄かったら、塩などで味を調節して下さい。


パテの中まで火が通ったのを確認したらオーブンから取り出してお皿へ移し、グリーンピースのマッシュを添えれば“味吉陽一特製パン包み串焼きハンバーグ”の完成です!

焼きたてのハンバーグとこんがりトースト特有の香ばしい匂いがダブルとなって辺りを漂い、嗅ぐ者の心をとろかします(´д`*)。
再現するまでは「奇をてらいすぎなんじゃ…」と色物扱いをしていましたが、実際に見てみると「これはこれでありだな」という説得力がある感じで、味が楽しみすぎてドキドキしました。

それでは、ナイフとフォークで食べやすく切っていざ実食!
いっただっきま~すっ!!

さて、味の感想は…かなりクオリティーの高い美味しさで絶句。黒胡椒の力によって肉汁がバシッとストレートに映えるのが素晴らしいです。
肉のエキスを吸って香り高くカリッと焼き上がったパンを噛み破ると、柔らかくジューシーなパテからこってりとろけるチーズが肉汁と共にジュワジュワと溢れ出し、口の中で色んなコクが混然となって膨らんでいくのがたまらず、後引く味わいになっています(←内側のパンが肉汁を吸ってほんのりふやけ、中華まんや皮が分厚い餃子の内側みたいになっているのが美味でした)。
この濃厚な旨味を持つパテに、塩漬けにされた粒生胡椒のプチっと柔らかく弾ける瑞々しい辛さ、フルーティーで華やかな風味が肉の旨さをよりくっきりとシャープに浮き上がらせるのがナイスで、鮮烈な刺激が肉汁のコクをぼやけさずキリッと引き締めています。
辛いのは辛いですが、『鉄鍋のジャン』の“飲めるラー油”のように複雑な旨味と香りの方が辛味よりも先に来て圧倒的に広がる為、辛すぎるという事はありませんでした。
例えるとするなら「両面をグリルしたスパイシーチーズバーガー」ですが、ハンバーガーよりもパテとパンとチーズの一体感がすごく、パテの比率も大きくジャンクっぽさがないので本格派な肉料理を食べている満足感があります。
肉の配合ははっきり違いが分かる訳ではなく言われれば気づく感じですが、最後のパテだけは牛肉の奥深いコクが効いた比較的あっさり上品なパテで個性が際立っており、やっぱり多少は変化するんだなーと感心しました。
意外にも大活躍したのはグリーンピースのマッシュで、爽やかなのに舌に絡み付くくらいねっとり甘い後味が黒胡椒の辛味を和らげてすっきりリフレッシュさせ、次の一口を新しい気持ちで楽しめるようにしているのがよかったです。
付け合せの蒸し焼きっぽくなった串焼き玉ねぎも、香ばしい甘さで絶妙な箸休めになっており、地味ながらいい仕事をしていたのが印象強かったです。
正直、ライバル側のハンバーグも絶品だったのでおいしさは甲乙つけがたいのですが、斬新さという点ではこちらの方が確かに上で、さすがミスター味っ子の面目躍如たる出来栄えでした。
原作みたいに七輪焼きにするのもふっくらしていいかもしれませんが、オーブン焼きにして表面と裏面を違った焼き加減にするのも食感の変化があって面白くてよかったので、これはこれでありだと思います。
きっと、陽一君は勝負の時にこの粒生こしょうを使ったんだ、そうに違いない!!…と自分に強く言い聞かせた再現でした。
◎おまけ
下記画像は、焼き目がつかなかった表側の串焼きハンバーグです。
焼き目がつく裏側の串焼きハンバーグも迫力満点で、ダイレクトに食欲をそそりますが、こちらにすると一気にレストランっぽさが増すのでおもてなし用によさげです。


P.S.
キンメさん、コメントを下さりありがとうございます。
※AKHさんのコメントはもう一つありましたが、内容が全く同じで二重投稿かな?と思いましたので、後の方だけ承認せずにそのままにしています。もし何かございましたら、ご指摘おねがいしますm(_ _)m。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
Comment
2018.08.20 Mon 19:15 |
こんばんわ、コメントするのは初ですがちょくちょく読ませてもらってます。
単行本で読んだときは阿部さんのハンバーグのほうがすげー美味そうと思ったもんですw
見た目が個性的すぎるんですかね・・・
ともあれ再現お疲れ様でした。これからも楽しみにしてます
- #mQop/nM.
- レクレ
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- Edit
2018.08.20 Mon 21:56 | ファンです。
大好きな漫画の再現されていて、楽しみにしています。最近、また復活されて、とても嬉しいです。初期の頃のクッキングパパも是非とも…。
陽ちゃんのハンバーグ、めちゃくちゃ興味あります、いつか自分も再現したい!!です。
- #-
- たま
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2018.08.21 Tue 21:30 |
お茶漬けの回みたいにアームロックからのブン投げは流石にやらないでしょうね(^^;)
ゴローちゃんなら「このマッシュは正解だった肉尽くしの中ですっごく爽やかな存在だ」とか言うんでしょうか…
- #-
- URL
2018.08.23 Thu 03:53 | またミスター味っ子!!!
やったー!粒コショウでハンバーグの再現素晴らしいです!ミスター味っ子の料理は奇抜で大好きでした。実際に作るのは私には難しそうですが、こうやってあんこさんの再現で実写版が見れてしかも味もしっかりと表現されていて、個人的にかなり楽しんでいます。ありがとうございます!
前回のコメントは普通に送ったつもりでしたが2回送ってしまったみたいです。お手数ですが2つ目のは削除しちゃってください。今回ももし2回送っちゃったらごめんなさい。もしまたコメント2回だったら機種変しようかな…
- #-
- AKH
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2018.08.24 Fri 21:46 |
あんこさん、こんばんは。最近は台風が多いですね。
味っ子再現シリーズが続いていたのでもしやと思っていましたがやはり来ましたか!例のハンバーグが!
漫画を読んだときは「これは美味しいとは思えない…。」という感想でしたが、工夫と材料(胡椒漬け)で見事な料理となりましたね~。
味っ子の魅力は目を見開くような(突拍子もない)料理のアイデアとキャラクターの個性にあると思います。
それでは、無理はなさらずに…。
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- キンメ
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