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『ミスター味っ子』の“味吉陽一特製握り寿司六種”を再現!

 以前、東京で初めてお店のばらちらしを食べたのですが、ちらし寿司という日頃食べ慣れていて比較しやすい分野の料理だったせいか、握りタイプの江戸前寿司よりも衝撃を受けたのを覚えています。
 福岡でちらし寿司と言うと刺身がそのまま乗っている生ちらしか、五目ちらしが主流なのですが、ばらちらしは全ての具材が小さく切られて一口で食べやすくなっている上、生の魚介類だけでなく甘辛く煮付けた椎茸やかんぴょう、穴子、卵焼き、きゅうりなどが酢飯に彩りよく散りばめられているのが特徴的。
 最初から具が混ぜられていたり、大ぶりに切って別々に食べたりするのでは出ない、色んな味わいが口の中で一気に弾けて輝く醍醐味はばらちらしならではだと思いますので、福岡でも食べられたらいいのに…と強く感じたものです。

 どうも、スシローでまぐろのおはぎなる商品が出たと聞いた時、『ミスター味っ子』に出てきそうなネーミングだと思った当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君が常連の磯源寿司さんを助ける為に作った“味吉陽一特製握り寿司六種”です!
味吉陽一特製握り寿司六種図
 それは、阿倍さんとのフライ定食対決の決着がついて少し経った頃の事(←詳しい内容は、こちらこちら)。
 隣町から通ってくれている常連・磯源寿司の三木助さんと巧君親子から、毎年行われている寿司コンテストでずっと優勝している最大手のお店・寿司虎さんが調子に乗り、今年からは新聞紙に結果を載せて各店ののれんに順位を書き込むよう強要してきた上、裏でいいネタを買い占めていると聞いた陽一君は激怒し、「そんな横暴許しちゃおけないよ、町内の店が一丸になって寿司虎のわがままをこらしめてやんなきゃ」と協力することになります。

 この寿司虎さん、権力を笠に着ての卑怯な妨害・直接煽りながらの脅迫・お金に物を言わせての材料買い占めという料理漫画外道三条件をオールクリアしているキャラで、恐ろしい敵が蔓延している『将太の寿司』界でも一番のゲスキャラと名高い紺屋碧悟さんに対抗できる逸材。
 基本的に、敵キャラがまだゆるくて可愛げがあった『ミスター味っ子』界では珍しいタイプのライバルだったりします(←おにぎり対決の大河内さんも大概でしたが、初犯の大河内さんと違い、寿司虎さんは毎年妨害をして勝っては利権をむさぼっている重犯ですので、器が違います)。
 店構えも、海外のフリーダムなお寿司屋さんですら真っ青になりそうなカオスっぷりで、2020年の東京オリンピックに向けて開店された劇場型寿司屋<板前寿司 江戸>様のエキゾチックジャパンな内装が純和風に見えるレベル。
 もし『孤独のグルメ』の五郎さんが偶然通りがかっていたら、「うへーっ」「ちょっと無理があるんじゃないのか?」と絶対顔をしかめていたと思います;←見ようによっては独創的ともいえるので、もしかしたら寿司虎さんにはアートの才能があるのかもしれません)。
こちらが寿司虎の外観ですが…確かに悪趣味ですね;
 また、寿司虎さんは自分がトロや海苔を買い占めた結果、それに劣る代用品で勝負に出るしかなかった他店のお寿司を見て「ハハハ…!苦労のあとが忍ばれて涙ぐましいかぎりだな」と悪代官ばりの大笑いが出来る天性のサディストで、陽一君に「それもこれもみんなおまえのせいじゃないか」と責められても、「材料の仕入れもまた料理人の才覚の一つ!!しかも寿司はネタの出来が最も肝心な料理のひとつ」「新鮮なネタを選びとるルートを常に確保することがまず第一歩だ。その基本を怠ってうちの商売に因縁をつけるたぁそれこそ寿司屋の道理にもとるぜ!!」など、まさにどの口が言う的な正論をいけしゃあしゃあと言う始末。
 確かに、エッセイ『寿司屋のかみさん』シリーズのご主人も新人だった時に天然鯛を買おうとすると「あんた、こんな魚を使うのは十年早いよ」と言われた事があったり、今でも知識がないと割高で状態があまりよくない物を売られたりする事はちょくちょくあるそうなので、新鮮なネタを確保できない=それだけ力量不足と言えなくもないかもしれませんが…それを諸悪の根源に指摘されるのは腸が煮えくり返るような思いだったろうな~と陽一君に同情したものです…。

 しかし、「町内会でも隠然たる勢力を持っている」と磯源寿司さんから恐れられている割には審査員の人選には口出しできず、特に寿司虎贔屓の人が選ばれている様子もなかったので、実際は裸の王様状態でみんなから嫌われていたんだろうな…と考えると、ちょっぴりかわいそうな気もします;←表面上は従っているように見えていた町内会も、映画『七人の侍』に出てくる農民みたいに威勢がいい時は体よく利用し、落ち目になったら手の平返しして見捨てるという、したたかなお付き合いをしているに過ぎなかったかもしれないですね。まあ、寿司虎さんは侍ではなく成敗される野武士側なので自業自得ですが;)。
ずるい大人の正論交じりのうまい口実を聞き、悔しい思いをする陽一君
 こうして、散々邪魔をされながらも陽一君が諦めずに工夫を凝らして寿司コンテストに出したのが、今からご紹介する“味吉陽一特製握り寿司六種”です!
 実を言いますと、酢飯だけは陽一君のアイディアではなく、寿司虎さんが独自に編み出した秘密の酢飯だったりします(←陽一君があっさり解いて自分のものにしていましたが;)。 
 何種類かブレンドしたお米を昆布と一緒に炊き込み、ほんの少量の塩とお酢を混ぜこむ事で砂糖なしでも自然な甘味が出る最高の酢飯に仕上がるとの事で、初見時は「砂糖をいれずに酢飯が作れるの?!」とびっくりしたものです。
 けれども、調べてみると大昔の江戸前寿司では酢飯に砂糖を使わないのは当たり前で、近代に入ってからは味覚の変化や価格の安定化、加えて砂糖を入れた方が冷めてもおいしいという事もあって砂糖入りの酢飯が常識となったみたいで、現代でもお酢や調味料に工夫してお酢だけの酢飯を作っているご家庭もあると知り、なるほどな~と思いました。

 あと、使う醤油は一般家庭に置いてある生醤油ではなく、お酒・みりん・醤油・お水などを少し煮詰めて作る煮切り醤油!
 何でも、普通の醤油だと味が強すぎて魚の味が分かりにくくなる為、大抵のお寿司屋さんでは自家製の煮切り醤油が出されるのだそうで、何とあの回転寿司でも業者製とはいえ煮切り醤油を使っているのだとか←むしろ、何で寿司虎さんや磯源寿司さんが今まで使っていなかったのか不思議)。
 陽一君の場合、そこにガリを漬けて仕上げ直前に刷毛代わりにしてお寿司に塗ってもらい、より風味ある味わいにして提供していました。
昆布を炊き込んで甘味を出し、塩でさらに甘くさせた砂糖抜きの酢飯!煮切り醤油にがりを漬け込み、刷毛代わりにして寿司に味付けしていました
 そして肝心のネタですが、作中では合計九種類のお寿司が完成図に載っていたものの、どんな工夫をしているのか詳しく語られているのは六種類のみでしたので、当ブログではそれらだけを取り上げていこうと思います。

 一つ目&二つ目は、海苔を買占められて窮地に陥った陽一君が、海苔以上に美味しい巻物を作るために発明したかつお節シートで作った、“かっぱ巻き”と“マグロ軍艦”!
 通常、海苔を使わず巻物を作るとなると思い浮かぶのは青菜や昆布ですが、前者は「海苔巻きのような磯の香りがない」、後者は「海苔巻き特有のパリッとした感じがない」とダメ出しされ、途方に暮れます(←海外では「ペーパーみたい」と嫌われている海苔ですが、例え裏巻きにする方法でも世界に広まったということは、それだけ寿司において重要な役割を果たしているからなんだろうなと思います)。
 そこを陽一君は、何とかつお節を町工場でシート状に加工して海苔代わりに使うという驚きの方法で「歯ざわり良く海の香りに満ちている」巻物を作ることに成功したのでした。
 といってもそのまま普通に巻いて終わりにしないのが陽一君流で、“かっぱ巻き”はきゅうりを千切りにして回りに梅じそをまぶしてから巻いたり、“マグロ軍艦”はマグロの赤身寿司の周りにかつお節シートを巻いて軍艦風にしてから上にとろろをかけたりと遊び心満点でした。

 三つ目は、トロを買い占められてもくじけず生食用の霜降り牛肉を使って作った、“牛肉寿司”←ちなみに、買占めを知ったのは真夜中だったのですが、いきなりお店を飛び出したかと思うとすぐこのお肉を持って戻ってきました。結局最後までどこで買ったのかは謎で、「まさか『アウターゾーン』的な世界で手に入れた闇肉…?」と未だに不気味に思うシーンです;)!
 最上のトロと味わいが似ている霜降り牛肉でトロ同然の満足感を与え、脂のしつこさはきゅうりの薄切りを間に挟んでさっぱりさせるのがミソだと作中で説明されてました。
かつお節を一枚のシート状に成型し、巻物や軍艦に仕立てます!刻んだ梅じそと千切りきゅうりを使ったかっぱ巻きトロを差し押さえられましたが、最高の牛肉で代用して解決
 四つ目は、見た目にも美しく子どもでも食べやすい一口サイズに仕立てる為に陽一君が考案した、“赤貝の細工寿司”!
 半分に切った赤貝と酢飯をボール状に握った物を花びらに、裏漉しした卵の黄身と酢飯をボール状に握った物を花芯に見立て、まるで紅梅の花のように美しく仕上げた細工寿司で、会場からも歓声が上がってました。

 五つ目は、現在お寿司屋さんで主流のすり身を入れてカステラ状に焼き上げる厚焼き卵や、出汁巻き卵とは一味違う“かしわ卵”!
 魚のすり身や片栗粉みたいな粉物を一切入れず、卵本来の味を引き立てる味付けをして極々薄く焼き上げ、柏餅みたいに酢飯を包み込むシンプルなお寿司で、昔はあちこちで見られたものの今では絶滅寸前の卵焼きとの事。
 茶飯の知識といい、変わり揚げの知識といい、かしわ卵の知識といい博識なので、こう見えて陽一君は実はかなりの勉強家なのかな?と思います(←肉屋のおじさんの証言だと、学校の成績はまずまずみたいですが;)。

 六つ目は、寿司虎さんの東京湾で獲れた小ぶりな高級穴子ほどではない品質の穴子でも対抗できるようにと陽一君がひと手間加えた“穴子寿司”!
 穴子自体はごく普通のツメを塗った白焼きタイプですが、酢飯に山椒の実の塩漬けを散りばめて鮮やかなアクセントを付け加え、塩味と甘味の対比をはっきりさせる事でネタの弱点を補ったと語っていました。 
紅梅を象った赤貝と黄身の細工すしの見事さに絶句!現在ではすっかり廃れている柏玉子も復活させますアナゴ寿司の酢飯には、実山椒を散らしてアクセントを!
 「本当に自分に作れるだろうか…」とずっと迷っていたのですが、最近前々から探していたある材料が手に入り、「よーしやってみるか!!」と一念発起しました。
 作中には大体の材料とレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、砂糖を使わない酢飯作り。
 研いで通常通りの水加減をしたブレンド米入りの炊飯器へ出汁昆布を加え、約一時間程放置して水を吸わせた後、普通に炊きます(←昆布は惜しみなくたっぷり使う事をおすすめします。使い終わった昆布は今の季節だと、お鍋の具にすると楽に消費できます)。
 炊けたらすぐに寿司桶(又は大き目の平皿)へあけて塩を適量入れたお酢を回しかけ、しゃもじで切るようにしてさっくりと混ぜ合わせます。
 お米がお酢を充分に吸ったのを確認したら清潔な濡れ手ぬぐいを上から被せ、人肌くらいの温度になるまで少し冷ましておきます。
※お酢は甘味が強めで尖った酸味がない純りんご酢を主体に、酒粕を使った穀物酢と黒酢を少しずつ足して調節したものを使用しました。
味吉陽一特製握り寿司六種1
味吉陽一特製握り寿司六種2
味吉陽一特製握り寿司六種3
 次は、ガリ漬け煮切り醤油作り。
 小鍋にお酒とみりんを入れて強火にかけ、アルコール分を飛ばしたら醤油と少量のお水を入れてさらに煮立て、数十秒沸騰させたらすぐに火を消して別の容器に移します。
 荒熱が取れたらしっかり漬け汁を切ったガリを投入し、そのまま冷蔵庫で冷まします。
味吉陽一特製握り寿司六種4
味吉陽一特製握り寿司六種5
 ここまできたら、いよいよ握り寿司作り。
 最初は、“穴子寿司”の用意。
 一貫分に握った酢飯に実山椒(←原作では塩漬けでしたが、当管理人は塩漬けを醤油味に煮た自家製薬味を使用してます。再現度が低くてすみません)をあちこちにちりばめ、ツメを薄く塗った穴子を乗せて握ります。
※穴子と赤貝はお店でどうしても手に入らなかったので、恥ずかしながら回転寿司で買ってきたネタを追いはぎして使用しましたorz。余った酢飯は、家にあった海苔と納豆で手巻き寿司にして美味しく頂きました。
味吉陽一特製握り寿司六種6
味吉陽一特製握り寿司六種7
 二番目は、“赤貝の細工寿司”の用意。
 ぎゅっと水気を絞っておいた調理用ガーゼに、甘酢にくぐらせて半分に切った後飾り包丁をいれた赤貝と、小さくボール状に握った酢飯を乗せてねじりこみ、丸型に握ります。
 これを、五個作っておきます。
味吉陽一特製握り寿司六種8
味吉陽一特製握り寿司六種9
 続けて、茹でて裏漉しした卵の黄身と小さくボール状に握った酢飯をガーゼに乗せてねじりつつ握り、先に準備した五個の赤貝寿司と一緒に紅梅の形になるよう先に大皿へ盛り付けておきます。
味吉陽一特製握り寿司六種10
味吉陽一特製握り寿司六種11
 三番目は、“かしわ卵”の用意。
 ボウルへ卵、みりん、砂糖、塩、醤油、出汁を入れてよくかき混ぜ、漉し器にかけてサラッとした液体状にします(←砂糖と醤油と出汁はほんのちょっとずつにし、卵の味を活かすようにします)。
 この卵液を、油を少し敷いて熱しておいたフライパンに流し込んでごく薄く焼き、破かないよう注意しながらひっくり返して裏面もさっと火を通します。
 焦がさぬよう程よく焼いたらまな板へ移し、包丁で四角く切り分け、一貫分に握った酢飯の上にそっと乗せます。
こちらのサイト様に書いてあるレシピを参考にしました。
味吉陽一特製握り寿司六種12
味吉陽一特製握り寿司六種13
味吉陽一特製握り寿司六種14
 四番目は、かつお節シートを使った“かっぱ巻き”の用意。
 かつお節シートだけは流石に自作する訳にはいかず、どうしようかな~と前々から悩んでいたのですが、ネット検索した所、何とにんべん様がかつお節を海苔のようにシート状にした商品・手巻きかつおを販売していらっしゃった為、すぐに入手しました!
 このかつお節シートを巻きすに敷き、その上に酢飯を薄く広げます(←のりしろ用の空白を作らないと、うまく巻き終えずにぱっくりと切腹してしまいますので気をつけて下さい)。
味吉陽一特製握り寿司六種15
味吉陽一特製握り寿司六種16
 そこへ細かく刻んだ梅じそと細く切ったきゅうりを乗せ、クルクルッと巻いて細巻きに仕立て、しばらく巻きすを巻いた状態のまま放置してなじませます。
 酢飯とかつお節シートがなじんで成型できたら取り出し、一口サイズに切ります。
味吉陽一特製握り寿司六種17
味吉陽一特製握り寿司六種18
味吉陽一特製握り寿司六種19
 五番目は、同じくかつお節シートを使った“マグロ軍艦”の用意。
 一巻分の酢飯にマグロの赤身を乗せて握り、周りに軍艦用のサイズに切ったかつお節シートを巻きつけます(←巻き終わりは酢飯をのり代わりにしてくっつけるとうまくいきます)。
 この上に、皮をむいてすりおろした山芋をたっぷりかけておきます。
味吉陽一特製握り寿司六種20
味吉陽一特製握り寿司六種21
 六番目は、“牛肉寿司”の用意。
 生食用として売られている牛霜降り肉の刺身を準備し、極薄にスライスしたきゅうりを間に挟んで一貫分の酢飯と共に優しく握りこみます。
※今回、こちらのサイト様で生食の牛刺し用として売られている安全で良質なお肉を使用しました。余った牛刺しは付属のタレで頂きましたが、今や幻となりつつある焼肉屋の上質な牛刺しそのもののとろけるような美味しさで感動しました。赤身に見える部分にもちゃんと脂がさしていています。
味吉陽一特製握り寿司六種22
味吉陽一特製握り寿司六種23
 握り終えたお寿司を全種類大皿へ盛り付け、最後にガリ漬け煮切り醤油が入った小皿を添えれば“味吉陽一特製握り寿司六種”の完成です!
味吉陽一特製握り寿司六種24
 似たような色合いで少し地味な見た目になってしまいましたが、『ミスター味っ子』ファンとしては感無量な一皿で、不覚にも写真を撮りながら胸がジーンと熱くなりました;。
 砂糖を使わなくて本当に酢飯になるのかとか、ガリを煮切り醤油に漬けたら辛くならないかとか、かつお節シートはどんな味がするのかとか色々疑問はありますが、自分の直感を信じて食べてみようと思います!
味吉陽一特製握り寿司六種25
 それでは、ガリを刷毛代わりに煮切り醤油をつけていざ実食!
 いっただっきま~すっ!
味吉陽一特製握り寿司六種26


 さて、味の感想は…今までにない斬新な創作寿司の数々に感心!ネタかと思いきやどれも正統派に近い美味さでした!
 ガリを漬けた煮きり醤油は甘ったるくも酸っぱくもなく、醤油をさらにこっくりとまろやかに熟成させたような奥深い塩気で、ネタや酢飯と抜群の相性です。
 みりんの落ち着いた甘味とガリのフレッシュな辛味が僅かに舌を走り、醤油のコクをくっきりと浮かび上がらせる感じで、例えるなら「辛めの濃口旨味醤油」というイメージでした(←近い物を挙げるならたまり醤油ですが、こちらはそこまで甘くないのが最大の違いです)。

 一番意外だったのは酢飯で、りんご酢のフルーティーで優しい甘酸っぱさと、昆布の滋味深い出汁が効いた自然な甘味が塩によってさらに引き立っており、砂糖なしでも充分酢飯として成り立っています。
 確かに砂糖を使った酢飯よりも甘さは弱くさっぱりしていますが、その分お米の個性がしっかり分かる上に後口がすっきりして非常にキレがいいのが特徴的で、ネタが持つ甘味を100%活かせる所が気に入りました。

 赤貝の細工寿司は、シコシコした弾力やコリコリの歯応えを併せ持つ身と、鮮烈な磯の風味や潮の旨味が際立つ赤貝を、煮きり醤油のコクが臭みを消しつつワンランク上の味に仕立てており、まさに「江戸前の仕事」を感じる美味しさです。
 裏漉しした黄身の寿司は口にした途端、一瞬の内にパラッとほどけて酢飯と調和し、ホクホクした淡い甘さの余韻が残るのが日常では味わえない儚げな味わいで、うっとりします。
 お寿司と言うより、もはや懐石料理に出てもおかしくない一品でした。
味吉陽一特製握り寿司六種27
 かしわ卵は、透けそうなくらい薄い卵ですっぽり覆われた酢飯はまるで高級和菓子みたいに品がよく、厚みがなくても出汁や甘味が主張してくるのに驚きます。
 クレープや薄焼き卵よりもずっと薄いのですが、粉類が全く入っていないせいか凄まじく口溶けがよくて羽のように軽く、卵の自然な旨味を雅やかに楽めます。
 茶巾寿司のような華はないですが、卵が主役の素朴な心和む味わいで、「極薄の出汁巻き玉子」というイメージでした。
味吉陽一特製握り寿司六種28
 あと、肝心のかつお節シートですが…残念ながら海苔の代用になるパリッと感はありませんでした;。
 どちらかと言えばほわほわパフッとした口当たりで、握って時間が経った海苔や昆布巻きのようにしんなりと酢飯に馴染む感じです。
 ただ、陽一くんの言う通りかつお節が持つ強烈な旨味エキスと香ばしさは他のどんな巻物にもない特色で、淡白な具にインパクトをつけるにはうってつけの新素材だと思いました。
 そのままだとイマイチありきたりになってしまう具も、かつお節でバシッと辛口に味が決まるのが秀逸です(←今回のきゅうりやとろろマグロは勿論、いかオクラ・まぐタク・納豆が合いそうでした)。
 
 かっぱ巻きは、きゅうりを千切りにする事によってシャキシャキ感がぐっと増し、清涼感が何倍にも強調されています。
 梅干しよりも酸味が和らいでいる梅じそを使用している為そこまで酸っぱくはなく、それでいて程よくさっぱりさせる上品な巻物で、かつお節と煮切り醤油によって梅おかかをもっと贅沢にしたような複雑な味付けになっているのがよかったです。

 マグロ軍艦は、あっさりしたマグロの赤身がとろろによってボリューム感が出ているのが美味で、かつお節から出る濃密な出汁成分で味が膨らみ、普通の山かけよりもがっつり濃くなってとろろご飯を彷彿とさせる旨さに仕上がっていました。
 煮きり醤油と合わさってほんわりした味がキリリと引き締まり、ヅケ風に味付けされたマグロが酢飯にぴったりです。
味吉陽一特製握り寿司六種29
 牛肉寿司は、さすがにトロ同様とはいかないものの匹敵する程柔らかく、魚肉にはないしなやかな弾力とじわりじわりと時間をかけてゆるやかに溶けていく優雅な口当たりが印象的。
 噛むごとにトロ以上にズシンとくる力強い肉の旨味と、濃厚かつ繊細な脂のコクが少しずつとろけ出し、それを酢飯ががっちり受け止めて口一杯に広がるのが最高で、やはり最上の牛肉とトロは違うようでどこか通じる物があるな~と感心しました。
 あ、挟まっているきゅうりはパリパリと砕けて食感にアクセントを与えているのは良かったですが…脂分を消す役割はどうやら荷が重かったようです;(←『北斗の拳』に出てきた「ないアルの修羅」とラオウ並に力量の差がありました)。

 穴子寿司は、ねっとり甘辛いフワトロ穴子が酢飯とふんわり崩れた後、山椒の清々しい香気と若々しい辛さが鼻をスーっと抜け、適度な塩気が穴子とツメの存在感を際立たせているのがナイスでした。
 少し舌に痺れるような癖が残りますが、口の中を一気にクリアにしてシャッキリさせる為、コースの途中に緩急をつけるのにうってつけだと思います。
味吉陽一特製握り寿司六種30


 本音を言いますと、「これはさすがに…」というネタがあるのではないかと危惧していたのですが、実際にして作ってみると拍子抜けするくらいおいしかったです。
 中でも、砂糖を使わない酢飯やガリ漬け煮切り醤油は日常でも気軽に使える感じでよかったので、家で海鮮丼を作る時はちょくちょく作りたいな~と思いました。


P.S.
 無記名さん、無記名さん、無記名さん、kawajunさん、コメントを下さりありがとうございます。
 こちらの記事だけまとめ記事にあるにも関わらず表示されなかったのは、記事を数日後に自動的にアップするまで未表示にする予約投稿という扱いにし、後でまとめに加えるのを忘れてしまわないよう、一足早くまとめ記事に表記していたからです。
 今後も恐らく同じことがあると思います、紛らわしくてすみません。
 kawajunさん、お気遣いして下さってわざわざコメント欄にてご説明頂き、ありがとうございます。


●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

Comment

2018.10.27 Sat 20:59  |  はじめまして

ずっと読んでましたが、初めてコメントします。
更新再開してもう半年以上になりましたね。長いこと見れない期間があって寂しかったのですが、いいペースで更新され続けていて嬉しいです^ ^諦めずに時々見に来ていた甲斐がありました。
これからも楽しみにしてますねー

  • #-
  • URL

2018.10.28 Sun 22:23  |  

 まぐろのおはぎは「すし匠」さんの名物だったような…

 自分もにんべんのかつお節シートを見つけた瞬間作らねば!と
磯源の中では一番手に入らない物だと思ってたので興奮して作りました。
シャリに巻いて時間がたつとシートが分解してしまい
「巻物は出す直前に巻かねばならないのだ」という将太の寿司の
1シーンが脳裏に…(´・ω・`)

 味っ子寿司といえば婚礼料理の手毬寿司もありますが
トロの様な茗荷寿司がどうにもうまくいかないので
是非是非再現プロとして挑戦してみてください!
(うまくいったら真似して作りたいので(;´Д`))

  • #LSrZWcZg
  • ゴロー
  • URL
  • Edit

2018.10.30 Tue 00:16  |  赤貝と酢飯!

あんこさん、こんばんは。いつも楽しく拝見しています。
ついに「味っ子」お寿司の再現!寿司ネタでは赤貝が大好きなので、飴色の煮切り醤油からのぞく、ルビー色の赤貝の花寿司がたまりません(*´Д`*) 小ぶりな手鞠寿司の赤貝をひと口でパクリ。シャリサクッとした歯応えと涼しげな磯の香りと身の甘味が想像されて、もう…。合間につまむ、卵の黄身寿司も美味しそう。
それと、砂糖を使わないシャリもすごいですね。実際に確かめて本当に美味しいと判る。一方で鰹節シートは少し残念でしたが、こちらも試したことで得られる有意義な感想です。
これからも再現料理記事、楽しみにしています。では、また〜。

  • #jkZ6tFIc
  • kawajun
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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


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 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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