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『銀平飯科帳』の“深川風カキフライ”を再現!

 個人的に、「生食文化=日本」くらいに思っていたのですが、殻から直接カキをツルッと食べるやり方は海外から輸入して以降行われるようになったみたいで、びっくりしました。
 調べた所、何と古代ローマの時代から養殖して生食していたそうで、兵士達が侵略した土地で略奪しないで済むよう、片っ端からカキを海にばら撒いて自給自足する食糧にしていたといわれるほど。
 手間をかけて料理をするのが基本の美食大国フランスでも、「カキはそのままが一番旨い」「海が既に調理してくれている」と公言しているシェフが多いみたいで、何でカキだけそんなに特別扱いされているんだろう…と不思議に思ったものです。

 どうも、北海道厚岸産の生ガキを食べた時は「こんなミルキーなカキがこの世にあったのか」と感動した記憶がある当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『銀平飯科帳』にて銀次さんが定番カキ料理を江戸前にアレンジして作った“深川風カキフライ”です!
深川風カキフライ図
 前回より大分時間が経ち、初めはあまりの不思議体験に戸惑っていた銀次さんも、今やすっかり江戸時代と現代を行き来する二重生活が定着した頃の事。
 銀次さんの居酒屋へ顔を出しては的確かつ辛口なコメントをしてくる為、しょっちゅう喧嘩になる昔からの幼馴染・平賀さんが、アメリカから一時帰国したお兄さんと一緒に来店します。
 平賀さんは実家の老舗蕎麦屋を継いでいる身ですが、お兄さんは昔から勉強好きで東大卒業後、「蕎麦屋なんか古臭い」と言ってニューヨークでIT企業を立ち上げ、バリバリ働いているという筋金入りの秀才だと語られていました。
 確かにお寿司や天ぷらに比べたらまだまだマイナーかも知れませんが、近年グルテンフリーがブームのアメリカで十割蕎麦はヘルシーフード「Soba」として急速に広まってきており、ニューヨークでも蕎麦専門店が何件もオープンしているみたいですので、将来お兄さんがアメリカに蕎麦を本格的に広める橋渡し役になってくれたら面白いだろうな…と思ったのを覚えています←実際、「坂本龍馬が女性を連れて行きたい店」という斬新なコンセプトながらも、まがい物ではないちゃんとした手打ち蕎麦と創作料理を出して勝負している日本人オーナーの蕎麦屋が成功しているみたいですので、ビジネスとして非常にやりがいがあるのでは?と感じました)。

 このように、時流を先取りして常に進歩しようとするお兄さんにとって、伝統を守ろうとするあまり思い切った挑戦を出来ずにいる平賀さんの姿は歯がゆかったらしく、厚岸湾のカキを使用した新定番・牡蠣蕎麦に対して「江戸前の蕎麦屋が、カキを使う必然性がどこにある?」「江戸前で牡蠣なんて獲れないだろ?」「それにカキを食うなら、生ガキにレモンを絞っただけのほうがはるかに旨いだろ?」「カキにたっぷり含まれているタウリンは、レモンのビタミンCで吸収がよくなる。カキとレモンは理にかなった食べ方でもあるんだ」と厳しく突っ込み、平賀さんをムスッとさせていました(←この理路整然とした説明にぐうの音も出ないという図式、『美味しんぼ』の海原雄山氏と山岡さんの会話に通じるものがあると思います;)。

 この場面を見て、普段平賀さんに言い負かされてばかりで悔しい思いをしている銀次さんは「いししし…いつもオレが平賀にやられてることをやられてる♡」と内心含み笑いをするのですが、うっかり普通のカキフライを出して「銀次、オレの話を聞いてなかったのか?」「江戸風創作料理の店で、カキフライを出す必然性はなんだ?こんなんでよく店を続けられるなぁ…」と大砲の照準がすっかり銀次さんに変わり、集中砲火を浴びてしまいます。
 その上、矛先が別に向いて余裕が生まれた平賀さんから「ふむ、工夫のないタルタルソースのおかげで、ただの洋食になってるな…」(←心なしか、いつもよりも勢いがないのが泣けてきますが;)と援護射撃までされ、あっという間に追い詰められていましたorz。
 このシーンを見ると、『プライベート・ライアン』に出てくる某兵士がヘルメットに弾が当たらずに済み、ほっとしてヘルメットを外した瞬間ヘッドショットされたシーンを思い出します…戦場も喧嘩もいつどこで流れ弾が当たるか分かりませんから、油断大敵ですね!
北海道産の牡蠣をわざわざ江戸前蕎麦に加える意味はあるのかと指摘
 そして翌日、「そういや江戸でカキは食べられていたのかな?っていうか、江戸にカキはあったのか?」という素朴な疑問を抱いた銀次さんは、いつも通り井戸を通って江戸時代へタイムスリップし、平蔵さんに聞くことにします。
 すると驚くべき事に、江戸時代ではカキは江戸湾で大量に養殖されている名産品だった事が分かり、平蔵さんの案内で色んなカキ料理を食べ歩く事になっていました←何と、大正時代に江戸はカキの生産量日本一に輝いていたとの事!もし今でも東京で食用カキが大量に獲れていたら、ひろしまオイスターロードのような地産地消タイプのカキ小屋が、沿岸沿いに沢山並んで観光名所になっていたかもしれませんね)。
 この時、平蔵さんは大阪発祥のカキ料理専門店と、江戸っ子好みのカキ料理専門店の二箇所に銀次さんを連れて行ったのですが、大阪風だとカキの土手鍋・カキの酢押し・カキの吸い物・カキめしといった様々な調味料を合わせて趣向を凝らした物、江戸風だと焼きガキやカキの時雨煮など極力手を加えず醤油主体のシンプルな味付けにした物が主流で、味の好みがここまで異なるなんて面白いな~と感じました。

 この違いは『みをつくし料理帖』でも説明されていましたが、江戸では醤油のしっかりした塩気と風味こそが味の要で、それ以外はどんな美味しい味付けでも物足りない方が多かったんじゃないかと思います(←『美味しんぼ』でも山岡さんは「牛肉に一番良く合うソースは醤油」と断言してますし、肉・魚介・野菜何でもござれな醤油は本当に最強な調味料ですね。まあ、魯山人みたいにパリの一流レストランで出されたソースを拒否し、わざわざ持参したわさび醤油で鴨を食べる所までいったらさすがにやりすぎですが;)。
 それに、カキと醤油は温かくなると美味しくなる温旨系有機酸同士の組み合わせなので、そういう意味でも焼きガキはまさにうってつけの料理なのかもしれません。
何とその昔、江戸は牡蠣の生産量で一位になったことがあるとか!やはり江戸っ子は、味噌よりも醤油味の牡蠣の方がお好みのようです
 こうして、新しい江戸前風創作牡蠣料理のアイディアを掴んだ銀次さんは現代へ戻り、数日後の夜に平賀さんやお兄さんを呼びます。
 そして、「日本でも、江戸時代の人たちはたくさん食べてたんですよ」とカキと江戸の薀蓄を語りつつ、“殻つきカキの酒蒸し”(←『美味しんぼ』に出てきた“カキの清蒸風”を江戸前風にした感じで、これも美味しそうでした)を突き出しとして出し、感心されます。
 その際、銀次さんが「でもこのシンプルな味付けが続くと、変化球の料理も食べたくなるよね?」と言い、真打ちとして登場させたのがこの“深川風カキフライ”です!
 作り方は簡単で、醤油・お酒・みりん・しょうがの味付けで作ったカキの時雨煮に天ぷら衣をつけて高温の油でふっくら揚げ、きゅうりの糠漬けと醤油で作った江戸前タルタルソースを添えたら出来上がりです
 ポイントは、カキの時雨煮は通常のレシピよりもかなり早くにカキを引き上げて極々レア状態に仕上げること、冷えた時雨煮のタレにカキを漬け込んでレアのまま味を染みこませること、揚げ油は100%ごま油を使用してカラッと揚げることの三点で、こうすると江戸っ子好みの和の味わいになると語られていました。

 初見時は「天ぷらにタルタル?」といまいち想像できませんでしたが、考えてみたら似たような衣の鶏天やチキン南蛮にもタルタルソースは合いますし、意外としっくりくる組み合わせなのかもしれませんマヨネーズで天ぷら衣がサクサクになるという裏技もありますし、基本的に相性がいいんでしょうね)。
 平賀さん曰く、「カキの旨みが和風に凝縮されたような旨さだ!」だそうで、お兄さんも「こりゃあ旨い!!」「タルタルソースなのに天ぷらに妙に合うぞ!!」と驚いていました。
 銀次さんとしては、自分の事より平賀さんの名誉回復をしたかったらしく、「今は東京湾のカキは食べられないけど、江戸前の蕎麦屋がカキを出すって発想はありなんじゃないですかね?」とさりげなくフォローしており、お兄さんから内心「いい友人を持ったな…」とほのぼのされていました。
キュウリのぬか漬けと醤油で作る江戸前タルタルソース!
 身が大きくてぷりぷりした質のいいカキが手に入ったので、再現することにしました。
 作中には大体の材料と作り方が記載されていましたので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、レアのカキの時雨煮作り。
 お鍋(又はフライパン)へお酒、みりん、醤油、少量のおろししょうがを入れて強火でさっと沸騰させ、そこへ軽く水洗いしておいた生カキを投入します。
 カキの表面に煮汁がなじむ数十秒くらいで手早くカキを引き上げ、煮汁だけそのまま煮詰めていき、煮汁がトロッとして量が減ってきたら火を消して荒熱を取ります。
 煮汁が冷めたら先程のカキが入った器に加えて混ぜ合わせ、数時間かけて味をなじませます(←こうすると、レア状態のまま味が内側までしっかり染みてくれます)。
深川風カキフライ1
深川風カキフライ2
深川風カキフライ3
 次は、揚げ作業。
 太白純正ごま油と純正ごま油を2:1の割合で合わせた揚げ油を用意し、約180度くらいまで熱しておきます。
 この揚げ油へ、汁気をしっかりきってから小麦粉をまぶし、氷水でキンキンに冷やした天ぷら衣をつけたカキを順々に落とし、衣が固まるまで揚げていきます。
 レアの時雨煮にした時点で少しは火が通っていますので、ほんの一~二分も揚げれば大丈夫です(←どうしても心配な方は、この時点でしっかり火を通して下さい)。
 揚がったらキッチンペーパー等に引き上げ、余計な油分を切ります。
深川風カキフライ4
深川風カキフライ5
深川風カキフライ6
 その間、江戸前タルタルソース作り。
 ボウルへみじん切りにした糠漬けのきゅうり、マヨネーズ、少量の醤油を入れ、スプーン等でしっかり混ぜ合わせて小皿へ移しておきます。
※糠漬けきゅうりは余分な水分を搾ってから加えると、口当たりのいいソースになります。
深川風カキフライ7
深川風カキフライ8
 千切りキャベツを乗せた大皿へ先程のカキを盛り付け、傍らに江戸前タルタルソースを添えれば“深川風カキフライ”の完成です!
深川風カキフライ9
 カキから衣越しに磯の香りがふんわりと香り、食欲をそそります。
 今までカキを揚げる時は生の状態からしか揚げてこなかったのでちょっと心配ですが、銀次さんを信じて試しに食べてみようと思います!
深川風カキフライ10
 それでは、江戸前タルタルソースをかけていざ実食!
 いっただっきまーす!
深川風カキフライ11


 さて、味の感想は…殻の中でグツグツ煮え立つカキに、醤油をちょいとたらした物に通じるものがある美味さ!醤油がカキを引き立てており、正直カキフライよりもカキの味をストレートに堪能できる気がします!
 レアを心掛けたとはいえ、二度も調理したら火が通りすぎないか不安でしたが、フライよりも揚げ時間が短く衣が薄い天ぷらにしたせいか、全然硬くありません。
 生のまま使うよりも、かえってカキの旨味たっぷりのおつゆが内側に封じ込められてこぼれにくくなっており、時間がたっても湿気てデロデロにならず最後までカラッとした衣を保てていました。
 100%ゴマ油で揚げたおかげで、他の油にはない香り高い香ばしさと、ゴマ由来のこってりしたコクがたまらない旨味が濃い衣に揚がっており、それでいてサクサクッと軽く油っこくないのが特徴的。
 一口かぶりつくと、さっくりした薄衣から半熟のカキがトロッと舌に溢れ出し、カキの濃厚でクリーミーな潮のエキスとゴマ油の風味で口の中が一杯になります。
 普通の天ぷらと違うのは、薄すぎずそれでいて噛むごとにじわじわと染み出てくる、辛口の味わい深い出汁醤油のような下味がついている事で、例えるとするなら「江戸前焼きガキ風天ぷら」というイメージでした。
 みりんの上品な甘さと、しょうがのキリリとした風味がほのかに漂うのが味の輪郭をはっきりさせており、そのまま食べても充分おいしいです。
 あと、江戸前タルタルソースは、糠漬け特有の後引く酸味が効いた意外とさっぱりしたマヨソースで、漬け物じゃないと出ないきゅうりのパリパリシャキッとした爽やかな歯触りがいいアクセントになっていました。
 糠の乳酸菌が作用しているせいか、まるでヨーグルトをいれたようなまったりマイルドな味付けになっており、ピクルスみたいにきつい酸っぱさではないので食べやすかったです。


 火を通すカキ料理といえばカキフライか焼きカキ派でしたが、カキ天ぷらも甲乙つけがたいくらい美味しいな~と唸りました。
 江戸前タルタルソースも意外に天ぷらと合いましたし、他のフライ物にも使えそうな印象を受けたので、日常的に重宝しそうなレシピです。


P.S.
 もさん、ゴローさん、コメントして下さりありがとうございます。


●出典)『銀平飯科帳』 河合単/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

Comment

2018.10.30 Tue 00:28  |  牡蠣の季節

あんこさん、こんばんは。いつも楽しく拝見しています。コメント連投失礼です。
いよいよ牡蠣の美味しくなる季節ですね。牡蠣と言えば、以前に福岡の料理店で「岩牡蠣のフライ」を食べました。岩牡蠣の旬の夏だったかと思います。通常の牡蠣より大ぶりな岩牡蠣のフライはド迫力の食べ応えで、口いっぱいにかぶりついて噛み締めると広がる牡蠣の身の旨味、ジューシーなエキスが溢れ、うっとりしたのを覚えています。もう一度食べたいなぁ(*´Д`*)
生牡蠣のツルッとした食感と爽やかな風味も良いですが、火を通した味もまた格別ですね。カキフライ、焼き牡蠣、牡蠣オムレツ、牡蠣ご飯、牡蠣のアヒージョ…。今回の記事の牡蠣の天ぷらも、火を通し過ぎないのでジューシーで良さそうです!
晩ごはんまだなので、書いててお腹が空きました〜。これからも再現料理記事楽しみにしています。では、また〜。

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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


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※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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