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『銀平飯科帳』の“銀次流出世スキヤキ”を再現!

 日本では高級魚として知られている鯛ですが、何と海外では下魚扱いされて好まれていないと知り、驚きました。
 アメリカでは「何でも食べる釣りゲーム用の魚」、イギリスでは「ユダヤの食う魚」、フランスでは「貪欲に食らいつく下魚」と呼ばれているようで、めでたい時に鯛を掲げて喜ぶ人々の画像がアップされると「何やってるんだろう?」と不思議な気持ちになる方もいるのだとか。
 淡白な味よりも濃い味の方が評価されるという海外ならではの事情もあるのでしょうが、おいしいのにここまでフルボッコにされている鯛を思うと不憫に感じると同時に、「鯛からすれば、食べられなくてありがたいのかもしれない…」と複雑な気持ちになったものです。

 どうも、鯛の皮付きのお刺身がすきなのですが、最近なかなかお目にかかれなくて切ない想いをしている当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『銀平飯科帳』にて銀次さんが江戸時代で食べたあるお鍋をヒントにして現代で生み出した“銀次流出世スキヤキ”です!
銀次流出世スキヤキ図
 江戸時代に行っては「祖父の記した番付表をベースに、新しい飯科帳を作る」という目的がある半蔵さんと様々なお店を巡る銀次さんですが、タイムスリップに慣れてしばらく経った頃、もう一人の飯友ができます。
 その人物とは、何と江戸幕府第11代将軍・徳川家斉
 歴代の征夷大将軍と比べても稀な五十年という長い在職期間中、途中まではよかったものの厳格すぎて成果があがらなくなった寛政の改革を終わらせ、「改革なんか上下ともに迷惑、あんなことやるものじゃない」という意思の元、よくも悪くも放任政策を取る事で江戸の町を活性化させ、浮世絵・滑稽本・歌舞伎・川柳を始めとする町人文化の最盛期を迎えさせた、終焉を迎えつつある江戸時代に最後の花を咲かせた立役者の一人でもあります。
 スケールこそ小さいですが、いい時期に放蕩三昧してそこそこ長生きした所といい、好色で子沢山な所といい、ルイ十五世みたいな生き方をした将軍で、ある意味最も恵まれたお殿様だったのでは?と思っています;(←後々、そのツケを真面目な跡継ぎ達が払わされる所までそっくりなのが、また何とも…orz)。

 史実では政治に無関心だったようですが、『銀平飯科帳』ではなかなかの名君っぷりで、作中では平蔵さんに「苦しかった幕府の財政を立て直し、火の消えたような江戸市中を一気に活気づかせた大英断!私から見れば、家康様と並ぶほど優れた君主である!」と絶賛されており、初めて登場した時も真面目そうな感じでした。
 しかし、城内で庶民に扮して焼き鳥焼きごっこをしている時、偶然銀次さんに出会って「食い物に下賤も高貴もないでしょ!あるのは旨いか不味いかだけ!」と言われたり、マグロ・鰻・天ぷらそばなどお城では禁じられている料理を実際食べて食に目覚め、生来のお茶目な面が出てきてからはどんどん陽気で柔軟な性格になっており、今では平蔵さんが表のヒロインとするなら裏のヒロインは家さん(=徳川家斉)と断言できるくらいかわいいキャラになっています。
 正確には現代の葉瑠さんも入れてトリプルヒロインと言うべきなんでしょうが、年々理不尽系言葉の暴力ヒロインと化して恋の脈も心停止状態ですので、もうダブルヒロインと認識していいと思います←当初はメインヒロイン役でも段々雲行きが怪しくなり、しれっと後出しヒロインと主人公がゴールインする『究極!!変態仮面』的終わり方って、最近はそう珍しくもないですし)。 
銀次さんのあっけらかんとした現代的食事観に感銘を受け、色んなものを食べることに!
 『暴れん坊将軍』の吉宗公は市井にはびこる悪を懲らしめる為に貧乏旗本の三男に姿を変えていましたが、家さんの場合は完全に庶民が愛する江戸グルメ食べ歩きが目的で、窓際族の下級武士に変装しては銀次さんと城下町を『ちい散歩』チックにぶらぶら歩き、将軍家ご法度の食材に舌鼓を打ったり町人達と交流を持ったりと、至極平和に江戸ライフを楽しんでいます。
 江戸時代が題材の作品だと、まるでお約束だと言わんばかりに斬り合いシーンが登場して人が死ぬストーリーが多いですが、今の所『銀平飯科帳』で活躍する刃物は包丁のみですので、ほのぼの見ることが出来ます(←『志村けんのバカ殿様』の城下町お忍びコントに近いのどかな雰囲気です。お色気シーンがないという最大の違いがありますが;)。
 史実では生姜と白牛酪(←チーズのような乳製品)が好物だったそうですが、作中では美味しければ何でも食べる好奇心旺盛な食いしん坊で、お城では毒見やら何やらで時間が経つ為食べられない出来立て料理を堪能しては感動していました。
 初めの内は「ワシが将軍だと知ってしまえば、今のような気楽な付き合いはできんじゃろう」という理由で銀次さんに身分を隠しており、いつバレるかヒヤヒヤしていましたが、ひょんな事がきっかけで将軍だとバレても「それはそれ、これはこれじゃない」「ま、ちょっと驚いたけど、オレ別に武士じゃないし。お城にいる時は将軍さんで、こっちでは家さんでいようよ!」と今まで通り友達付き合いが続いており、今ではすっかりツーカーの仲になっています(←大物なのか、図太いのか…;)。
家斉将軍こと家さんとはすっかりツーカーの仲の飯友になっています;四巻で正体がバレましたが、現代人の銀次さんはおかまいなしで交流続行してました
 今回ご紹介するのは、家さんとある料理屋で食べたブリの出世鍋(←よくあるしゃぶしゃぶタイプではなく、煎り焼きという技法で作られてました)を参考にし、銀次さんが現代で作った“銀次流出世スキヤキ”!
 作り方は簡単で、オリーブ油を入れて熱した鉄鍋ににんにくと玉ねぎを入れて焼き、割り下・バジル・トマトを入れて柔らかくなるまで煮込み、仕上げにブリの切り身を入れて火を通して豆苗を加えたら出来上がりです。
 ポイントは、ブリを入れる時は沸騰している時にすること、ブリと豆苗にはあんまり火を通しすぎないことの二点で、こうすると臭みのないジューシーなブリになると書かれていました。
 調べた所、トマトと醤油は旨味の元が同じグルタミン酸で、イノシン酸を多く含むブリを相乗効果で高めてくれる為非常に相性がいいみたいで、たまたまとはいえ見つけた銀次さんすごい!と感じました(←あと、醤油には酸味に丸みを与える特性があるので、酸っぱいトマトをマイルドにする効果もあるのだとか)。
 銀次さん曰く、「豆苗も、さやえんどうからグリーンピースと名を変える出世野菜だからな」という理由でこの組み合わせを思いついたそうで、それがトマトベースの醤油味にうまくハマってくれたようです。
使われる葉野菜が豆苗なのは、さやえんどうからグリーンピースに変わる出世野菜だから割り下とブリが合うのはブリの照り焼きなどからわかりますが、まさかトマトと合うとは…!
 脂の乗ったブリをお手頃価格で手に入れられたので、再現してみる事にしました。
 作中には大体のレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 ということで、レッツ再現調理!
 まずは、焼き作業。
 鉄鍋にオリーブ油をひいてみじん切りにしたにんにくを弱火で炒め、いい香りがしてきたらやや厚めの輪切りにした玉ねぎを入れ、両面をこんがり焼きます。
 玉ねぎが焼けてきたら、醤油、みりん、日本酒などで作った割り下を加え、手で千切った生バジルを投入して煮ます。
※当管理人のように鉄鍋をお持ちでない方は、仕上げて食べる直前までフライパンで調理し、最後の段階で土鍋へ移して頂く事をおすすめします。土鍋で一から調理する事もできなくもないですが、非常に焦げやすいので要注意です。
銀次流出世スキヤキ1
銀次流出世スキヤキ2
銀次流出世スキヤキ3
 割り下が沸騰してきたら小さくザク切りにした生トマトを加え、木ベラ等で押しつぶしながら煮込み、柔らかいペースト状になってきたらブリの切り身を入れてさらに煮込みます。
 ブリは骨をあらかじめ取り除いたり、ぐらぐら煮立っている時に入れた方が良いです(←弱火で少しずつ煮ると、臭みが出てしまうので気をつけてください)。
銀次流出世スキヤキ4
銀次流出世スキヤキ5
 ブリの身が程よく煮えてきたら食べやすく切っておいた豆苗を入れてさっと火を通し、急いでテーブルへ運べば“銀次流出世スキヤキ”の完成です!
銀次流出世スキヤキ6
 見た目が真っ赤なので一瞬激辛鍋に見間違えそうになりますが、何ともいえない甘やかな酸味を帯びた香りが漂う為、すぐに「トマト由来の色か」と分かって安心します。
 目にも鮮やかな豆苗の緑とトマトの赤の配色がキレイで、食欲をそそられます。
 トマト鍋自体は何度も見たり食べたりした事がありますが、それにブリや豆苗を使うのは初めてですので、どんな味がするのか楽しみです!
銀次流出世スキヤキ7
 それでは、出来立て熱々の内に取り分けていざ実食!
 いっただっきまーす!
銀次流出世スキヤキ8


 さて、感想は…魚と野菜だけとは思えぬボリューム感で美味し!ブリとトマトがここまで合うとはびっくりです!
 にんにくがガツンと効いたパワフルなイタリアン煮込みといったおいしさで、生トマトならではの爽やかでフレッシュな甘酸っぱさと、割下の熟成された醤油味が組み合わさる事により、まさにトマト味のすき焼きといった甘辛くて癖になる味付けに仕上がっています。
 トマトの密度が濃いのでスープとパスタソースの中間くらいのとろみがつき、ぶりから出たこってりした出汁、バジルのすっきりした香り、玉ねぎの優しい甘味が溶け込んだおつゆはとても奥深く濃厚で、カプリチョーザのトマトとにんにくのパスタから辛味を抜いた旨さにちょっと似ているな〜と思いました(←もしくはマリナーラ風)。
 基本、魚肉は煮るとどうしてもパサつきやすくスカスカな味になるケースが多いのですが、ブリは脂分が桁外れに多いせいか逆に獣肉のような力強い食べ応えに変化し、青魚界の大トロともいうべき豊潤なコクが口の中でとろけていくのがたまりません。
 例えるとするなら、飛びきり身ほぐれがよくて柔らかいあっさりした身質の鶏肉に、脂の旨味が濃い豚肉を足して二で割った感じの味で、マグロと匹敵するくらい火を通すと肉っぽいな〜と改めて実感です。
 ブリとトマトのエキスを吸って凝縮させたトロトロ玉ねぎは、すき焼きやネギマ鍋に入っている長ネギに似た醍醐味があり、煮込みというよりはちゃんと鍋の具っぽくなっているのが印象的でした。
 あと、すき焼きは砂糖たっぷりなのでどうしてもくどくなりがちなのが欠点ですが、こちらはトマトがベースだからか後口さっぱりで、そのせいかブリの臭みもほぼ消えて純粋な旨味の塊だけ頂けるようになっていたのがよかったです。
 豆苗の豆もやしを彷彿とさせるザクシャキした食感と、豆の生命力溢れる瑞々しい汁気もトマトやブリとぴったりで、個性的な具やスープに負けていませんでした。


 夢中になってスープと具を全て平らげてしまったのでこの時は無理でしたが、残ったスープに茹でたてのパスタを絡めたらさぞかし絶品だったはずです! 
 豆苗はそのままだとなかなか箸が進みませんが、このお鍋にくぐらせると本当にいくらでも入る感じで、追い豆苗を何度もしてしまったほどでした。
 普段、そこまで魚好きという訳でもない夫もおいしいと言っていっぱい食べていましたので、ブリが好きな方もそうでない方にも是非おすすめしたい調理法です。


P.S.
 恭さん、無記名さん、無記名さん、コメントを下さりありがとうございます。


●出典)『銀平飯科帳』2巻 河合単/小学館
     『銀平飯科帳』3巻 河合単/小学館
     『銀平飯科帳』4巻 河合単/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。

Comment

2019.02.08 Fri 03:22  |  鯛といえば

あんこさん、こんばんは。いつも楽しく拝見しています。
鯛といえば、銀次さんが家さんが将軍様だと知った大食い大会で、ご飯のお供に銀次さん作の「鯛味噌」が登場しましたね。甘辛く炒り焼き、ほぐした鯛の身を味噌や山椒などと混ぜた鯛味噌は、如何にもご飯が進みそうでしたねー。
さて、鰤はお刺身だけでなく火を通してもぎゅっとした歯ごたえがあって美味しい魚ですね。照り焼きがあるように甘辛味にも良く合う。トマトの酸味が加わった今回の料理はご飯だけでなくお酒のアテにもいい感じ。ちょっと作りたくなりました。
これからも再現料理記事、楽しみにしています。では、また〜。

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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『どんぶり委員長』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『ミスター味っ子』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『BAR・レモンハート』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
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 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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