『キングスウヰーツ』の“想い出のミルフィーユ”を再現!

 先日、『マコちゃん絵日記』4巻はぬいぐるみ付きの限定版があった事を初めて知り、よく調べずもせずに通常版を買った事をものすごく後悔しました…orz(百体限定で、もう完売との事)。作中のあるキャラ同様、思わず衝動的に切腹したくなってしまいます(´・ω・`)。こうなったら、もう自分で自作するしかないか…と考えている今日この頃です。
 どうも、不器用で面倒くさがり屋な性質が災いとなって過去に自分用のマフラーを完成させるのに約二年の歳月を費やした事がある管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『キングスウヰーツ』にて主人公・赤川アラタ君があるおばあちゃんの為に見事再現してみせた“想い出のミルフィーユ”です!
想い出のミルフィーユ図
 漫画『キングスウヰーツ』とは、幼い頃に自分のせいで交通事故にあって記憶喪失した上に行方不明になってしまった天才お菓子職人の父・赤川次郎と、その記憶を取り戻させる為に必要な「お菓子の王様」を探して日本中を放浪するパティシエ・赤川アラタ君が様々なケーキを通して成長していく情熱系料理漫画。アラタ君は若干二十二歳とは思えないほど熟練された腕と知識、そしてプロのパティシエが認めるほどの独自の感性を持っており、今までに食べて記憶したケーキの数は何と千個以上(!?)だと自称していました;。
 パティシエが主人公として登場するお話は少女漫画が圧倒的に多く、可愛らしい女の子達が繊細なケーキや恋愛などの人間関係の火種に囲まれつつ切磋琢磨していくというストーリーがほとんどなんですが、『キングスウヰーツ』は青年誌(今は休刊となっているヤングサンデー)で連載されていたせいか少々毛色が違っています。温かなタッチで描かれているキャラクター達が恋愛要素一切抜きで、華やかなだけではない一種の力強さを感じさせるケーキを軸に繰り広げる己のアイデンティティーを賭けた戦いが見所で、「各々が持つ理想のケーキ像」を形にしようとあがく青春群像劇がとても魅力的でした。ケーキの描写が他のパティシエ漫画と一、ニを争う程とにかく秀逸なので、ケーキ好きな方には是非おすすめしたい漫画です。
 さて、実を言いますとアラタ君が放浪していた時期は三年とごく短く、一巻の第五話では早くも父の次郎氏が働いていたパティスリー・<ETOILE du SEPT>を見つけ出してパティシエとして働く事になり、「お菓子の王様」のヒントを探そうと躍起になるのですが、そこでアラタ君は早くもパティシエとしての技量を問われる難しいお願いを聞いてあげる事になります。
 そのお願いは北海道からはるばるやってきたおばあちゃんからの物で、内容は二十年以上前に<ETOILE du SEPT>で食べた当時の味そのままのミルフィーユを食べたい、そしてそれを孫の結婚式に持っていってあげたいという切実なもの。何でも、今から二十年前に町内会の旅行で<ETOILE du SEPT>に立ち寄ったおばあちゃんは、そこで「ケーキ店のよさは、パイ生地とクレーム・パティシエールの出来で分かるといいます。もし、差支えがなければ…」とシェフからお勧めされて食べたミルフィーユの味にすっかり虜になった上、お土産として持ち帰った折に結婚前の娘さんと未来のご主人との三人で一緒に食べてとても幸せな気持ちになった記憶が忘れられない為、今度は娘の娘であるお孫さんご夫婦にも結婚式に食べてもらいたいと思ってまたはるばるやって来たのだとの事でした。それにしても、親子三代の想い出を彩るミルフィーユだなんてロマンティックな響きですね(´Д`*)。
 しかし、おばあちゃんはミルフィーユを一口食べるなり「当時の味と違っているような…」と戸惑い、当時のレシピを知るシェフ(実は、このお店を創設したオーナー本人でした;)が明後日まで慰安旅行に出かけて帰ってこないと知ってからはがっかりして他を当たってみようと帰ろうとしてしまいます。が、アラタ君は寂しそうにしているおばあちゃんを見過ごす事が出来ずに「俺が作ります!」と約束し、おばあちゃんがお孫さんの結婚式へ出席する為に北海道へ帰ってしまう二十四時間以内に何とか昔のミルフィーユを再現しようと奔走する事になります。
想い出の味を求め、かつて立ち寄ったケーキ屋に立ち寄ったおばあちゃん
 おばあちゃんの証言と、現在のミルフィーユを試食した感想とを慎重にすり合わせた結果、アラタ君は昔おばあちゃんが印象に残った「ほのかに香る、親しみのある優しい甘さ」「すぐにもう一つ食べたくなるような上品な味のクレーム・パティシエール」という感想こそが現在のレシピとの唯一の違いだと何とか気付きます(現在の<ETOILE du SEPT>の味は、上品というよりはクリームの甘さがしっかり口に残る感じの強い余韻が特徴的だとの事)。クレーム・パティシエールとは、いわゆるカスタードクリームをフランス語読みにした単語で、別名「お菓子屋さんのクリーム」菓子職人にとっての名詞代わりにもなる程重要なクリームな上、今でもフランス菓子業界では基本にして究極のクリームだと言われているくらい特別なのだと作中で説明されていました。正直、この作品を読むまではカスタードクリームはどんな作り方をしてもそこまで味に大差がないのでは…と考えていたのですが、材料や配合一つとっても作られた数だけ個性があるみたいですので、初見時は断然興味を抱いたのを覚えています。
カスタードクリームを上品にさせた謎の食材とは、一体…?!
 その後、卵・牛乳・小麦粉など色々な材料から何が変わったのかを推測して夜遅くまで試作をしたもののイマイチ成果が上がらないアラタ君でしたが、職場で偶然「あのドラマの主役は大根だ!」「ちがうもん、大根役者じゃないもん!」「いーや大根野郎だね!」という他愛ない言い争いから大根→砂糖大根=ビート→甜菜糖という連想が頭の中で閃き、ようやく「上品な味」の秘密が甜菜糖である事に行き当たって何とか昔の味を再現する事に大成功します(くだらない理由かもしれませんが、案外こういうひょんな事で意外な事実が分かったりするので、世の中はえてしてこういうものなのかも知れません^^;)。
 こうして、アラタ君が若さゆえの情熱と執念と根性で一晩中かけて完成させたのが、この“想い出のミルフィーユ”です!作り方は通常のミルフィーユとほぼ同じですが、クリームに甜菜糖をふんだんに使うのが唯一にして最大の特徴で、こうする事によって上品な甘さのミルフィーユに仕上がるとの事でした。ちなみに、おばあちゃんはこのミルフィーユを二十四時間以内に再現する為にアラタ君を始めとする<ETOILE du SEPT>のスタッフ一同が協力してくれた事に心底感極まり、「あの想い出の味に、皆さんの優しさと想いが加わってきて、もっともっと…おいしくなっているのですよ」と涙しています。正直、“想い出のミルフィーユ”自体も確かにいい贈り物になると思いますが、自分達や自分の大事な人に対してこれだけ親身に接してくれる人たちがいたのだという感動こそが、後々何よりの結婚祝いになるのではないのかな~としみじみさせられた一話でした。
上品な味の秘密は、何と大根から出来た甜菜糖!
 甜菜糖を使ったクッキーを作ったことはありましたが、クリームのように砂糖の味がストレートにぶつかってくる物に甜菜糖を使用したことはなかった為、一体どういう味になるのか前々から非常に気になっていました。せっかくですので、作中の所々で紹介されているレシピを参考にして早速作ってみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずが、甜菜糖のクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)作り。小鍋へジャージー牛乳、さやから包丁でこそげとったバニラビーンズ、取った後のさやを投入し、ごく弱火でじっくりゆっくり温めていきます。沸騰したらせっかくの風味が飛んでしまって台無しになるので、ギリギリの加減で熱するのがコツです。
想い出のミルフィーユ1
想い出のミルフィーユ2
想い出のミルフィーユ3
 その間、ボウルに甜菜糖と卵黄を入れて泡だて器で白っぽくなるまでよ~~くかき混ぜ、やがて卵黄と甜菜糖が空気を含んでよくなじんできたら薄力粉をふるいにかけながら少しずつ合わせつつ慎重に混ぜ合わせます。この時、小麦粉を一気に入れて雑に混ぜてしまうとすぐにダマになるので、要注意です。
想い出のミルフィーユ4
想い出のミルフィーユ5
想い出のミルフィーユ6
 甜菜糖・卵黄・小麦粉が完全に混ざったら、そこへ先程温めておいたバニラビーンズ入りの牛乳を漉し器で漉しつつ三~四回に分けながら加えていき、丁寧かつ均一になるように混ぜて別の小鍋へ移します。小鍋は弱火~中火の間くらいの火にかけて泡立て器で底をこそぐようにして丹念に混ぜ、やがてつややかな色合いともったり重い手ごたえになったら火を止めます。そのまま冷まして荒熱を取り、ボウルに入れて冷蔵庫で一晩寝かせたら甜菜糖のクレーム・パティシエールの出来上がりです!
想い出のミルフィーユ7
想い出のミルフィーユ8
想い出のミルフィーユ9
 今回、ポピュラーなサトウキビの砂糖を使ったクレーム・パティシエールと色々比較してみたかった為、ほぼ同時に上白糖を使ったクリームも作って寝かせてみました。二枚目の画像が出来たばかりの上白糖のクレーム・パティシエール、三枚目の画像が二種類のクリームの比較図(上が上白糖、下が甜菜糖)ですが、こうしてみて見るとはっきり色の違いがわかって面白いです。見た目だけだと、甜菜糖のクレーム・パティシエールはキャラメルクリームっぽい感じがしました。
想い出のミルフィーユ10
想い出のミルフィーユ11
想い出のミルフィーユ12
 ただ、作中の記述通りクレーム・シャンティ(生クリーム)を各々混ぜ合わせて見ると、色の違いはそこまでわからなくなりました。そのままの状態で使っても勿論可だそうですが、クレーム・シャンティを合わせる事によって旨味はそのままにしつつ口当たりを軽く出来るとのことなので、勉強になります。これで、ミルフィーユに使うクレーム・パティシエールは準備OKです。
想い出のミルフィーユ13
想い出のミルフィーユ14
 次は、組み立て作業。高温のオーブンで香ばしく焦げ目がつくまで焼き、食べやすい大きさに切り揃えておいたパイ生地→クリーム→パイ生地→クリーム→パイ生地の順に材料を重ねていき、クリームがはみ出たらバターナイフなどで形を整えておきます。なお、一番上のパイ生地にはチョコペンで斜め線の模様をいれていきます。
想い出のミルフィーユ15
想い出のミルフィーユ16
 チョコペンで模様を書き終えたらその上に生クリームといちごを乗せ、そのままお皿へ乗せて傍らにフォークを添えれば“想い出のミルフィーユ”の完成です!
想い出のミルフィーユ17
 いかにも素人が作った感じのボロボロな出来栄えになってしまいましたが;、かすかに漂うカスタードクリーム・いちご・パイ生地の香りがとてもおいしそうです(´Д`*)。幾重にも重なるパイ生地と、断面からトロリと顔を覗かせるカスタードクリームの対比がたまらない感じで、果たしてどんな味がするのかワクワクしてきます。
想い出のミルフィーユ18
 それでは、出来たての内にいざ実食!いっただっきまーす!
想い出のミルフィーユ19

 さて、味はと言いますと…サラリとした口どけの大人向けな美味しさ!本当に、通常の砂糖で作ったカスタードクリームとははっきり異なります!
想い出よりも、ずっと美味しくなっているミルフィーユに涙されていました
 食べ比べてみた結果、通常のサトウキビを使った砂糖だとリッチで強いコクやこてっとした甘味が時間が経っても舌の上でくっきりと存在を主張してくる傾向にあり、それに対して甜菜糖は全体的にあっさりした感じでした。こっくりとした膨らみのある優しい甘さ、口に含むとスッと鼻腔に立ち上ぼってくる黒糖に似た趣のある香りが印象的で、控え目ではあるんですが確実に記憶に残る味わいです。
 
作中でアラタ君やおばあちゃんが言っていた通り、確かに「深いのに口の中ですっと溶けて、すごく透明感のあるすぐにもう一個でも食べたくなるような上品な味」が特徴的でした。不思議な事ですが、カスタードを舐めると感じやすい小麦粉っぽさを意識させるもったり感がこの甜菜糖のクリームには全くなく、まるで生クリームを舐めているかのような滑らかなな舌触り終始楽しめるのが驚きだったです。また面白い事に、カラメルっぽさに通じる焦がし砂糖みたいな風味がわずかに漂っていて、それが奥行きをさらに高めている感じがしました。
 全体的に大変マイルドな後味なので、果物や卵の良さを際立たせたお菓子を作るには最適な砂糖なのではと感じました。サクサクした香ばしいパイ生地と、舌へ滑るように溶けていく素朴なカスタードクリームの対比が見事で、噛むごとに幾重にも重なった香り高いバター風味のパイ生地がサクサク砕け、トロリとしたカスタードクリームに包み込まれていくのにうっとりさせられる、まさに定番となるのにふさわしい名ケーキです。

 サトウキビの砂糖を使ったクリームみたいにはっきり明確な甘さも勿論美味ですが、甜菜糖のように上品で素材の味を引き立てるのに向いている甘さのクリームもおいしい!と一気に気に入りました。洋菓子だけではなく、和菓子向きの砂糖なようにも思います。俄然甜菜糖を使用したお菓子作りへの興味が再熱して来ましたので、今度はアイスクリームやホットケーキにも試してみる予定です(^^)。

●出典)『キングスウヰーツ』 大石普人/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
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 …『テルマエ・ロマエ』
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