『想い雲―みをつくし料理帖』の“澪の鮎飯”を再現!

 お久しぶりです、あんこです。更新が遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。木曜日の夕方頃から体調の崩れを実感して「おや?」と思っている内に金曜夜からあれよあれよという間に高熱に襲われ、二日間ずっとダウンしていました;。ようやくまとまった時間が手に入りそうだと思っていたのですが(再現料理のストック作り、コメントのご返信、記事作りなどに取り掛かろうと予定していました)、ようやく落ち着いた今となっては金曜更新予定だった更新内容をアップするので精一杯でした;。明日からまた通常運転に戻りますので、何卒よろしくお願いいたします。
 どうも、今日の夕方にやっと復活して「馬鹿は風邪を引かないというけれど、そんな事はやっぱりないんだなぁ」と納得した当ブログの管理人・あんこです。

 今回挑戦する再現料理は、『想い雲―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんがある初夏の日に「つる家」でお客さんたちに振舞った“澪の鮎飯”です!
『想い雲―みをつくし料理帖』  澪の鮎飯
 実はこの『みをつくし料理帖』シリーズ、現在揃っている主要キャラクターは大抵第一~二巻にかけて徐々に揃ってくる感じで最初から登場しているキャラクターの方がむしろ珍しいのですが、第三巻となる『想い雲―みをつくし料理帖』の頃には、お馴染みの登場人物はもうほとんど出揃っています。ちなみに、この『想い雲―みをつくし料理帖』はそれまでの小まとめかと言いたくなる位ドラマチックなお話が数多く紹介されている為(「天満一兆庵」の元ご寮さんである芳さんが、旦那さん縁のかんざしを軸として行方不明の息子・佐兵衛さんの失踪の真相を知る話、小さい頃に洪水にあってから離れ離れだったかつての親友・野江ちゃんと吉原の華やかな行事<俄>で果たしたつかの間の再会話、「登龍楼」から追放された原因は澪ちゃんのせいだと逆恨みする元料理人・末松による卑劣な営業妨害話など)、相当に読み応えのある一冊です。
 中でも、一番印象に残ったのが第三話にて吉原で開催された<俄>の白狐行列のシーン。吉原で一、二を争うほど華やかな祭り行事・<俄>を見物に来た群衆、独特のリズムによって奏でられる鼓と三味線、狐の仮面と白装束で白狐に扮した艶かしい「翁屋」の遊女達、そして野江ちゃんと澪ちゃんが一瞬だけ夢のように再会した場面が出てくる箇所は、想像するだけでとても幻想的かつ美しい名場面だと思います。
 ちなみに、この時期に登場した中で地味ながらも一番味があって妙に記憶に残る人物が、辛口批評ばかりで口うるさい御仁だけれども家では恐妻家な戯作者・清右衛門さんとよくつるんでは振り回されて苦労としている版元・坂村堂嘉久さん(推定四十代)。第一話「豊年星―<う>尽くし」の際に、清右衛門さんに連れられて「つる家」で食事を取っている場面が初登場シーンで、「飯を一口頬張るたびに、その丸い目をきゅーっと細め、頷いている」「賞賛の言葉はないのだが、目を細めて幾度も頷く様子から、男の感動が手に取るように伝わる」という何ともそそられる食事描写をしてくれた事ですぐに名前を覚えました(^^;)。その食べっぷりは、数多くのお客さん達を見守ってきた澪ちゃんをして「これほどまでにおいしそうに食べる客を知らなかった」とある意味見惚れてしまった程。また、外見の方もきょとんとした丸い目やしょぼしょぼとした薄いヒゲがチャームポイントというどことなく憎めない風貌で、その姿はまるで江戸名物・泥鰌みたいだと書かれてあったのに微笑ましさを感じました。意地悪な清右衛門さんと唯一うまくやっていけている数少ない人格者ですが、それでも度々清右衛門さんの気まぐれな所に泣きを見てはほとほと苦労している描写があるので、毎回苦笑しながらお二人のやり取りを見ています;。
 この坂村堂さんが、初回で黙々と三膳も平らげてしまったお料理が、“澪の鮎飯”です。作り方自体はひどくシンプルで、素焼きにした鮎を醤油・酒・米・水の入った釜へ放り込んで炊き上げ、仕上げに頭や骨を取って薬味の青しそを投入してさっくり混ぜたら出来上がりです。たったこれだけですが、後からではなく最初から共に炊き上げることによってご飯へより味がしみこんで美味になるとの事でした。どうやら「つる家」の夏の定番らしく、お店にやって来た夏バテのお客さん達は食欲がないはずなのに「どの飯椀も舐めたように空になって戻ってくる」くらい夢中になって食べたという記述がありました。
 近所でおいしそうな鮎がお手頃価格で買い求められる季節になってきましたので、早速再現してみようと思います。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、鮎と炊飯の準備。鮎は塩をまぶして少しもみ、包丁でぬめりや汚れをこそげ落としたら流水でさっと洗いキッチンペーパーで水気を拭き取ります(この時、お腹を押してフンを丁寧に押し出しておく事を推奨いたします)。水気が取れたらそのまま魚焼きグリル(ガスコンロと網でも可)でこんがり焼きあげて素焼きにし、それを水・醤油・酒・生米を入れて水加減しておいた文化鍋へ投入して通常通り炊きます。
 ※ここでは作中通りワタ入りで作りましたが、ワタの苦味が苦手な方は最初に取り除いておいてもOKです。あと、あんまり良心的ではない所の養殖物だと砂がワタに入っていたりしやすいので、炊き上がったらワタだけ先に取り出して確認してから戻しいれる方式がお勧めです。
澪の鮎飯1
澪の鮎飯2
 ご飯が炊き上がったら全体へ湯気が充分に行き渡るまで放置し、少々落ち着いたところでフタを開けて頭と骨と取り除きます。その際、骨はなるべく根気よくとった方がいいですが、鮎の骨は小さく気にならない物も多いので、気にならない方はざっくばらんに放っておいても大丈夫です。
澪の鮎飯3
澪の鮎飯4
 身から骨を除き終えたら、ざっくり混ぜ合わせて身をご飯へ行き渡らせます。その間、青しそを千切りに刻んで水に放ち、葉に瑞々しさが出たら取り出して水気を拭いておきます。
澪の鮎飯5
澪の鮎飯6
 先程の炊き込みご飯にきっちり水気をとっておいた青じそをやや多めに加え、しゃもじで練らぬようまんべんなくさっくりと混ぜます(鮎は淡白なので青しそのみの方が純粋に旨さを堪能できますが、薬味は多ければ多い程いいと感じる方は白ごまやみょうがの千切りがおすすめです)。
澪の鮎飯7
澪の鮎飯8
 青しそが混ざりきったらまたフタをして少し蒸らし、食べる分だけお茶碗へご飯をふんわり盛り付ければ“澪の鮎飯”の完成です! 
澪の鮎飯9
 ためしに少し嗅いでみると、確かに魚らしいふくよかな香りと共になにやら野菜っぽい匂いが湯気となって漂ってきた為、若干驚きました(匂いだけなら、魚の炊き込みご飯というよりは夏野菜と魚の混ぜご飯っぽいです)。思わず、別作品『鬼平犯科帳』シリーズの鮎飯の描写まで思い出して余計お腹がすいてきてしまいました;。青しその葉が目に涼しげで彩りも美しかった為、どんな味なのか楽しみです!
澪の鮎飯10
 それでは、炊きたてで熱々の内にいざ実食!いただきまーす!
澪の鮎飯11

 さて、味の感想ですが…何ともさっぱりした後口で旨しっ!川魚だからこそ堪能出来る独特の香り高さに感激です!
 作中で坂村堂さんが言っていた通り、ご飯粒の芯まで鮎の味が沁みこんでいて噛むごとにどんどん旨味がにじみ出てきます。香魚とはよく言った物で、一口食べるときゅうりっぽい清涼感溢れる香りが鼻を突き抜けた為「魚を使っているのに、まるできゅうりやスイカの皮が入っているような匂いがする」と不思議な気持ちになりました。青しそのザキュッとした鮮やかな歯触りや、爽やかかつすっきりした風味が混じり込むとよりさっぱり感が強調されたので、まさに「初夏の定番炊き込みご飯」というイメージを抱きました。
 ご飯全体にあっさり薄い醤油味がついていますが、後からじんわり鮎のワタの油分や苦味が舌へ響き、最後に日本酒がフワッとさり気なく効いてくる奥深い大人の味で、鮎のわずかな癖を消しているのがいい感じです。また、この炊き込みご飯は鮎の身がやわやわと蒸されて細かくご飯に入り交じって一体化しているのが特徴な為、これは鮎を純粋に楽しむ料理というよりは鮎の出汁が染み込んだご飯粒自体を主役と考えて楽しむ料理なのだと思いました。
 一旦焼く事によって香ばしく活性化した鮎特有の淡泊かつ繊細なコクが、とても美味です。鯛やイワシなどの炊き込みご飯よりもずっと地味な味わいですが、野趣の強いほろ苦さがわずかに染み込んでいるご飯の合間合間に青しそがアクセントとなってキレをよくしているのがたまりませんでした。

 以前、ある文豪が書いたグルメエッセイで(名前は残念ながら失念;)、「養殖物は脂っこい」という意見を見た為あまり期待はしていなかったんですが、食べてみるとそこまで変ではなかったのでほっと一安心です。鮎は塩焼きにするだけでも十分美味ですが、炊き込みご飯にすると飯粒と一緒にしっかり噛み締める事でより複雑な旨みが分かるのだな~と感心しました。今度は是非天然物で試してみたいと思います(^^)。

 ○追記
 これまで各作品のご紹介文を書いてきましたが、最近ようやくネタバレ感がひどいのではないかという自覚が出てきましたorz。その為、当ブログを見ていらっしゃる方の中で「これはやりすぎ」だと不快に思われた方は、是非ご指摘していただけますと幸いです(場合によっては即刻訂正させて頂きます)。
 また、大変遅くなり恐縮ですがコメントのご返信は来週仕事から帰って時間があるときに、少しずつさせていただきます。以上、ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

●出典)『想い雲―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2011.06.13 Mon 08:20  |  

お体の具合はもう宜しいのですか?無理なさらず、ご自愛下さいね。
今回の鮎飯、露を含むあじさいが風景に見えるようです。炊き込みご飯の素晴らしいところは、誰かと一緒に食べることを暗黙の前提としているところではないでしょうか。独り飯に作ろうとは思いますまい。
美味しいお福分け、そんなほほえましさがあります。

また、このような香り高いご飯に合う副菜は?椀種は?と考えるのもアンコさんのブログの楽しいところです。考えているうちに日にちなんてあっという間に過ぎてしまいますから、更新を待つことも楽しいものです。
またお邪魔します。

  • #-
  • いちファン
  • URL

2011.06.13 Mon 22:58  |  

鮎は初夏を感じさせますよね。私は箸使いが下手な所為もあって頭から丸ごと食べてしまったりします。勿論、骨を含めてです。

  • #-
  • oguogu
  • URL

2011.06.15 Wed 12:06  |  

お体大丈夫ですか?無理しないでくださいね。

そしてとっても美味しそうです!
川魚は上手に使えばとっても良いですよね。
私も作ってみたいと思いました。

  • #-
  • 工事標識
  • URL

2011.06.23 Thu 21:11  |  いちファンさん、こんばんは。

当ブログの管理人・あんこです。
コメントをして下さり、ありがとうございます。
この度はご返信が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。

お心遣い、痛み入ります。
まだまだ未熟な腕ですので恐縮なのですが、そのような過分なお褒めのお言葉
を頂けますと大変嬉しいです。確かに、一人用に炊き込みご飯を炊く事は
ないように思います。私自身、家に家族が早く帰る日に炊き込みご飯を作る傾向が
あった事に、ご指摘されて初めて気づきました(^^;)。
具を掘り当てながら食べる楽しみは、白ご飯にはない楽しみだと思います。

個人的に、鮎飯にはきゅうりと大根のお漬物、豆腐の味噌汁、ナスの煮浸しという
純和食風な副菜が一番合うと考えています(^^*)。

これからも色々な漫画料理を再現していきますので、
お手隙の際に又読んで頂けますと幸いです。

  • #-
  • あんこ
  • URL

2011.06.23 Thu 21:14  |  oguoguさん、こんばんは。

当ブログの管理人・あんこです。
コメントをして下さり、ありがとうございます。
この度はご返信が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。

考えてみると、鮎がおいしい時期は一気に過ぎるような気がします。
真夏でも、晩夏でもなく、初夏だけにこそ似つかわしい魚というイメージです。
頭から食べるのは実はまだ試したことがないので、近い内に是非試してみたいです。

これからも色々な漫画料理を再現していきますので、
お手隙の際に又読んで頂けますと幸いです。

  • #-
  • あんこ
  • URL

2011.06.23 Thu 21:16  |  工事標識さん、こんばんは。

当ブログの管理人・あんこです。
コメントをして下さり、ありがとうございます。
この度はご返信が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。

お心遣い、痛み入ります。
そうおっしゃって頂けると大変ありがたいです。
正直、鮎の焼き方がヘタなのでお恥ずかしいのですが…;。
鮎飯は簡単なのにびっくりするほど美味ですのでお勧めです

これからも色々な漫画料理を再現していきますので、
お手隙の際に又読んで頂けますと幸いです。

  • #-
  • あんこ
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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
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 …『夢色パティシエール』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

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