『蛍のレシピ』の“クールブイヨンのイクラ丼”を再現!

 先週相方さんがふらりと実家に戻った時、夕食の席で妹さんからほうれん草のキッシュをご馳走になったそうですが、洋風の料理に疎い相方さんが「キッシュって何?」と聞いた時に妹さんが「洋風の卵焼き」と返答したと聞いて「キッシュってそんなもんだったのΣ(゜Д゜;)?!」と今更ながら驚きました。…が、実際にネットで調べてみると確かに外国版卵焼きといえなくもないレシピばかりだったので、改めて妹さんの説明力の的確さに感服しました。
 どうも、長い割には分かりづらい駄文しか書けない暦二十余年の管理人・あんこです。

 本日再現する漫画料理は、『蛍のレシピ』にて主人公・山野辺蛍さんが「旬」をテーマとした料理対決の際に作った“クールブイヨンのイクラ丼”です!
クールブイヨンのイクラ丼図
 『蛍のレシピ』とは、出張料理やフードコンサルティングのお仕事をしながら全国を駆け巡り、別名「奇跡の舌を持つ男」とまで称されている凄腕のシェフ・山野辺蛍さんが主人公の放浪系料理漫画で、様々なお客さんの多種多様な調理依頼を蛍さんがいとも簡単に応えていく様が見物な作品です。山野辺蛍さんの経歴はぱっと見るだけでもびっくりする程きらびやかで、出自は日本でも屈指の料亭≪いせ兆≫次期三代目の跡取り息子、修行先はフランスの三ツ星レストランで最終的には料理長にまで上りつめており、その他にも中華料理人・寿司職人・バーテンダー・ラーメン屋としてもプロ並の腕を持っているという、ある意味「外食業界の総合デパート」と呼びたくなるくらいの才能ぶりです;(初見時、料理漫画界で山野辺蛍さんに対抗できるのは『ダシマスター』だけではないだろうか…と内心唸ったのを覚えています)。
 ただ、実を言いますとこの主人公、料理の腕はかなりの物なのですがいささか職業不祥っぷりが激しく、ある時は「レストランホームズ 山野辺蛍」と印刷された名刺をいたって真面目な表情で依頼人に渡したり、新宿内のとある公園で堂々とラーメンスープを煮炊きしていたりお店の売り上げ盗難事件の犯人探しをする探偵もどきの事までやってのけたりと、正直堅気の料理人とは思えないような多彩な活躍っぷりなので、時折「自分は一体、何の漫画を読んでいるんだろうか?」と頭の中がはてなマークだらけにさせられるのが唯一の難点です(^^;)。実際、『蛍のレシピ』の副題は「美食家探偵ホームズの事件簿」というなかなかカオスな題名なので、混乱すること必至です。
奇跡の舌を持つ男と呼ばれた三ツ星シェフ実は、日本屈指の料亭の跡取り息子だったりもします;
 今回再現するのは、色んな意味ですごいシェフ・山野辺蛍さんが同じく幻のシェフという異名を持つ男・立松信介さんとの<秋にしか楽しめない旬の味>をテーマにした料理勝負の時に出したある一品。立松信介シェフとは、今作の中で「生まれながらのロティスール(焼き肉師)」「TV番組・グルメチャンピオンで優勝した料理人」「日本人初の三ツ星シェフ」と呼ばれている有名人で、山野辺蛍さんにとってライバル兼いい友人として登場した人物。一見大人しそうな常識人に見えますが、ほぼ初対面だった山野辺蛍さんに対して「あなたが山野辺蛍さんですね。随分探しましたよ」などと唐突に語りかけ、「よかったら私と勝負してもらえませんか?テーマは旬の味」「場所は私の店で、明日の3時。来るまで待ってますから(^^)」と推定時間約三分余りで挑戦状をたたきつけて颯爽と帰るという、ある意味ものすごくエキセントリック…もとい、自由人なキャラです;。
 ちなみに、肉を常に極上の状態で焼き上げる事ができるロティスールとして大成するかどうかは、努力というより本人の生まれ持った素質や感性によるものが多分に大きいとの事。確かに、肉がうまく焼けたかどうかのタイミングは調理とはまた違った技術が必要ですので、大いに納得です。
前置きなしで、いきなり料理勝負の挑戦状を叩きつける立松シェフ
 立松シェフはそのロティスールとしての能力をフル活用し、渾身の“鴨肉のロースト ジロール茸添え”を作り上げますが、一方山野辺蛍さんが作ったのは、何と前日の夜から仕込んできたイクラを使った“クールブイヨンのイクラ丼”!作り方は普通のイクラの醤油漬けとはちょっと違う独創的なもので、合わせ出汁の代わりにクールブイヨンというフレンチでよく使われる野菜のお出汁と醤油を調合した漬け汁でイクラを漬け、一晩たったら炊き立ての新米のコシヒカリの上に海苔やワサビと共に乗せて出来上がりという変化球のレシピ。クールブイヨンとは、直訳すれば「短いお出汁」という意味で、玉ねぎ・にんじん・セロリ・レモン等の香味野菜をさっと短く煮立ててとるお出汁で、魚の生臭みを取って爽やかな芳香をつける為魚料理によく合う調味料だと作中では語られていました。が、やはり通常は白身魚に使用するのが主流とのことで、イクラの下味に使うのは前代未聞だと立松シェフは感心していました。
 かくして、温かい鴨料理と冷たいイクラという一見正反対ながらも共に秋が旬真っ盛りな二つの料理の優劣は最後までつかず、どちらも美味しいという事で勝負は引き分けに終わります;。引き分けだと中途半端だからどうもしっくりこない…と思われる方も多くいらっしゃるかもしれませんが、山野辺蛍さんと立松シェフ曰く「勝ったらお終いなんて勝負、つまらないですよ」「どうせなら、負けたほうがいい。その方がもっと高みを目指せるからね」だそうで、シンプルながらも深い名言で締めくくられていたのが印象的な一話でした。
魚料理との相性が抜群なお出汁・クールブイヨン
 イクラ料理はつい最近に一度再現したばかりですので、「しまった、また被ってしまった」と『孤独のグルメ』の五郎ちゃん状態になるのを恐れて躊躇していたのですが;、この機会を逃したらまた来年の秋まで待たなければいけなくなる…と一念奮起しました。幅の狭い退屈なブログで恐縮ですが、お付き合いして頂けますと幸いです。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、クールブイヨン作り。大鍋に水、白ワイン、白ワインビネガー、ザク切りにした玉ねぎ、にんじん、セロリ、パセリの茎、ブーケガルニ、ローリエを入れて二十分以上煮込み、出汁をとります。この時、まだ短時間しか煮ていないはずなのにかなり濃厚な野菜の甘やかなようですっきりした香りがプンと漂ってくる為、正直子の香りをかぐ為だけでも作ってよかった~と心が洗われるような心境になれます(^^*)。
クールブイヨンのイクラ丼1
クールブイヨンのイクラ丼2
 そこに、レモンのスライスと粒黒こしょうをお好みで入れ、十分~十五分程度アクを取りながら丁寧に煮出したら火を止めます。清潔なネル地の布巾でお出汁を慎重に漉し、そのまま自然に覚ましたらクールブイヨンの出来上がりです。白身魚の臭みを取るのに最適なお出汁と言われるだけあって確かにいい香りで、思ったよりレモンの酸味が勝っていないので料理に幅広く使えそうです。
クールブイヨンのイクラ丼3
クールブイヨンのイクラ丼4
 クールブイヨンを冷ましている間、こちらの記事でご説明したような下ごしらえを行ってイクラの臭みの原因を取り除きつつ一粒一粒優しくほぐし、最後に塩を振って流水をかけつつざっと混ぜます。そして、ザルにあけたら最低でも五分くらい放置して水気を落としておきます(この時余分な水分を取らないと、仕上がりが生臭くなってしまうので欠かせない作業です)。これで、イクラの下準備はOKです。
クールブイヨンのイクラ丼5
クールブイヨンのイクラ丼6
 次は、漬け込み作業。クールブイヨン、煮切った日本酒(より洋風にしたい場合は煮切った白ワインでも可)、醤油を好きな割合で混ぜ合わせて漬け汁を作り、この漬け汁へ先程下ごしらえを済ましておいたイクラを投入します。軽く混ぜたらフタをし、そのまま一晩寝かせて味を染み込ませます。
 ※一晩経過した時点でも十分美味ですが、三日くらい漬けこんだらさらに深い味わいになるのでこちらも推奨します。ただ、醤油漬けとは違い、お出汁を配合した漬け汁に入れたイクラは痛むのが早いので、一週間前後で食べきった方がいいです。
クールブイヨンのイクラ丼7
クールブイヨンのイクラ丼8
 一晩たったらイクラを漬け汁から取り出し、炊き立ての新米コシヒカリをよそった丼の上にかけて刻み海苔とワサビを飾り付ければ“クールブイヨンのイクラ丼”の完成です!
クールブイヨンのイクラ丼9
 イクラの醤油漬けよりも大分明るい色合いのキレイなオレンジ色で、見るからに食欲をそそられました。イクラ特有の少々癖のある匂いよりも、白ワインと野菜の煮汁が組み合わさった品のいい香りがふんわり漂うのが好印象です。見た目はどう見ても和風なのに、香りは全くの洋風なので、一体どういう味がするのか予測出来ませんでした。
クールブイヨンのイクラ丼10
 それでは、出来たての内にいざ実食!いっただっきまーす!
クールブイヨンのイクラ丼11

 さて、味はと言いますと…醤油漬けとはまたひと味違っていて美味し!和風な見た目を裏切り、どことなく洋風な味がします!
 イクラの醤油漬けは濃厚なイクラ本来の旨味が醤油のストレートな味付けでしっかり際立つ大人の味ですが、このイクラは醤油の他に野菜の香り高い出汁が効いたクールブイヨンをたっぷり使用した為、ほのかに野菜の優しい甘みが染み込んでマイルドに仕上がっているのが特徴的です。
 作中で言われている通り、レモンやパセリのすっきり爽やかな風味、セロリや香草類のキレがある清涼感漂う香りがイクラにありがちな独特の匂いをほぼ打ち消しており、生臭さをほとんど感じさせないのに感心しました。純然たる和食というよりは洋食やイタリアンに使用出来そうな和洋折衷の面白い味わいで、海産物にありがちな特有の癖が弱い分どんな料理にも合いそうです。ただ、その分イクラの潮の香りが消えているとも言える為、イクラ好きな方にはちょっと物足りないかもしれません。
 イクラのまろやかなコクがプチッと弾けた途端、醤油の深い塩気とクールブイヨンのふくよかな旨さが一気にとろける為、醤油漬けにするよりもさらに複雑な味わいになっていました。野菜のブイヨンの味は意外にもそこまで強くなく、あくまでイクラを引き立てる為の脇役といった風の淡い感じでしか主張しませんが、おかげでイクラの味とケンカせず見事なバランスで調和しています。クールブイヨンとイクラのエキスが混じってとろみがついた漬け汁がご飯に絡んで、「イクラと香味野菜の出汁が効いたあんかけご飯」風になっているのがまた美味ですし、わさびのツンとくる辛味や海苔の磯風味がいい箸休めになっていました。

 全く新しいタイプのイクラ丼で、個人的にとても勉強になる再現でした。あっさりした後口なので、お子さんや海産物が苦手な方にもそこまで抵抗感なく食べていただけそうな丼です。醤油漬けよりも塩分が抑えられるのが嬉しいですし、色んな方におすすめしたい調理法です。

●出典)『蛍のレシピ』 原作:まりあ志優 作画:市川智茂/双葉社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2011.11.18 Fri 07:36  |  いくら

いつも拝見させていただいています。
文章も読みやすく楽しいので、毎回更新にワクワクしています。
今回も出てきました腹子は、ネットのどちらのお店でご購入されしたか教えていただけませんか?
旦那がイクラを大好きなので、クリスマスにたらふく食べてもらうためにイクラの醤油漬けを作りたいのです。
よろしくお願いいたします。

  • #-
  • こにたん
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2011.11.22 Tue 10:39  |  管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • #

2011.11.25 Fri 18:29  |  こんばんは。

洋風卵焼きというと、スパニッシュオムレツを思い浮かべてしまいます。具だくさん的な。キッシュというとパイ生地やタルト生地の中の具だくさんというイメージがあって、個人的には卵メイン感があまりないのですが、パイ生地タルト生地の無いバージョンもキッシュと呼んでいる場合もあってそれなら確かに・・・と思いましたが、器の役割を果たしている生地のサクッと感が好きなので、やはり、パイ生地タルト生地はあってほしいと思いました。が、どちらにしろ、美味しければ問題ない、という結果に落ち着きました。

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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
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