『今朝の春―みをつくし料理帖』の“ははきぎ飯”を再現!

 どうも、明けましておめでとうございます。先日、初詣での際に小吉を引いて新年早々微妙な気持ちになった当ブログの管理人・あんこです。去年は当方の未熟さが原因でお見苦しい所をお見せしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。2012年こそは去年で出来なかった事を前向きに取り組みたいと考えておりますので、ご縁がありましたらこのへっぽこブログに今年もお付き合いして頂けますと幸いです。
 未だに至らぬ点が目立つブログで恐縮ですが、今年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 今回作ってみる再現料理は、『今朝の春―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんがさる訳有り気な武家の奥方・里津さんの為に作った“ははきぎ飯”です!
今朝の春
 澪ちゃんが密かに慕っている想い人・小松原様の本来の姿を化け物稲荷の前で見かけ、<つるや>への訪れが途絶えてしまうのを恐れてあえて正体については触れまいと決意した日から約二年たったある十月半ばの日の事。久方ぶりに小松原様が訪れ、内心喜びを噛み締めつつ塩鯖の汁物などを差し出す澪ちゃんでしたが、どことなく元気のない様子だった小松原様は料理を食べ終えるやいなや慌しく立ち去ってしまいします(この時、小松原様の飲み友達でもある店主・種市さんが「旦那、今夜は帰しませんぜ」と嬉しそうに飲みに誘っていたんですが、「白髪の爺さんに言い寄られて嬉しいものか」とつれない小松原様から一蹴されて「ちぇ、何だよぅ、小松原の旦那ぁ(´・ω・)」とがっくりきていたのが、気の毒ながらも少々微笑ましかったです;)。
 実はその時、小松原様はははきぎの実(地膚子、とんぶりとも呼びます。ほうき草の実を茶色になるまで乾燥させた物)という腎臓病や浮腫みを治す効能がある薬種が入っている包みを<つるや>に置き忘れて出ており、後に使い道と「ある国では、これを加工して料理に用いている」という情報を知った澪ちゃんはいても立ってもいられなくなり、ははきぎの実を食用にする為に寒い中震えながら硬い皮を外そうと懸命に桶の中で揉み洗いをします。正直、一ヶ月に一度あるかどうかという小松原様の訪れを来るという確証もなしに待ちつつ、凍りつきそうなくらい冷たい水を触れる作業を毎日何時間もしていた澪ちゃんの心境を考えると、胸にこみ上げる物があります。
 そんなある日、桶の前で四苦八苦する澪ちゃんを見て「それはははきぎの実ではないか。かような物を食さずとも、この江戸では食べるものは数多あろう」と驚いて声をかけ、ははきぎの実の皮をはずす方法を教えてくれたのが、さる武家の奥方であり何と小松原様の実母である里津さん。実を言いますと、里津さんは跡取り息子である小松原様が一向に身を固めようとせずに町人に身をやつして江戸の町をふらついているのを快く思わず、それとなく調べている内に引っかかった「<つるや>のみおという娘を気にかけている様子」という情報を元に<つるや>へお忍びでやって来た模様で(←実はこの件についてはひと騒動あったのですが、詳しくは本作にてご確認をどうぞ;)、当初は正体を明かさぬまま「五日後、首尾を尋ねましょう」と言って暗に試食に来る事をほのめかせ、そのまま籠に乗って去っていきます。
 そして五日間、里津さんから教わった方法で時間をかけながらもようやく手に入れたははきぎの実を使い、最終的に菊花雪用に台所へ準備していた山芋を手にしてピンときた澪ちゃんが完成させたのが、この“ははきぎ飯”です!
 作り方は通常のとろろご飯とほぼ同じですが(強いて言えば、出汁の配合がやや多め?という箇所が相違点です)、最後にとろろご飯の中心にははきぎの実を乗せる所が唯一のポイント。澪ちゃんが言うには、「混ぜ込んでしまうよりも、こうして白いとろろの上に薄緑色の実を置く事で、色味の対比が美しく映える」だそうで、里津さん曰く「倹しい食材」だったははきぎの実が瞬く間に見目麗しい料理に生まれ変わる様は文字を追うだけでも生き生きと伝わってきたのを覚えています(^^)。
 幸いにも澪ちゃんが直前まで心配していた里津さんの反応は大変よく、「そなたが食べる者の気持ちを大切に思うておるのが、ようわかった」という労りの言葉までもらえ、澪ちゃんは胸が詰まるような思いになります。しかし、とうとう自身と小松原様の真の身分を明かした里津さんから「精進を厭わぬ心ばえ、決めた事をやり通す芯の強さ、加えて心根の優しさ。あれの人を見る目の確かさを、此度ほど誇りに思うた事はない」というこの上ない賛辞を受けつつも、同時に「釣り合う家の娘ならば嫁にと思っていましたが、後ろ盾のない女料理人では話にならぬ。私は母として、さような縁組を許すわけにはいかぬのです」という、暗に小松原様への想いを断つ事を強いるはっきりとした拒絶の言葉を浴びせられ、澪ちゃんは思わず頭が真っ白になってしまいます。今となってはあまり実感のわかない理由なので、初めて読んだ時は何とも言えない気持ちになりましたが、似たような<縛り>で様々な問題が残っているのは現代も同じな為、そう考えると単純に誰を責めるだとか、何がいけないとかと一方的に考えられませんでした。本当、こういう話はやりきれないの一言に尽きます。
 この時、澪ちゃんはそれまで散々「これは身分違いの恋」「叶わなくて当然」だと思い切っていたはずが、心のどこかで「もしかしたら…」というかすかな望みを捨てられていなかった事に気付き、同時にそのかすかな希望が粉々に打ち砕かれたという事実を嫌という程噛み締める事になります。はっきり言って、相手の男性の気持ちも分からない上にそのご家族からここまで言われてしまったら、もうほとんどの方が絶望して失意の内に諦めると思うのですが、澪ちゃんはそれでもなお「口にする料理であの方を健やかに保ち、お守りできるなら」という決意を固め、一人の娘としてでなく<つるや>の料理人として時折会う事が出来るだけで充分だと自らの想いを封じ込めます。そして、小松原様とその後もごく穏やかな交流を保ち続けるのですが…。以降は、続編である『小夜しぐれ』『心星ひとつ』にて詳細に語られていますので、宜しければご一読していただけますと幸いです。
 時期は神無月より大分過ぎた睦月ですが、出来立てのとろろご飯のように真っ白なスタートを切りたいという願いをかけて、早速巻末のレシピ通り再現してみたいと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、とろろの準備。濃い目に引いて漉しておいた鰹と昆布の合わせ出汁に酒、醤油、塩を加えてサッと一煮立ちさせ、沸騰したら火を消してしっかり冷ましておきます。その間、山芋は厚めに皮をむいてしばらく酢水につけてアクを抜き、水気をふいたらすりおろし器ですってからすり鉢に入れてすりこ木で滑らかになるまで丁寧にすります。
ははきぎ飯1
ははきぎ飯2
 この山芋へ、先程念入りに冷ましておいたお出汁を少しずつ加えてのばしながら辛抱強くすり合わせ、お出汁を全部合わせた後はさらになめらかになるまでよーくすりこ木ですり混ぜます。最初の内はなかなか合わさらないので結構力がいりますが、後になればなるほど楽になるのでその時まで気合で乗り切ります;(すり鉢の下には濡れ布巾を敷いておくと、底が安定してよりすりやすくすべりにくくなります)。
ははきぎ飯3
ははきぎ飯4
 次は、番外編として作中にて“ははきぎ飯”と一緒に里津さんに出されていた“烏賊とははきぎの実の柚子釜”作り。柚子は流水で綺麗に洗った後に切って中身をくり抜いて柚子釜にしておき、烏賊はやや細めの刺身状に切ってとんぶり(烏賊…ではなく以下、説明文でのみ「ははきぎの実」は「とんぶり」と表記します)と和えます。この烏賊を柚子釜に詰め、仕上げに柚子の果汁を上から軽く絞ります。
 ※面倒ですが、烏賊は細造りにする前の時点で横に細かく切れ目を入れておくと、とんぶりの絡みやすさがぐんと跳ね上がるのでおすすめです。
ははきぎ飯5
ははきぎ飯6
 お椀に盛ったぬくぬくの炊き立てご飯の上へとろろをトロリとかけ、最後にとろろご飯の中心へとんぶりを匙で落とすようにして飾り付ければ“ははきぎ飯”の完成です!
 ※傍らに“烏賊とははきぎの実の柚子釜”をこっそり添えておきます(^^;)。
ははきぎ飯7
 ご飯の盛り付け方ととろろのかけ方がイマイチだったせいで、どうものっぺりした印象の見た目になってしまったのが無念でしたがorz、ほんのり白いとろろに薄緑色に輝くとんぶりの実がとても映えている為、パッと見は何とかごまかせています;。お出汁の香りと見た目の美しさがあいまって食欲をかきたて、作中に表現通り確かに「早く食べてみたい」という衝動に駆られました。
ははきぎ飯8
 それでは、ご飯が熱々の内にいざ実食!いっただっきまーすっ!
ははきぎ飯9

 さて、味の感想ですが…単なるとろろご飯よりも俄然食べ応えがあって美味し!シンプルな味付けなのに、不思議と腹の底から活力が湧いて来る一品です。
 ごく一般的なとろろの場合、山芋の比率の方が高くて粘りがねっとり強くて山芋が主役!という感じですが、巻末にて紹介されたレシピのとろろはお出汁たっぷりな口当たりの優しいトロ~ッとした舌触りで、ご飯にゆるゆると絡むのがたまらない感じです。カツオと昆布の風味が濃い為山芋特有の匂いが抑えられて、まるで卵かけご飯みたいになめらかな味わいが特徴的でした。ほのかな甘味を感じる出汁醤油味がとろろに溶け込み、炊きたてのふっくらご飯とぴったり合っています。
 とんぶりを食べるのは実は今回が初めてだったのですが、作中で言われていた通り味がないのは想定内だったとしても、予想していたよりも遥かに淡い食感だったのには衝撃を受けました。とび子っぽく弾けるプチプチ感はなく、どちらかと言えば「ぷつっ」とやや柔らかく儚い食感なのですが、これがとろろと組み合わさると途端に存在感満点なアクセントに大変身しており、ご飯が熱々の内に一気にかっこむと恍惚となります。ご飯一粒一粒にとろろの滋味溢れる旨み、合わせ出汁の醤油味、とんぶりのプツプツとした歯触りが混然一体となってまとわりつき、今まで食べた中で一番お気に入りなとろろ飯でした。

 ついでに作ってみた“烏賊とははきぎの実の柚子釜”は、とろけそうな甘みとシコシコした食感の烏賊に、上品かつ爽快な香りの柚子果汁が絡んでほのかに甘酸っぱく身が引き締まっているのが美味で、時折ぷつんととんぶりが歯に当たって淡く潰れるのが烏賊とぴったり合っていました。酢で締めると繊細な烏賊の味は損なわれたかもしれませんが、同じく繊細な風味を持つ柚子を使用したおかげで両方の味わいが引き立っており、ついついお酒が進むちょっとしたおつまみに変身しています。
 体によし、目によし、味もよしと、いつも通り大満足な再現でした!
ははきぎ飯10
ははきぎ飯11

●出典)『今朝の春―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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2012.01.06 Fri 13:18  |  管理人のみ閲覧できます

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・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
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 …『拳闘暗黒伝セスタス』
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