『美味しんぼ』の“岡星流黒豚しゃぶしゃぶ”を再現!

 去年の六月末に仕込んでおいた“雄山のさくらんぼ酒”を最近初めて一杯味見と称して飲んでみたのですが、期待以上の出来栄えで思わずうっとりしました(´Д`*)。正直、春の再現が待ち切れなさそうです;。思い返せば、諸事情でゴタゴタしているとはいえ去年のにて再現予定だとお話していた“女性向けのデザートカクテル”、“アワビのしゃぶしゃぶ”、“パンケーキのスープ”、“はるさんの贅沢牛鍋”、“中華風ソーセージの炊き込みご飯”、“八百屋のスープ”、“牛の脂身丼”、そして今回ようやく再現する“岡星流黒豚しゃぶしゃぶ”など、散々お待たせしている美味しんぼ料理が沢山あるので、ここ数ヶ月はいい加減皆様をお待たせさせぬよう、意識的に再現しようと製作計画を練っております。
 どうも、未だ再現できていない漫画作品の方からも、せめて来月から一ヶ月に一回のペースでご紹介出来るよう計画の中へ練りこもうと色々考えている管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『美味しんぼ』にて岡星さんが五十年ぶりに豚肉を食べる名画家・永家先生の為に作った“岡星流黒豚しゃぶしゃぶ”です!
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ図-b岡星流黒豚しゃぶしゃぶ図-a
 山岡さんと栗田さんの間に陽士君と遊美ちゃんが生まれてすっかり落ち着いてきた頃、ご夫妻とはもはや家族同然の仲になっている京都出身の大富豪・京極さんから責任重大なお願いをされます。それは、肺がんにかかってあと余命半年だと宣告された日本画界の重鎮・永家房雄先生の為に、一番うまい豚肉料理を食べさせてやって欲しいという非常に重い内容。何でも、永家先生は十五歳の時に氏神様へ「一流の絵描きにさせて下さい。その代わり、大好きな肉を断ちます」という願掛けをして以来一度も肉を食べなかったというかなりの精神力の持ち主で、それから一心不乱に邁進してきたから今日の地位を築けたとの事。しかし、数年前に奥さんを亡くされてお子さん達の独立を見届け、尚且つ肝心の作品の方も納得のいく絵画を何枚も残す事が出来てじきに死に至る病を得た現在、そろそろ願をほどいて大好きだった肉料理を思う存分食べてからあの世に行きたいと決意を固めたというのが永家先生の言でした。
 それにしても、大好物の肉類を五十年も我慢…想像を絶するようなエピソードですね(一瞬、『ベルセルク』のグリフィスが言った「…げる」というセリフが頭に蘇っちゃいました;)。当管理人だったら、一週間もしない内に確実に泣き言を言い出すのが目に見えている為、冗談でも約束できないと思います(^^;)。
死ぬ前に、五十年断ってきた豚肉を食べたいと熱望する画家・永家先生
 そんなこんなで話が進んだ結果、牛肉料理は京極さん、豚肉料理は山岡さんと栗田さんの担当になりますが、京極さんから「今生の思い出になるような、最高の豚肉料理を」とやんわり念押しされた事もあってお二人は悩みに悩み抜き、最終的に岡星さんに協力を仰ぐ事にします。ちなみにこの時、山岡さんは岡星さんに相談する前に東西新聞文化部の皆さんの前で「こんな時こそ、天才岡星の出番だよ」とナチュラルにさらっと発言し、唐突な発表にびっくり仰天して「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、勝手にそんな…」と慌てふためく岡星さんに「へえ、あと半年の命の人が美味しい豚肉料理を食べたいと言ってるというのに、知らん顔をしようってえの!ああそう、そういう人だったのね(`Д´)!」と詰め寄り、最終的には半ば苦笑いで渋々承諾させていました;。考えてみると、こういう勢いに任せたなし崩し的なお願い方法は物語中盤くらいの栗田さんのやり方と結構似ている気がしないでもないので、何だかんだ言いつつ山岡さんは結婚してからは栗田さんの影響を着々と受けつつあるんだな~と妙に実感してしまいました;。
岡星さんの人情に訴えかけようとする山岡さん;
 そして数日後、いよいよ永家先生に山岡さん・栗田さん・岡星さんとで散々協議し合って吟味した最高の豚肉料理を≪岡星≫で食べてもらう当日にお出ししたお料理の一つが、この“岡星流黒豚しゃぶしゃぶ”です。基本的な材料は黒豚の薄切り肉・ほうれん草・昆布出汁の三種なので常夜鍋とほぼ同じですが、昆布出汁には日本酒の代わりにしょうがを香り付けの為として塊のまま入れたり、つけタレはポン酢やゴマダレではなく煮切り酒に梅干しを一晩浸けた所へ醤油とすりゴマを混ぜた物を用意したりなど、岡星さんならではのさりげない工夫がちょこちょこ凝らされているので「さすが!」と感心します。山岡さんと栗田さん曰く、「本物の豚肉で一度しゃぶしゃぶを召し上がると病み付きになりますよ」「人によっては、牛のしゃぶしゃぶよりはるかにおいしいと言います」だそうで、この日お出しした豚肉料理の中でも特に一押しして永家先生に解説していました。確かに牛しゃぶの方もあっさりしたコクがあっていいですが、正直当管理人もしゃぶしゃぶは豚肉の方が脂の旨味が濃厚かつ甘くて美味だと思う豚しゃぶ派である為、初見時には山岡さん達の意見には大きく頷いたのを覚えています。
 実を言いますと、山岡さんはこの食事会を終えた後に「五十年の肉断ちの願ほどきなんだから、もう一つドカンとくる劇的な体験をさせたい」と考え込む→富井副部長が奥さんからの命令でフラメンコを練習している現場を見て、世界最高の生ハムがあるスペインへ行かせたいと企画→永家先生大賛成、山岡さんご一行は豚肉料理を極める為はるばるスペインへ向かうという大仕事をこなし、見事成功させています。世界最高レベルの豚肉のすごさと、衝撃のラスト(?!)を楽しめて二度美味しい内容になっておりますので、続きは是非『美味しんぼ』83巻でご確認して頂けると幸いです(^^*)。
岡星渾身の豚しゃぶしゃぶに、舌鼓を打つ永家先生
 九州在住の為、通常の豚肉のニ~三倍の値段を覚悟するなら鹿児島県産の黒豚肉はスーパーでも簡単に購入できるので去年の末くらいからずっと再現を迷っていたのですが、このたび思い切って作中にて言われていたような「サツマイモ飼料で育てた鹿児島県産黒豚肉」と銘打たれたしゃぶしゃぶ用肉を購入しました。こうなったら、作中のレシピ通り忠実に再現してみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、食材の準備。お肉はしゃぶしゃぶ用にスライスされた黒豚肉(一言で薄切りとは言っても肩肉・バラ肉・モモ肉・切り落としなど部位は様々ですが、作中の絵では肩肉っぽかったのでそちらがおすすめです)を用意し、ほうれん草はなるべく生食可能な物を準備して水洗いし、根を切り落としておきます。
 ※生食用ではないほうれん草でももちろんOKですが、加熱用のほうれん草の場合アクが強いのであまり食べ過ぎない方がいいです。
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ1
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ2
 次は、つけタレ作り。小鍋に日本酒と梅干しを入れて強火にかけ、アルコール分が完全に飛ぶまで沸騰させます。やがて日本酒からアルコール分がなくなったのを確認したら火を止めて冷まし、別の容器へ移すか小鍋にフタをするかして、そのまま一晩放置しておきます。岡星さんが言うには、一晩自然に馴染ませておくと日本酒の旨味に梅干しの酸味がいい具合に調和するのだそうで、これでちょうどいい煮切りが出来上がるとの事でした。
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ3
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ4
 十分に寝かせた煮切りから梅干しを取り除き(梅干しは別皿に取り出しておき、他の料理に再利用します。酸味のほとんどが抜けている為、タコの梅肉和えなどといった繊細な料理に向いた梅干しになっています)、そこへ醤油とすりゴマをお好みで配合してよく混ぜたらつけタレは準備完了です。その間、土鍋に昆布のみでとったお出汁と皮をむいたしょうがの塊を加えて火にかけ、沸騰させておきます。
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ5
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ6
 食卓へ先程のお出汁入りの土鍋、黒豚肉とほうれん草を盛りつけたお皿、つけタレを運べば“岡星流黒豚しゃぶしゃぶ”の完成です!
 ※写真には映っていませんが、土鍋は卓上ガスコンロに乗せてお出しした方がいいです;。
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ7
 ほうれん草の緑色と豚肉のピンク色の対比が美しく、思わず「早くしゃぶしゃぶしたい!」という衝動に駆られました。つけタレから漂うすりゴマの香ばしい匂いが食欲をそそります。作中によると豚肉→ほうれん草→豚肉→ほうれん草と交互に食べると止まらなくなるとの事でしたので、楽しみで仕方がありません。
 この黒豚肉を、沸騰したお鍋のお出汁へ数回くぐらせ、好きな火の通り加減になるまでしゃぶしゃぶします。
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ8
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ9
 それでは、特製のつけタレにつけていざ実食!いっただっきま~す!
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ10

 さて、味の感想はと言いますと…月並みな言葉で言い表す事が野暮に思えてしまうくらい、美味。黒豚は格が違うと実感させられます!
 しょうがのすっきりキレのある風味が溶け出した昆布出汁で黒豚肉をしゃぶしゃぶしたおかげで、わずかながらに残っていた臭みがかき消されているのが好印象です。薄くスライスされていているのにしっかり「豚肉を噛み締めている!」という満足感があり、その上しなやかな弾力とすぐに噛み切れる柔らかさをも兼ね備えていた為衝撃的でした。作中で言われていた通り「さっぱりと優しい味わい」「肉の旨味が濃厚で、脂身の旨さも抜けていない」料理で、黒豚の脂身はここまで甘くしつこくないのかと感嘆させられます。
 また、つけタレもスリゴマの香ばしさとコクが程よく効いていて美味!普段口にする梅タレだと酸味が強く、よくも悪くも梅肉の存在感の方が先立つケースが多いのですが、岡星さん流の梅つけダレはまるで梅酒のように後から穏やかに効いてくる淡い酸味で、梅の風味がちゃんと煮切り酒や醤油と歩調を合わせながら調和してくるのが食べやすい感じでした。面白い事にポン酢に似たしょっぱ酸っぱい味でしたがあれよりもずっと深みがあり、煮切った日本酒の旨味が必ず舌に響くので繊細な食材を食べる時に向いている感じがします。黒豚肉やほうれん草の味わいを殺さず引き立てる素晴らしいタレだと思いました。
 合間合間でほうれん草をしゃぶしゃぶして食すと、その自然な甘味とほのかな苦味が口の中をさっぱりさせる為、次から次へと箸が進みます。茎は瑞々しくてシャキシャキ、葉は肉厚でザキュッと食感が異なるのもよく、時折香る土の香りに風情を感じました。常夜鍋とほぼ同じレシピですが、梅やゴマを使って心揺さぶる香りをプラスしたり、お出汁はお酒を入れずにシメの汁かけご飯を作りやすくしたりなどと随所に工夫が見られます。

 最後に残った黒豚の旨味たっぷりの最高なお出汁で、作中にて山岡さんと栗田さんからお勧めされていたとっておきのシメ・汁かけご飯も試してみました。作り方はこれまた簡単で、残ったお出汁にお豆腐を入れて煮立て、炊きたてご飯にかけるだけで出来上がりです。残った味付けは明記されていなかった為、当管理人のアレンジで醤油、塩、昆布粉末をさらに足して食べたのですが、豚肉から出たお出汁とは思えないほど落ち着いた、それでいてしつこくないのに濃厚な脂分が堪能できて感無量でした。質のいい豚肉を楽しむには最適のお鍋です。
岡星流黒豚しゃぶしゃぶ11

●出典)『美味しんぼ』 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.01.25 Wed 13:49  |  

これはスゴイ(^^;
思わずコメント残したくなるほど美味そうです(^^;

  • #-
  • さすらいの虎
  • URL

2012.01.25 Wed 19:38  |  

久しぶりにHPを拝見させていただいたら
写真の撮り方がすっごく上手になってる。
本当に美味しそうです。

  • #-
  • URL
(編集・削除用)
管理者にだけ表示を許可

Trackback

URL
http://luckyclover7.blog27.fc2.com/tb.php/782-334c265e
この記事にトラックバック(FC2Blog User)

プロフィール

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

Copyright © あんこ