『美味しんぼ』の“牛の脂身丼”を再現!

 先日、相方さんと男塾の学生とクロマティ高校の生徒とでは、どっちがよりお馬鹿なのか」なのかという議論を交わして少し盛り上がりました。「男塾の田沢は九九八十八という迷言をたたき出した」「いや、それを言うならクロ高なんて修学旅行の時に地球って何だ?というトンデモ質問をしたキャラがいた」「男塾の授業ではアルファベットの書き取りをやっていた!」「クロマティ高校は引き算が出来れば入学できる!」など、いろんな意見が出ましたが、結局のところ結論は出ないままでいます…。
 どうも、『課長バカ一代』に出てきた珍商品「無音洗濯機・駆動静香」「体も服も洗える洗濯機・洗えん坊将軍」が商品化されるのを心待ちにしている管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『美味しんぼ』にて山岡さんがある鈍感男性の目を覚まさせる為に作った驚きの掟破りな料理・“牛の脂身丼”です!
牛の脂身丼図
 山岡さんと栗田さんが結婚して、まだそんなに経っていなかった頃の事。栗田さんは新居であるアパートの一階に料理屋<はる>と隣り合わせるようにしてある馴染みのコンビニ・<YOROZUYA>で買い物をしていた時に偶然知り合いを見かけ、声をかけようとします(ちなみにこの<YOROZUYA>さんは、山岡さんが鶏飼育のプロだと太鼓判を押しているおマチさんの鶏肉やそのお友達が作る有機栽培のお野菜を取り扱っているというデパート顔負けの凄いコンビニ!おかげで二階に住む山岡さん達はいつでも本格的な食材で美味しい料理を作れるとの事で、あまりにも恵まれた環境につい羨ましくなります;)。しかし、栗田さんの知り合いでもあり母校の後輩でもあるその女子大生・遠山直子さんはタイミング悪く何と万引きをしようとしていた瞬間だった為、「憧れの栗田さんにばれてしまった!」と勘違いして恥ずかしさのあまり大声を上げて逃げてしまいます。何でも、コンビニの店主・野前さん曰く直子さんは数週間前からこの店に来るようになった新しいお客さんで、時々万引きをしてはいくもののその都度遠山家の若手顧問弁護士・大城高明さんがどこからか現れて「最近何故かああいう事をしてしまうようになったんです。申し訳ございませんが、今後同じような事があったら被害額を私にまでご連絡下さい、すぐに支払います」と頭を下げて謝る為、ただならぬ事情を察した人のいい野前さんはそれ以来変わったお得意客として直子さんと大城さんをとりあえず静観するようになったとのことでした。正直ここまで特殊な例のお客さんを応対した経験は当管理人にはありませんが、一風変わった癖を持ったお得意さんを意に沿うようにやんわり接客した事は学生時のバイト時代に幾度もあった為(特に印象に残っているのは、目の前で精算前の栄養ドリンクを一気飲み→すぐ後にぴったりの小銭と空瓶を残して無言で会釈して去っていくというのが定番だったあるご年配の方です;)、初見時は「こういうのはなさそうで実際あり得るかもしれない…」と考え込んでしまったのを覚えています。
 その後、直子さんと大城さんは野前さんの紹介で山岡さん達の元へ相談をしに来るのですが、栗田さんは直子さんと、山岡さんは大城さんとそれぞれ別々に話を聞くことによって、意外な真実が分かることになります。実は直子さんは大城弁護士の事を密かに好きで想いを募らせているのですが、そんな事を露とも知らないご両親は代々引き継いで大きくしてきた有名企業・<遠山産業>を一人娘である直子さんに継がせる為に婿を取らせようと何度も縁談を持ちかけ、おまけに大城弁護士は「誰か他に好きな人がいるんですか?」という無神経な話をしてくる為、精神的に追い詰められてむしゃくしゃした直子さんはつい万引きをするようになってしまったとの事。けれども、鈍い大城さんはそんな直子さんの気持ちに気付かないどころか、自身も直子さんを好きであるのにも関わらず「顧問弁護士がその家のお嬢さんを惚れたのはれたのなんて、職業倫理に反します!」「僕の父は遠山産業の役員であり、番頭なんです!番頭の息子がご主人の娘さんとどうにかなるなんてしてはいけないんです!」とガチガチな思い込みにすっかり囚われてしまっている始末(山岡さんは「んなアホらしい!江戸時代じゃあるまいし封建的な…」と一笑に付してましたが、株式会社を名乗っていても実態は昔ながらの個人商店みたいな会社は数多くありますので、当管理人は大城さんの言う事を笑えませんorz)。かくして、お互い好きあっているのにすれ違って最悪な事態になってしまった模様でした;。そこで、全てを知った山岡さんと栗田さんは、大城さんに「職業倫理だとかご主人の娘だとか、そんなくだらない事にこだわるな!」というメッセージを得意のお料理で伝える事にします。
大城弁護士につまらない思い込みをやめてもらおうとする山岡さん
 その数日後、山岡さんと栗田さんは「とっておきの料理を作るのを手伝って欲しくて」という口実で昼食会を開き、直子さんと大城さんをごく自然に呼び出すことに成功します。そして、山岡さんが「どんなに神経の鈍い弁護士にも分かるという料理だ(´ー`)」と意味ありげに言って用意したのが、この“牛の脂身丼”です!
 作り方は非常に簡単で、品質のいい牛の脂身と牛のこま切れ肉を細かく切ってフライパンで炒めて醤油とお酒で味付けし、丼ご飯の上へ乗せて仕上げにたっぷりの焼き海苔と白菜の漬物を飾ったらもう出来上がりです。一見乱暴な料理に見えるので、初めて作り方を知った時は大城さんのように「ひえええ!」とひるみましたが;、数年前に『ミスター味っ子Ⅱ』内で「肉の風味は、脂身の味で大きく左右される。悪い肉でも上等の脂身を混ぜると肉の風味は格段にアップするが、上等の肉にまずい脂身を混ぜると、風味ががくんと下がる」「フランス料理にも、脂肪の少ない肉に脂身を刺し加える技法がある。その為の専門の大針も残っているくらいだ」「脂身が赤身と空気に触れると、ラクトンという香り物質が出来る。このラクトンが、肉を甘く香ばしくするんだ」という豆知識を得て以来、ある意味とても贅沢な美味しさを持つ丼なのでは…と思うようになりました。実際、最初は気味悪がっていた大城さんも一口食べてからは「食欲が燃えるように湧いて来るよ!」と全く新しい味に大絶賛で、お嬢様育ちの直子さんにも「ちっとも脂臭くない!」と好評でした。
牛の脂は予想以上に上品な味わいでした。
 昼食会後、山岡さんは堅い思い込みを持ったままでは食べられなかった“牛の脂身丼”の美味しさを引き合いに出し、「自分では破ってはいけない掟みたいに思い込んでいるものが、実は人間の本質とは無関係な、くだらない鎖である事が他にあるんではないでしょうか?」という深い言葉を大城さんにかけます。おかげで勇気を持った大城さんは直子さんとうまくいき、帰りは腕を組んで外を歩くまでに発展するのですが、その様子を見ていた山岡さんが「あの鈍感男、手間かけさせやがって…」と自分を棚に上げて発言したのを栗田さんが「あきれた!大城さんに輪をかけた鈍感男だったくせに!!」と反論し、最後に「え?俺が鈍感?何で?どうして?」と山岡さんが素で問いかけてきたのを栗田さんが呆れて嘆息したところで話は終っていました;。なんと言いますか、山岡さんは他人の事となると鋭いのにどうして自分の事となるとここまで鈍いのかと栗田さんでなくてもため息をつきたくなるエピソードです(^^;)。
くだらない拘りは捨てようと諭す山岡さん
 先週、ブランド牛の脂身とまではいかなくても黒毛和牛の牛脂とこま切れ肉という現時点で手に入れられる最高の材料を手に入れる事が出来ましたので、やっと再現する決意をしました。せっかくですので、作中のレシピ通り
作ってみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、各材料の準備。牛の脂身と牛こま切れ肉は出来る限り品質のいい物を用意して(贅沢を言ったらキリがないですが、国産の物であれば何でもある程度の美味しさは保障できると思います)大雑把に細かく切り、白菜の漬物は食べやすい大きさにざっくり切り揃えてギュッと水気を絞っておきます。
 ※作中の絵を見る限り薄きり肉っぽかったので、牛の脂身も牛こま切れ肉もそれっぽいのを選びました。ちなみに山岡さん曰く、「牛の脂身はロウソクのように固くて、ボロボロ砕けるような感じの部分が旨いんだ」との事でした。
牛の脂身丼1
牛の脂身丼2
 次は、炒め作業。熱したフライパンへ先程の牛の脂身と牛こま切れ肉を投入して混ぜ、脂身から脂が完全に抜け切ってしまう手前になるまでよく炒め合わせます。その際、あんまり炒め過ぎてしまうと口当たりが悪く旨味が抜けきってしまいますので程ほどが肝心です。
牛の脂身丼3
牛の脂身丼4
 そこへ醤油、日本酒をかけて自分好みの濃度に味付けし、日本酒のアルコール分が飛んで調味料が全体に馴染んだのを確認したらすぐに火からおろします。この肉と脂身を丼に盛っておいた白ご飯の上にどっさり乗せ、さらにフライパンに残っている脂と肉汁を回しかけます(つゆダクだと濃すぎるので、「少し足りないかな?」と不安になるくらいでOKです)。
牛の脂身丼5
牛の脂身丼6
 丼の上へサッと炙ってちぎっておいた焼き海苔を多めに振りかけ、丼の脇に白菜の漬物をひとかたまり添えれば“牛の脂身丼”の完成です!
牛の脂身丼7
 牛肉の濃い脂の匂いと、海苔の鮮やかな香りが入り混じり、思わず食欲を掻き立てられる丼です。いかに脂身丼といえど、ご飯と牛肉の切れ端のみでは殺風景過ぎて見ているだけで胃にもたれていたと思いますが、傍らにちょこんと添えられた白菜の漬物のおかげで彩りよく仕上がっています。脂身とこま切れのみを使った丼を食べるのは初めてなため、一体どんな味なのか気になります。
牛の脂身丼8
 それでは、出来立てほやほやの内にいざ実食!いただきまーす!
牛の脂身丼9

 さて、味の感想はと言いますと…濃ゆいのにさっぱり食べられる、まさに矛盾する美味しさが両立している奇跡の丼。ツボにはまるとバクバク平らげられる、まるで胃袋を揺さぶるような味わいです!
白菜の漬物のおかげで、さっぱりいけちゃいます!
 牛の脂身自体は噛み締めるとプルプルフワフワして柔らかく、気がついたらスゥッと口の中から消えているって感じで、意外にも油臭かったりくどかったりという事は一切ありませんでした。豚の脂身が野生的で甘口とするなら牛の脂身は上品で辛口というイメージで、重厚で力のあるコクがたまりません。醤油と日本酒のみというシンプルな味付けのせいかむしろ後口はキレのいい方で、キリリとした焦がし醤油味がついた脂を絡ませたご飯はそれ単品だけでも十分味わい深くておいしかったです。また、上に振り掛けられた海苔の香り高い磯の風味が牛肉特有の一癖ある匂いをうまく緩和させているのがいい感じでした。
 “山椒の牛肉丼”とよく似ていますが、こちらは脂身をたっぷり使用しているせいかより肉の旨味たっぷり&こってりしており、口当たりが優しいのが特徴的でした。何より白菜の漬物がすごくいい仕事をしていて、作中で栗田さんが言っている通り「舌の上の脂が流れて味覚が新鮮になって、次の一口が余計に美味しくなる」為、あっさり食べる事が出来ます。白菜の漬物の素朴な甘味と舌に響く酸味とが牛肉の旨味を損なわずに引き立ててサラッとした食べ口にしており、まさかこんなにも相性ばっちりとは思いもしませんでした。

 白菜の漬物が驚くほど大量に食べられちゃう一品ですので、丼に乗せるだけではなく、別の器にたっぷり用意して食べる方が断然おすすめです。古漬けと浅漬けのどちらでも合いますが、後口をより軽くするには浅漬けのほうが向いているのではと思いました。掟破りの奇想天外な料理ですが、また食べたくなる一品です。

●出典)『美味しんぼ』 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ/小学館
●参考文献)『ミスター味っ子Ⅱ』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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