『デザートはあなた』の“オイルサーディン丼”を再現!

 最近本棚に本がおさまらなくなってきた為、仕方なくあまり読まなくなった本を段ボールに詰めては自室の隅に置くようにしているのですが、はっと気がつくとまるで引越し寸前の住人の部屋みたいになっていて少し焦りました;。内心、床が抜けてしまわないかとひやひやしています…。
 どうも、掃除のたびに重い段ボールを移動させなければいけない為慢性的な筋肉痛になりつつある管理人・あんこです。

 本日作る再現料理は、『デザートはあなた』にて主人公・大西俊介さんが意中の女性・乃里子さんの家にあるあり合わせの材料でちゃちゃっと作った“オイルサーディン丼”です!
デザートはあなた 森 瑶子
 小説『デザートはあなた』とは、大手広告代理店のTV企画制作部に勤めている一見プレイボーイ風(けれども毎回口説きは不発に終わり、結果すごすごと一人寝ばかりの毎日を過ごす三枚目な役回りです;)な三十九歳の主人公・大西俊介さんが様々な才色兼備の女性達といい仲になろうとして悪戦苦闘しつつ、趣味である料理作りに励む日常を描いた短編集。一見ただのコメディ風味な恋愛小説に見えますが、作品の根幹には大西さんが若い頃に見て以来すっかり虜となっているバルセロナのサクラダ・ファミリア協会への情熱と、あと数十年は続くその建築事業に尽力している日本人の彫刻家・今井田勲氏のパトロン探しという壮大なテーマとして存在している為、物語に厚みがあります。また、作中の至る所で「石は生きているんですよ。不用意にノミを深く入れすぎると、石が‘痛い’と叫ぶのが聞こえるんだ」「口説いたりすかしたり、なだめたり、時にはじれて罵ったり、怒鳴ったり、また口説いたりと、釣りは女性を扱うのに酷似している」など、なかなか味のあるシリアスな名言が時折ぽっと出てきて感心したかと思えば、美食家で己の料理にプライドを持つ大西さんが高級食材を何時間もかけて煮込んで作成した力作・“牛の胃袋のポモドーロ風煮込み”を「オイ俊介よ、白い飯ねえのか?この煮込み、白い飯にかけて食べたら旨いに決まってる(゜∀゜*)」「次からは、トンカツソースとケチャップ持参で来る」と極めて庶民的な評価して絶句させる二十年来の仲の友達・宮脇三四郎さんとのギャクテイストなシーンもあったりする為、どちらに重点をおいても楽しめる良作です。ちなみに、当管理人的にはキャビアのパスタにフランスの白ワインを合わせるというゴージャスな食生活を送る大西さんより、駅前スーパーで買えるキャベツのおまけがたっぷりついてくる肉コロッケで白ご飯をもしゃもしゃ食べる三四郎さんの食生活の方が、正直共感&興味を持ちました;(ただ、肉コロッケの方がいいと言い放つ三四郎さんに対して「お前、帆立貝だぞ。隠し味にウオッカを使ったレモン風味のスパゲティだぞ。それに、牛の胃袋をとろけるまで煮込んだヤツだぞ、ホッペタがおちるぞ!」と必死に食いつかせようとする大西さんの姿はちょっと微笑ましかったです^^)。
 今回ご紹介するエピソードは、そんな大西さんがベテランの壁画家・安達乃里子さんの為にお昼ごはんを作るというお話。前々から乃里子さんに目をつけて狙っていたものの、半年くらい連絡が途絶えていてすっかり疎遠になっていた大西さんはある日、唐突に「何か美味しい物が食べたい」と乃里子さんから電話がかかってきたのをチャンスだと考え週末に遊びに行く事になります(なお、電話を受けたのは会社で近くでは部長がジロリと睨みを効かせたようでしたが、大西さんはびくともしていませんでした;。ここまでプレイボーイぶりを徹底されると、もはや天晴れです)。
 そして休日、大西さんはいそいそと乃里子さんの部屋へ遊びに行くのですが、そこで乃里子さんの気を引こうとして「家にあるあり合わせの材料だけで昼食を作る」と豪語してしまいます。が、実を言いますと乃里子さんはかなりの料理嫌いで、家にあるのはオイルサーディン缶・干からびかけたネギ・七味唐辛子・醤油・お米くらいという散々なもので、大西さんは自業自得とはいえ頭を抱えます;(それにしても、スパゲティみたいな乾麺すらないのが普段料理をしない女性のリアルさを巧みに表現していて何とも言えません^^;)。
 けれども、それまで食べてきた色んな料理を思い出していくうちにピンと閃いた大西さんが即興で手早く作り上げたのが、この“オイルサーディン丼”!作り方は本当に簡単で、オイルサーディンを七味唐辛子と醤油で味付けして炒めた物をご飯の上にかけ、仕上げに刻みネギ、柑橘類の果汁(カボス、柚子、レモンのどれでもOK)をかけたらもう出来上がりです。大西さんが言うには、出来立てを三~四度かき混ぜて一気にかっ込むのが理想との事で、熱いうちに食べきるのが美味しさの秘訣だそうでした。ちなみにお味のほうは、最初はからかい半分で意地悪く「男の想像力とチャレンジ精神で、どうぞ何かおいしい物を作ってちょーだい」と言っていた乃里子さんに「あんたって、もしかしたら天才かも」と感心させてしまうくらいおいしいのだとか。ここまで好感触に終わったのなら、大西さんの狙いはうまくいきそうなものなのですが…大西さんのある趣味が災いして、とんだトホホな結果に終ってしまいますorz。なので、結末は是非本作にてご確認してみて下さい(^^;)。
 オイルサーディン缶はいまや相当に高騰した値段になっているので再現を躊躇していたのですが、近所で破格の見切り品(賞味期限が近いという事で、何と298円!)を見つけたので、早速ホクホク顔で再現してみようと思います!

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、各食材の準備。オイルサーディンは缶を開けて中から月桂樹の葉を取り出しておき(意外とカットしたのが入っている缶詰が多いです。ただ、ない場合は開けとくのみで大丈夫です)、レモンは表面を水洗いした後真っ二つに切り、小ネギは細かく刻んでおきます。その間、ご飯を炊いておきます。
 ※厳密に言うと、作中で実際に作られたレシピはレモンは使われていなかったり、ネギは太い長ネギの方だったりするのですが、作中で大西さんは「これをこう出来たら自分好みでもっと美味しいのに…」と何度も呟いていたので、そちらのレシピの方で再現してみました;。
オイルサーディン丼1
 次は、炒め作業。ご飯が炊き上がる寸前になったらフライパンに先程のオイルサーディンを中のオイルごと全て加え、中火にかけます。オイルが煮立ってサーディンの方もこんがり香ばしく焼けてきたら醤油を回しかけ、フライパンをゆすってオイルと醤油をよく混ぜ合わせながらサーディンに味をしみこませます。
オイルサーディン丼2
オイルサーディン丼3
 弱火にしてオイルと醤油を少し煮詰めさせたら、七味唐辛子を自分好みの分量だけ投入してさらに混ぜ(ただ、辛いもの好きな方でしたら「やりすぎかな?」というくらいかけた方がもっと美味しくなります^^)、サーディンに絡ませます。これで、ご飯の上にかける具は出来上がりです。
オイルサーディン丼4
オイルサーディン丼5
 丼に炊き立てのご飯をよそい、その上にさっきのオイルサーディンをお箸で一つ一つ丁寧に飾ってフライパンに残っているオイルをドバッとかけ、刻みネギを惜しげもなくたっぷり小山状になるまで盛り、最後にレモン汁(是非とも、絞りたての物を推奨します!)をやや多めにかけます。
 ※レモンではなく、カボス、柚子、すだち、シークワサーを使ってもOKです。
オイルサーディン丼6
オイルサーディン丼7
 具を全て乗せたら冷めない内に急いで机へ運び、傍らへお箸を添えたら“オイルサーディン丼”の完成です!
オイルサーディン丼8
 こんもり乗っかかっているネギといい、香ばしく焼けたオイルサーディンやレモンの爽やかな匂いといい、七味唐辛子と醤油の色が溶け込んだオイルが染みたご飯といい、見ているだけで食欲が沸いてくるのが分かります。缶のオイルを全部使うと知った時は油っこそうだと心配していましたが、そこまでテカテカした感じではなかったので安心しました。確かにこれは、熱々の内が一番美味しそうです。
オイルサーディン丼9
 それでは、何度かお箸で全体をざっと混ぜていざ実食!いただきまーす!
オイルサーディン丼10

 さて、味の感想はと言いますと…ありあわせで作ったにしては上出来な美味しさ!熱々の所を一気にハッホッとかっこむとたまらないです!
 イワシの旨味エキスがたっぷり溶け込んだオイルと焦がし醤油の奥深い塩気、そして七味唐辛子のピリ辛な刺激が混然一体となって炊きたての白いご飯にねっとり絡み、和風なのにどことなく洋風を思わせる洒落た味わいに変身しています。例えるとするなら「にんにく抜きの和風ペペロンチーノご飯」という感じで、このこってり濃いめなご飯の後口を絞りたてでこの上なくフレッシュなレモンの酸味と爽快な香気がスカッと引き締め、キレのよい物にさせているのが食べやすくてナイスでした。どっさり入っている青ねぎが絶えず口の中でシャキシャキザキュッと鮮やかな食感を主張してくるのも爽やかさをさらに増幅させていて、単調さを防ぐ程よいアクセントになっています。
 オイルサーディンはサイズこそ小さいのですが、食べてみるとちゃんといわし特有の濃厚な脂分、青魚らしい一癖ある旨さがギュッと濃縮されており、立派なメインとしての力を持っていました。噛み締めるとこんがり焼けて少し硬いようで不思議に柔らかい口当たりな上、サバよりも癖がなくアジよりガツンとくるコクがご飯にぴったり合っています。また、七味唐辛子に含まれるチンピの清々しさ、山椒のスパイシーさ、黒ゴマの香ばしさなどが複雑に入り組んだ様々な香りの合唱がオイルサーディンやご飯の味へさらなる奥行きを与えており、内心舌を巻きました。

 とにかく、ネギを大量に準備する事をお勧めしたいです。夜中に小腹がすいた時の夜食や、休日にサッとお昼を済ませたい時などに向いている丼でした。オイルサーディンの値段が高騰している時はかえって高くつくご飯ですが、缶詰が安く買える時には間違いなくお得な料理なので、色んな方にお勧めしたいです(^^*)。

●出典) 『デザートはあなた』 森瑶子/角川書店
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.02.26 Sun 11:28  |  

こんにちは!
マンガは全然読まないのですが、いつもあんこさんのブログを見ては
「美味しそう!」と読んだ気になっています^^
私、オイルサーディン大好きで冷蔵庫にいくつも保管しているのですが、いつもパスタに絡めてばかりだったので、このレシピを見て「今日の昼ご飯はこれだ!」と決めました(簡単だし…)。
ちなみに近所のスーパーのオイルサーディンは105円。
安物なんでしょうが、オイルサーディン=格安の食材と思ってました(^^;)
一度10個まとめて買ったらレジの人に「今からパーティ-?」と聞かれました(いや、全部1人で食べるんですが)
これからも楽しいマンガレビューと美味しそうな料理、楽しみにしています。

  • #-
  • みゆ
  • URL

2012.02.29 Wed 01:35  |  

はじめまして、いつも楽しく拝見させていただいております。
別サイトで知ったレシピですが、オイルサーディン醤油風味どんぶりを作ったことがあります、おいしいですよね。
初めてここにたどり着いたきっかけは「鉄鍋のジャン」飲めるラー油
他記事も絶品揃いですが、私の一番は「魯山人のご飯」です。何度も作らせていただきました。

事後報告になってしまうのですが、勝手にミクシーお料理コミュに魯山人のレシピを紹介してしまいました。
もしあんこさんが宜しければ、ここのブログのURLなども記載できればと思っているのですが、いかがでしょうか?
お返事お待ちしております。

  • #8iCOsRG2
  • tomy
  • URL
  • Edit

2012.02.29 Wed 07:49  |  管理人のみ閲覧できます

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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