『美味しんぼ』の“栗田さん流祝いのさくらんぼ酒”を再現!

 桜というと、「入学式」「新生活」「四月」というイメージが一番メジャーだと思いますが、当管理人は南の方に位置する九州で三月中旬~四月初旬に桜が開花のピークを迎えるのを見てきたせいか、「卒業式」「回顧」「別れ」「三月」というイメージが強いです。九州の桜は散るのが早い為、入学式は桜というよりむしろ青々とした新緑の印象が色濃く、おかげで漫画などで見る春のシーンはいつ見ても羨ましい気持ちで一杯になります。
 どうも、お花見と聞くとお団子、桜の塩漬けあんぱん、たい焼きなど何故か甘いものばかり連想してしまう管理人・あんこです。

 今回再現する漫画料理は、『美味しんぼ』にて栗田さんが海原雄山氏を説得する為に即興で考え出した“栗田さん流祝いのさくらんぼ酒”です!
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒図
 色々とごたつきながらも、めでたく結婚する事が決まった東西新聞社文化部花の女性社員・田端さんと写真家・荒川さんですが、田端さん達が結婚式で出す料理について話し合っている時、偶然打ち合わせに来ていた帝都新聞社の編集者が「そうだ!今度は披露宴を舞台に究極のメニューと至高のメニューの対決をしよう!」「うむ!究極も至高もどんな披露宴のメニューを作るのか興味がある!」と盛り上がったのがきっかけで、急遽田端さんの結婚式は究極のメニューVS至高のメニューの披露宴料理対決の場として使われることが決定してしまいます。これにはさすがの田端さんも「迷惑な話だわ…私的な披露宴を、会社の仕事に使われるなんて」と愚痴を漏らしていましたが、山岡さんから「その分、会社が披露宴の費用をかなり負担するなんて部長が言っていたけどねぇ…」と聞いた途端、ガラッと意見を変えて「一生の思い出になるわね(´∀`*)!」と喜んでいました;。確かに、何百万円かかってもおかしくない費用が格安になるのであればちょっとやそっとの不満なんか吹っ飛んでもおかしくないですね(^^;)。
 しかしそんな中、荒川さんの育ての親と言っても過言ではない師匠・木曽先生が「披露宴の愚劣さは、年を経るごとにひどくなっている!」「そんな場所に出席するくらいなら、死んだ方がマシだ!」と激怒してしまった事から話は一転、最終的に田端さんと荒川さんはすっかり落ち込み、「木曽先生に出席してもらえないなら、披露宴なんか開いても仕方がない…もう、このお話は断ろうか」という結論に至ってしまうまでになります。けれども、田端さん達の結婚式を心から楽しみにしていた栗田さんは一計を案じ、木曽先生と公私共に親しい海原雄山氏に披露宴へ何とか出席してもらうよう説得してもらうよう美食倶楽部へ直訴しに行く事にします。
 ここまで読むと「栗田さんは相変わらずお人よしでいい人だな~」という感想だけで終わるのですが、実を言いますと栗田さんは田端さんと荒川さんの為だけではなく、「このままだと、<究極>と<至高>の対決はなくなってしまいます」「今度の対決がなくなると、山岡さんが海原さんに勝つ機会が一つ減るので困ります!」というもう一つの目的の為に動いていた事が後に明らかになります。こういう緊迫した環境の中、つい一つの事柄しか目に入らなくなりがちなのが人の常ですが、栗田さんは田端さんと荒川さんのみならず、東西新聞社、山岡さん、そして自分自身が満足する為にと広範囲に目を配っている為、最初読んだ時は「何て目配りのきく女性なんだろう」と舌を巻いたのを覚えています。こういう前向きな欲は己だけではなく周囲の人にもいい結果を招く事が多いので、栗田さんが担当した対決が何気に勝率が高いのはこういう気質と決して無関係ではないと思います。
 当初は素っ気なく対応していた雄山氏も、こういった栗田さんの姿勢と山岡さんへの密かな想いを透かし見たのに好印象を持ったらしく、栗田さんに一つ試験を与える事にします。その課題とは、「縁起がよいと同時にうまい、めでたい席にふさわしい飲み物」を作ってもらうというなかなかの難題。雄山氏曰く、即興でどれだけ想像力・創意工夫・食べ物の本質を把握する力を発揮できるのかを試した飼ったとのことで、いきなりそんな不意打ちの課題を出された栗田さんは「一体どうしたらいいの…!」と悩みに悩みます。
まるでRPGのラスボスみたいにどーんと立ちはだかる雄山タン
 そんな時、栗田さんがちょうど桜が咲いている今の季節と、東西新聞社文化部での「田端さん、いい時期に結婚するねぇ。桜の花を背に花嫁姿か」「はは、めでたいめでたい。今年は姥桜も咲きます(by山岡さん。当然の如くどつかれてました;)」というやり取りをヒントにして思いついたのが、この“栗田さん流祝いのさくらんぼ酒”!作り方は材料さえ揃っていればあっという間に出来上がる簡単なもので、熟成期間十年を過ぎた雄山氏秘蔵のさくらんぼ酒を水で割り、塩出しして戻した塩漬け桜を中に入れて最後に肉桂の粉を散らせばもう出来上がります。栗田さん曰く、 「昔から結婚を祝う際には八重桜の塩漬けを使った桜茶を用いますし、ちょうど桜の開花時とも重なる事だし、桜の花を使おうと決めたのです」だそうで、とにかく心が浮き立つような楽しい飲み物になるようにと考えて作ったと話していました。
 ※ちなみに、実はこの時山岡さんサイドの味方でもあるおチヨさんは栗田さんを助けようとして、山岡さんが書いためでたい飲み物メモを渡そうと屋敷内を走り回ってくれていたのですが、わざとなのか天然なのか絶妙なタイミングで雄山氏が現れて「おチヨ、本を書斎に運ぶのを手伝ってくれ」と大量の本を手渡したり、書道の助手として傍にいてもらって「ふむ、今日は気合が充実している。おチヨ、新しい紙を」と言って引き止めたりとするなど、なかなかにユーモラスなシーンがあったのには笑いました;。見ようによってはおチヨさんに甘えているようにも感じる雄山氏は結構かわいかったので、こういうシーンを集めた日常系スピンオフ作品があったら案外面白い…かもしれません(^^;)。
桜の開花にヒントを得て生み出された、季節的に相応しい飲み物
 その場で考えたにしては十分すぎる程立派なお祝いの飲み物に見えるのですが、それでも雄山氏にとっては不満点が多かったらしく、「桜湯からの発想か…何とも安易な」「祝い事が起こるのは春と限ったわけではないから、桜の花が相応しいとは限らない」「アルコールが入っているのは万人向きではない」と容赦なくズバズバ突っ込んでいましたが、何だかんだ言いつつ結局は「日本人にとって桜の花は特別な意味を持つ。たとえ季節はずれでも、祝いの場に桜を飾りたいのは日本人の信条だ」「アルコールがはいているとはいえ、昔からお神酒と言って祝いの席には酒はつき物」「この演出は大勢がいる場では使える」と栗田さんのアイディアを認めていますので、元祖ツンデレキャラの面目躍如なシーンだと思いました;。おかげで、海原雄山氏の課題をクリアした栗田さんはめでたく木曽先生に披露宴に出席してもらい、究極のメニューVS至高のメニューの対決を行ってもらう事が出来たのですが…この続きは、是非『美味しんぼ』27巻にてご確認ください(^^)。
何だかんだ言いつつも、栗田さんの飲み物を誉めて認める雄山タン
 レシピ自体は非常に簡単なものの、肝心のさくらんぼ酒の熟成期間が半端ではない長さだったのでずっと再現を躊躇していたのですが、最近ようやく去年に作成して寝かせていた“雄山のさくらんぼ酒”の味がいい具合にまろやかになってきた為、なんちゃってでもいいので再現してみようと決心しました。作中に出てくる本物とは雲泥の差ですが、お暇つぶしにでもお読みして頂けますと幸いです;。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、トッピングする桜の塩漬けの用意。水を張ったボウルに、桜の塩漬け(「桜茶」という名称で売られているものでも可です)を入れて軽く混ぜ、そのまま十五分~三十分水に浸けて塩抜きをします。桜の花から余分な塩気が抜けてちょうどいい塩梅になったら水を切り、キッチンペーパーか清潔な布巾で水気をしっかりとっておきます。
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒1
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒2
 次は、さくらんぼ酒の準備。あらかじめ仕込んでおき、約一年近く経過して深い琥珀色に変化した“雄山のさくらんぼ酒”を大きなガラス容器に入れ、そこへ好きな配合で水を加えたらよく混ぜ合わせます。このガラス容器へ先程塩抜きしておいた桜の花を投入し、ざっと混ぜます。
 ※この時、冷蔵庫で冷やしておくと口当たりがさらに良くなるのでお勧めです。
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒3
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒4
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒5
 このさくらんぼ酒の上から肉桂の粉を少しずつ加減しながらギリギリの量まで散らし、ガラスのティーカップと共に机へ運べば“栗田さん流祝いのさくらんぼ酒”の完成です!
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒6
 思っていたよりも香りが強いのが印象的で、少し離れた所からでも甘くて高貴な芳香が漂ってきたのにはドキドキしました。さくらんぼの清々しい香りと、肉桂の艶やかな香りが複雑に入り混じって鼻腔に届くせいか、目の前にあるだけで不思議とリラックスします。琥珀色のさくらんぼ酒と桜の塩漬けの薄ピンク色の対比も予想より美しく、これは味の法にも期待が持てます。
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒7
 それでは、ティーカップに一人分注いでいざ実飲!いただきます!
栗田さん流祝いのさくらんぼ酒8

さて、味はと言いますと…一口飲んだ途端、春を感じる美味しさ!思わず襟を正したくなる、とっても雅で香り高い飲み物です!
 塩漬けにされる事によって艶やかな風味がギュッと凝縮された桜と、じっくり熟されたさくらんぼの爽やかな風味が口の中で混然一体となり、うっとりします。惜しくも、作中で登場した雄山氏秘蔵・十年物のさくらんぼ酒とは違って一年未満しか寝かせていない為そこまで深みのある味わいにはならなかったんですが、「肉桂の香りがうまい具合に、桜の花とさくらんぼ酒の二つの香りを結び付けてくれました」「色といい、香りといい、全体にウキウキと心の浮き立つ楽しい飲み物」という栗田さんの言葉そのままな出来栄えでした。
 肉桂の甘やかな風味がさくらんぼ酒の自然な甘酸っぱい滋味を際立てており、華やいだ気持ちにさせてくれます。時折桜の塩漬けを噛むとわずかな塩気がにじみ出してジワジワと舌へなじんでいく為、スイカと塩の原理で甘さがより引き立つと同時に程よいアクセントとなっていました「ほろ酔い気分になれる桜湯風チューハイ」というイメージです)。そのまま飲むのはもちろん、桜餅やまんじゅうと一緒に食べても相性が良さそうに感じました。

 食前酒として出すのはもちろん、甘い物を頂く時に一緒に食べてもいけるんじゃないかな~と思いました。見た目が華やかなのはもちろん、香りも優雅な気持ちになれる甘美な物でしたし、何より「春」「お祝い事」を一口で身近に感じる事が出来る力を持つ飲み物はそうないので、強く印象に残った再現でした。

●出典)『美味しんぼ』 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.05.04 Fri 19:15  |  

お久しぶりです。相変わらず渋いセレクトですね。

さくらんぼの時期になる度に、このさくらんぼ酒を造ってみようと思うのですが、風呂場で冷やしたさくらんぼを大量に食べて種を洗面器に飛ばすのが好きという、歪んだ楽しみを持つ自分には無理ですw 

今度、政治部の松川さんと米国人妻の夫婦喧嘩の仲裁で作った鶏のから揚げ作って下さい!!!

  • #-
  • はかたのひと
  • URL

2012.05.06 Sun 22:07  |  このさくらんぼ酒を作ったのはだれだー!

ついに『雄山のさくらんぼ酒』が完熟したのですね!
写真を見ているだけで春の香りに酔いそうです。

ぜひともこれを10年熟成させて、本物の『雄山のさくらんぼ酒』を…

2012.05.15 Tue 21:31  |  管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • #
(編集・削除用)
管理者にだけ表示を許可

Trackback

URL
http://luckyclover7.blog27.fc2.com/tb.php/801-9947a011
この記事にトラックバック(FC2Blog User)

プロフィール

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

Copyright © あんこ