『幸福のディッシュ』の“さんまの蒲焼きパスタ”を再現!

 不思議な事ですが、最近「好きな食べ物は?」と聞かれると料理名だけではなく、ほぼ同時にその料理にぴったりな飲み物も頭に浮かんできて「この組み合わせが好きだなぁ…」と考える事が多くなっています(例:「焼酎と豚角煮」「餃子とビール」「大福と濃い緑茶」など)。昔はあまり飲み物には頓着していなかったので自分でも意外なのですが、料理と飲み物がピタリと合って相乗効果で旨味が二倍にも三倍にも膨れ上がっていく時の心境は至福そのものですので、当分この考え方は続きそうです。
 どうも、アサヒの黒ビールが予想以上に甘ったるくなくキレがいいのに驚いてすっかり気に入り、合いそうなおつまみを片っ端から試している管理人・あんこです。

 本日再現する漫画料理は、『幸福のディッシュ』にて主人公・味見旬平さんが缶詰の売り上げアップを目指してプレゼンテーションの場で作った“さんまの蒲焼きパスタ”です!
さんまの蒲焼きパスタ図
 漫画『幸福のディッシュ』とは、クッキングパパならぬクッキングバイヤーとなって日本中の人達へ未だ知られていない美味な食材を紹介して広めていきたいと燃える若干二十三歳の主人公・味見旬平さんが、入社したばかりの食品専門商社・本丸食品で奮闘するビジネス系料理漫画です。何でも味見さんは浅草の有名な天ぷら屋の次男坊という事で幼い頃から天ぷら一筋で生きてきたものの、成長するにつれて「もっと美味しいものを食べたい!食文化を学びたい!」という情熱に目覚め始めたそうで、高校卒業後に世界各地の名産物を食べ歩きしてからはさらにその気持ちに拍車がかかり「実家を継ぐのではなく、様々な食材の色んな旨さを沢山の人達に紹介出来る<食のビジネスマン>になろう」という決意が固まって現在に至るとのことでした。
 往来のグルメ・料理漫画だと主人公の目的は「料理を作って食べてもらう」のがメインですが、味見さんは基本的に「スーパーや料理店といったお得意先に、自分が自信を持って薦める商品を仕入れてもらう」のが目的なので、一味違った視点で<食>事情を捉える事が出来て面白いです(ただ、作中では商品のよさを知ってもらう為にという名目でちょくちょく料理を作っていますので、実際の所は半分バイヤー、半分料理人といった感じです;)。正直、バイヤーを扱った作品は今作よりもずっと完成度の高い『おいしい銀座』がありますし、かといってグルメ漫画として見るのも中途半端な感じなのであまり大手をふってお勧めできる作品ではないのですが;、あまり知られてはいないものの実は身近な場所でかなり重要な役割を果たしている食品バイヤーのお仕事を大雑把に学ぶことが出来ますし、そこそこ個性的なオリジナル料理が登場してくるので新しいレシピのヒントになったりとちらほら見所がありますので、一読の価値はある作品だと思います。
食のビジネスマンを目指して中途入社した主人公・味見旬平さん
 味見さんが配属されたのは、会長が「新しい食の分野を開拓する」「得意先との密接なやり取りをしてもらう」という名目で二年前に開設させたばかりの食品第三部で、これといった業績がなくいつ取り潰されるか分からないというとてもギリギリな部署だったのですが、味見さんが入社して約一ヶ月もしない内に難しい契約をドンドン結ぶようになってからは徐々に高評価を得るようになっていきます。しかし、その状態を黙って見過ごせないのはそれまでは常にトップを走ってきた食品本部やそれに継ぐ成績を収めてきた食品第一部の社員さん達。普段「お荷物」「窓際」「給料泥棒」と陰口を叩いていた部署が勝つのは許さないとばかり、何かと突っかかってくるようになります(妙にリアルな設定で、内心「どこでも似たような対立はあるんだな~」と苦笑しました;)。
 中でも味見さんに強く突っかかってくるのは、商品本部の鷹山副本部長。典型的なワンマンタイプの合理主義者で、食べ物を商品としてしか見れず粗末にする事も多い為味見さんからは「その傲慢な態度悔い改めないと、アンタ食いもんにたたられるぞ!」と嫌われているのですが、それに対しては「仕事の為ならたたられて結構(゜Д゜)!!」と胸を張りながら堂々と宣言して対抗しています;。ここまでくるといっそ清々しいので、なかなか憎めないキャラです(^^;)。
仕事の為なら粗末にした食材から祟られてもいいと豪語する上司・鷹山さん
 今回ご紹介するのは、そんな鷹山副本部長から「さんまの蒲焼きの缶詰で美味しい料理を考え出し、今度集まってくるスーパーの仕入れ担当達に食べさせて販売促進をさせてみろ」という難題を出された際、味見さんがイタリアで食べたアンチョビ缶をヒントにして作った“さんまの蒲焼きパスタ”!作り方はお手軽で、網の上で軽く焼いて香ばしくしたさんまの蒲焼き・野菜・キノコ・しょうがを茹でたパスタと炒め合わせ、仕上げに塩と缶に残ったタレで味付けして刻み海苔をふりかけたら出来上がりです。味平さん曰く、「脇役として主役(パスタ)を盛り立てながら自らの実力を発揮する。これは、味が熟成された缶詰にしか出来ません」との事で、このレシピを含める色々なアイディアれレシピを紹介する事によって他の商品もプッシュしていくというプランが出来上がった仕入れ担当の方々は大いに盛り上がり、結果さんまの缶詰の販売促進は大成功して味見さんは株を上げるのでした。
 さんまの缶詰を使ってスパゲティソースを作る事自体は今となってはそんなに珍しい事ではないですが、わざわざ網で炙り焼きするというひと手間をかける作り方は初めてだったので、最初に読んだ時はびっくりしました。こうする事によって缶詰臭さが消えて美味しさが蘇る…と作中で説明されていましたが、正直半信半疑です;。おまけに、味付けは缶のタレと塩のみというのもシンプル過ぎで、果たしてどんな味になるのかちょっと想像がつかなかったです。
サンマの蒲焼き缶でも、網焼きにすると大分違うのだそうです
 さんまの缶詰が近所のスーパーで大安売りしていたのを見つけ、真っ先にこのレシピを思い出しました。せっかくですので、作中の描写を元に再現してみようと思います。

 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、さんまの缶詰の下準備。さんまの缶詰をさんまとタレの二つに分け、さんまの方は網に乗せて弱火~中火で両面をこんがり香ばしく焼いておきます。ちなみに、網は百円ショップで遠赤外線効果がある物が売ってあったので試しにそれを使うことにしました。この時点で缶詰とは思えないようないい香りが煙と共に立ちのぼっており、うっとりさせられました(´∀`*)。
 ※タレが染み込んでいるサンマの身は大変焦げ付きやすいので、網にはあらかじめ油を薄く塗っておいたり、焦げかけたらすぐにひっくり返すか火加減を弱めるかした方がいいです。
さんまの蒲焼きパスタ1
さんまの蒲焼きパスタ2
さんまの蒲焼きパスタ3
 次は、炒め作業。フライパンにオリーブ油と薄く切ったにんにくを入れて中火に熱し、香りがたってきたら薄切りにした玉ねぎ、軸を取ってほぐしたしめじ、スライスしたエリンギを投入して炒めます(実を言いますと、作中ではどの野菜とキノコを使用したのか全く載っていなかったので、絵から勝手に想像出来た物を入れちゃいました;)。軽く火が通り始めてきたら先程のさんまを加え、身がバラバラに崩れないように気をつけながらさらに炒めます。
さんまの蒲焼きパスタ4
さんまの蒲焼きパスタ5
 玉ねぎがしんなりしてきたら茹で上がったばかりのスパゲティを投入して炒め、そこへさんまの蒲焼き缶のタレと千切りしょうがを入れて全体にしっかりなじむよう混ぜ合わせます。その後、塩で自分好みになるよう味を微調整します。思ったよりもさんまの缶詰のタレはサラッとした感じで、そこまでべっとり濃ゆそうな味ではなかった為、思い切って一缶分全部投入しました;。
さんまの蒲焼きパスタ6
さんまの蒲焼きパスタ7
 タレがスパゲティへまんべんなく絡んだらお皿へ盛りつけ、最後に刻み海苔を上からパラリと散らせば“さんまの蒲焼きパスタ”の完成です!
さんまの蒲焼きパスタ8
 色合いは茶色一色なのでかなり地味ですが、炭火焼きに近い風味がついたさんまの蒲焼きの匂い、タレの香ばしい匂い、きのこの芳しい匂いが渾然一体となった香りが激しく食欲を掻き立てる感じで、思わずおなかがすいてきます。一見するとどこにでもありそうですが、一体どんな味がするのか楽しみです。
さんまの蒲焼きパスタ9
 それでは、麺がのびないうちにいざ実食!いただきま~すっ!
さんまの蒲焼きパスタ10

 さて、味の感想ですが…想像の斜め上をいく旨さでびっくり!正直、ネタ扱いした事を謝りたい心境です。
 しょうがの爽やかな風味がキリリと効いたさっぱり甘口醤油味がスパゲティにしっかり染み込んでいる上、本物の炭火焼きみたいな香ばしい煙の香りがふわりと漂う為、噛むごとに奥深い味になっていきます。例えるとするならば「さんまのしょうが風味照り焼きスパゲティ」というの美味しさで、サラッとした甘辛い後口であっさり頂ける為夏向けのスパゲティだな~と感じました。さんまの青魚らしい濃厚な脂分ときのこ類から出たコクのある出汁がスパゲティに絡み、缶詰で作るレシピの中では十分上出来な一品に入ると思います。
 さんまの蒲焼きは遠赤外線効果のある網で一度じっくり焼いたのが功をなし、予想を上回る柔らかさと香ばしい焼き上がりに仕上がっているのに大満足しました。フライパンで焼くだけだと中心部がガチガチな事が多いんですが、これは中までふっくらして非常に食べやすく、おまけににんにくや炭火焼き風に似た強烈な香りによって缶詰独特の臭みはほぼ押さえられていた為、感心しました。
 さすがに缶詰のさんまを本物の蒲焼きみたいな味わいにする事まではできていませんが、それでも缶詰に付き物な癖をここまで落とせるとは大健闘しています。玉ねぎのシャキシャキ感、海苔の風味、しめじやエリンギのプリプリした食感も蒲焼き味のスパゲティにぴったりですし、また色々手を加えて作ってみたいと思える一品でした。

 内心「八割方、ネタで終っちゃうだろうな~;」と完全に油断して作っただけに、実際食べたときの衝撃はでかかったです(この意外度は、『ミスター味っ子』の“陽一流レトルトハンバーグのミートソーススパゲティ”といい勝負かもしれません)。網でほんのしばらく炙るだけでこんぶ味が違うのだとは意外でしたので、今後様々な食材で色々試してみちゃいそうです。

●出典)『幸福のディッシュ』 原作:青木健生 作画:志水三喜郎/芳文社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.05.10 Thu 01:12  |  

いつも楽しみに見ています♬

確かに黒ビールに合うのを探すのは楽しいですね~
ソーセージとかベーコンとかが燻製モノとの相性がよさそうなんですが・・・
意外に合うのが、いぶりがっこだったりもします。
そんなこと考えてたら、お酒の締めには、かしわうどんを食べてた時がちょっと懐かしいなーと思っていたり・・・
これからも再現料理を楽しみにしています。

  • #-
  • クー・レン
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2012.05.11 Fri 01:58  |  こんばんは

いつも楽しく読ませてもらっています。
せっかくですので、人に教えたい、便利な料理テクを開陳します。
豆腐の水切り
http://cookpad.com/recipe/508276
↑は、目からうろこでした。
『天才っているんだな』とつくづく感心しました。

トマトソースは、トマトを一度冷凍し、レンジであたためます(解凍ではない)。
そうすると、多くの水が出ます(レンジで豆腐を温めるときのように)。
この水分はトマトの旨みがあるので、スープや味噌汁に使います。
残ったトマトの実を炒めるとあっという間にものすごい濃厚なトマトソースができます(冷凍とレンジの電磁波で、細胞壁が壊されていますので、皮もあまり気になりません)。
ですので、ホールトマトの缶詰を小分けして、冷凍庫に入れておくと、いつでも簡単に濃厚なトマトソースが作れます。
この技は、たまねぎをあめ色に炒める際にも使えます。
みじん切りにしたたまねぎ(私はスライサーで薄切りにしていますけど)を冷凍し、使う際にレンジであたため、炒めると5分もかからず、あめ色ためねぎの出来上がりです。

これからも、再現料理を楽しみにしています。
できれば、『これはどう考えてもうまくないだろう』というほうに、方向性を向けて欲しいです(笑。

それでは。

  • #.bUgN.og
  • ソムナムナー
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2012.05.11 Fri 02:09  |  管理人のみ閲覧できます

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  • #

2012.05.11 Fri 02:26  |  

>ほぼ同時にその料理にぴったりな飲み物も頭に浮かんできて「この組み合わせが好きだなぁ…」と考える事が多くなっています(例:「焼酎と豚角煮」「餃子とビール」「大福と濃い緑茶」など)。昔はあまり飲み物には頓着していなかったので自分でも意外なのですが、料理と飲み物がピタリと合って相乗効果で旨味が二倍にも三倍にも膨れ上がっていく時の心境は至福そのものですので、当分この考え方は続きそうです。

ワインなどの場合は、この料理に合うワインは何かということになりますけど、日本酒・乙種焼酎などの場合は、この酒に合う料理は何かということも多いですよね。
酒が主で料理が従というのは、日本人が酒が好きな証左なんですかね?(いい言葉で言えば、お酒を芯から堪能できる?)

  • #-
  • ソムナムナー
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2012.05.14 Mon 23:16  |  2巻でなかったなぁ・・・。

幸福のディッシュがでてきて驚きました。
発売された頃たまさか本屋で見かけて買って読んだものの
「なんか大雑把だなぁ」と思った覚えがあります。
最近はおもしろいと思った料理漫画を
少しだけ書いてみると、(但し作品名と作者のみ)
「最後のレストラン」藤栄道彦先生
「澤飯家のご飯は息子の光がつくっている」山田可南先生
(他にあったけどなんだったかな・・・。)
なんてのがあります。
あと料理漫画ではありませんが
「坊主Days」という漫画の2巻に
「寺でつくられる本式の建長汁」の作り方が載っていたりします。
(そーいや、建長汁は「味噌を使うと「国浄汁」になるとかなんとか・・。)
では。

  • #-
  • 波多野鵡鯨
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2012.05.15 Tue 22:27  |  いけないゝ・・。

月刊マガジン連載中の
「てんまんアラカルト」(小林有吾先生)を
忘れていました。では。

  • #-
  • 波多野鵡鯨
  • URL

2012.05.23 Wed 00:47  |  

真似して今日実食してみました
さんまのうまみとニンニクの香りが調和していて
とても美味しかったです

  • #-
  • 徳永
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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
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 …『夢色パティシエール』


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 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
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