『クッキングピープル』の“カッパのスープ茶漬け”を再現!

 石黒正数先生が描かれた作品は『それでも町は廻っている』をはじめ、短編作品の方も大好きなのですが、中でも自分の体験を色濃く投影してしまう事を含めて強く印象に残っているのが、『ネムルバカ』です。
 駄サイクル理論に頷き、大学生だった頃のフワフワした自由な時間の感覚に共感し、そしてそれに伴う漠然とした不安感に懐かしい痛みを思い返したりと、この作品は面白いと同時に今以上に未熟だったあの頃の自分を思い出す導入材となっている為、自分の中では特別な一冊となっています。
 その中でも好きなシーンは、散々な言われようで振られてしまった主人公の入巣さんが、相部屋の鯨井先輩に対して愚痴る一シーン。
 「フラれたりダシにされたことはもう、何とも思ってないんですけど、田口の中で私があまりにも『どーでもいいキャラ 』で。この先もずっと、一般人Aなのかと思うとー」という、今も将来も一般人Aにしかなれないんじゃないかという不安を入巣さんは素直に口にするんですが、それに対して鯨井先輩は事も無げに「私は、お前が大事だよ」とサラリと言うのです。
 当管理人自身、誰の何にもなれない一般人Aである事は百も承知なのですが、鯨井先輩のように大事だといってくれる人達が僅かながらいてくれるからこそ毎日を生きていけている為、このシーンを見るたび毎回胸が熱くなるのを禁じえません。
 どうも、『それでも町は廻っている』の“タッツンドーフ”を再現しようと四苦八苦しているものの「どうやったらこの酸っぱい物体を餡かけでおいしく変身させられるんですか~!」と一向に試作が成功しない当管理人・あんこです。


 本日再現する料理は、『クッキングピープル』にてカッパと間違えられた男性がしなびたきゅうりを使って作った“カッパのスープ茶漬け”です!
カッパのスープ茶漬け図
 今回ご紹介するエピソードは、休日に公園で一服してくつろぐ、見ようによってはカッパに似ていると言えなくもないあるご年配の男性のお話(残念ながら、名前は明かされていませんでした;)。
 特に用事がないらしいこの男性は、公園でボ~っと物思いにふけっている様子でしたが、その静寂も突然現れた小学校低学年らしい少年によって破られてしまいます。
 男性を見るなりいきなりジーッと凝視した少年は、何を思ったのか「カッパだー、カッパだー」と騒ぎたて、「おじさんはカッパじゃありません」と冷静に返す男性に対して「ウソつけー、妖怪大辞典に載ってたのとそっくりだぞ~」「きゅうりやるよ、カッパ!ママがもう捨てるって言ってたやつ」と何度もしつこく付きまとい、何とカメラ付き携帯で画像までパシャパシャ撮りだします。
 正直、こんな事を見ず知らずの人間にされようものなら当管理人の場合完全無視をして少年をいないものと扱ってしまいそうですが、この男性は相当に寛大なのか一応「おじさんはカッパじゃありませんし、きゅうりもいりません!」と根気強く言い聞かせたり、「やれやれ…」と呆れるだけで、半ば強引に押し付けられたきゅうりを手に少年を無視してさっさと帰宅していました;。
 しかし、ヘタに関わってしまったのが仇となったのか、この後男性はとんでもない事態が待ち構える事となってしまいます…。
ある日、公園で小さな男の子に「カッパだ!」と騒がれてしまいます
 家に帰った男性は、奥さんから開口一番「…あなた、カッパだったの?」と現場にいなかったはずにも関わらず怪訝そうにたずねられてしまいます。
 おかげでちょっと慌てた男性は「オイオイ、母さんまで何を言ってるの?」と戸惑うのですが、奥さんから指で示されたTVを見ると、そこには「カッパ出現?!」というニュース速報が放送されており、現場の公園でニュースキャスターが「これがカッパの写真です!」と男性の拡大写真のパネルを持ち上げていたり、あの時の少年が「カッパ出て来いーカッパー!」と騒ぎ立てる一部始終が流れているのを目の当たりにします。
 しかし、この超展開に対して男性はあまりにも馬鹿馬鹿しくて実感が持てなかったのか、ポカーン(゜Д゜)とした表情になりつつも「そんな訳ないでしょ、さっき散歩の途中でこの変な子どもに付きまとわれて大変だったんだよ~」とまたもや冷静に奥さんへ説明しており、奥さんの方も同じ気持ちだったのか「そうよね~」と笑っていました;。
 それにしても、男性が公園から帰るまでのたった数十分の時間だけでTV放送までこぎつけた少年は、一体何者なんだろう…と、ちょっとした薄気味悪さが付きまといますね(ついでに少しネタバレになりますが、このお話のラストも少年がそうなるよう手を回したのでは…という不気味さが漂っています)。
 たけだみりこ先生は、時折こういう『世にも奇妙な物語』風の不思議な世界観の短編をいくつか書かれている為、単なるレシピ付き料理漫画として見るだけでなく、独特な雰囲気を感じる奇妙な物語を楽しむ為に読んでみるのもまた一興だと思います。
何と、TVで大々的にカッパを目撃!と話が大きくなってしまってました
 その後、あの少年からもらったしなびたきゅうりを使って男性が手早く作ったちょっと遅めのお昼ご飯が、この“カッパのスープ茶漬け”!
 作り方は比較的お手軽な方で、細切りにしたきゅうり・豚肉・しょうがをお鍋で炒め、塩・こしょう・水・チキンスープの素・ゴマ油を加えて味付けし、最後にご飯の上へかけて白ゴマをパラっとかけたら出来上がりです!
 作中で「新鮮じゃいきゅうりでも大丈夫!豚の脂っぽさときゅうりの青臭さが絶妙にマッチ!」と説明されている通り、この料理はしなびたきゅうりをおいしく蘇らせるにはうってつけのレシピだそうで、男性自身も「お買い得きゅうりの最後の一本は、このスープに決まりだ!」と言っていました。

 この“カッパのスープ茶漬け”を一緒に食べた奥さんは、ふざけ半分で「さすがカッパが作った料理ね!」と茶化し、男性もさすがに顔をしかめて「またそれを言う…」と少々ゲンナリするのですが、そんな時唐突に玄関の呼び鈴の音が鳴り響き…。 
 これ以上お話しすると最大のネタバレになってしまいますので、オチが気になる方は単行本で是非ご一読される事をおすすめします。
 『クッキングピープル』は基本的には面白いお話ばかり収録されているのですが、このお話のようなホラー風味のエピソードもちらほらありますので、そういったお話がお好きな方には気に入っていただけると思います。
カッパに似たおじさんの話のラストは、ちょっぴりホラー風味で奇妙なお話です…
 実を言いますと、当管理人の冷蔵庫にもしなびたきゅうりが一本転がっていてやや持て余していた為、このレシピの存在を思い出した時はすぐに「これだ!」とピンときました。
 幸い、詳細なレシピがある事ですし、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、炒め作業。小鍋に細く千切りにしたしょうがと豚ばら薄切り肉を投入して中火で炒め、塩とこしょうで味付けして軽く焦げ目がつくまで木ベラで混ぜながら炒め合わせます。
 ※この炒め作業によってスープのコクの深さが決まりますので、丁寧にした方がいいです。
カッパのスープ茶漬け1
 次は、煮込み作業。
 水を注いで強火にし、沸騰してきたら徐々に浮かんできたアクと脂を取り除き(但し、脂は取り過ぎてしまいますと旨味がなくなってしまいますので、「ちょっとまだ残っているな~」と感じるくらいで放置するのがベストです)、途中チキンスープの素を加えてさらに煮ます。
カッパのスープ茶漬け2
カッパのスープ茶漬け3
 チキンスープの素が溶けきったら、そこへ食べやすい大きさに切った絹ごし豆腐と、斜め薄切りにしてから細く縦切りにしたきゅうりを入れ、再び煮立ってきたら塩とこしょうで味を調整してごま油をたらして優しく混ぜ合わせます。
 ※豆腐ときゅうりを入れた後は、もうあまりグツグツ煮込まずさっと火を通すだけに留めた方がいいです。
カッパのスープ茶漬け4
カッパのスープ茶漬け5
 底の深い丼にご飯を盛って先程のスープを具ごとたっぷりかけ、仕上げに白ゴマをパラリと散らせば“カッパのスープ茶漬け”の完成です!
カッパのスープ茶漬け6
 きゅうりの緑色のせいか、温かい料理なのにも関わらず見た目が涼しげに感じます。
 今回は原作通り温かいまま食べますが、冷ましたご飯とキンキンに冷やしたスープと氷とで冷たくしてみても美味しそうだと思いました。
 しょうがのすっきりした香りが食欲を呼び覚ましてくれるのが、夏場にはありがたいです。
カッパのスープ茶漬け7
 それでは、ご飯とスープをさっとかき混ぜてからいざ実食!
 いただきま~す。
カッパのスープ茶漬け8


 さて、味の感想ですが…見た目よりもかなり食べ応えがあって美味しっ!具沢山ですがスルスルッといけちゃう一品です!
 火が通っていて少ししんなりしてはいるものの、シャキシャキサクサクとした小気味いい食感はまだまだ健在なきゅうりが病み付きになります。作中で言われている通り「豚の脂っぽさときゅうりの青臭さが絶妙にマッチ!コクがあるのにサッパリおいしいスープ茶漬け」に仕上がっており、豚肉ときゅうりが互いの短所を打ち消しながらさらに味を高めているのに感心させられました。
 豚肉と鶏がらの出汁が入ったダブルスープの結構こゆい旨さと、ごま油の香ばしいコクの組み合わせが相性抜群で、しょうがの爽やかな風味が後味をキュッと引き締めてくれる為単品で出されたとしても十分通用しそうなスープだと思います。一口で言うとするなら「きゅうりとごまの中華粥風茶漬け」というイメージで、濃厚な脂分が効いた薄塩味が美味でした。
 絹漉し豆腐のツルンと滑るような舌触りや、淡泊であっさりした味わいがいい箸休めになっている感じで、そのせいかやや濃いめな味にも関わらず最後までサラリと軽く平らげる事が出来ました。また、しょうがの千切りを噛み当てると一気に舌の上がさっぱりする為、その都度程よく口の中がリフレッシュするのがよかったです。白ゴマのプチプチ感もこのごま油風味のスープ茶漬けにぴったり合っていて、食欲がない時に滋養をつけるにはまさにうってつけな料理なのでは…と感じました。


 こうも蒸し暑いと、栄養よりも冷たくて口当たりがいいかどうかばかり重視して食事をとりがちですが、スープ茶漬けだと体にいい食材を沢山とりやすく、しかも食べやすいです。
 古くしなびたきゅうりも、火を通すとシャキシャキ感が蘇るのがいい感じでした。

●出典)『クッキングピープル~使えるカンタン料理コミック~』 たけだみりこ/実業之日本社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.07.11 Wed 09:56  |  はじめまして

ブログ読ませていただきました。
漫画の料理っておいしそうに見えますよね~

私も何度かやった覚えがあります、またいろんな料理楽しみにしてます^^

石黒先生いいですよね、私も大好きです
タッツンドウフの再現は難しそうですね、まず不味いメイ丼一号から作らないとだめですからw
でもメイ丼一号はたしか材料は豆腐、のり、わかめ、砂糖、しょうゆだけだった気がします。さっと絞って酢で合えるは歩鳥の「さしすせそ」なので結局酢は使わなかったと思いますよ。赤ワインを入れそうになりましたけどw
酢を使わなければうまいタッツンドウフができるかもしれませんね

2012.07.11 Wed 10:05  |  

すみません、よく調べてみたら酢も入ってました・・・
メイ丼には酢が必要でしたw

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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