『ポジティブ・クッキング』の“ネギトロワンタン”を再現!

 約一ヶ月前、初めてかりんとう饅頭を食べたのですが「こんな美味しさがあるのか…!」と感動し、以来駅にあるショップでちょくちょく購入しています。
 カリッとしていて、香ばしくて、こしあんの甘さが程よくて、かんだ途端にふわっと黒糖の風味が立ちのぼるのが例えようもなく美味ですっかり虜になっています。
 どうも、要は濃い緑茶に合ってたっぷり餡子が使われているお菓子ならば何でも気に入ってしまう厄介な性を持っている当管理人・あんこです。
 

 今回再現する漫画料理は、『ポジティブ・クッキング』にて前向きな奥様・原春代さんが初めてアイディア料理コンテストに入賞したお料理・“ネギトロワンタン”です!
ネギトロワンタン図
 漫画『ポジティブ・クッキング』とは、高橋留美子先生の短編集『運命の鳥』に収録されている短編作品の内の一つ。
 『運命の鳥』とは、高橋留美子先生にとって第四集目に当たる短編集ですが、日常生活を舞台にした作品の中でもさらに日常的でごく身近でもありそうなお話が多いのが特徴的で、日常の中の非日常を描く事がほとんどだったそれまでの作品集とは少々異なるような印象を受けます(例を挙げるとするなら、ペンギンや座敷わらしなど一風変わった生き物ばかりが登場してくる『Pの悲劇』が最も対照的だと思います)。
 本日ご紹介する『ポジティブ・クッキング』は、中でも一際その傾向が顕著な短編で、ざっと軽くあらすじを説明すると以下の通りになります。

 主人公であるごく普通のサラリーマン・原真一さんの妻・春代さんは凝り性な上大の料理好きで、それが高じて時折料理教室に通い、夕食の席で習ったばかりのアレンジ料理を作るのが生き甲斐になっているお茶目な女性。
 もともと、同居していたお義母さんの介護を五年以上してきて看取った経緯から何年も料理は手抜きばかりで腕がなまっていた事、そして一周忌を過ぎる頃にお友達から一緒に行こうと誘われて真一さんとお義父さんも「いいんじゃないか?」「授業料払うよ」と背中を押して貰った事がキッカケで行き始めた料理教室でしたが、気まぐれで応募したアイディア料理コンテストにて二回連続で入賞した事が原因で、完全にオリジナル料理作りにハマってしまいます。
 どんどん加速化していく春代さんのアレンジ料理熱、そしてそれに比例するかのようにして悪化と放置の一途を辿っていくお家の食生活…。
 遂には、(自業自得とはいえ)真一さんは病院へと運ばれてしまう羽目に陥ってしまいます。
 果たして、真一さんは無事春代さんの心と料理の腕を、再び家庭へ向ける事が出来るのでしょうか?!

 …と、少々大げさになりましたが、以上が主なストーリーになります(^^;)。
 これ以上はネタバレになってしまいますので(←「このブログで、そんなセリフを言うのは今更だ」という突込み、ごもっともですorz)控えますが、すったもんだしつつそこは巨匠・高橋留美子先生の力でうまくまとめられ、ハラハラさせられつつも安心して見られるラストですので、肩の力を抜きつつ一家庭のゴタゴタを覗き見してみたいというプチ・「家政婦は見た!」の市原悦子タイプの方にはおすすめしたい一作です。
最初は、料理教室に通うごく普通の明るい奥さんでした
 ちなみにこの春代さん、何かと保守的で無感動気味な真一さんとは正反対の、極めてポジティブかつ明るいパワーの持ち主で、読んでいるとこちらも元気になってきます。
 本にレシピが載っているのを見た周りの奥様方から賞賛されたら「私の簡単レシピ、近所の奥さんにも大評判でさ~。万人受けするっていうか~」と活き活きしたり、料理教室で知り合った料理が苦手な新妻達に自宅で簡単レシピを教えるようになったら「ねえ、教室開こうか!」と目が輝いたりと、くるくると移り変わる前向きな笑顔が見ていて飽きません;。
 最終的には、何とテレビ出演(?!)まで決定するのですが、その時もポジティブ・パワーは健在で、「なんてったって、テレビよテレビ。これが評判になって、私、カリスマ主婦になっちゃったりして~」と夢見る乙女の表情になっており、現実的な真一さんから覚めた視線で「もはや、突っ込む気にもなれん」と呆れられていました;。
 正直、当管理人は奇跡的にこういう事態になったとしても怖気づいて尻尾巻いて逃げるであろうタイプな為、自分に自信を持って正々堂々と頑張れる春代さんには憧れと応援する気持ちを強く持ちます(^^;)。
そのポジティブさから、とんでもない方向に…;とにかく、有り余るほどポジティブな奥さん;
 しかし、基本的に明るいお話ではあるもののそこは流石高橋留美子先生といった感じで、所々にしっかり春代さんの複雑な心境を窺わせるようなシーンも、重すぎず軽すぎず実にうまく描かれています。
 その中で一番印象的だった場面が、「最近、うちの飯手抜きの簡単レシピばっかりじゃないか!?外で作るくらいなら、もっとうちの飯を…」と食って掛かる真一さんに対し、春代さんが静かに「だって、どうでもよさそうだったから」と目が笑ってない笑顔で言い返すシーン。
 実を言いますと、真一さんは食べる物にそこまで興味が持てないタイプの男性で、春代さんがどんなに家で工夫した料理を作っても「まあ、いいんじゃないか(心の声:正直、どうでもいい)」と受け流しながら暮らしていた模様で、まともに「おいしい」や「ありがとう」を言っていなかったとの事。
 ただ、直接それで文句を言われなかった事から、「気付いていないんだろうな」と真一さんは楽観視していたようですが、どうやら春代さんにはばっちり伝わっていたようで…;。
 このやり取りを見ると、真一さんに対して気の毒と思いつつも「そりゃあ、当たり前に黙々と食べる人に義務として作るよりも、お世辞交じりでもおいしいって喜んでくれる人の方に力を注ぎたくなっちゃうだろうな…(´Д`;)」と春代さんに対してもやや同情したものです。
 何でもない日常の一コマだったとしても、感謝の気持ちを素直に表現する事は決して怠ってはいけないのだという教訓を、ヒシヒシと感じさせられます。
 一見大したように見えないことでも、塵も積もれば山となるということわざの通り溜まると立派な心離れの原因になり得ますので、相手の好意に甘えてばかりなのも考え物かもしれません。

 さて、今回再現するのは、そんな春代さんが最初にアイディア料理コンテストで「お手軽賞」に入賞した作品で、元はと言えばお義母さんが倒れたばかりの頃に真一さんに作った想い出の料理・“ネギトロワンタン”!
 作り方は「お手軽賞」に輝くだけあってとても簡単で、ネギトロ・大葉・茹でタケノコ・醤油を混ぜた物をワンタンに包んで茹でたらもう出来上がりです。
 漬けタレはポン酢で、審査員曰く「肉よりヘルシーで簡単」なのが選んだ理由だったとの事(ネガティブな入賞者だったら思わず不安になってしまいそうな程、えらくシンプルな評だな~と思わず苦笑です;)。
 春代さんはお友達に「一番の手抜き料理だったんだけどね~」と明るく話していましたが、続けて「お義母さんの介護をしている合間に考え付いた」と話していたのを深読みすると、この時期色々考えて辛かった中生み出したからこそ、より感慨深かったんじゃなかろうか…としんみりした心境になります。
目が笑っていない笑顔で言われると、どんなセリフでも怖くなりますよね…。
 それまで、「ワンタンや水餃子よりは、焼き餃子!」という考えだった当管理人ですが、母が台湾ご出身の奥様から習ってきた本場レシピのワンタンを食べたり、妹さんから大分前に薦められた事があったりした為、そろそろ小さなこだわりは捨てるべきだと思い再現に踏み切りました。
 残念ながら詳しい製作工程は書かれていませんでしたが、マグロを使った餃子がおいしかった経験から失敗の心配は少ないはずですので、早速作ってみようと思います。


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、タネ作り。ボウルへスーパーで売られていたネギトロ(商品名は「ネギトロ」ですが、何故かネギは混ざっておらずマグロのコマ切れのみしか入っていませんでした;)、みじん切りにした大葉、細かく刻んだ茹でタケノコを投入し、菜箸で軽く混ぜます。
ネギトロワンタン1
ネギトロワンタン2
 そこへ刻みネギと醤油を加えてさらに混ぜ、味の調整が終わってある程度まとまったら市販のワンタンの皮で一つ一つ丁寧に包んで行きます。
 ひき肉だと、相当練らないとジューシーな出来にならない為最後にはヘトヘトになる事が多いですが、今回はネギトロ使用で練り作業は一切なかった為、鼻歌交じりで楽~に包み作業を終えることが出来ました(^^*)。
ネギトロワンタン3
ネギトロワンタン4
 全て包み終えたら、お鍋で沸騰させておいた熱湯の中へ次々に投入し、少し経ってからワンタン同士がくっつかないようそろっと優しく混ぜつつ茹でます。
 やがて、ワンタン全てがお湯の上にプカプカと浮かびだしたら火を止め、茹で汁ごと器に移します。
ネギトロワンタン5
ネギトロワンタン6
 ワンタンの上に刻みネギを散らし、仕上げに傍らへ小皿に入れたポン酢を添えれば“ネギトロワンタン”の完成です!
ネギトロワンタン7
 うっすらと透き通った白い皮と、目にも鮮やかな長ネギの緑色の対比が綺麗で、夏らしい色合いだな~とうっとりします。
 プカリと浮かんだワンタンの姿が見るからに涼しげな感じで、見るからに食感が軽そうなのが印象的でした。
 魚肉を使った餃子は今まで何度か食べた事がありましたが、魚肉を使用したワンタンは初めてなのでどんな味なのか楽しみです。
ネギトロワンタン8
 それでは、ポン酢にちょんちょんとつけていざ実食!
 いっただっきまーす!
ネギトロワンタン9


 さて、味の感想ですが…食欲がない時でも、喉の奥へスルスル消えていく旨さ!確かに、お肉よりもヘルシーでさっぱり食べられます!
 ワンタン特有のツルンとしたなめらかで滑るような舌触りの皮から、お肉より大分ふんわり柔らかい口当たりに仕上がっているマグロ肉が大葉の爽やかな香りと共に飛び出し、それと同時にサクサクと小気味良い食感のタケノコが絶妙なアクセントとなって歯に響き、噛むごとに一体となっていくのがとても心地いいです。
 それまでワンタンの皮はツルツル感ばかりが印象に残っていましたが、じっくり味わってみるとシコシコしたまるで麺のような弾力と小麦のほのかな甘さが徐々に浮かび上がってくるのが分かり、思っていたよりもずっと繊細な味であるのが分かりました。
 お肉使用のワンタンだと肉汁や濃い味によってそこまでは分からなくなる感じですが、このワンタンは魚肉使用でしみじみ優しいあっさりしたコクな為、ワンタンの皮の良さがよりダイレクトに伝わります。
 また、上に散らしたネギのシャキシャキッとした歯触りと、中に入っているネギの甘味がダブルでワンタンの味わいを底上げしており、この料理はネギがかなり重要な役割を果たしていると思いました。
 面白い事に、火が通ったネギトロは「油分に欠けているのにフワフワなツナ」とい例えたくなるような独特の味わいになっており、そのせいか不思議と初めて食べる気がしません。
 心配していた臭みの方も、ネギの力によってほぼ気にならないようになっています。
 ワンタンから出た出汁によって「少し薄めかな?」と感じるくらいおいしく変身している茹で汁といい、程よい酸味のポン酢といい、どれもこれもワンタンにぴったりで大満足でした!


 餃子のカリッとジューシーな味わいもいいですが、この季節だとワンタンのツルッと涼しげな口当たりの方が軽く食べられてありがたいです。
 ポン酢にラー油をいれてみたり、たけのこをクワイにしてみたり、マグロをカツオにしてみてもまた違った味になってよさそうでした。
 本当に手間要らずで作れてヘルシーなので、おすすめです。

●出典) 『運命の鳥(高橋留美子傑作集)』 高橋留美子/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.06.27 Wed 00:07  |  

ネギトロはネギとトロだからではなく、中落ちをこそげとることを「ねぎ取る」と符帳で言うためそこから変化してネギトロになった説がある、ってwikiさんが言ってました。

  • #-
  • クワトロ
  • URL

2012.06.27 Wed 22:47  |  

私もねぎ取りはそのように聞いたことがあります。
なんか貝がらとか、それに似た道具を使うそうな。

それはともかく、いつも美味しそうなブログありがとうございます♪
味の表現がすごいですよね。。。うん。すごいです。

魚肉でワンタン(及び餃子も拝見)とは、漫画ってすごい発想しますよね。。。
早速近々挑戦したいな♪って思うほど美味しそうでした。ごちそうさまです。

  • #-
  • たもつ
  • URL

2012.06.29 Fri 06:57  |  管理人のみ閲覧できます

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
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