『信長のシェフ』の“宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ”を再現!

 漫画だと登場人物の絵は既に固定されている為、二次創作や他の漫画家さんがかかれた絵を見てもあまり混乱はないのですが、小説の場合自分の頭の中で勝手に想像して朧気ながらも「こんな感じ」という絵を構成している為、ひょんな事で他の方のイメージされた絵を拝見する機会があると、「え?!全く他人だ!」と不意打ちでびっくりさせられる事があります。
 ただ、二次元系の小説の場合は割りと早くイメージ変更が出来るのであまり問題はないのですが、リアル系の小説の場合はドラマ&映画であまりにもイメージが違う俳優さんが演じているとずっと違和感が拭えないタイプな為、脳内イメージの世界は奥が深いな~と思います。
 どうも、『風と共に去りぬ』に出演しているヴィヴィアン・リー役のスカーレット・オハラくらい、息を呑むようなはまり役は未だ一度も見たことがない管理人・あんこです。


 今回再現する漫画料理は、『信長のシェフ』にて主人公・ケンがタイムリップした戦国時代の京都で初めて調理した料理・“宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ”です!
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ図
 織田信長に“湯づけ 信長風”を献上して気に入られ、料理頭として任命されてからはすっかり信長にとってなくてはならない存在になっている現代の料理人・ケンですが、一五六八年の京都へタイムスリップしたばかりの時は早々に命の危険に晒され、かなり大変な状態でした;。
 実を言いますと、ケンは軽い記憶喪失になっている為どうして戦国時代へタイムスリップしたのか、また誰とこの世界へやってきたのかが物語で未だ語られていないので詳細は不明なのですが、少なくとも第一話目では上司らしき男性といきなり野盗に追われるという非常にデンジャラスな登場の仕方をしています。
 思えば、同じ戦国時代タイムスリップ物である漫画『炎トリッパー』、映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』、小説『戦国自衛隊』も主人公は何がなんだか分からぬ内に戦闘シーンに巻き込まれて混乱する…というのがほとんどの導入パターンになっている為、「タイムスリップ初日=戦場に飛ばされて命がピンチ!」というのは、もはやタイムスリップ物ではお約束的な展開なのかもしれません(唯一、最近の作品では『信長協奏曲』の主人公はしょっぱなから戦場に紛れ込むという不運は避けられていますが、その代わり本物の織田信長から本物として生きるよう<信長>の役を押し付けられている為、ある意味それ以上のトラブルに巻き込まれたと言っても過言ではないです;)。
 結局、上司らしき男性は矢を撃たれたのが原因でほぼ即死し、ケンは川へ飛び込んで一時避難したのが功をなして運よく命が助かるのですが、そんな時にケンを助けてくれたのが京の下町で鍛冶屋を営んでいる女性・夏さん。
 最初は川からずぶ濡れ&変わった服装&一言も話さない状態で出てきたケンを少し警戒していた様子でしたが、生きるか死ぬかの瀬戸際だというのに偶然捕まえたウナギ(ちなみに、戦国時代では京の宇治川でよく取れた事からウナギは<宇治丸>と呼ばれていたのだとか)を持ってぼ~っと突っ立っていたのを夏さんからひどく面白がられて、とりあえず悪人ではないと判断され、一旦夏さんの家で着替えに来るようにと誘われてついていくことにします。
生きるか死ぬかの瀬戸際の時、ケンは偶然宇治丸(鰻)を獲ります
 それからケンは、夏さんの家で戦国時代の着物に着替えてひとまず落ち着くのですが、夏さんからこれまでの経緯を聞かれたものの「何も覚えていない」としか言いようがなく、お互いどうしたものかと困惑しあいます。
 けれども、お腹が減ったまま話していても出るのは悪い考えだと判断した夏さんが取ったばかりのウナギを手に「こいつは蒲焼きがうまいんだ、料理してくらぁ」と言って立ち上がった際、ケンは頭の中で「料理――!」と何かが目覚めるような感覚に陥り、思わず「俺がやります」と夏さんを呼びとめます。
 そうして、ウナギを小刀だけで手早く捌き、味噌・塩・酢だけしか調味料がないという限られた環境の中でケンが即興で作った、いわば戦国時代に流れてきてから初めて作った料理が、この“宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ”です!

 この時代、ウナギは大雑把な筒切りにして串刺しにして焼いて食べるのが主流でしたが、ケンは現代で主流な開きにして炙り焼きにする方法で火を通し、醤油がなくてタレが作れないのを塩焼きにして刻みネギを振り掛ける事でカバーし、さらに味が単調にならないよう味噌で味付けした干し大根を添えて美味しい丼に仕上げていました。
 こうして、ケンが料理人の血が騒いで調理した“宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ”は夏さんから「こんなに骨っぽくなくてさっぱりした宇治丸、食ったことねえよ!」「お前、料理達者だな!」と大絶賛されます。
 また、さらに続けて「きっとお前は、どこかの城の料理人だったんだよ」と夏さんから確信ありげに言われた事がキッカケで、ケンは早い段階で料理人としての自覚を徐々に取り戻していった為、夏さんは色んな意味でまさにケンの恩人だと思いました(最悪の場合、料理人の記憶を思い出す機会もなく野たれ死にしていた可能性もありえますので…)。
 それにしても、元の時代ではフレンチの料理人だったケンがどうしてウナギの捌き方を知っているんだろう…と読んでてちょっと疑問に感じましたが、考えてみれば調理学校時代に実習の一環として習ったのが記憶のどこかに残ってたのかもしれません(^^;)。
味噌、塩、酢のみで、驚くべき事に醤油がまだ存在していませんでした
 その後、ケンはなんと約七ヶ月という決して短くない期間を夏さんの居候として過ごしているのですが、その間も料理人としての本分を忘れないようにする為か、定期的にフレンチの技法で作りあげた和洋折衷料理(“鯉と牛蒡のパエリア”、“鴨焼きまんじゅう”など、創作性溢れるものばかりでした)をご近所に振る舞い、下町長屋の人たちを虜にします。
 やがて、ケンの料理があまりにも好評だったせいか次第におすそ分け→テイクアウト方式の商売→長屋の入り口で大々的に販売するにまでエスカレートし、遂に「料理達者」として京中に名を馳せるまでケンは有名になっちゃってました;。
 正直、全くゼロの状況から己の腕一本でここまでのし上げれるケンは相当に優秀な料理人だと思いますので、現代での地位はどんな物なのか非常に気になります。
 このまま順調に過ごしていた場合、ケンは『信長のシェフ』ではなく『京のシェフ』として夏さんと共に平凡な一生を送っていた可能性が高かったと推測されるのですが、皮肉にもこの類稀な料理の腕が織田信長の運命にケンを引き寄せる事となり、世にも数奇な人生を歩ませる事となります…。
 
 そういった背景を念頭において読むと、“宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ”は色んな意味で感慨深い料理です。
やがてケンの料理の腕は京中の人気と話題を得、一気に有名になります
 今日は土用の丑の日だった為、どちらにしろウナギを食べようと前々から計画していたのですが、どうせなら再現料理に繋がるものを食べようと思い、再現する事にしました。
 今年は異様にウナギが高く半ば涙目でしたが(´;ω;`)、何とか国産物を手に入れる事が出来ましたし、暑気払いの為にも早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、付け合せである干し大根の味噌和え作り。
 この料理は全く作り方が乗っていなかった為、多分に想像に頼るしかないのですが、干し大根は完全に戻してシンナリさせるよりははりはり漬けのような歯ごたえの方が和え物に最適そうだと考え、水に浸すのではなく軽く水洗いした後そのまま放置し、やや戻ったのを確認したらしっかり水気をきるやり方で戻しました。
 この干し大根に、強火で煮立ててアルコール分を飛ばした日本酒を少し加えて柔らかくしたお味噌を加え、お箸でよ~くかき混ぜます。
 全体にお味噌が行き渡ったら味見をし、ちょうどいい塩加減になったのを確認したら干し大根の味噌和えは出来上がりです!
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ1
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ2
 次は、ウナギの下準備。
 ウナギはあらかじめ開いて白焼きにしたものを用意し、以前にご紹介した市販のウナギをふっくらした焼き立て状態に戻す方法で温めなおします。
 途中、塩をやや強めに振って味付けし、全体的に身がしっとりしてプリプリした肉質になってきたらウナギは準備OKです。
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ3
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ4
 ここまできたら、後は盛り付け。
 丼へ炊き立ての白ご飯をよそい、その上からフライパンに残ったウナギの肉汁をたらして干し大根の味噌和えをたっぷり飾りつけます。
 そこへ塩焼きにしたウナギを二枚(もしくは、大きく切ったものを一枚でも可)乗せます。
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ5
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ6
 塩焼きウナギを盛り付け終えたら刻んだ長ネギを多めに散らし、お箸を傍らへ添えれば“宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ”の完成です!
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ7
 パッと見だとほとんど白色が支配している丼で、食べる前から既にこの上なくあっさりしてそうな印象を受けました。
 塩焼きウナギの乳白色、ご飯の白色、そして長ネギの緑色が目にも鮮やかで、見るからに涼しげで爽やかな夏向けの丼だと思います。
 あと、当初は「白焼きのウナギを素人が塩焼きにしたら、パッサパサになるんじゃないだろうか…」と内心ビクビクしていたのですが、ウナギの脂は思った以上に強烈で、足りないどころかご飯にジュワジュワ染みて行っていたのでほっと胸を撫でおろしました。
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ8
 それでは、出来たて熱々の内にいざ実食!
 いっただっきま~す!
宇治丸のネギ塩焼き 干し大根の味噌和えのせ9


 さて、味の感想ですが…ウナギの味がガツンとストレートに分かって美味し!全く薄味ではない、むしろ濃密な味わいです!

 ウナギの旨味をぐっと引き出しつつ後口をギリギリまであっさりさせた感じのシンプル塩味で、タレを塗った蒲焼きよりもパンチが欠けてはいるのですが、その分ウナギの繊細かつ淡泊な白身魚に近い旨味は完璧に引き出せている為甲乙つけがたかったです。
 肝心のウナギの身は本格的に蒸したりしなかったせいか、ある程度柔らかではありつつも川魚を連想させるような野趣溢れるしっかりめの噛み応えで、皮側のプルプルしたゼラチン質の歯触りがたまりませんでした。
 このジューシーなウナギから滴り落ちた豊富な脂分がご飯へ程よく絡んだのが功をなし、噛めば噛む程ウナギのさっぱりしつつもサラリと味わい深い脂を堪能出来る白ご飯に仕上がっており、それが鰻重とはまたひと味違う魅力を演出していますそれぞれ例を挙げるとするなら、十勝豚丼と塩ダレ豚丼の違いという感じでした)。

 味噌の郷愁を誘う温かな味わいと複雑な塩気が染み込んだ、パリパリシャキシャキした張りのある食感の干し大根がいい副菜になっており、ウナギと交互に食べ進めると止まらなくなります。
 一言で例えるなら「酸味のない味噌味のはりはり漬け」というイメージで、ご飯にぴったりでした。
 ネギのシャリシャリ感と爽やかな風味、そしてわずかな辛味が全体を引き締めてくれるのがバランスよく、単に「白焼きウナギが乗った丼ご飯」ではない、立派な丼料理になっていたのに感嘆しました。


 それまでは「ウナギはあの甘~いタレがあるからこそ旨し!」と考えていましたが、白焼きには白焼きのよさがあるのだとやっと理解しました。
 タレつきのこってりしたうな丼もいいかもしれませんが、暑くてなかなか食欲が出にくい夏は、こういうさっぱりしたウナ丼もたまにはいいと思います。

●出典)『信長のシェフ』 原作:西村ミツル 作画:梶川卓郎/芳文社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.07.28 Sat 22:10  |  丑の日でした。

丑の日にこれをもってくるのがすごいです。
「鰻の塩焼き」というのはどんな味なのか、食べてみたいなぁ。
私も「フランス料理人で鰻?」と当時読んで思ったので
調べてみたところ
フランスは「ヨーロッパの鰻の産地の一つ」で盛んに食べられているそうです。料理法も多種多彩で
「ワイン煮・タルタル風・網焼き・フライ」とかとかあるのだとか。
鰻のフライってどんな味なんだろ・・。では。

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  • 波多野鵡鯨
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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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