『華中華』の“ペチャンコ・チャーハン”を再現!

 この季節になると、『八月の鯨』という映画を思い出します。
 元はといえば、大学時代の授業中に題名だけ触れられたのを「綺麗な語感だな」という理由で頭に留め、数日後に図書館で借りて視聴したのが出会いだったのですが、題名負けをしない幻想的な映画中の空気に魅了されたのを覚えています。
 少女の頃、夏になるたび訪れた別荘で八月になると必ず入り江に現れた鯨を忘れられない老いた姉妹が、鯨が現れなくなった今もその姿を再び見る事を夢見ながらサマーハウスで余生を過ごす様子を描いた作品なのですが、一つ一つのシーンが美しくて引き込まれます(実は、一時期ブログ名の候補でした;)。

 どうも、幻想と現実が入り混じった余生を送る主人公の小説でおすすめなのは『白い犬とワルツを』だと思う当管理人・あんこです。


 今回再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんが野菜嫌いな男の子の為に心を込めて作った“ペチャンコ・チャーハン”です!
ペチャンコ・チャーハン図
 ハナちゃんが横浜へ修行に来たばかりでまだ独身だった頃のある夏、市内の某小学校から食育の一環として、小学五年生の子ども達が満点大飯店へ食事をしにやって来ます。
 当初、このくだりを読んだ際は「学校から食育をするに相応しい現場として、満点は注目されているんだな~」と素直に感心していたのですが、子ども達が食事中にオーナー・富永計太郎さんと女性教諭が物陰で「先生、これは本日の来店記念と致しまして…当店のお食事券です。今後とも宜しく」「ええ、もちろんですわ。オホホ」とまるで悪代官と越後屋みたいに密談していたのを見た時にはそんな気持ちも吹っ飛び、思わず「コラーーッ!」と突っ込んでしまいました;。
 この時、その現場を見ていた楊貴妃さんが「何が食育だよ…。子どもの前に、こいつらの教育が必要だね!」と言っていましたが、同感です(^^;)。
 しかし、そんな大人達の黒いお付き合いを露とも知らない子ども達は本格的な中華料理のコースにそこそこ満足して帰っていくのですが、仕事帰りのハナちゃんが夜遅くに道を歩いている途中、とっくにクラスメートと帰宅したはずのある少年が航海を護る海の神様を祭っている横浜媽祖廟の前で必死にお参りしている姿を目撃します。
 すると、お祈りする人の心の声が聞こえるという楊貴妃さん曰く(←こんな事が悠々と出来る楊貴妃さんは、幽霊と言うよりもはや神様の領域に片足を突っ込んでいると思います;)、この少年は海外航路の船員をしている父を持つ太一君という名の男の子で、先日『タイタ○ック』等の船が沈没する映画を見て不安になったので、お父さんの無事を祈る為にわざわざ家を抜け出してきたとの事。
 確かに、『タイ○ニック』は実際にあった事件をモデルにしているだけにタイムリーで寒気がしただろうな~と、太一君が気の毒になりました(ただ、無駄に臆病な当管理人のように『ファイナル・デスティネーション』を見るだけで飛行機恐怖症になるのは行き過ぎですので、そうならないよう祈ります;)。
 実を言いますと、ハナちゃんは太一君とお昼の食事会の際、既に配膳兼接客係とそのお客さんという間柄で顔を合わせたことがあったので放っておけず声をかけるのですが、いくら帰るよう促しても「お父さんは航海中だし、お母さんは看護師で今夜は夜勤だから誰も家で待ってないよ」と言ってなかなか動こうとしません。
 そこで機転を利かした楊貴妃さんは、太一君の耳元でそっと「お父さんた無事に帰ってくるためなら、何でもするんだね?だったら、食べ物の好き嫌いをなくす約束をしなさい」「黙ってお姉ちゃんのチャーハンをいただきなさい」と神様のふりをして囁き、動揺した太一君を無事ハナちゃんと共に上海亭へ誘導する事に成功します。
 普段はお出かけしてばかりで、肝心な時には姿を見せない事も時折ある楊貴妃さんですが、こういう時には相変わらず頼りになります(^^)。
船長のお父さんを持つ太一君がお参りしているのを、偶然発見
 その際、ハナちゃんは太一君の野菜嫌いを克服させようと苦手な野菜を聞くのですが、長ネギ・にんじん・玉ねぎ・トマト・ピーマン・ナスが嫌いだという、なかなか豪胆な返答をします。
 これにはさすがの上海亭のおじいさんとおばあさんも「みんな身体にいいものばかりじゃないか」と仰天するのですが、ハナちゃんは一向に動じず「大丈夫!お姉ちゃんのスペシャル・チャーハンなら、全部食べられるようになるよ!」と自信満々に断言し、太一君の大好きな唐揚げも足して野菜たっぷりなチャーハンを早速作り出します。
 こうして、張り切ったハナちゃんとおじいさんとおばあさん、そして見ているだけではなく手伝いたいと考えた太一君の四人が協力しながら作ったのが、この“ペチャンコ・チャーハン”です!
 作り方は結構手間がかかる方で、上記の野菜を細かく切ったものと、にんにく・しょうが・醤油・みりん・日本酒で味付けしたミニ唐揚げを醤油で味付けして炒めた物を、船の形になるようぺちゃんこにした後フライパンで生卵を乗せてつぶし焼きにしたご飯の上に乗せたら出来上がりです。
 ご飯をまるで焼おにぎりのように仕上げるのでチャーハンとは言いがたいのですが;、その分油を最小限に抑えられるのでかえって夏場に嬉しいさっぱり味になってそうですし、醤油のみのあっさり味な野菜類がまた食欲減退を回復させてくれそうです。
 ちなみにこの時、興味津々に手元を覗き込んでくる太一君に対し、ハナちゃんは「ナスに塩をふってしばらく置いておくと、しんなりして炒めても揚げても油を吸わなくて尚且つジューシーに仕上がる」「醤油は不思議とトマトに合うんだよ!」とお料理テクニックを教えたり、おじいさんは野菜に関することわざや豆知識を教えたりするなど、無意識の内に食育を施していました。
 かしこまって<食育>と言うと堅苦しい感じで、如何にも子ども達が敬遠しそうなイメージですが、わざわざ改まって教えずとも、こうやって日常の中で色んな食べ物に関心を抱かせるようにして自然に伝えるようにしたら、物心つく頃にはもう食育は完了しちゃうんじゃないかな~と思います。
ハナちゃんやおじいさん達から自然と食育を受ける太一君船の形をしたぺちゃんこの焼おにぎりに、卵をかけてつぶし焼にします
 その後、太一君は勇気を出して“ペチャンコ・チャーハン”を食べた結果見事に野菜嫌いを克服し、楊貴妃さんとハナちゃんを安心させます。
 そして数日後、太一君は無事に夏休み中に再会出来たお父さんやお母さんと一緒に上海亭へチャーハンを食べに来て、こっそりおじいさんとおばあさんにVサインを送るのでした。
 残念ながら、お昼休み中にチャーハンを作っている事を秘密にしなければいけないハナちゃんは直接顔を合わせる事はなかったものの、そろ~っと厨房から太一君一家の幸せそうな笑顔を覗いて密かに微笑んでいました。
 たとえ表だって名前や顔を出す事が出来ずとも、満足そうな様子や感謝の気持ちが伝われば裏方冥利につきますので、そういった意味でもハナちゃんに共感したエピソードでした。
その後、無事帰ってきたお父さんやお母さんと上海亭へ
 夏野菜の最も美味しい旬は割と短い間に限定される為、「忘れないうちに作っておきたい!」と考え再現を決めました。
 巻末の詳細なレシピを参考に、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、ご飯の用意。冷ご飯をラップに包んで五ミリくらいの厚さになるまで優しく押しつぶし、平べったくなったら船の形(もちろん、それ以外の形でも可)に成形します。
 このご飯を薄く油を引いて中火に熱したフライパン(又は中華鍋)でじっくり焼き、片面が焼けたらひっくり返して生卵を落とし、両面を焼きます。
 これで、ご飯は用意万端です!
ペチャンコ・チャーハン1
ペチャンコ・チャーハン2
ペチャンコ・チャーハン3
 次は、唐揚げ作り。
 ボウルへ小さく切った鶏もも肉、おろしにんにく、おろししょうがを入れて混ぜ、続けて醤油、みりん、日本酒を加えてよく揉みこみます。
 やがて、鶏もも肉に下味が染み込んだら小麦粉、片栗粉、生卵を投入して、さらに揉み合わせます。
ペチャンコ・チャーハン4
ペチャンコ・チャーハン5
ペチャンコ・チャーハン6
 この衣つきの鶏もも肉を、最初は180度の揚げ油でゆっくり揚げて一旦取り出し、その数分後に190度~200度の揚げ油でさっと揚げてすぐに取り出す二度揚げの技法でカラッと揚げます。
 揚がったら間髪いれずにキッチンペーパーへ置き、余分な油をきっておきます。
 その間、さっきの焼きご飯を器へ移して温めなおします。
 ※実は、作中では特に二度揚げだとは明言されていなかったのですが、唐揚げは二度揚げの方が断然ジューシーに仕上げる為、勝手に付け足してしまいました;。
ペチャンコ・チャーハン7
ペチャンコ・チャーハン8
ペチャンコ・チャーハン9
 ここまできたら、今度はいよいよ夏野菜炒め作り。
 長ネギ、にんじん、玉ねぎ、トマト、ピーマン、ナスは、一センチ角に切ります(但し、トマトはあらかじめ湯剥きして種を取っておいた物を使用し、ナスは切った後にボウルで塩を振りかけて軽く水気をきっておきます)。
 これらの野菜を、中火でに熱した中華鍋ににんじん、玉ねぎ→長ネギ、ナス→トマト、ピーマンの順に加えてまんべんなく火を通し、醤油で味付けしたら最後に先程の唐揚げを投入し、ざっと炒めます。
ペチャンコ・チャーハン10
ペチャンコ・チャーハン11
ペチャンコ・チャーハン12
 野菜全体に火が通り過ぎてしまう前に火を止め、つぶし卵の焼きご飯が乗ったお皿の上へどっさり盛り付ければ“ペチャンコ・チャーハン”の完成です!
ペチャンコ・チャーハン13
 トマトの赤、ピーマンの緑、ナスの紫、にんじんのオレンジ、長ネギの白、卵の黄がとてもカラフルで、見るだけでも明るい気分になれる一皿です。
 上の野菜に隠れて、下のぺちゃんこになったご飯がパッと見では分からない為、何も言わずに出したら「夏野菜の炒め物?」と間違われてそうな感じでした;。
 ぺちゃんこにして焼いたつぶし卵付きのご飯と、醤油味の夏野菜の組み合わせは初めてなので、どんな味がするのか楽しみです。
ペチャンコ・チャーハン14
 それでは、ご飯と炒め物をレンゲで混ぜ混ぜしていざ実食!
 いただきま~す!
ペチャンコ・チャーハン15


 さて、味はと言いますと…実に夏らしい、フレッシュな印象の味わい!野菜の旨味がギュ~ッと詰めこまれた一品です。
 表面を固めて焼いたペチャンコご飯はまるで素焼きにした焼きおにぎりみたいで、潰し卵がふんわり回りを覆っているせいか思ったよりも柔らかい口当たりなのが印象的でした(表面はしっかり、中はふっくら優しい感じで、一言で例えるなら「卵味の極薄焼きおにぎり」ってイメージでした)。
 このあっさりした香ばしい焦げ目のついたご飯に、醤油だけでさっぱり味付けした夏野菜の爽やかな味わいがぴったりマッチしていて、元気がない時でもパワーをもらえるような気にさせられました。
 唐揚げの方はにんにく醤油味の効いたガツンとご飯が進む硬派なおかず唐揚げという感じでしたが、卵入りのお惣菜唐揚げ風フワフワ衣で仕上げた為どことなく優しい後口になっており、おかげで野菜類とも反発する事なくしっくりなじんで食べやすかったです。
 長ネギの鮮やかなシャキシャキ感、ナスのしゃっきりトロリとした不思議な舌触り(本当に、油っぽくなくてジューシーになってました!)、玉ネギのザクザクした食感、にんじんのホクホクした歯触りが心地よいアクセントになっており、ピーマンのほろ苦さやトマトの甘酸っぱさが時折ちょうどよく味に変化をもたらすのがいい感じでした。
 特にトマトがいい仕事をしていて、同じくグルタミン酸を豊富に含んでいる醤油と組み合わさるに事によって濃い旨味が増幅されており、それが全体に深みをプラスしています。


 細かく切った様々な野菜、小さめに仕上げた唐揚げが食べやすく、夏場でも食が進みやすいチャーハン(見た目だとそうとは思えませんが…;)になっています。
 あと、生卵をつぶし焼きにした焼おにぎりがこんなにふっくら美味しくなるとは思っても見なかった為、今後普通の焼おにぎりを作るときに色々応用できそうだと勉強になった再現でした。

●出典)『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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2012.08.16 Thu 12:17  |  管理人のみ閲覧できます

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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
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