『おいしい銀座』の“スペシャルづけ丼・花咲”を再現!

 戦国時代の面白い逸話を読むのが好きで、興味のある大名や人物の名前をネットで検索しては読みふけるというのが大分前からの日課です(Wikipediaで系譜を次から次へと辿って行くと、時間が恐ろしいほど消費できますorz)。
 中でも、「ふむふむ、おとぎ話か…って、これ実話ですか?!」と驚いたのが、このエピソード
 歴史を調べて行くと、大したようには見えない事やたった数時間の差が元で動いているケースが多々ある為、襟を正すような思いにさせられます。
 どうも、「上杉謙信女性説」があながちデタラメではない事にびっくりした当ブログの管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『おいしい銀座』にて主人公・斐馬真理さんがまぐろ祭りの際に新しく考え出した第一作“スペシャルづけ丼・花咲”です!
スペシャルづけ丼・花咲図
 漫画『おいしい銀座』とは、二十七歳の時に銀行をリストラされた斐馬真理さんが幼い頃の思い出が一杯詰まった銀座の老舗デパート・カドヤの食品部へ転職し、持ち前の明るく前向きな性格、一旦決めたら止まらない行動力、豊富な発想力を武器に、色んな商品の良さをお客さんに広めつつ売り上げもアップさせようと奮闘する、デパ地下系グルメ漫画です。
 カドヤの社長から「周りの者を明るくする、ヒマワリのような子じゃないか」と賞賛されるのも頷ける、見ているだけで元気な気持ちになってくる溌剌とした主人公の真理さんと、小さい頃に因縁浅からぬ事情があって真理さんに贖罪の意識を持ち、後々わだかまりを解いて恋人関係になる凄腕の食品部統括マネージャー・榎木田純一さんの複雑な恋愛模様もストーリーに大きく関わってきますが、それ以上に物語の軸となっているのは、やはり食品。
 お米・水・マグロ・伊勢海老・カツオ・うなぎ・地鶏・豆腐・ぶどう・松茸・蜂蜜・昔野菜・骨なし魚などの食材だけでなく、時にはカレー・グラタン・うどん・和菓子・かき氷・飲茶・天ぷらといったポピュラーな料理も含めた基本情報や豆知識が幅広く紹介されており、冗談ではなく『おいしい銀座』全二十二巻を読むだけで一通りの食品の勉強が出来そうなくらい内容が充実しています。
 当初、デパ地下を舞台にしたグルメ漫画は初めてだったのでどんな内容なのか検討もつかなかったのですが、デパート業界の知識がなくても一から十まで分かるよう丁寧な解説があちこちに挟まれていたり、何よりお客さんを呼べる充実した売り場作りをしようとあちこちを駆けずり回る真理さんの頑張りようや企画力が読んでいてほほえましく、ついつい読み進めてしまう魅力に溢れています。
 ※どうでもいい事ですが、下にある榎木田さんの画像は「話は聞かせてもらった!人類は滅亡する!」で有名なMMRのワンシーンに似ている気がします;)。
『おいしい銀座』の主人公・斐馬真理さん真理さんとは因縁浅からぬ間柄の榎木田純一さん
 大抵のグルメ漫画はお店の経営や利益率についてあまり詳しくは語らず、どちらかと言うと「どんな美味い料理を出すか」「斬新かつ長期的に愛されるメニューとは」という料理人視点の目的に焦点を絞っていますが、『おいしい銀座』ではそれらに加えて「如何にして手間やコストを抑えつつ利益を高めるか」、「どうやって希少な商品をなるべく安価かつ独占的に取り寄せるか」、「どうしたら業界の話題になってブームを作り出せるか」、「他デパートのイベントに勝つ為、どんな食品やテーマを売りにしたイベントで対抗するか」など数多くの視点が描かれているのが興味深く、その上食品部だけでなくデパート全体の売上向上の計画もストーリーに絡んでくる為、かなりスケールの大きな話なのが読んでいて燃えます。
 また、今作では食品の買い付けの専門家であるバイヤーと、店舗を繁盛させる為に企画を提案するフードプロデューサーという職業が分かりやすく説明されており、そのおかげで食品が流通する一通りの過程が具体的に分かるのが最大のポイント。
 その為、必死の思いをして集めた商品でも不備があったら懐を痛めてでも取り替えたり、途中までうまくいっていても他の業者に商品や有名店の出店権を取られたり、ギリギリの手札で時には博打のようなキャンペーンを行なって他店をけん制したりなど、なかなか手に汗を握る展開がてんこ盛りなのですが、その分バイヤー側の勘と計算が当たって大成功したり、交渉がうまくいって相互が得をする形で商品が出回ったりする描写は爽快そのものですので、そういった話題に関心を持っている方には是非読んで頂きたい隠れた秀作漫画だと思います。
 ちなみに、下の画像は大晦日に行なう<伊勢海老祭り>の目玉となる予約商品開発会議の様子ですが、後にカドヤの注目社員になった真理さんも当時は入社一年目でまだひよっ子だった為、「伊勢海老のウニ焼きは…」→「無理ね。手間もコストもかかりすぎる。ウニを使って一体いくらで売るつもり?」、「じゃあ、サラダ仕立ては?」→「サラダは伊勢海老料理としては高級感がない」、「エビチリ!」→「辛いものはダメだ、苦手なお客様も多い。インパクトにも欠ける」…と散々意見を蹴散らされており、読んでいるこちらまで緊張して「頑張れ!」と応援したくなるほどでした;。
 こういう熱くて臨場感溢れる会議シーンが頻繁に登場するのも『おいしい銀座』の見所の一つで、この場面を見るたび「一見何の変哲もないように見える商品も、こういう念入りな会議の末に誕生した、選ばれた一品なんだな~」と当たり前の事実を再認識させられます。
白熱する商品会議が見物で、読んでいるこちらまで燃えてきます
 今回再現するのは、入社二年目の真理さんが銀座一の名店と名高い寿司屋・<久嵯吾>が「まぐろ祭り」のイベントを機にカドヤへ出店する際、榎木田さんやチーフバイヤー・藤崎綾乃さんから「寿司屋では考え出せないような、マグロを使った新しいサイドメニューを考えて欲しい」と言われたのに答える為開発した二品の内の一つ、“スペシャルづけ丼・花咲”です!
 作り方はお手軽で、千切りにしたマグロの赤身をごま油・にんにく・唐辛子入りの韓国風タレで和えて酢飯の上に乗せ、青じそ・ごま・松の実・にんにく・卵黄などを飾り付けたら出来上がりです。
 真理さん曰く「卵黄の脂肪で安価な赤身もトロの風味が出ます」「ユッケからヒントを得て酢飯に合うようアレンジ」を狙いに作った丼だそうで、作中では辛口な評論をする榎木田さんも珍しく「ヅケにしたまぐろの味も活きているし、ピリ辛のタレも食欲をそそるな」と認めていました。
 お寿司のマナーに自身がない方でも食べ方を気にせず召し上がってもらえる上、お値段は良質のマグロを使用しておいて何と五百円(?!)という破格のお値段だった為、お客さんからはそこそこ受けていました。
 この「まぐろ祭り」に関する詳しいエピソードは、次回もう一つのメニュー・“スペシャルづけ丼・青葉”の再現記事をアップする時に載せる予定ですので、宜しければそちらも見て頂けると幸いです。
ユッケからヒントを得て考え付いたマグロ丼です
 マグロのユッケは前々から回転寿司でなじみのあるネタだった為そこまで違和感はありませんでしたが、マグロを千切りにして尚且つ丼にしてしまう料理はまだ食べた事がなかった為、初めて見た時から再現を決意していました。
 近所のスーパーでマグロが安く手に入ったことですし、早速再現してみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、韓国風ユッケタレ作り。ボウルに醤油、日本酒、コチジャン、砂糖、にんにくのすりおろし、ごま油を入れ、水分と油分がよく合わさって乳化するまで、泡立て器で念入りに混ぜ合わせます。
 材料全てが混ざりきってなじんだら、韓国風ユッケタレの出来上がりです!
 ※コチジャンではなく、豆板醤を使用してもOKです。あと、このタレは馬肉のユッケを作る際に使っても美味しくいただけます。
スペシャルづけ丼・花咲1
スペシャルづけ丼・花咲2
 次は、マグロの用意。
 マグロの赤身を繊維がバラバラにならないようやや太めな千切りにし(半冷凍状態のまま使った方がキレイに切りやすいです)、先程のタレが入ったボウルへ投入して菜箸でざっと混ぜます。
 その間、炊き立てのご飯に合わせ酢をかけて合わせた酢飯を準備し、荒熱を取っておきます。
スペシャルづけ丼・花咲3
スペシャルづけ丼・花咲4
スペシャルづけ丼・花咲5
 まだ温かい酢飯を丼によそったらの上へ、種を取って細い千切りにしたきゅうり→洗って水分を取った青じそ→タレをまぶしたマグロを順番に乗せ、さらに白ゴマと松の実をパラリと散らします。
 この時、マグロは中央にある程度へこみを作っておいたほうが後から卵黄を乗せやすいです。
 ※今回は原作になかったので省きましたが、もみ海苔をたっぷりかけても合いそうです。
スペシャルづけ丼・花咲6
スペシャルづけ丼・花咲7
スペシャルづけ丼・花咲8
 マグロの中央に卵黄を落とし、その回りを囲むようにしてにんにくのスライスを飾り付ければ“スペシャルづけ丼・花咲”の完成です!
スペシャルづけ丼・花咲9
 青じその緑色、黄身の黄色、マグロの紅色、にんにくや松の実の白色の取り合わせがキレイで、見るからに食欲がわきます。
 パッと見だと本当に馬肉のユッケみたいで一瞬ギョッとしますが、よくよく見ると透明感のある赤なのですぐに見分けられました(^^;)。
 卵黄にお箸の先をぷっと差し入れた途端、トロ~ッと一気に流れ出てまぐろや酢飯に染み込んで行く様は本当に魅力的で、卵好きにはたまらないひと時でした。
スペシャルづけ丼・花咲10
スペシャルづけ丼・花咲11
 それでは、崩した卵黄をマグロに絡めていざ実食!
 いっただっきま~す!
スペシャルづけ丼・花咲12


 さて、味の感想ですが…ユッケ風タレでまぐろの生臭さが完全にかき消されていて美味!コチュジャンが合わさっても存在感を失わぬまぐろの味の深さにびっくりです!
 まぐろの赤身にはどうしても付き物な筋が千切りにする事によって全く気にならなくなっており、逆にネギトロみたいになめらかでとろけるような口当たりに仕上がっていてうっとりします。
 かと言って、これはネギトロの最大の弱点であるのっぺりした舌触りまでは受け継かず、刺身を噛んだ時のザクッとした涼やかな歯触りがそのまま活きていた為、まさにいい所取りな切り方だと感心しました。
 ほのかな酸味が舌に残る酢飯のさっぱりした味わいに、少しピリリとくるこってりした甘口にんにく醤油味のタレが絡んだまぐろのづけが抜群の相性で、やや濃いめな味付けな為食べれば食べる程後を引く、まさに漁師飯に近い豪快な旨さの丼って感じです。
 一言で例えるなら、「こっくりトロトロなまぐろユッケ丼」という感じで、肉を使ったユッケにはない奥行きのある味と柔らかさがたまらないです。
 あっさりしつつも深みは十分あるまぐろの赤身が、ほんのりと香ばしい油分を持ったごま油や、まったりとしたコクを持った卵黄によって程よくまろやかさがプラスされており、トロとまではいかなくても独特の美味さになっていました。
 千切りきゅうりのパリパリした食感と松の実のコリコリ感が時折いいアクセントになり、さらに青じその爽やかな風味が口の中を洗い流して次の一口を新鮮な物にしてくれるのがよかったです。
 また、にんにくの薄切りをサクサク噛んだ途端すぐに力強いがっつりした後口になる為、薬味類によっ結構味の変化があるのが楽しい一品でした。


 それまで、当管理人にとって海鮮丼は途中で味が薄くなったり、具がご飯が足りなくなったりで一種の緊張感を味わう料理だったんですが、この丼なら最後まで気にせずおいしくいただけたため満足でした。
 ユッケのタレをかけてもまぐろの旨さは一向にかけたりしませんし、安売りまぐろを一味違った感じで食べたい時にはうってつけなレシピだと感じました。

○追記
 コメント欄にてリクエストを頂いた『てんまんアラカルト』と、偶然本屋で見つけた思い出の作品『平野レミのアイデアクッキング―まんが版傑作選』を再現料理を予定中の漫画一覧へ加えました。
 よろしくお願いします。

●出典)『おいしい銀座』1巻 作画:酒川郁子 原作:九十九森/創美社
     『おいしい銀座』2巻 作画:酒川郁子 原作:九十九森/創美社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.08.16 Thu 21:07  |  銀座はおもしろいですねぇ。

おいしい銀座はおもしろいですよねぇ、今回のマグロ以外にも、
後に主要人物になる三国シェフの店に殴りこみ、もとい出展のお願いに
行った際につくったグラタンとか、新潟に行った際に結婚祝いにつくられた死んだ父親のレシピを再現した枝豆の冷製スープとか
バイヤー編の佐世保バーガーとか
読んでいて腹が減るので困ります。
(腹が減るは料理漫画のほめ言葉)
平野レミ:まさか漫画版があるとは知りませんでした。
この手のものは「金子信雄のたのしい夕食」くらいだと思っていたので。
そういえば、琴剣淳也先生(元力士の漫画家)の
「ちゃんこ鍋入門」というのもあるか。
探してもなかなか見つからないけど・・・。では。

  • #-
  • 波多野鵡鯨
  • URL

2012.08.19 Sun 17:25  |  美味しそうですね!

昔「空想キッチン!」を読んだのを思い出しました。今はなめこのグルメとか見てます(笑)

閑話休題、私の職場でも調理部門があり、新作を試食する機会がありますが、伝統を守りつつ今の顧客のニーズに合わせるバランス感覚がとても難しいと思います。
『おいしい銀座』はためになりそうですね、読んでみたいです。

2012.08.19 Sun 19:48  |  

あじかりがくえんてしってる。

おもしろかたよ。

いつもみていますでは。。。

  • #cNxohZhU
  • でーぶ
  • URL
  • Edit

2012.08.20 Mon 22:07  |  いけない々

三国シェフではなく「国見シェフ」でした。
すいません。
あと、青葉の再現が楽しみです。では。

  • #-
  • 波多野鵡鯨
  • URL
(編集・削除用)
管理者にだけ表示を許可

Trackback

URL
http://luckyclover7.blog27.fc2.com/tb.php/834-58ae0a39
この記事にトラックバック(FC2Blog User)

プロフィール

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


○当ブログについて
 このブログで使用されている記事の画像、一部文章は、それぞれの出版物等から引用しております。
 引用物の著作権は全て作者様、出版社様等に準拠致します。
 もしご関係者様に問題のある画像及び記事がございましたら、御連絡頂ければ速やかに修正、削除等の対処を致します。

○お知らせ
・当ブログでは作品のネタバレを含んだレビューも同時に行なっておりますので、作品を未見の方はご注意をお願いいたします。
・各作品に掲載されているレシピの分量は、例外なく全て非公開にする方針を取っておりますので、ご了承の程をお願いいたします(←この件についてご質問頂いた場合、誠に失礼ながら下記の理由でご返信しない方針にしております)。

※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

Copyright © あんこ