『最後のレストラン』の“焼き味噌ご飯の和風ドリア”を再現!

 先日、徳川家康が食べた鯛の天ぷらは南蛮風にスパイス味付けした鯛のさつま揚げみたいなもので(しかもニラ入りのソースまでかけていた模様)、現代でよく食べられている天ぷらとは全く別物だった事が分かり、びっくりしました。
 戦国時代の人でも、現代人が日常的に酒の肴にしていそうな物で一杯飲んでいたのかと思うと、不思議と親近感が沸いてきます。

 どうも、どんな味かちょっと食べてみたくなった管理人・あんこです。


 本日作ってみる漫画料理は、『最後のレストラン』にて主人公・園場凌さんがタイムスリップしてきた織田信長にリクエストされて作った“焼き味噌ご飯の和風ドリア”です!
焼き味噌ご飯の和風ドリア図
 漫画『最後のレストラン』とは、亡き父から引き継いだイマイチ流行っていないフランス料理のレストラン<ヘブンズドア>のオーナー兼シェフ・園場凌さん(28)が、アルバイトとして雇っているウエイトレスの有賀千恵さん(17)と前田あたりさん(19)の二名と共に、運命のいたずらで死の直前にタイムスリップしてきた偉人達の無理難題なオーダーにその都度応じ、ご希望通りの料理を出して満足してもらうという新感覚のタイムスリップ系グルメ漫画です。
 どういう訳か、園場さんがお店を経営するようになってから<ヘブンズドア>には時空の裂け目ともいうべきゲートが開いた模様で、それが原因で次から次へと歴史上の有名人物が現れる事になるのですが、お互いに話がチグハグしながらも絶妙なバランスで勝手に納得し合って話が進み、過去の世界に知られたらまずい致命的な証拠や情報が全く流れないようになっているのが見ていて面白いです。
 ある時は「ここは奥州の言い伝えにある迷い家では?」と推測してくれたり、またある時は「処刑人の心遣いで用意された最後の晩餐の場所」と解釈してくれたりとタイムスリップした事実にすら気付かず帰っていきますが、毎回スレスレ過ぎで冷や汗をかかされるので、ちょっとしたスリルを味わえます;。
 似た系統の料理漫画をあげるとするなら『信長のシェフ』がありますが、あちらは料理人の方が戦国時代にタイムスリップして足りない材料に四苦八苦するのに対し、こちらは現代のお店に別世界のお客さんがタイムスリップするという料理人に有利な立場で物語が進行する為、食材や調理法に縛りがない分「現代だからこそ作れる、その人にとって夢のような料理」が園場さんの高い調理技術よって自由に作られていく様子が、読んでいて楽しいです(^^)。

 オムニバス形式でストーリーは進行し、料理に満足した偉人達がお店のドアを開けて元の世界へ戻る事により一話完結して終わるのですが、短いながらも藤栄道彦先生が「こんな人だったのでは?」と資料を調べた結果生まれた個性豊かな偉人キャラは非常に活き活きとしており、思わずこんな人だったかも?と思わせるような魅力があります。
 死ぬ前に突然やって来るという設定なのでラストはしんみりする終り方になる事も多々あるのですが、食べたいものを食べて去って行く偉人の去り際は幸せそうで、皆園場さん達に感謝して帰っていくため後味は悪くないですし、基本的にコメディタッチの明るいお話がほとんどなので色んな方にお勧めしたい作品です。
現代にタイムスリップしてきた人間の集うレストラン
 ちなみに、料理漫画に出てくる主人公は大抵が情熱的で前向きなタイプが多いのですが、園場シェフはその間逆をいく感じで、悲観主義・マイナス思考・根性なし・そのくせプライドだけは高いという前代未聞の主人公;。
 お店に全くお客が来ない時は「どうせ今日もお客は来ないんだ!最後にレストランごと華々しく燃やして散ってやるんです!」と体中に花火を巻きつけたり、かと言ってお客がいっぱい来たら来たで「計算したら、死ぬまで働いていくら稼げるか見えてしまいました…夢も希望もなくなりましたよ」とこの世の終わりのような顔になったりするなど、作中で有賀さんが言った通り「ダメ人間だなぁ」「殴ってもいいですか?」と言いたくなるような残念な大人に描かれています(正直、一番料理人になったらいけないタイプだと思います;)。
 しかし、園場シェフはその名通り「その場をしのぐハッタリを考え付く事が得意」という類稀な特技の持ち主で、尚且つ料理の腕とポリシーは奇跡的にしっかりしている料理人。
 その為、常識的な料理人なら追い出すか逃げ出しそうな珍妙な客人達を目の前にしても、何だかんだ言いつつ受け入れてはまるで知恵比べみたいな注文を捌いて最終的に満足してもらっているので、「性格は確実に難ありだけれど、正直イカサマすれすれな手段も使えて腕もある園場さんだからこそこの漫画の主人公が務まるんだろうな~」と妙に納得してしまいます。

 また、元気で明るく楽天的な性格の女子高生・有賀さんは場の空気を和やかにするマスコットキャラクター的ムードメーカー、豊富な知識を持つクールビューティーな謎の女子大生・前田さんは語学に疎い園場さんや有賀さんに変わって偉人達と意思疎通する交渉役として登場し、話に華を添えているのがミソ。
 オーナーと従業員というよりはもはや兄妹みたいなノリになっており、料理以外は今ひとつ頼りない園場さんをしっかり補佐して助けているのが読んでいてほほえましいです(正直、この三人で繰り広げられるテンポがいいノリツッコミな会話がなければ、もっと暗いお話になっていたと思います;)。
 特に、前田さんはどんな偉人でも正確に把握して様々な歴史を知っている上幅広い語学力をも兼ね備えており、『魁!男塾』における雷電みたいな解説役と言っても過言ではない活躍ぶりな為、個人的には前田さんの正体も気になるところです;。
園場さんが主人公で、前田さんと有賀さんが準主役みたいなものです
 今回ご紹介するエピソードは、第一回目に来店した織田信長ご一行のお話。
 本能寺の変で追い詰められた織田信長は、妻の濃姫や家来と共に脱出しようと寺内を歩いていた時に<ヘブンズドアー>へ続くドアを開け、「普通に営業しているのにどうしてお客が来ないかな~」とぼやいていた園場さん達の前に現れます。
 当然最初はお互いに混乱していたものの、園場さん側は「映画の撮影中にやって来た俳優さんが演技の練習をしているのかな?」と強引に思い込み、織田信長側は濃姫から聞かされた迷い家の言い伝えで「ここがそうかもしれない」と受け入れた事によって、話は少々の緊張感を持ちつつ進行します。
 なお、織田信長は園場さんが白装束を着ていると誤解して「死を覚悟して、丸腰でこの信長の前に立つか!」と心の中で感嘆していたのですが、こんな発言を臆病者の園場さんが聞いたら即効その場から逃げ出していた事が容易に想像できる為、初っ端からぎりぎりセーフな展開にヒヤッとしました;。
 この時、織田信長が園場さんに出したオーダーは「どこの誰も食べた事のない、空前絶後の料理を持ってまいれ!」という曖昧かつ難解な物で、園場さんは「具体的に何?!どーいう料理よ!」と混乱して苦悩します。
記念すべき第一回目のお客様は、何と織田信長!
 その後、園場さんがリクエストに答えるべく知恵を絞っている最中に前田さんが漏らした「信長は焼き味噌の湯漬けが好物だったそうです」という一言で思いつき、織田信長本人に台所へ立ってもらって手順を指示しつつ作ってもらったのが“焼き味噌ご飯の和風ドリア”です!
 作り方は簡単で、味噌やみりんを焦がした物で味付けした干ししいたけとご飯・刻んだ長ネギ・ゆるめに煮立てたホワイトソースをグラタン皿に入れてパン粉を上から乗せ、高温のオーブンで焼いたら出来上がりです。
 何故これが「どこの誰も食べた事のない、空前絶後の料理」かと言うと、園場さん曰く「これは信長様自らがお作りになった料理だからでございます。天下無二の方がお作りになったのですから、天下無二の料理に決まっています。天下開闢以来いかなる天子・聖人も口にした事がなく、これからも出来ない料理でございます」というのが根拠だそうで、初見時は策士だな~と感心したのを覚えています。
 もっとも、織田信長自身はこの解答に納得しつつも心に残る言葉で園場さんを諌め、己の腕を信じられるようもっと鍛錬せよとアドバイスします。
 ここら辺の下りは織田信長の器の大きさが見事に描かれている上、ラストもほんの少しの切なさを感じさせつつうまくまとまっていますので、興味のある方は是非ご一読される事をおすすめします。
何と、信長直々に台所に立ってもらうという前代未聞な展開に!
 ただでさえ具が少ないのに、そのうえチーズまで使わないとはどんな味がするんだろうと、初めて読んだ時から興味を持っていた一品です。
 詳しいレシピはないものの、大まかな作り方は作中に記されていましたので、そちらを参考にしつつ再現してみようと思います。


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下準備。熱したフライパンにバターを入れて溶かしたら小麦粉を入れて手早く混ぜ合わせ、一体化してフツフツいい出してきたら牛乳を一気に投入し、ダマにならないようガーッと力いっぱい混ぜあわせます。
 牛乳を全部入れ終わってとろりとしてきたら、さらにまた牛乳、塩、こしょうを加えてゆるめのソース状になるまでよく混ぜ合わせ、火を通し終えたらボウルへ入れて荒熱を取っておきます。
 その間、干ししいたけを水で戻してみじん切りにし、長ネギを千切りにします。
焼き味噌ご飯の和風ドリア1
焼き味噌ご飯の和風ドリア2
焼き味噌ご飯の和風ドリア3
 次は、味噌味の焼き飯作り。
 中火に熱したフライパンに、お好みの味噌(当管理人は今回、合わせ味噌を使用しました)とみりんを入れて軽く焦がしながら混ぜ、いい香りがしてきたら冷ご飯と先程の干ししいたけを投入してよく混ぜ合わせます。
 味噌がご飯全体に行き渡り、味見して塩気がちょうどいいのを確認したら火を止めます。
 ※チーズを使用しない分、塩気はやや強めにしておいた方がいいです。
焼き味噌ご飯の和風ドリア4
焼き味噌ご飯の和風ドリア5
焼き味噌ご飯の和風ドリア6
 ここまで来たら、いよいよ焼き作業。
 オリーブ油を塗ったグラタン皿へ、先程の味噌味の焼き飯→長ネギの千切り→ゆるいホワイトソースの順に具を重ね入れ、最後にたっぷりのパン粉を振りかけます。
 パン粉をかけ終えたら高温に熱したオーブンに入れ、表面がこんがりするまで焼きます。
 ※全て火が通っているので、短時間で済みます。
焼き味噌ご飯の和風ドリア7
焼き味噌ご飯の和風ドリア8
焼き味噌ご飯の和風ドリア9
 パン粉が所々キツネ色になってきたらオーブンから取り出し、仕上げに刻み海苔を振りかければ“焼き味噌ご飯の和風ドリア”の完成です!
焼き味噌ご飯の和風ドリア10
 一見した所、ホワイトソースに覆われているので何が入っているのか分かりませんが、味噌の芳しい香りが漂ってくるので和風な印象を与えられます。
 チーズを使わないドリアは初めてなので心配でしたが、実際に作ってみるとそこまでおかしな出来ではなかったのでほっとしました。
 一体どんな味がするのか、予想が全くつかないだけに楽しみです!
焼き味噌ご飯の和風ドリア11
 それでは、焼きたてふつふつの内にいざ実食!
 いただきま~す!
焼き味噌ご飯の和風ドリア12


 さて、味の感想ですが…想像以上に本格的な出来栄えで旨し!和と用がバランスよく調和しています!
 サクサクに焼き上がったパン粉と、トロトロにとろけるホワイトソースがお焦げ付きの香ばしい味噌ご飯と殊の外相性がよく、チーズなしでも十分ボリュームがありました。
 あっさりめかと思いきや結構こってりした濃密な味わいで、それでいてさっぱりした後味なのが印象に残ります。
 意外な事に、牛乳たっぷりなホワイトソースの豊かなコクと、味噌の熟成された塩気が口の中で合わさる事によってまるでチーズそっくりな旨味が楽しめる為、チーズなしでもちゃんとドリアっぽくなっていのに感動しました。
 蒸し焼きにされた長ネギのくたくたシャッキリした歯触りと、さらに増した甘味が味噌にもホワイトソースにもよく合っており、やや強めの塩味がついたご飯を和らげてくれるのがよかったです。
 下の味噌ご飯も、干ししいたけの出汁が効いているせいかみりんと味噌だけの味付けとは思えない程複雑な甘辛味に仕上がっており、一言で言うなら「田舎の炊き込みご飯風味噌チャーハン」という感じの美味しさでした。
 干ししいたけの軸のコリコリした食感、身のプリプリした歯触りがいいアクセントになり、噛めば噛む程香り高い風味やきのこ特有の深い旨味エキスがブワッと広がるのが堪えられません。
 ドリア全体の感想を述べるとするなら「干ししいたけとネギの精進料理風味噌ドリア」というイメージの、非常にユニークな料理でした。


 ホワイトソースと味噌の組み合わせがチーズのような味わいになるとは予想外だったので、かなりびっくりしました。
 この組み合わせを色々応用したら面白い料理が出来そうなので、いつか試してみたいです。

●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.10.02 Tue 19:19  |  

こんばんは!いつもブログ楽しみにしてます!
最近、CS放送で「クッキングパパ」と、「美味しんぼ」のアニメが、
平日夜9時から2本立てで放送しているのを見るのが日課になっている暗いアラサーOLなので・・・2つの漫画の料理を再現されていて感動しました!
特に荒岩主任の「ヤング肉じゃが」!!!

ところで、いろいろな料理マンガの料理を再現されていますが、
新たな作品で「深夜食堂」なんていかがでしょうか??
味のある料理ばかりなので。あ
あんこさん、ぜひぜひ!
楽しみにしてます!

  • #-
  • まりまり
  • URL

2012.12.01 Sat 13:19  |  

初めてコメントいたします。アキアカネと申します。
あんこさんの再現料理、いつも楽しく拝見しております。
私は一人暮らしなのですが、このブログがきっかけで自炊をするようになりました。
先日この記事を読んだあと、書店で「最後のレストラン」の単行本を目にし、思わず購入してしまいました。
短いながらどの人物も本当に生き生きとしていて、ホッとする作品ですね。素敵な出会いをありがとうございます。
読みながら想起した本があるのですが、料理研究家の河合真理さんの「迷宮レストラン」という本はご存知ですか?こちらも歴史上の人物のために、河合さんがおもてなしの料理を作るというコンセプトの本です。
簡単ながらレシピも掲載されていて、「最後のレストラン」が好きな方はきっと楽しめるのではないかと思います。

  • #64N5LOi.
  • アキアカネ
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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
 図々しい姿勢で恐縮ですが、ご返信をこまめに出来なくて余裕がある分、ブログ内容を充実&長期的に続けられるよう力をいれる事で皆様のご厚意にお応えし、感謝の気持ちをお返ししていきたいと考えております。
※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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