『くーねるまるた』の“バカリャウのコロッケ”を再現!
- Wed
- 18:00
- 再現料理
その昔、コスモスのヒョロロ~ッと細いのに妙に長すぎる丈が何故だか苦手で、あまり好きな方ではなかったのですが、近頃は嗜好が変わったのか平気になっていました。
ただ、せっかくの香りが屋台で売られているイカ焼きの匂いによって台無しになっていたのには、少しズッコケました;。
どうも、ビール園で飲む時はフライドポテトとソーセージ盛り合わせの注文は欠かせないと考えている当管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『くーねるまるた』にてポルトガル人の主人公・マルタさんが初登場時に作った“バカリャウのコロッケ”です!

『くーねるまるた』とは、ポルトガルから日本にやって来て一人暮らしをしているお茶目で明るい食いしん坊な女性・マルタさんが、慢性的な金欠状態にめげず貧乏暮らしの中でも作れる美味しい物を食べながら気ままな毎日を過ごしていく、国際派庶民系グルメ漫画です!
暑い時期は部屋の中とはいえビキニ姿で一日を過ごしたり、受け取りのサインをもらい忘れた宅配便のお兄さんが引き返した時には「コロッケを食べに来たんデスネ!?」と笑顔でコロッケを差し出したりと、思わずこちらの度肝が抜かれる程大胆な天然ボケ的発想をするマルタさんですが;、純粋で明るい性格と屈託のない子どものような笑顔が見ていて愛らしく、読んでいるだけでほのぼの癒される作品です(^^*)。
実を言いますと、マルタさんの詳しい身の上話は未だ明らかにはされていない為、所々不明な点が目立つのですが(お金がなさそうな割には大使館のパーティーに出席した事があるみたいなので、「一体何者?!」と謎が深まってます;)、どうやら東京の大学院へ留学したのが日本に来るきっかけだったそうで、卒業後も東京の地が何となく気に入って自然に残る事を決めたと後にマルタさんは語っています。
現在住んでいるのは、学生時代からずっとお世話になっているというお寺の敷地にある築七十年のおんぼろアパート・<笑明館>で、見る人曰く「…人住んでるのかよ、ココ;」と一瞬ひるんでしまうくらい年季のはいったアパートだそうですが、ベランダでハーブを育てたり、時々お寺で行なわれている子ども教室の手伝いに行ったりと、結構お寺内での生活をエンジョイしているご様子。
“夏みかんのジャム”や“自家製紅茶豚のチャーシュー”といった正統派料理を作ったかと思えば、近所の河原でバカリャウを餌に釣ったザリガニを泥抜きし、手作りのサワークリームと合わせて夕食を済ませたり(!?)と、オシャレなのかサバイバルなのかよく分からない時もありますが、当管理人的には「グルメ要素<マルタさんの笑顔。よって、マルタさんが可愛ければ無問題」と考えています;。
基本的には洋食系の再現が多いですが、この間マルタさんは幸田文さんに憧れて作中に出ていた“鶏脂チャーハン”を再現していましたので、今後も「文豪の愛した料理再現」がシリーズ化されたりするのかな~?と思うと、ワクワクが止まりません。

今回ご紹介するのは、記念すべき第一話「バカリャウ」。
それは、八月のある真夏日の事。
殺人的に暑い上お金も食料も尽きてしまい、ろくに物を食べられないという危機的状況に追い込まれていたマルタさんは、頭上はパラソル・足元はビニールプール・服装はビキニ一丁という無防備な状態で涼をとっていたのですが(一瞬「見るからにセキュリティーが甘そうなアパートでそんな格好をしたら、危険なんじゃ…」と思いかけましたが、考えてみればお墓方面に面したベランダにいる人間といえば幽霊くらいしかいなさそうなので、別の意味で安心ですね;)、母国・ポルトガルにいるお母さんから救援物資がやっと届いた為、涙ながらに大喜びします。
ちなみにこの時、マルタさんは「やっぱり、食べ物は心を豊かにしますよね?楽しい気分になりますよね?」と子犬のようにはしゃいだり、喜びのあまり「じゃあ、踊リマショウ!」と宅配便のお兄さんとランラン♪と踊ったりするなど、初っ端から飛ばしまくっています;。
普段は幸田文先生ファンを自称するくらいの日本文学好きだったり、お寺にやって来る子ども達の面倒をしっかりみたりとちゃんとした大人の面もあるのに、こと食べ物の件になるとまるで少女のように無邪気にはしゃぐ所が非常にほほえましいです(^^*)。

やっとお兄さんを開放したマルタさんが段ボールの中を開くと、そこには懐かしのポルトガル名物・バカリャウが箱いっぱいに詰まっており、マルタさんは目を輝かせます。
バカリャウとは、北欧の海で獲れる巨大で肉厚な鱈を塩漬け&干して作る、いわば日本の干し鱈のような保存食で、ポルトガルでは非常にポピュラーな代表的食材との事。
ポルトガルでバカリャウの調理法はゆうに三百種類以上あるそうで、如何にバカリャウがポルトガルで愛されている食材なのかがよく分かりますが、その中でも一番王道の食べ方・コロッケにして食そう考えたマルタさんは、いそいそと調理にとりかかります。
こうして、空腹でクタクタになりつつもマルタさんが手早く作ったのが、この“バカリャウのコロッケ”です!
作り方はかなりお手軽で、水で戻した後に細かくほぐしたバカリャウ(本来は一晩かけて戻すのが理想だそうですが、マルタさんの場合待てないとの事で数時間で引き上げてました;)を茹でたじゃがいもと溶き卵の入ったボウルに入れて混ぜ、二つのスプーンを合わせてラグビーボール状に整形してこんがり揚げたら出来上がりです。
マルタさんが言うには玉ねぎやパセリを入れるともっと美味しくなるようですが、どちらもない場合はバカリャウ・じゃがいも・卵の三つだけでも充分いいお味に仕上がるとの事で、あまりの素っ気ないレシピでびっくりさせられながらも妙に心惹かれるコロッケでした。


そして、味見で一つ口に放り込んだマルタさんは、一呼吸おいた後実にいい笑顔で「美味。」と至福の表情になり、結局また一人で喜びの舞を踊っていました;。
どうやら、バカリャウはそのままだとややきつい匂いがするみたいなんですが、一旦火を通すと打って変わっていい香り&旨味に変化するようで、その後試食していた日本人のお兄さんも「え…うまい?」「何だこれ…独特の塩味って言うか、旨味?魚の…」と大いに驚いていました。

以前、『信長のシェフ』内でバカリャウの記述をちょこっとだけ見たものの、食べた事は一度もなかった為どんな味がするのか前々から気になっていました。
思い立ったが吉日と言いますし、早速作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、バカリャウの下準備。バカリャウは最初身同士でくっついている可能性が高いのでそっと引き剥がし、水をたっぷり注いだボウルに入れて冷蔵庫にしまい、一晩かけて余分な塩気を抜きます。
気になったので匂いを嗅ぎましたが、そこまでひどくはなかったものの魚系の発酵食品に似た香りが若干したので、確かにこれは生魚じゃないと食べられない人にはきつく感じられるかもしれないな思いました。



時間が経ったらボウルから取り出してキッチンペーパーでしっかり水気を拭き取り、皮・骨・ヒレを指やピンセットで丁寧に取りのぞき、細かくほぐします。
その間、茹でたじゃがいもの皮を取ってボウルに入れ、木ベラで大雑把につぶします。



このじゃがいも入りのボウルへ、先程のほぐしバカリャウと溶き卵を投入し、粘りが出ないよう気をつけながらざっくりと混ぜ合わせます。
正直、バカリャウとじゃがいもが混ざった段階でもう既に美味で、否が応にも期待は高まりました(←これを軽く焼いた輪切りフランスパンに乗っけて食べると、ワインもビールも進みまくります^^)。



全体がさっくり混ざったら、スプーン二本を使ってタネをラグビーボール状に整え、高温の油で数分かけてカラッと揚げます。
表面がほんのりキツネ色になって浮かんできたらさっと取り出し、キッチンペーパーで余計な油分をきっておきます。
※スプーンで整形する際、表面がツルッと滑らかにさせたらきれいに揚がります。


油が程々落ちたら冷めないうちにお皿へ一つ一つ盛り付け、作中の絵通りこんもりとした大盛り状態になれば“バカリャウのコロッケ”の完成です!

思っていたよりもカラッとした揚げ上がりで、手で割ってみると見るからにほっこほこな出来栄えなのにほっとしました。
ラグビーボールというにはペッタンコ過ぎる形なのが、心残りといえば心残りorz。
日本の干し鱈の匂いに近いものがありますが、それもりもずっと強くどこか違った香りで、味の方はどうなのだろうかと激しく気になりました。

それでは、熱々ほくほくの内にいざ実食!
いっただっきま~す!

さて、味の感想はと言いますと…鱈とじゃがいもの相性抜群で美味し!一口食べたらあと一つ、もう一つと止まらなくなる名作コロッケです!
当初は「衣をつけずに揚げるから、油にまみれてギトギトになるのでは…」と心配だったんですが、溶き卵を混ぜ込んだせいか外側に極薄でしっかりした膜状の衣が自然と出来て中をガードしており、歯を突き立てるとサクサクパリッとあっけなく砕けて中の具と一体になるので意外とあっさりしています(もちろん、じゃがいもに油は全く染みていませんでした)。
全く調味料を入れていないものの、バカリャウからじんわりにじみ出た鱈の旨味たっぷりの塩気がじゃがいも全体にしっとりとなじみ、程よい味付けになっていた為十分おいしかったです。
それも単なる塩味ではなく、魚醤や塩辛系の熟成された感じの複雑な塩味なので、シンプルなのに奥行きがあるという不思議な美味しさでした。
肉厚でシコシコした歯触りの上、噛み締めるとジュワ~ッと濃密なエキスがしみ出てくる鱈の身が、粗く砕かれてふんわりホコホコした食感のじゃがいもとよく合っていて、噛めば噛む程味わい深くなる大人向けのコロッケという感じです。
肝心のバカリャウの味はというと、日本の干し鱈よりもプリプリした弾力の強い肉質で脂分がやや多いのが印象的で、結構塩分も濃い為少し食べただけでもお腹にどっしりくる迫力満点な味が最大の特徴でした。
一言で例えるならば「フィッシュアンドチップスの旨さを濃縮させたコロッケ」というイメージで、ビールのお供に最適な一品です。
家族や相方さんにも「おいしい!」と好評でしたし、確かにこれは老若男女問わず愛される味だと強く納得した再現でした。
コロッケは勿論、スープにしてもいけそうですし、ご飯と一緒に炒めてチャーハンっぽく仕立てても合いそうだったので、近い内にまた挑戦してみようと思います!
●出典)『くーねるまるた』 高尾じんぐ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
Comment
2012.10.25 Thu 08:57 | シンプル!!
どうも。
すっかり忍び瓜にハマってしまっております。
(もう季節外れなので仕入値が問題ですが。。。
色々な料理の本が紹介されるので嬉しいですね。
「ダシマスター」は是非読んでみようと思いました。
シンプルなコロッケですがとても美味しそうです。
パン粉をつけないコロッケは少々違和感がありますが。。。
鱈をアンチョビやイカの塩辛に変えたり、
カッパエビセンなんかを砕いて衣にして揚げれば、
食感や風味が足せそうですね。
何よりビールに合いそうです(*^^*)
次も楽しみにしております。
頑張ってくださいo(*⌒O⌒)b
- #86VISOJs
- しゅてん
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2012.10.25 Thu 09:52 | マルタさん!
あんこさん、おはようございます。いつも楽しく拝見しています。
『くーねるまるた』! 僕も「この漫画、いーなあ」と最近思ってました。
お月見バーベキューの話とか、マルタさんが楽しそうに食べつつ
ポルトガルと日本の違いを思う様子が心なごみますね。
でも、まだ単行本は出ていないのですね…。
バカリャウといえば、『大使閣下の料理人』のポルトガル編でも登場
していますね。日本とポルトガルの食文化の近さを取り上げてました
が…。
個人的に最近「いーなあ」と思う漫画がもう1つ。ヤングアニマルに
連載中の『まかない君』、主人公の少年が一緒に暮らしている姉妹
3人(主人公とは他人)のためにご飯を作り、共に食べるだけ、
という漫画です。料理を作りながら姉妹ととりとめのない話をしたり、
姉妹が料理の感想を言ったり、他愛のない話をしたりしつつ食事
する風景が描かれる、とりたてて大きな物語がある訳ではないです
が、楽しい漫画です。おすすめです。
これからも再現料理記事、楽しみにしています。では~。
- #SFo5/nok
- kawajun
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2012.10.26 Fri 14:49 | 少しまちがえました
あんこさん、こんにちは。
前述の『まかない君』ですが、最新のヤングアニマルを読むと、
ページの上に「クッキングいとこ!」って文があったので、
どうやら主人公の少年は三姉妹の従兄弟みたいです。
まちがえました。話数はまだ8話なので、単行本は出ていない
ようですね。どういう経緯で4人が暮らすようになったかは、
途中から読み始めた身としては当分ナゾのようです。
追訂でした。では〜。
- #SFo5/nok
- kawajun
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2012.10.27 Sat 23:19 | おもしろいですよね。
父方の姓の意味は「食いしん坊」とはいえない・・。
くーねるまるた、おもしろいです。
本日早売りでで次回を読んでしまいました。
「まかないくん」を書こうと思ったら、kawajunさんが書かれてましたので
補足の補足を。
「次回で最終回です。まかないくん・・・。」(補足の補足終わり。)
作者の西川魯介先生の作品はそれこそ、デビュー作
(もう20年くらい前ですか、早いなぁ・・・。)から読んでますが
(今は亡き少年キャプテンの読者でしたので。)
第1話を読んだときに「正統派の料理漫画を描いてる!しかもおもしろいぢゃないか!」と思ったものです。
単行本でないかなぁ、まかないくん・・・。では。
- #-
- 波多野鵡鯨
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2012.11.07 Wed 19:17 | まかない君…!
あんこさん、こんばんは。いつも楽しく拝見しています。
波多野鵡鯨さんのコメント通り、最終回の『まかない君』
ですが、単行本は来年出るようです。
それと、「好評につき第2期制作決定」らしいので、やった!
って感じです。でも、「第2期」って…。アニメ?
- #SFo5/nok
- kawajun
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