『美味しんぼ』の“はる風豚カツ”を再現!

 最近、ひょんな事で明治時代におけるコロッケの値段がわかったんですが、「トンカツ13銭、ビフテキ15銭、コロッケ25銭」と、むしろトンカツ以上に高価だったらしい事にびっくりしました(ソースはこちら)。
 今となっては、トンカツとステーキはそこそこ高い料理・コロッケは庶民の味方を地でいく安い料理とその差は歴然なので、思わず「鳴り物入りで入社したものの、他の同期に追い抜かれまくりの窓際会社員」にイメージを重ねてしまい、悲しくなりました。

 どうも、お店で買った手作りコロッケから時折顔を出すじゃがいもの皮に「ちゃんと自分のところで蒸しているんだな~」と愛着を感じる管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『美味しんぼ』にてはるさんが山岡さん一家の為に作って出した夕食“はる風豚カツ”です!
はる風豚カツ図
 『美味しんぼ』後期に新登場した重要キャラクターというと、山岡さんと栗田さんが取り組んできた「究極のメニュー」の次期後継者である飛沢周一さんが真っ先に思い浮かびますが、そのよき相談役(もしくは悪友)としてジワジワ登場回数が増えてきた難波大助さんも忘れられない所です。
 難波さんはコテコテの関西弁を使う大阪生まれの大阪育ちで、信条が「押しの一手」という程強引な性格な為、あの一筋縄ではいかない小泉局長ですら「あいつは苦手だ」とまで言わせしめてしまう、ある意味すごい人物;。 
 転勤したばかりの頃に東京の食事が合わないと先輩相手に当たったり、ボツ原稿を回収する為に小泉局長へ突進してすごい剣幕で迫ったり、結婚資金を貯める為に飛沢さんと昼ごはんを社内外でたかりまくったりと、正直よくクビにならないな~と感心するほど無茶ぶりで、当管理人自身傍にいたら「関わりたくない社員NO1」だと認識するだろうな~といつも苦笑しながら見ています;。
 しかし、山岡さんの後継者としての重圧や責任感で押し潰れそうになっている飛沢さんを力いっぱい励ましたり、嘘偽りのないストレートな本音のアドバイスで飛沢さんの迷いを打ち消したりといい所も沢山あるので、何だかんだ言ってこの二人は将来いいコンビになって東西新聞社を引っ張っていきそうな予感がしています(^^)。

 そんな難波さんが、飛沢さんと仲良くし始めた時に起こした一騒動が今回ご紹介するエピソード;。
 ちょうどその頃、美人な料理研究家・紺野なか子さんという将来の結婚相手が見つかってやっと凶暴さが収まって来ていたのですが、突如「評論家になって独立し、TV・出版・公演で有名になりたい」というはた迷惑な野望目標で頭が一杯になり、押して押して押しまくるのがデフォな難波さんは各方面へ自分を売り出しにいきます。
 小泉局長に若手が書くコラム欄を「自分に書かせろ」と詰め寄ったり、山岡さんの知り合いのTV局関係者に「討論番組に出演したい」と三日に一度は押しかけたり、いくつもの出版社へ自分の自慢話を書き連ねた原稿を出版しろと迫ったり(その中の一つには、ちゃっかり「小学○」もありました;)と、見過ごすには目に余りすぎる行状に呆れた山岡さんは難波さんを諌めようとするのですが、「そんな弱気じゃ何事も成就せん!押しの一手でいてこましたるんや(゜Д゜#)!」の一点張りで埒が明かず、山岡さんは途方に暮れます。
 …正直、主張は分からなくもないですが、「いてこますって何を?」「もし本当にいてこましてしまったら、話自体ぽしゃってしまうんじゃ…」と突っ込みが滝のように喉元まで出かかり、初見時は本気で山岡さんが気の毒になったのを覚えています;。
てっとり早く有名になりたいと押しの一手な難波さんに、山岡さん達はタジタジ
 頭が痛くなった山岡さんと栗田さんは、その日の夜に馴染みの料理屋<はる>へ夕食を食べに行くのですが、その時はるさんは偶然とはいえ、いいヒントになる新料理を山岡さんご一家にご馳走します。
 それが、至る所に工夫が凝らされているこの“はる風豚カツ”です!
 作り方は拍子抜けするほど簡単で、トンカツ用として売られている豚肉よりも遥かに薄いロース肉を醤油・日本酒・おろししょうが・おろしにんにくを混ぜた調味液に少し浸けて下味をつけ、衣をつけてカラッと揚げたら出来上がりです。
 作中ではるさんが説明した食べ方によると、子どもにはそのまま食べてもいいそうですが、大人は醤油・赤ワイン・すりごま・柚子胡椒で作ったオリジナルの特製タレをつけて食べてもらうと一層美味しく食べられると話しており、「はるさんの飽くなき向上心はすごいな~」と尊敬しました。
 ポイントは「しょうが焼き用くらいに薄くスライスされた豚肉を使う」「揚げる前の段階でしっかり下味をつける」の二点だそうで、下味をつけて揚げるだけでも普通のトンカツとは一味違った味になると大好評でした(まだ幼い陽士君と遊美ちゃんが「おいちー」と無心に頬張っている様子が愛らしかったです^^)。
はるさんが考案したトンカツは、普通のトンカツより大分薄いのが特徴
 そして数日後、会社が休みの日のお昼に山岡さん達は難波さん(他にもなか子さん・飛沢さん・その恋人のすみ子さんまで来ていました;)を自宅に呼び出し、前述の“はる風豚カツ”と普通のトンカツ、下味付きの肉野菜炒めと普通の肉野菜炒め、下味付きの豚肉常夜鍋と普通の豚肉常夜鍋をそれぞれ食べさせ、下味を付ける事の重要性を実感させます。
 全てを食べ終えた後、山岡さんが難波さんに感想を求めると当然「いやあ、下味は大事ですなぁ」と答えるのですが、そこで山岡さんと栗田さんは「待ってました!」といわんばかりに力説します。
 山岡さん達曰く、「下味をつける作業は確かに表に出ない地味な作業だが、全体の味をまるで別物のように高める」「それは人間も同じ。強引に自分を認めさせようとするより、自分自身の下味(=実力)をつける事が大事」との事で、正直やや無理やりな観はあるもののうまい事話を繋げたな~と山岡さん達に感心しました。
 さすが長年大岡越前ばりに色んなカップルの名仲裁をしてきたご夫婦、歳を重ねるごとに言いくるめ説得の腕前が上達してきているように感じます;。
 その後、難波さんは素直に納得し、「山岡さん、栗田さん、よう分かりました。これから僕は、下味の心を教訓として頑張ります」とまるでキレイなジャイアンのように澄んだ瞳で誓われるのですが、「下味をつけるぞ!→なら、経験を積まねばならんぞ!→じゃあ、尚更仕事をもぎ取るぞ!」と難波さんフィルターがかかってしまった為結局事態は変わるどころか悪化してしまい、チョーさんのギャグ並に「だめだこりゃ!」な結末に終わってました;。

 それにしても、かつて「日本の食通と呼ばれる人間は滑稽だね!!」「スーパーのパックの寿司の方が、よっぽど美味いぜ」「かわいそうに、貧しい吸い物しか飲んだことないんだな」と見境なく噛み付いた山岡さんが、会社の後輩に「だが難波、世間の印象も考えろよ」と諭すようになるとは夢にも思わなかったので、色んな意味でじわじわきたなかなか面白いエピソードでした(´∀`;)。
人間、急激に認められようとして慌てるより、「自分に下味をつける」方が大事と諭します
 『ミスター味っ子』を読んで以来、トンカツの肉は分厚いのがおいしい条件だとずっと考えていた為、薄い肉のトンカツをお勧めされたのはびっくりしました。
 真偽の程を確かめる為、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、豚肉の下準備。しょうが焼き用として売られている薄めのロース肉を用意し(筋きりする場合は、ちょこちょこ程度にしないと揚げる時ボロボロになるので要注意)、醤油、日本酒、おろししょうが、おろしにんにくを混ぜて作った調味液に一時間くらい漬けます。
 一時間以上漬けると醤油味が濃くなりすぎてしまうので、漬け過ぎは禁物です。
はる風豚カツ1
はる風豚カツ2
 時間が経って味が程々染み込んだら調味液から取り出し(漬け汁は炒め物の味付けに使えます)、キッチンペーパーで余分な調味液を拭き取ったら小麦粉→溶き卵→パン粉の順に衣をつけ、高温の油でキツネ色になるまで揚げます。
 その間、ボウルに煮切ってアルコール分を飛ばした赤ワイン、醤油、すりごま、柚子胡椒を入れて混ぜ、バランスが整うまで味見をしながら微調整しておきます。
 ※豚肉が薄い分、火の通り加減を気にする事なく引き上げられるので非常に簡単です(^^*)。
はる風豚カツ3
はる風豚カツ4
はる風豚カツ5
 キッチンペーパーで軽く油分を切ったトンカツを食べやすい大きさに切り、千切りキャベツとくし切りトマトを飾っておいたお皿へ盛り付け、傍らに特製ソースを添えれば“はる風豚カツ”の完成です!
はる風豚カツ6
 出来上がってみると、本当にこれ以上ないくらい薄くてペラッペラに軽かったのでびっくりしました;。
 ただ、衣の方は普通のトンカツ同様しっかり揚がっており、はがれそうではがれない絶妙のバランスでお肉にくっついていたので思わず感動しました。
 作中にてご紹介されていた大人用の特製ソースも、個性的な組み合わせの割には一応まともな出来栄えですし、両方ともどんな味がするのか楽しみです!
はる風豚カツ8
はる風豚カツ7
 それでは、揚げたての内にいざ実食!
 いただきまーすっ!
はる風豚カツ9


 さて、味の感想ですが…こんなにペラペラなのに、分厚いトンカツに匹敵する程濃厚で旨し!下味がいい仕事をしています!
はる風豚カツ10
 ハムカツどころか紙カツよりもさらに薄いので、一見ボリュームがなさそうに見えるのですが、サクサクと軽い衣を噛み破った途端こってり濃いにんにく醤油味が口の中へ一気に広がる為、かなり食べ応えがあります。
 肉には勿論衣にもしっかり味がついており、衣だけでも十分美味しく頂けたので、これはもはや衣の旨さを楽しむカツなんだな~と思いました。
 結構塩気が強い為、付け合わせのキャベツを大量にバリバリやりながら食べると、キャベツの瑞々しい甘味と張りのある食感によっていい具合に揚げ物特有の脂分が中和されるのがよかったです。
 薄い豚肉を使うとかえって肉や脂肪の旨味が際立つ上、何故か時間が経っても衣がカラッと香ばしいままなので冷めても美味で、薬味や日本酒によって臭みが完全にかき消えているのに感動しました。
 一方特製ソースの方は、赤ワインの酸味と柚子胡椒の爽やかな香りが程よく存在を主張しあううっすら辛い醤油ソースで、すりゴマのコクが効いてそこそこパンチのあるにも関わらず非常に気品溢れる味わいだったのに驚きましたうまく言えないんですが、西洋の貴婦人が大正時代の女学生のコスプレをしているイメージのような…って、変な例えですみません;)。
 このソースをつけると男性的でがっつりした味の食堂風トンカツが、キリリと引き締まった後口の上品和風味に変化し、一転してあっさりするので面白いです。


 時間が経っても揚げたてみたいなサクサク感が持続するので、普通のトンカツよりもお弁当に詰めるのに向いている気がします。
 辛子マヨやポン酢をつけてもおいしいので、色々なソースを試してみると面白そうです。

●出典)『美味しんぼ』 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2012.10.21 Sun 21:18  |  

大市民のとんかつにも、ちょっと似てますね
分厚いのをかじるのもいいけど、つまみには、薄いほうが合うかも…

  • #-
  • URL

2012.10.22 Mon 08:55  |  肉への下味

プログの掲載頻度を多く驚いております。
今は毎日楽しみにしています。

下味の話は小生も好きなくだりで、
肉への下味は本当に大事なんだと再認識した記憶があります。
特に中華料理での下味はとても参考になります。

豚カツ美味しそうですね。
ビールに合いそうです!!
色々と応用が効きそうですね。
安いハムに同じ下味で3枚重ねにしても良いかもです。

これからも頑張ってください!!

  • #86VISOJs
  • しゅてん
  • URL
  • Edit

2013.03.25 Mon 00:49  |  

ミラノ風カツレツって、ペラペラのカツだって聞いた事が。

  • #-
  • 緒永めじろ
  • URL

2014.06.29 Sun 11:42  |  

これ肉を牛に代えて揚げなくて焼いたら豚カツの元になったカツレツですね。

  • #-
  • ナイトメア
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まとめ【『美味しんぼ』の“は】

 最近、ひょんな事で明治時代におけるコロッケの値段がわかったんですが、「トンカツ13銭、ビフテキ15銭

  • まっとめBLOG速報
  • 2012.10.26 06:49

プロフィール

あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
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