『八朔の雪―みをつくし料理帖』の“ほっこり酒粕汁”を再現!

 新春、明けましておめでとうございます!
 2013年も、当ブログ共々よろしくお願い申し上げます。

 本日再現する漫画料理は、『八朔の雪―みをつくし料理帖』にて澪ちゃんが元旦の朝に屋台で参拝帰りの人々に売り出した“ほっこり酒粕汁”です!
八朔の雪 みをつくし料理帖
 “とろとろ茶碗蒸し”が料理番付で上位に載って以来、<つる家>は一時潰れてしまいそうだったのが嘘のように大繁盛し、連日お客さんがひっきりなしにやって来るようになります。
 亡き娘さんの名を冠したお店が思いがけず有名になり、「番付に載った<つる家>は、ここだよぉ」と表で青竹に詰めた茶碗蒸しを売って浮かれる種市さんを、芳さんと一緒に優しく眺める澪ちゃんでしたが、ある時ふいに「可哀相やが、お前はんの人生には苦労が絶えんやろ。これから先、艱難辛苦が降りそそぐ」と幼い頃有名な易者から言われた言葉を思い出し、嫌な予感に駆られます(確かに、こんな運勢を言い渡されたら当管理人も地味にへこみます;)。
 当初は「幸福に足踏みする癖がついただけ」と自分に言い聞かせた澪ちゃんでしたが、残念な事に悪い勘の方が当たってしまい、まもなく<つる家>には不幸な出来事ばかりが頻発するようになります。

 ライバル・<登龍楼>が近くに出店し、徐々に<つる家>のお客さんがそっちへ移り出した事。
 澪ちゃんが命がけで考え出した、調理法や料理をそっくり真似られたのを抗議した芳さんが、<登龍楼>の板長らに暴力を振るわれ大怪我をした事。
 やっと<つる家>にお客さんが戻り出すと、今度は何故か人相の良くない男達が周囲をうろつき始めた事。

 これだけでもごく普通の町娘だった澪ちゃんには恐ろしい出来事で、毎日ハラハラしながら過ごしていたのですが、ある小雨の降る夜、何者かによって<つる家>は付け火にあい、お店はほぼ焼え尽きてしまいます(証拠はないものの、おそらく<登龍楼>の仕業である事が定説になっています。当管理人としては正統な処罰が下らない事が無念で仕方なかったのですが、後々因果は巡ってきたので、悪い事は出来ないと思いました)。
 こういう時、物語の主人公は逆に「負けるもんか」と燃え上がるタイプがほとんどの気がするのですが、心優しい澪ちゃんは反対に怒りよりも恐怖の方が勝り、「これ以上、何かをされる事が恐ろしい。係わり合いになりたくない」とすっかり気がくじけ、お店の営業を諦めようとしてしまいます。
 初見時はセオリーから外れた展開を少し意外に感じましたが、よくよく考えれば正体不明の大きな悪意や嫌がらせがあったら怖くて真っ向から立ち向かうという手段は取りにくいですし、次に何をされるかという恐ろしさの方が先立つのも無理はないと思います。
 何より、<つる家>を失った絶望とショックで一時記憶が退行し、澪ちゃんを亡き娘・おつるさんと思いこむようになった種市さんの姿を目の前にすると、とても「もう一度やりたいから、協力してください」と言えない気持ちも分かるので、この時ばかりは本当に万事休すかとドキドキしたのを覚えています(´・ω・`)。

 しかし、そんな時、澪ちゃんに思わぬ救いの手が差し伸べられ(この展開は感動と「まさか!」という衝撃が強かったので、是非『八朔の雪』で直接ご確認される事をお勧めします!)、その瞬間易者が不吉な予言の後に「けんど、その苦労に耐えて精進を重ねれば、必ずや真っ青な空を望む事ができる。他の誰も拝めんほど、澄んだ綺麗な空を」と続けた事を思い出した澪ちゃんは、再起をかけて元旦から屋台を出す事を決意します。

 その際、澪ちゃんが大阪で過ごした冬の記憶を懐かしく手繰り寄せながら考え出し、元旦の早朝に作って売り出したのが、この“ほっこり酒粕汁”!
 作り方は手間がかかる物の簡単で、下処理した塩鮭・大根・にんじん・油揚げ・こんにゃく・根深ネギといった具を、酒粕や味噌で作った汁に入れて煮込んだら出来上がりです。
 澪ちゃんが言うには、大阪では塩鰤のアラ・薄口醤油・白味噌・葉ネギを使って作っていたレシピを、江戸の人達の口に合うようアレンジした一品との事で、酒粕の効果で体がいつまでもポカポカするので野外で食べると一際その温かさを実感できるはずだと語っていました。
 事実、この“ほっこり酒粕汁”はまたしても<登龍楼>に真似されてしまうのですが(←現代でも外食産業ではよくある光景なので、ゲンナリしますね;)、澪ちゃんが「粕汁は船場煮と並んで、冬場、大阪の寒い台所で奉公人がごくたまに主のお相伴に与れる、ご馳走なんです。(中略)その一杯の粕汁で、奉公人はどれほど元気づけられることか。その味わいは、贅をつくした暖かい部屋で食べても、あまりよく伝わらないように思います」と予想していた通り、今ひとつ<つる家>の屋台には敵わないようでした。
 こうした澪ちゃんの頑張る姿と屋台の繁盛ぶりをを見て、何か感じる物があった種市さんはようやく立ち直り、おつるさんの嫁入り金として亡き後も手を付けれずにいたお金を使って、また<つる家>を別の地で建て直す事を決めるのでした(それから数ヵ月後の話は、こちらです)。

 運のいい事に、先日京都伏見産の上等な酒粕が手に入ったので、これをいい機会に再現する事にしました。
 せっかくなので、巻末のレシピ通り早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、材料の下準備。大根と人参は皮をむいて拍子木切り、長ネギは大きめの小口切り、油揚げは熱湯で油抜きして千切りにし、こんにゃくはスプーンでちぎって塩でもんで、さっと下茹でしておきます。
 塩鮭はうろこが残っていないかチェックして一口大に切り分け、さっと湯通しします。
ほっこり酒粕汁1
ほっこり酒粕汁2
 その間、酒粕をすり鉢に入れてすりこ木で根気よくすり、柔らかくなってきたらあらかじめ取っておいた出汁を何度かに分けて少しずつ加え、滑らかなクリーム状になるまでよ~くすり合わせます。
 すればする程、日本酒の芳しい香りを濃縮したような匂いが強くなり、むせかえりそうになるので、お酒好きにとってはたまらない作業です(´Д`*)。
 ※結構力がいるので、体力が必要です;。また、出汁は使う分全てを入れるのではなく、酒粕がとろっとしてくる程度の量でOKです。
ほっこり酒粕汁3
ほっこり酒粕汁4
ほっこり酒粕汁5
 次は、煮込み作業。
 大鍋にカツオと昆布の合わせ出汁、大根、にんじん、こんにゃくを入れて火にかけ、具が柔らかくなるまでコトコト煮ます。
 やがて、大根に爪楊枝がすっと通るくらいまで柔らかくなったら先程の酒粕を溶き入れ、塩鮭、油揚げ、長ネギを加え、再度じっくり煮ます。
ほっこり酒粕汁6
ほっこり酒粕汁7
ほっこり酒粕汁8
 全ての具に火が通ってきたら、日本酒、醤油、味噌(当管理人の場合、無難な合わせ味噌を使用しました)を好みの塩梅になるよう入れ、味見をしながら煮ていきます。
 ※塩鮭が入っているので、そこまで醤油は必要ないです。あんまり塩気を強くしすぎると、酒粕の複雑な風味が損なわれてしまうので、要注意です。
ほっこり酒粕汁9
ほっこり酒粕汁10
 味噌と醤油が汁全体になじんできたら火を止め、大きな椀に具ごと汁をどっさりよそえば“ほっこり酒粕汁”の完成です!
ほっこり酒粕汁11
 淡い乳白色で湯気が立ち上る汁の中に、塩鮭、大根、にんじん、長ネギ、油揚げ、こんにゃくが所狭しと浮かんでおり、見るからに体が温まりそうです。
 一見、牛乳が入っているのではないかと思うほど白いのですが、酒粕特有の艶かしい香りがふわりと香る為、和風だとすぐに分かりました。
 確かにこれなら身も心も休まりそうなので、どんな味がするのか楽しみです。
ほっこり酒粕汁12
 それでは、冷めないうちにいざ実食!
 いただきまーす!
ほっこり酒粕汁13


 さて、味はと言いますと…体の芯から温まる味で旨し!酒粕の柔らかな風味が効いていてほっと癒されます!
 その昔、上方風白味噌と鰤入りの酒粕汁を食べた事があるのですが、ポタージュみたいにトロンとした口当たりとまったりした濃厚な甘味が特徴的で、美味ではあるものの人によって好みが分かれそうなイメージだったのですが、こちらは甘味と塩気のバランスが均等に取れている分万人受けしそうな味わいに仕上っていました。
 新米をよく噛んだ時に感じる滋味深い甘さを、もっと上品にさせたような体に優しい美味しさで、一口飲んだだけで栄養価が高い事が分かります。
 酒粕本体よりは落ちますが、それでも清酒の芳醇な風味をギュッと凝縮したような、あの華やかな香りはほんのり残っていて、日本酒好きにはたまらない感じでした。
 ちょうどクラムチャウダーみたいなとろみがついている為、舌触りがとにかくクリーミーかつなめらかなのが印象的で、それと酒粕の効能が相俟ってまるでお風呂上がりみたいにポカポカしてきます。
 たっぷり脂が乗っていて口の中でほぐれていく塩鮭と、その身と骨から出た旨塩っぱい出汁が酒粕の甘味をさらに引き立てており、シンプルに見えてメリハリのある味付けになっていました。
 油揚げも地味にいいコクが出ており、いい塩梅です。
 大根とにんじんのホロリとした食感、コンニャクのプリプリした歯応え、長ネギのシャキシャキ感もこの香り高い汁にぴったりで、冬にはありがたい一品でした。


 澪ちゃん達が酒粕汁の屋台を出し始めたのは、元旦の朝六時頃との記述がありましたので、当管理人もそれに合わせて投稿しました(^^)。
 作中の記述通り、試しにキンキンに寒い外に出て熱々の“ほっこり酒粕汁”をすすると、より酒粕の滋養が体に染み渡り、温かさが全身に染み渡っていくのが感じ取れてよかったです。
 
●出典)『八朔の雪―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2013.01.02 Wed 00:57  |  

最近はコメントをしていませんけれど、何時も楽しく読ませて貰っています。今年も、更新を楽しみにしている事に違いはありません。コメントが少ないからとブログの更新をあきらめないでと思います。

  • #-
  • oguogu
  • URL

2013.01.02 Wed 01:16  |  

あけましておめでとうございますm(__)m
ブログの更新楽しみにしてます

  • #-
  • 直方
  • URL

2013.01.02 Wed 01:34  |  はじめまして

明けましておめでとうございます。
最近このブログに出会って、気付けば開く位はまってます(^^)
前置き文も大好きです!
今年も楽しみにしてます

  • #-
  • さちこ
  • URL

2013.01.03 Thu 04:24  |  あけましておめでとうございます

はじまして&あけましておめでとうございます!
いつもブログ楽しく読ませて頂いております。再現料理の忠実さと完成度の高さだけでなく、元になってる本の取り上げ方にも毎回魅力を感じていて、ついついあんこさんが紹介する本を読みたくなってしまいます。実際、「みをつくし料理帖」はブログで拝見したのをきっかけに興味を持って、今ではすっかり愛読者の一人になっています。なので新年迎えて一発目のあんこさんブログが【みをつくし】という事でタイトルみてテンションあがりました(´∀`*)

これからも楽しく読ませて頂きます。今年もブログ頑張って下さい!

  • #2PVIy8NY
  • お辰
  • URL
  • Edit

2013.01.04 Fri 10:15  |  はじめまして!!


明けましておめでとうございます!!
前々から再現記事を楽しく読ませていただいてました(^w^)

『みをつくし』良いですよね、確か実写化もされた(される?)んですよね(^w^)

  • #-
  • URL

2013.01.05 Sat 21:26  |  明けましておめでとうございます

あんこさん、明けましておめでとうございます( ´ ▽ ` )ノ
コメント乗せて貰えたら既読、イイねを貰ってると前向きに解釈してる、私です☆
昨年も、私の食卓がお世話になってます。
今年もよろしくお願いします。
私も、ついつい開いてしまうはマリ方です。
知的で、好奇心旺盛かつ、スカッとする正直な真っ直ぐな気持ちの良い人ですね!
過去ブログを遡るのも好きで、これからちょくちょく作ってはレポなどさせて貰うかもしれません。
私も九州出身なので地元話にも沢山元気貰ってるんですよ!
今年もよろしくお願いします。

  • #-
  • ふじちぃ
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プロフィール

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
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※現在、公私の多忙と、再現記事のペース維持を理由に、コメント欄へのご返信が出来ない状態が続いております。
 こういう場合、コメント欄は停止するべきなのかもしれませんが、励ましのお言葉やアドバイスを頂く度、ブログのモチベーションアップや心の支えとなったこと、そして率直なご意見や情報を聞けてとても嬉しかったこともあり、誠に自分勝手ながらこのままコメント欄は継続する事に致しました。
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