『最後のレストラン』の“クリームパスタ サルバドール・ダリ風”を再現!

 先日、『築地魚河岸三代目』の単行本で変わったウニの食べ方が紹介されているのを見つけ、びっくりしました。
 その食べ方とは“ウニの卵焼き”で、何と鶏卵は一切使わずすりおろしたウニのみ(!?)に調味料を加え、ふっくら焼きあがるという、まさに贅沢の極みのようなレシピでした。
 どれだけお金がかかるかと思うと、ちょっと気軽には再現できない逸品ですが、これもいつか再現出来たらな…と思います。

 どうも、プリンと醤油の組み合わせは小学生の時に実践済みな管理人・あんこです。


 今回再現する漫画料理は、『最後のレストラン』にて園場さんがタイムスリップしてきたサルバドール・ダリの為に作った“クリームパスタ サルバドール・ダリ風”です!
クリームパスタ サルバドール・ダリ風図
 ジャンヌ・ダルクがレギュラーキャラとして園場さんのレストラン<ヘブンズドア>に住み着き、大分周囲となじんできた頃、また新たな有名人物がタイムスリップしてきます。
 今回時空を越えてやってきたのは、シュルレアリスムの代表的な画家であり、自らを「天才」と称していたというサルバドール・ダリ(1904年~1989年)。
 『最後のレストラン』ワールドでは珍しい事に、ダリは死の直前にやって来たのではなく、亡くなる数年前に起こった自宅の寝室での火災直後にこちらへ飛んできたらしく、そのせいかあまり悲壮感のないコメディ色の強いお話になっています。
 中でも、偶然近所のデパートで行なわれていたダリ展に便乗した園場さんが、期間限定メニュー・ダリランチ(ダリの「柔らかい時計」という作品をモチーフにした、溶けたカマンベール乗せオムライスがメイン)を売り出していたのにダリが「許さあーーん!!人の名前で勝手に商売をするとは!」と激怒していたシーンと、「君、名前の無断使用で訴えるから」とダリが現実的過ぎる宣言をしたのに焦った園場さんが「見逃してください!」とすがりつくシーンが面白く、「確かに、ご本人が生きていたらこうなるよなぁ…」と苦笑しました。
 さすが「ドルの亡者」と皮肉られた程お金にがめつかったダリ、一切容赦なしです;。
 しかし、ダリが「見逃してやっても良いが、一つ条件がある」「正確にダリの名を表現した正真正銘のダリランチを作れ!」と譲歩してくれたおかげで、園場さんはほうほうの体でダリランチつくりに取り掛かることとなります。

 作者の藤栄道彦先生曰く、「芸術を卑近な物にしたがった、すごい村上隆」とも言うべき存在だと考えていらっしゃるそうで、作中ではピカソのような本物の天才たちに対抗する為、繊細な常識人という素顔を隠してわざと天才っぽく見えるよう奇行を行なうという人間臭いダリ像になっています;。
 その為、ダリのファンの方にはすこぶる不評かもしれませんが、個人的に喜怒哀楽が激しいダリ像は読んでいてとても新鮮で、好感を抱いたのを覚えています(←ただ、描かれた張本人である藤栄道彦先生は「本人はそんなんじゃなかったと思いたい」と述べていてずっこけたり;)。
 芸術の商業化や芸術家の人気取り活動は、今では大分公認されてきた行為なものの、未だ賛否両論だと思うので厄介な問題ではあるのですが、当管理人は「仮に商業化によって芸術性・高尚さが損なわれたとしても、良くも悪くもとっつきやすくなった作品により、無関心だった一部の人間が芸術に興味を示すきっかけになったら、それはそれで有意義な事ではないか」と考えている為、やや賛成側です(飲み物で例えるなら、水割りやカクテルにして薄めたとしてもベースである焼酎のよさが伝わるならいいじゃないか、みたいな感じです←意味不明ですみませんorz)。
勝手に「ダリランチ」なるものを売り出したせいで、ダリを怒らせてしまってました;
 この時、物知りなウエイトレス・前田さんから「ダリは、シュレディンガーの猫(事実を決めるのは観察者の主観で、観察者の数だけ事実が存在するという考え方)の話を知って大喜びし、芸術にも反映させたそうです」というエピソードを聞いた園場さんが作ったのが、食べる人によって感想が変わる不思議な“クリームパスタ サルバドール・ダリ風”です!
 作り方はかなり簡単で、山ウニ豆腐という味噌漬けの豆腐と豆乳を袋の中で揉んで作ったソースに、茹でたパスタときのこを入れて混ぜたらもう出来上がりです(柚子を添えるのがポイント)。
 何でも、山ウニ豆腐と豆乳を合わせるとウニのクリームソースやチーズソースにそっくりな味わいになるのだそうで、作中でも何を使ったか当てようとしたダリはことごとく予想を外しており、「そんなはずはないのだが…はて?」と困惑した様子でした(←スペイン人の方ですから、知らなくて当然ですね;)。
 ただ、これだと磯の香りが全くせずウニではないとバレバレになってしまうので、園場さんは海苔の佃煮を隠し味として足す事でそれを解決したと語っており、感心しました。
 この食べる人によって感想がバラバラに分かれるパスタを、ダリは「おお!これぞまさしく料理の不確定性原理!」と大喜びしてダリランチとして認め、おかげで園場さんはギリギリ訴えられずに済むのでした(^^;)。
ダリはウニパスタと予想しましたが、答えは何と山ウニ豆腐を使ったパスタでした!
 実を言いますと、この“クリームパスタ サルバドール・ダリ風”は、以前ウニのクリームパスタがまかないに出た時に信仰上の理由で食べられなかったジャンヌ・ダルクの為、「他の物で似た物が作れないか」と考えた園場さんが前もって取り寄せていた山ウニ豆腐で作ったそうで、それを聞いたジャンヌ・ダルクは感動のあまりダラダラ涙を流して感動していました。
 正直、初見時は有賀さん同様「園場さんが、そんないいことを考え付くなんて…!」と驚きが大きかったものの(←失礼過ぎ;)、ちょっと見直したのを覚えています。
 なお、その際有賀さんは「あなたは、こんな素晴らしい方を、最低と言ったのですよ!」と感情が高ぶったジャンヌ・ダルクによって、園場さんに謝るよう強制されかかるのですが、ダリが「これこれ、よしなさい。事実というものは、観測者の数だけ存在するものだ」「どちらも正しく、そして間違っている」「互いに自分の見た現実こそ事実だと譲らんのでは、不確定性原理の根本に関わる、シュレディンガーの面子がたたんではないか」と話して宥めた事により、何とか場は収まっていました。
 これまで、ダリについては美術の時間に習った基本的な情報しか知りませんでしたが、今回のお話を機に興味が出てきたので、一度本で詳しく調べてみようと思います。
不確定性原理によって、真実は見る人の数だけ存在すると二人を諌めるダリ
 先日、思い切ってお取り寄せしてみた山ウニ豆腐が手元に届いた為、再現を決めました。
 果たして、山ウニ豆腐と豆乳の組み合わせは、ウニクリームソースやチーズソースに似ているのか…私なりの事実を確認してみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、ソース作り。厚手のビニール袋の中に豆乳と、オリジナルタイプの山ウニ豆腐を小さく切ってから入れ、袋の上から手でよく揉んで混ぜ合わせます。
 結構分離しやすいので、根気よく粉々になるまで揉んだ方がいいです。
 ※試しに山ウニ豆腐を味見してみると、まさに「珍味!」という感じで、これをちびちびつまみつつ日本酒を飲んだらさぞかし美味しいだろうな~と感じました。
クリームパスタ サルバドール・ダリ風1
クリームパスタ サルバドール・ダリ風2
クリームパスタ サルバドール・ダリ風3
 やがて、山ウニ豆腐と豆乳が完全に合わさって滑らかになってきたら、隠し味である海苔の佃煮をちょこっと加え、さらに揉み合わせます。
 これで、基本のソースは準備OKです。
クリームパスタ サルバドール・ダリ風4
クリームパスタ サルバドール・ダリ風5
クリームパスタ サルバドール・ダリ風6
 次は、パスタの用意。
 水と塩を入れてグラグラになるまで沸騰させた鍋に、食べやすい大きさに切ったエリンギとしめじを投入し、数分経ったらパスタも入れて一緒に茹でます。
 パスタときのこ類がちょうどよく茹で上がったらザルでしっかり湯きりし、先程のソースが入っている袋へ加え、揉みながら混ぜます。
 この時、袋は相当に熱くなっていますので、火傷をしないよう要注意です。
クリームパスタ サルバドール・ダリ風7
クリームパスタ サルバドール・ダリ風8
クリームパスタ サルバドール・ダリ風9
 袋の中でパスタときのこ類にソースがなじんだらお皿へ高く盛り付け、傍らにくし切りにした柚子を添えれば“クリームパスタ サルバドール・ダリ風”の完成です!
クリームパスタ サルバドール・ダリ風10
 香りの方は、もうごまかしようがないくらい味噌っぽかった為、「さすがに匂いをウニ風にするのは無理か…」と苦笑しました;。
 ただ、プリプリしたきのこと、とろみがついたクリームソースは見るからにおいしそうで、味の方は期待大です。
 本当に、味はウニやチーズとそっくりになっているのか…食べて確認してみようと思います!
クリームパスタ サルバドール・ダリ風11
 それでは、パスタがのびてしまわぬ内にいざ実食!
 いっただっきま~す!
クリームパスタ サルバドール・ダリ風12


 さて、味の感想ですが…確かに、不確定性原理料理と言いたくなる味!意外と複雑な美味さで、頭の中が混乱します。
 大抵、こういうなんちゃって料理は「最初はそれっぽいけど、徐々に違うと分かってくる」という物がほとんどなんですが、面白い事にこれはまるっきり逆をいっています。
 始めは味噌特有の熟成されたこうじや大豆の香りが色濃く漂う為、「あ~、やっぱりウニじゃなくて味噌だな;」と苦笑するのですが、シコシコの麺とソースを噛み進んでく内に、段々味噌よりウニに近いほのかな苦味、クリーミーな甘味、卵黄を思わせるまったりしたコクが口の中へ溢れ返り、衝撃を受けます。
 その為、再確認しようとまた一口、もう一口とフォークが止まらないのですが、「うん、味噌だ→いや…ウニ?→いやいや、味噌→…ウニかも?」と無限ループになり、結局埒があきませんでしたorz。
 豆乳のあっさりした油分と、山うに豆腐のねっとり濃厚な旨味のせいか、まるで生クリームで和えたかのような味わいととろみがついているのがスパゲティによく合っており、不思議な感覚に陥ります。
 一口で例えるとするなら「ウニのヘルシー味噌クリームパスタ」というイメージで、食べ物に化かされる経験をしてみたい方向きの一皿でした。
 あと、きのこ類と一緒に茹でたせいか、スパゲティ自体に何とも言えない風味が染み込んでいるのがまた美味で、そこへソースが絡まる事によってさらに深みのある味になっているのがよかったです(もちろん、エリンギとしめじのプリプリ感も旨し!)。
 途中、柚子を絞るとすっきり爽やかな柑橘系の香りが味噌っぽさを打ち消し、フレッシュな酸味が目先を変えてくれるのがいい感じでした。


 思っていたよりも甘味が強く、塩分はやや薄めに感じましたので、好みに応じて塩で味を調節するといいかもしれません(残念な事ながら海苔佃煮はあまり効果がなく、チーズの味もしませんでした;)。
 作中で「卵黄を足すとさらにウニっぽくなる」と言われていた通り、卵黄を足したバージョンはさらに濃厚でウニらしさがでてくるので、そちらもお勧めです。

●出典)『最後のレストラン』 藤栄道彦/新潮社
●参考サイト)「五木屋本舗」
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2013.05.05 Sun 18:51  |  ジャンヌさん

あんこさん、こんにちは。いつも楽しく拝見しています。

『最後のレストラン』、3巻が発売された時、書店で見かけ、
「あんこさんのブログに出ていた漫画だ」だと思い出し、
そばに一緒に平積みしてあった1巻を軽く立ち読みしました。
で、園場さんのエキセントリックな後ろ向きぶりに頬がゆるみ、
思わず3巻一気に購入して読んだ次第です。

この記事のダリの回は、某世紀末救世主伝説に出て来た自称
天才のパロディがあったり、確かに悲壮感は少ないですね。

この作品を読んで思うのは、「ヒロインはジャンヌさんだなあ」
ということです。有賀さんと前田さんは「リアクション役」
「解説者」、というキャラに与えられた役割の枠内に収まり
過ぎていて、人間性とかが余り感じられず、物語に有機的に
絡んでいないように思えます。有賀さんは場面場面で怒ったり
悲しんだりしているのですが、彼女が人間として何を大切に
していたり、何に興味を抱いているか全くと言っていいほど
描かれていないので、例えば、3巻の安徳天皇のくだりでも
上記の描写が無いため、何故彼女が幼い安徳天皇の安否を
あそこまで気にするのかしっくりきませんでした。この物語
への絡まなさは、前田さんも同じなのですが、一方でジャンヌ
さんは、神への信仰を大切にしていている事、厚い信仰心故の
純粋さや他者への施しの心を持つ事、現代に対する知識の無さ
故の好奇心、園場を尊敬する心、などが最初からしっかり描写
されているため、レストランを訪れるお客さんに行動を起こす
際にも動機が感じ取れるため、違和感無く読めますね。

そういう意味でいうと、園場さんも打たれ弱いとかすぐ落ち込む
とかの人間性がしっかりと描写されているので、ジャンヌさん
と共に、物語にちゃんと絡んでいる人物に思えます。

まあ、こんな事は読者がつらつら考えてもしょうがないのです
が(笑)。長々失礼しました。では、また〜。

  • #SFo5/nok
  • kawajun
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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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※ただ、ご質問を頂いた際はなるべくお力になれるよう、すぐご返答できるように対処致します。

 応援して下さる方々に少しでも楽しんでご利用して頂けるよう、沢山の作品に触れるちょっとしたきっかけになれるよう、これまで以上に心掛けていきます。
 恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

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