真なる騎士のお話

ドン・キホーテ

え~、こんにちは。あんこです。
いきなりですが、今回は映画の紹介をしようと思います。
その作品の名前は、「ドン・キホーテ ~ラ・マンチャの男~」(2000アメリカ)。
多少ネタバレ気味な箇所がありますのですが、そこはご了承ください。


この作品は、皆さんも世界史の教科書で一度は目にしたであろう騎士道文学「ドン・キホーテ」を原作とした映画である。
監督は、「ニューヨークの亡霊」「ブリット」などで名を馳せたピーター・イエーツ氏。
ストーリーは、だいたい授業中にさっとおさらいしたものと大して変わらないが、あえて説明するならこうなる。

『スペインの田舎町ラ・マンチャの郷士アロンソ・キハーダは少年の頃から中世の騎士物語に夢中。老境を迎えた今となって、物語の世界と現実の区別がつかなくなり、自らも騎士になろうと思いつく。
赤さびたよろいに身を包み、やせ馬ロシナンテにまたがって、従者を従えいざ冒険の旅へ。従者は雇われ農夫のサンチョ・パンサ。褒美に島が貰えるという誘いに乗ったのだ。
村で見かけた娘アンドルサを、ドルシネア・デル・トボーソ姫と呼んで、自らの想い人に決めたアロンソ改めドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ。彼女の名誉を守り戦うことを心に誓い、騎士遍歴の旅に出る……』(NHK海外ドラマホームページより参照)

初めに言うが、この老人・アロンソは滑稽だ。
いくら現代より騎士道全盛期に時代が近いとはいえ、彼が生きていた時代にはもう剣を取って戦うだの、騎士として誓いをたてるだのという美意識や常識はとっくに崩壊していた。おまけに、鎧や剣なども儀式の日以外にはもう実用されなくなっていた。今で言う我々の着物や刀といったところであろうか。
なのに、老いて少年の日に帰った彼はそんなことも分からない。
騎士の役割もほとんどなくなった現代は騎士の闊歩する12~13世紀、寂れた田舎町は活気溢れる城下町、そして自宅の隣の薄汚れた農家で働く百姓女は、城で彼を慕いながら待つ美しい姫君へと錯覚してしまうのだ。
そして彼は、「世界中で騎士として活躍して恩賞を受け、姫を迎えに行く!」という理由で故郷を飛び出してしまう。それこそ、何もかも捨てて(後に、ある事件が元で一度戻るハメになるのだが)。
酔狂はそれだけではない。
アロンソは風車群を長い腕を持つ巨人に錯覚して決闘したり、旅籠は城と間違えて宿代を踏み倒していったり、ついには彼をからかう人々の出した嘘の”怪物退治”に参加して捕まったりもするのだ。
そして、彼は最終的に厳しい世の中―現実―に目覚めさせられてく。

話を聞いていると、「何だ。単に狂った人間が馬鹿して挫折する話か」とお思いの方も多いと思う。映画中でも、回りの者はアロンソを見て馬鹿にしたりからかい、嘲笑う。時代遅れの狂ったヤツだと。
実際、私も見ている最中何度も苦笑いをした。
しかし、スクリーンの中でアロンソが騎士道を切々と訴えたり、実行していくのをじっと見ているうちに、不思議なことに気付いた。そしてそれは、アロンソがついに現実の世界へと戻り、長椅子でぼんやり座っている時に確信へと変わった。
私はこう思ったのだ。
アロンソ、現実に負けるな。何度も立ち上がれ、それが自分の信じる道なら、とことん突き進んで見せろと。

確かに、アロンソのした事は時代遅れと言う他ない。結局、終わりも来た。
が、それでも私は一笑に付すことができなかった。
何故かと考えた時、私は一つの答えにいきついた。それは、彼の夢へのひたむきさに、純粋さに、かつての自分を重ねあわせたからではないだろうか、と。
子どもの頃の、他愛ない夢。しかし、大抵それは無茶苦茶な物なので、私は日常の中へそれらを埋もれさせ、忘れようとしている。所詮、子どもの戯言と。
だが、アロンソはそれをやってのけたのだ。人から笑われ、時に失敗したとしても、最初で最後の敗北を味わうまで、彼は勇敢にも自分の夢に忠実であり続けたのだ。
これは、凄いことだと私は思う。今の時代、ここまで夢に忠実な人間など、そういないと思うから。笑う人間は、自分の夢をもうひたむきに追う事が出来ないからこそ、笑うのだろう。もし夢にひたむきな人間ならば、むしろ声援を送るだろうから。
夢に対して純粋に向き合える人間は、同じ種類の人間に寛大なものなのだ。
そして、「ああ、私はもうこっち側の人間なのだな」と気付いた時、画面を見つめながら私は泣いていた。
夢を諦める事はかろうじてしていないものの、”純粋”に追いかける事は、もう二度とないだろうから。
だから、私は泣いた。
この物語は、原作者・ミゲル=デ=セルバンテスが私のような人間達に捧げた、”ひたむきな夢”へのレクエイムではないかと、私はどうしても思えてならなかった。

蛇足となるが、書き足しておく。
終盤、もう夢から覚めた後だったがアロンソは憧れの姫と会い、お礼を言われる。
「あなたは、真なる私の騎士です。本当に、ありがとう」
それを聞いた彼はゆっくりと目を閉じ、そしてもう一度目を開け、「ありがとう、姫」と穏やかに微笑んだ。

彼の夢も、全くの徒労ばかりではなかったのだ。そう思い、安心してエンディングを眺めた私だった。

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