『華中華』の“牛肉包みチャーハン”を再現!

 初めて『イワンの馬鹿』という作品名を知ったのは小学五年の頃だったんですが、それを聞いた時に連想したのは、下記のような痛いお話でした。


 女心をちっとも理解しない鈍い少年・イワンと、そんなイワンを恋する暴走気味の少女が繰り広げる、ギャグ風青春ラブストーリー。
 「イワンの馬鹿!」
 …今日も少女は絶妙な勘違いをするイワンに振り回されて走り去り、後に取り残されたイワンは首を傾げる―。


 …その場にいた同級生にすぐ話してしまわず、一旦図書館で調べてから話題にしようと考えて、つくづくよかったと思います(←子ども心に、「学校に置いてあるような本に恋愛が絡むだろうか?」と疑惑が芽生えたからでした)。

 どうも、思春期に恋愛ストーリーを読み過ぎたせいか、今は逆に恋愛要素がある創作物が苦手になっている管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんの元師匠である陳料理長が東京ニューオリエントホテルで作った“牛包みチャーハン”です!
牛包みチャーハン図
 島野さんが料理長になってから満点大飯店はますます不況知らずの盛況っぷりで、厨房内の空気も活気付くのですが、そんな中ハナちゃんだけは再就職した前料理長・陳さんを未だ気がかりに思っており、年が明けてしばらくしてから、思い切って新しい勤め先である東京ニューオリエントホテルへ夫の康彦さんと一緒に訪ねに行きます(ちなみに、そこでも陳さんは料理長の座に就いています)。
 ハナちゃんとしては、てっきり陳料理長は東京ニューオリエントホテルでもバンバン腕を振るっていると想像していたようなんですが、現実は残酷で、元々口下手で気が優しい陳料理長はプライドが高くて気の強い人間ぞろいの東京ニューオリエントホテルですっかり馬鹿にされきっており、今では一番下っ端の人間から「俺、休憩行っちゃうけどいいっすか?」と肩を叩かれるまで舐められた存在へなっているのに衝撃を受けます(´・ω・`)。
 その辺の実情は、ハナちゃん視点と楊貴妃さん視点で嫌という程描かれているんですが、中でも「前の店でも、うちの店と同じように馬鹿にされてたのかもしれんなぁ」「きっとそうですよ、陳さん暗いし…」と影口を叩かれていたり、お客様に喜ばれるような調理の仕方をアドバイスされても「いいんすよ、これがニューオリエント流なんっすから!陳さんは俺らのやり方を黙ってみてればいいんすよ」と完全無視されているシーンは正視に堪えない感じで、当管理人自身ハナちゃんと同じくらいショックを受けました。
 これだけでも十分陳料理長にとってきつかったはずなのに、自分がいなくても満点大飯店は斬新な料理ばかりで大盛況だという噂まで耳に入っていたらしいので、どれ程苦しかっただろうと考えるだけで鬱になります…人間、必要とされたい場所で「自分が居なくても支障はない」という事実を見せ付けられる事ほど辛い事はないと思います)。
 そんな現状を目の当たりにしたハナちゃんは、「料理長なのに…誰も陳料理長とは呼んでいませんでした。辛くて見ていられないんです…」とすっかり気が塞いでしまい、寮に帰った後も近づきがたい雰囲気のまま考え込んでしまいます。
転職先のレストランであまりに不当な扱いを受けている陳料理長を、心配するハナちゃん
 そんな時、ハナちゃんについて行って概ねの事情を把握した楊貴妃さんから話を聞いた竹三郎さんは、「人生の苦難は、己の力で乗り越えなくてはいけないんですが…ちょっとだけ、背中を押してやらないとダメな場合もあります」と決意し(←深い言葉です)、翌日の昼、ある手土産を持って東京ニューオリエントホテルに足を運びます。
 その手土産は、何と甘みのある肉質で知られている葉山牛の肩ロースのスライスで、竹三郎さんはひたすら萎縮して小さくなる陳料理長に対し、「君は料理人だ。だったら、料理で自己主張するんだ」「これとこのホテルの料理を使って、君なりの新たな料理を作るんだ」と静かに喝を入れ、ランチタイム中に実演調理できるようなオリジナルメニューを考え出すよう指示していました。
 どうやら竹三郎さんは、朝の内にあらかじめ東京ニューオリエントホテルの総支配人へ「お互いが得する話」だとして、ランチタイムに陳料理長を主役としたパフォーマンスをする事の許可を取っていたようで、初見時は昨日の今日で思ったことを成し遂げる鮮やかな交渉術に感心したのを覚えています。

 実を言いますと、竹三郎さんはもう少し様子見してから陳料理長に助け舟を出したかったそうなんですが、心優しいハナちゃんが早朝、関帝廟へ陳料理長の為にお参りしに行ったのを見て「ハナちゃんのためにも何とかしてやらねば…」と決意を固めたっぽかったので、初見時は「姪の可愛さはまた格別なんだな~(´∀`*)」とニヤニヤしました(←もっとも、当のハナちゃんは「楊貴妃さんに頼んでも何もしてくれないもん」と考えていたので、何にも期待していなかったのですが…orz。おかげで、楊貴妃さんは「そんな冷たい人間…いや、幽霊じゃないよ!」とちょっと拗ねてました;)。
調理場で認められるためには、料理で自己主張するしかないと諭す竹三郎さん
 この時、陳料理長が「どの料理も完成度が高い…その中で俺流にアレンジできるのはチャーハンだ!」「それに、新たな息吹を与える!」と決意し、ランチタイムに来ていたお客さん達の前で巧みに実演調理して作ったのが、“牛肉包みチャーハン”です!
 作り方はそこそこ手が込んでおり、葉山牛の肩ローススライスを二枚重ねて塩こしょうをふった物の上に、基本チャーハン・トマト・刻みネギを乗せて四角形に包み、ピーナッツオイルでこんがり焼いてフランべしたらお皿へ移し、残った肉汁に醤油・オイスターソース・黒酢を足して作ったソースをかけたら出来上がりです。
 とにかく脂の乗ったいい肩ロース肉を使う事(←他の薄切り肉を使用すると、ガチガチになって美味さが半減します)、ソースをたっぷりかける事がポイントみたいで、調味料もピーナッツオイルや黒酢を代用するのは控えた方がいいと語られていました。

 その後、この“牛肉包みチャーハン”はお客さんの口コミで大評判となって陳料理長は一気に評価されるようになり、東京ニューオリエントホテルの人達も陳料理長を見直してちゃんと「料理長」として扱うようになり、一件落着していました(^^)。
 しかし、後に“牛肉包みチャーハン”は中華街でも一大ブームとなるのですが、それが故にとんでもない人間からも目をつけられる事に…。
 その当たりの詳しい説明は、次回に持ち越したいと思います!
定番料理の中で一番手を加える余地のある、チャーハンを選択します!チャーハンだけではなく、刻みネギとトマトの輪切りも一緒に包み込んじゃいます
 不器用な当管理人に、陳料理長のような調理が可能かどうか甚だ疑わしいところなのですがorz、「どうしても食べたい!」と前々から考えていた為、再現を決意しました!
 作中のレシピ通りに作れるよう、ヘタはヘタなりに頑張って作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、下準備。なるべく脂が乗っていて質のいい牛肩ロースの薄きり肉を用意し(残念ながら葉山牛は手に入らなかった為、手に入る範囲で一番高級だった佐賀牛の肩ロース肉を使いました)、ラップの上に縁一センチを重ねながら二~三枚乗せ、塩こしょうを軽くふります。
 余談ですが、指の熱で簡単に脂がダラダラと溶けて出してしまうのに驚き、「高級なお肉はやっぱり違うな~」と緊張が走ったのを覚えています;。
牛肉包みチャーハン1
牛肉包みチャーハン2
 この牛肩ロース肉の上に、あらかじめ作って冷ましておいたハナちゃん流基本チャーハン→ヘタを取ってスライスしたトマト→刻みネギの順に具を乗せていき、ラップを使って四角になるよう包みます。
 ※ラップを使って折りたたまないと、破れたり溶けたりでかなり苦戦しますので、最初に余裕を持ってラップを敷いておく事をおすすめします。
牛肉包みチャーハン3
牛肉包みチャーハン4
牛肉包みチャーハン5
 次は、焼き作業。
 フライパン(又は中華鍋)にピーナッツオイルをひいて中火にかけたら先程の牛肉包みをそっと入れ、両面にこんがりした焼き目をつけます。
 肉全体に火が通ってきたらすぐにブランデーをかけてフランべし、炎が消えたら急いでお皿の上へ盛り付けます。
 ちなみに、ピーナッツオイルは「本当にピーナッツの匂いがする!」と興奮するほど濃いナッツ臭がするので、一度よく嗅いで見ると楽しいかもしれません。
牛肉包みチャーハン6
牛肉包みチャーハン7
牛肉包みチャーハン8
 肉汁が残っているフライパンを再度火にかけ、沸騰してきたら醤油とオイスターソースを加えてざっと混ぜ合わせて煮立たせ、最後に黒酢を回しかけてひと混ぜします。
 調味料がしっかり混ざりきったのを味見で確認したら、ソースはOKです。
 ※チャーハンが冷めない内に仕上げないといけないので、スピーディーさが要求されます。
牛肉包みチャーハン9
牛肉包みチャーハン10
 出来たてのソースをたっぷり牛包みの上にかけ、食べやすい大きさにカットしたクレソンを傍らに添えれば“牛肉包みチャーハン”の完成です!
牛肉包みチャーハン11
 クレソンと牛肉とソースのみの盛り付けなので、作る前はもっと殺風景な皿になるのではと案じていたのですが、どちらかというとシックで落ち着いた印象の皿に仕上がった為、安心しました。
 デミグラスソースに近い、黒がかった深みのあるこげ茶色のソースがみるからに食欲をそそる感じで、お腹がすきます。
 牛肉の脂から漂う甘やかな香りがたまらなく、これは味に期待が持てそうです!
牛肉包みチャーハン12
 それでは、熱々の内に切り分けていざ実食!
 いっただっきまーすっ!
牛肉包みチャーハン13


 さて、味の感想ですが…一瞬、恍惚となる程美味。これはもはや中華というより、創作洋食です!
 極薄なのに噛んだ途端ジュワッと肉汁が迸ってくる迫力満点な牛肩ロース、フルーティで甘酸っぱい果汁が溢れ出すトマト、そしてこれらのエキスを吸い込んでしっとり濃厚になったチャーハンを、まるでケチャップ風味のハンバーグソースを数倍上品かつリッチに仕立てたようなソースが一つにまとめあげており、完全に調和していました(オイスターソースのまったりしたコクがいい仕事をしてます)。
 一番似た味を挙げるとするならバルサミコ酢ソースで、熟成されて酸味よりも甘味が際立つまろやかな旨さと、華やかな風味はそっくりなのですが、バルサミコ酢程癖がなくさっぱりサラッとしたキレのいい後味が特徴的でした。
 霜降りならではの嫌味を感じない上質な甘い脂分と、弾力がありつつも十分柔らかい赤身を持つ佐賀牛のおかげで、かなりこってりしているにも関わらず胃にもたれにくい仕上がりになっています。
 あと、フランベしたのが功を奏し、ブランデーの優雅な風味が全体に染みただけでなく、表面がカリッと香ばしくなっていた為、味も香りもよりハイグレードな感じになっているのに感動しました。
 花に似た艶やかな香りでありながら、野草独特のピッとくる爽やかな辛みと苦みを持ったクレソンが、口の中をその都度リフレッシュしてくれるのがポイント高かったです。
 正直、チャーハンはおまけになっている印象でしたので新作チャーハンとは呼びにくいですか;、創作料理としてなら間違いなく合格点が出せる味でした。


 ナッツ類特有の香味やさらりとした後味が印象的なピーナッツオイルを使用したせいか、思ったよりも脂っぽくなくてほっとしました。
 黒酢は酢にしては酸味がまろやかなので、酸っぱいのが苦手な方にもお勧めしたいです。

●出典)『華中華』11巻 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
     『華中華』12巻 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
 ※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2013.02.18 Mon 12:31  |  


『創作洋食』『チャーハンがおまけ』となると、中華料理と言うのはどうなんだろう?って思いますね。やっぱり葉山牛が強過ぎたんでしょうか?

これなら、華ちゃんの春キャベツ包みの方が炒飯とマッチしてそうですね

  • #bcav7/Lg
  • これなら
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Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
 …『百姓貴族』
 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
 …『飯盛り侍』
 …『夢色パティシエール』


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