『てんまんアラカルト』の“フレンチ流唐揚げ”を再現!

 近頃、ようやく夜風がぬるくまとわりつくようになったのを肌で実感し、初夏が近づいてきているのを感じています。
 さらに季節が進むと、ビールの美味しさがまた格別になるので、今からビアガーデンの開店が楽しみです。

 どうも、基本ビアホールの方が料理の充実率が高いものの、雰囲気の良さを考えるとビアガーデンも捨て難いと思う管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『てんまんアラカルト』にて主人公・七瀬蒼司君があるお客さんの要望に答えて作った“フレンチ流唐揚げ”です!
フレンチ流唐揚げ図
 『てんまんアラカルト』とは、農業高校の食材調理科に通いつつも授業をサボりまくり、型にはまらないびっくり箱みたいな料理を作る事で問題児扱いされている十八歳の少年・七瀬蒼司君が主人公の独創系料理漫画です。
 八歳の時に引っ越しして離れ離れになったものの、半年間料理を教わって以来ずっと尊敬している師匠・渋谷克洋さんに再び胸を張って会う為、渋谷さんが経営する完全予約制のフレンチレストラン・<BLUE>の近くにある農業高校へ進学して腕を磨いてきた蒼司君でしたが、ある日渋谷さんの幼い娘・天満ちゃんが一人でやってきて「俺はもう店に戻れない。二度と家族やお前の前に姿を見せることが出来なくなった」「お前に店を預ける」「娘の天満に料理を教えてやってくれ」と書かれた手紙を渡されてからは、生活が一変!
 十年ぶりのコンタクトだというのに詳しい説明は何もないまま、お店と天満ちゃんをいきなり託された蒼司君は最初かなり困惑しますが、ひょんなハプニングがきっかけで<BLUE>の厨房に立って料理を作り、昔と同じくらい充実した時間をを過ごしてからは一切迷わず、渋谷さんの頼みを聞き入れる事を決意します。
 果たして、蒼司君は日々難しい注文ばかりしてくる訳アリ予約客の期待に添える料理を出し続けられるのか…というのが、大体のあらすじです。

 一巻を初めて読んだ時、初めの数ページを読んで「問題児過ぎる主人公だなぁ;」と苦笑したものでしたが、さらに数ページめくると主人公が真面目に見えてくるくらいパンクな生き様を見せる師匠・渋谷さんの姿に、こちらまで「どないなっとんじゃあああッ?!」と相当パニックになったのを覚えています…;。
何が何だかわからないまま、恩人から娘さんの料理修行を託される主人公;
 主人公・蒼司君の作る料理は、一見すると斬新すぎるので見た目だけではすごさがあまり伝わってこないのですが(面白い見た目だな~とは感じますが;)、小林有吾先生による味の表現や調理工程の説明が的確なのでどう美味しいのかが伝わってきやすく、見ているこちらまで食べたような気持ちになれるのが素晴らしいです。
 はっきり言って、一昔前のグルメ漫画に出てくる料理は「本当に試作と試食したんだろうか…?」と首を傾げたくなる程、現実味のない物がほとんどでしたが(まあ、それはそれで面白いので好きなんですが;)、『てんまんアラカルト』に出てくるレシピは何とミシュランガイドで二つ星を獲得している一流のシェフが完全監修しているだけあり、荒唐無稽にみえてリアリティと説得力のある創作料理ばかりが出てくる為、読んでいて勉強になります。

 また、まだ五歳くらいなのにレストランをしっかり守ろうと頑張る関西弁の天満ちゃんの描写が愛らしく、今後物語でどのように成長していくのか非常に楽しみです(←実は、蒼司君の料理をすぐにコピーして作るなど、料理の才能はかなりある模様!何かの伏線っぽいのでワクワクしてます)。
 ただ、おかげでヒロインであるはずの蒼司君の幼馴染・久石香織ちゃんの存在感が薄くなっている気がするので、ちょっと気の毒です;。
お客さんが来た時は、ソムリエールの姿をしてもてなす天満ちゃん
 今回ご紹介するのは、蒼司君が<BLUE>で迎えた二人目の予約客・布袋勝也さんのお話。
 二十一歳で銀座の一流フレンチレストランの副料理長にまで上り詰めている凄腕で、二か月前に雑誌の取材で渋谷さんを知ってから興味を持ち電話をした所、「なら料理を食べに来るがいい」「今は作る気にならない。予約は二か月後でいいか?」と返されたのでジリジリしながら待って<BLUE>へ訪れたとの事でしたが、来てみるといるのは渋谷さんではなく代理の蒼司君と天満ちゃんのみで、布袋さんは怒り心頭になります(正直、これは怒っていいと思います、布袋さんも蒼司君も;)。
 その為、布袋さんは当初すごい剣幕だったのですが、蒼司君の顔を見ている内に思い当たる節があったようで気を変え(←理由は三巻以降明らかになります)、「渋谷はこう言ったんだ、何か材料を一つ持ってこい。それを即興で料理してやる」「俺が用意したのはブラジル産の解凍した鶏胸肉と鶏もも肉だ。これを、一流フレンチレストランに出すに相応しい物に調理してこい!」と、蒼司君にリクエストしていました。
 それにしても、何か理由があるとはいえ約束を反故された事をすっぱり忘れて代わりに何か作る事で勘弁してくれるとは…顔は怖いものの、布袋さんは実はすごくいい人なのかもしれません(^^;)。
ブラジル産の解凍した鶏もも肉か鶏むね肉を使って料理をするようリクエスト
 そんな時、蒼司君が布袋さんのリクエストに応えられるよう鶏胸肉と有り合わせの材料だけで作り上げたのが、この“フレンチ流唐揚げ”!
 作り方は意外とお手軽で、ヨーグルトから出てくる半透明な水分・乳清に、塩、にんにく、しょうがを混ぜた物へ鶏胸肉を漬け込み、炭酸水で溶いた小麦粉につけて揚げたら出来上がりです(←何でも、炭酸の気体が衣と身の間に隙間を作ってサクサクになるのだとか)。

 ヨーグルトがお肉を柔らかくする事はすでに有名になっていますが、蒼司君が言うには「肉を柔らかくするには乳清だけで十分」「乳清に含まれる乳酸の作用で肉の保水性が上がる」「乳清だけを使うから、加熱時にヨーグルトが焦げる心配がなく、余計な味がつかない」のだそうで、たったこれだけの手順でよくここまで鶏胸肉の完成度をアップさせたものだと感心しました。
 一見、鶏もも肉の方が唐揚げに向いているように思いますが、旨味成分は鶏胸肉の方が多く含まれているのが研究で分かっているらしく、むしろ保水性を高めて硬くならないようにするなら鶏胸肉の方が唐揚げに向いているとの事でした。
 個人的に、鶏もも肉の方が硬くなりにくくて脂が多い分、唐揚げに最適だと前々から考えていただけに、初見時は結構衝撃を受けたものです。

 その後、布袋さんは“フレンチ流唐揚げ”を一口食べるなりすぐに「結果から逆算して一つ一つの手段を突き詰めて完成に向かう。合理的かつ綿密な工程…まさしくフランス料理だ!」と蒼司君のすごさを認め、やっと渋谷さんの事を許す気になっていました。
ヨーグルトではなく、何と乳清を使って鶏むね肉を柔らかくしていました何と、卵ではなく炭酸水で小麦粉を溶いて衣にしていました!
 乳清に鶏肉を漬け込む技法も、炭酸水で衣をサクサクにする方法も、今まで全く知らなかったので、読むなりすぐに「再現しよう!」と決めました。
 ちょうど近所のスーパーでヨーグルトが大安売りされて大量にゲットしたことですし、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、漬け込み作業。ペーパータオルを敷いたザルに無糖ヨーグルトを入れた後、下にボウルをセットして一晩放置し、乳清を漉し取ります。
 この乳清入りボウルへ、塩、皮をむかず適当に薄く切ったしょうが、芯を取ってスライスしたにんにくを加え、混ぜ合わせておきます。
フレンチ流唐揚げ1
フレンチ流唐揚げ2
フレンチ流唐揚げ3
 そこに、あらかじめ余分な脂肪を取り除いて一口大に切っておいた皮つき鶏胸肉を投入し、数時間漬け込みます(出来れば、丸一日置いた方がより効果的です)。
 やがて、鶏胸肉が柔らかくなったのを確認したら漬け汁から引き揚げ、きっちり水分を拭き取ります。
 その間、小麦粉に炭酸水を入れて泡立て器でよく混ぜておきます。
 ※衣については小麦粉と炭酸水の二つしか明記してなかった為、あえてこの二つだけ合わせて衣を作りました。なので、それだけでは物足りない方は、他に何か足してみるのもありだと思います。
フレンチ流唐揚げ4
フレンチ流唐揚げ5
フレンチ流唐揚げ6
 次は、揚げ作業。
 鶏胸肉にごく薄く小麦粉をまぶした後、先程用意した炭酸水入りの衣をまんべんなくつけ、高温に熱した油で揚げます。
 なお、唐揚げというと二度揚げの技法がポピュラーですが、今回の衣はなかなか繊細ではがれやすい傾向にある為、一回でしっかり揚げて仕上げるのをお勧めします。
 ※余談ですが、小麦粉に炭酸水を投入して混ぜ混ぜするとボウルから溢れんばかりに泡がシュワワワァーッ!、揚げてもジュワ~~ブクブクブク!と勢いよく弾けるので、面白いです。
フレンチ流唐揚げ7
フレンチ流唐揚げ8
フレンチ流唐揚げ9
 鶏胸肉の中心にまで火が通り、衣がサクッと揚がったらキッチンペーパーの上に引き上げ、くし型に切ったレモンが乗ったお皿へ盛れば“フレンチ流唐揚げ”の完成です!
フレンチ流唐揚げ10
 普通の茶色くトゲトゲな唐揚げに比べるとかなり色白かつさっくりした出来栄えで、正直言われなければ唐揚げだと分かりません;。
 しょうがとにんにくの香りはそこまで強く漂ってこないのですが、揚げ物特有の香ばしい匂いがするので物足りなくありませんでした。
 真っ二つに切り分けると、中からジュワワ~ッと肉汁が予想以上に出てくるのが見るからに美味しそうで、味が楽しみです!
フレンチ流唐揚げ11
 それでは、揚げたての内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
フレンチ流唐揚げ12


 さて、味の感想ですが…カリッとした衣からジューシーな鶏肉が飛び出して美味し!胸肉にありがちなパサつきが全くありません!
 作中で言われていた通り、肉と衣の間に適度な隙間があって空気が含まれているのが非常に食べやすく、揚げ物の割には油っこくないのが特徴的です。
 普通の唐揚げに比べるとぐっと薄くて軽い衣で、噛んだ途端サクサクッとあっけなく砕けていく食感になっている為、どちらかというと天ぷらっぽいな~と思いました。
 乳清によってしっとりと潤いが保たれた鶏胸肉から、鶏もも肉に匹敵する肉汁が噛むごとにじわ~っと溢れ出していくのが美味で、そのくせさっぱりしているのでパクパクいけちゃいます(意外な事に酸味は全く感じられず、ヨーグルトの匂いも消えてました)。
 鶏もも肉のような脂分やコクはないですが、その代わり味わい深い旨味成分と柔らかい弾力は鶏胸肉の方が圧倒的に上で、感心です。
 また、下味として漬けたにんにくのこってりした風味や、しょうがのキリッと爽やかな香りは全体に染み込んではいるものの、間接的にしか触れていなかった為あくまでふんわり漂う程度で、そのせいか専門店の唐揚げみたいながっつりした味にはならず、「あっさり上品なにんにく塩味」というべき品のいい仕上がりなのが印象的でした。


 冷めてからだと僅かに固くなりますので、熱々の内に一気にバクッと食べるのが理想の食べ方です(なので、お弁当には向いていません)。
 レモン汁をかけるとまた違った感じで頂けるので、おすすめです。


P.S.
 無記名さんからご質問頂いた水切りヨーグルトの再利用法ですが、そのまま食べるとかなり濃厚かつクリーミーで甘味のないレアチーズ風というイメージで、ご指摘通りジャムを足してデザート風にして食べると美味しいです(不思議なことに、酸味はあまり感じませんでした)。
 当管理人はいちごジャムやブルーベリージャムを乗せたり、塩を足してバゲットに塗ったりなど単純な食べ方しかしませんでしたが、ネットには他にも様々な調理法が載っていますので、そちらを参考にされるとより幅広い再利用法がお分かりになるかと思います。


●出典)『てんまんアラカルト』1巻 小林有吾/講談社
    『てんまんアラカルト』2巻 小林有吾/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2013.04.28 Sun 18:39  |  こんばんは。

なんとも、初めて知ることばかりの
唐揚げでした。
ヨーグルトや炭酸は新鮮です。
胸肉、好きです。
鶏肉の味をぎゅっとしたようなところが。
漫画のほうは、漫画らしい
唐突な展開ですね。

  • #-
  • ウシポニ
  • URL

2013.04.30 Tue 13:49  |  

汁を取った ヨーグルトはどのように活用しますか?
ジャムなどを入れてデザートですか?

2013.04.30 Tue 23:01  |  つ、次は

おおっ、てんまんアラカルトですか。
あれにでてくる料理は本トにおいしそうで、読んでいると
腹がへってくるのでこまります。
次はぜひとも、渋谷シェフと蒼司君をつなぐキッカケとなった
「ありえない目玉焼き」がみたいです。では。

  • #-
  • 波多野鵡鯨
  • URL

2013.05.01 Wed 23:26  |  連載終了・・・。

本日発売の月刊マガジンで連載終了です。てんまんアラカルト・・・。
単行本は全4巻だそうで。
もうちょっと続いて欲しかったなぁ・・。では。

  • #-
  • 波多野鵡鯨
  • URL

2017.04.06 Thu 12:46  |  

ヨーグルトの水分を切って残ったほう(カード)は型に入れて冷やすとレアチーズケーキのようになりますよ

  • #W8BEKrIg
  • りあるに
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あんこ

Author:あんこ
・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
 …『旅のグ(2)月は知っていた』
 …『テルマエ・ロマエ』
 …『土曜日ランチ!』
 …『BAR・レモンハート』
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 …『ぶたぶた』シリーズ
 …『ベーグル食べない?~幸せカフェごはん~』
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 …『夢色パティシエール』


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