『残月―みをつくし料理帖』の“面影膳の謎の揚げ物”を再現!

 いつも昼食をご一緒している女性の方が、手作りの卵サンドを持ってこられたんですが、今までに見た事がない卵サンドで驚きました。
 コンビニでよく見る卵サンドは、潰した茹で卵にマヨネーズや塩こしょうを混ぜた至ってシンプルなものですが、その方の卵サンドはオムレツをマヨネーズやレタスと一緒に挟んだもので、一風変わっているもののとても美味しそうでした。
 なのでこの前の休日、朝食にと試しに作ったんですが、ふわふわした触感の素朴な旨さのサンドイッチで、すぐに気に入りました。
 スクランブルエッグや、味付けによっては玉子焼きをはさんで合いそうでしたので、その内実験してみようと考えています。

 どうも、イタリアの港町で食べられているオイルサーディンサンドも試したいと思う管理人・あんこです。
※注意:今回はいつもにも増してネタバレがひどい回です。未読の方は、あらすじ部分を飛ばすことをお勧めいたします。




 本日作ってみる再現料理は、『残月―みをつくし料理帖』第一話にて澪ちゃんが今は亡きある人を偲んで作った“面影膳の謎の揚げ物”です!
『残月―みをつくし料理帖』
 前巻『夏天の虹―みをつくし料理帖』の四話にて、吉原で起こった大火であまりにも急に又次さんを失った<つる家>のみんなは、静かな悲しみをそれぞれ胸に抱きつつ、その後も変わらずお店を営業し続けます。
 澪ちゃんを始めとする皆が又次さんを偲んでいましたが、中でも又次さんにまるで実の娘かのように思われ、無骨ながらも深い優しさを注がれていたふきちゃんは何日過ぎてもショックが消えなかったようで、もうすぐで四十九日が訪れようとしている時でも会話の端々で又次さんの事を口にすると声に震えが生じていた為、何とも痛々しく感じました。
 正直、当管理人自身も全巻のラストには呆然自失とした読者の一人で、今巻の『残月―みをつくし料理帖』が出るまでの約一年間、「今後は一体どうなるのか」とひたすら悶々としました;。
 実を言いますと、元々又次さんはある事情で<つる家>へ助っ人として駆けつける事が出来なくなってしまっていたので、「三方よしの日」の調理が大変になる事は亡くなる前からも十分予測できていたのですが、吉原で籠の鳥となっているあさひ太夫こと野絵ちゃんを身辺で守る人が一人もいなくなってしまったという事態になる事まではさすがに予想がつかなかった為、初見時は大分衝撃を受けた物です。
 つまり、澪ちゃんにとっては大事な料理人仲間を失ってしまったという辛さだけではなく、友が敵陣で身を守る術もなく本当の意味で独りぼっちのまま取り残されているという苦痛をも味わわなくてはいけない状態になった訳で、これまでにも増して焦燥感と責任感は重くなったことが察せられます。

 しかし、実際に『残月―みをつくし料理帖』を読むと、それまで抱いていた絶望感は和らぎ、かえって「希望」「再出発」というキーワードが頭に思い浮かびます。
 それまで心配されていた不安要素を、ある人は凜と跳ね返す事で、ある人は送り出そうと努める事で、ある人は新しい人生を選んだ事で解消し、それぞれのキャラが同じ方向を見つめつつ別の道を使って歩もうとしている話が目立ち、ようやく話が徐々に収束されようとしているのだと実感させられ、感慨深い心境になりました(←澪ちゃんがそのどれに当てはまるかは、次回の再現で詳細にご説明しようと思っています)。
 事実、冒頭では悲しみを完全に消化できず震えていたふきちゃんも、七月十五日にある料理を食べた後、もはや祖父同然になっている種市さんから「良いさ、良いさ。悲しみを無理に封じるこたぁ無ぇし、今夜は存分に泣いて良いんだぜ」「明日は又さんをちゃんと向こうへ送るんだ。お前がいつまでもそんなんじゃあ、又さんだって辛ぇよ」と言われ、ひとしきり大泣きした後「強くあろう」という決意を持つまでに成長していて、温かい気持ちになりました。

 その際、ふきちゃんが食べていたのが、この“面影膳の謎の揚げ物”です!
 作り方は単純で、水で戻して醤油・日本酒・しょうがで味付けした高野豆腐を高野豆腐の粉をまぶし、カラッと揚げて青のりを散らしたら出来上がりです。
 ポイントは、高野豆腐の衣がはがれないよう衣をはたいてから三十分以上寝かせる&最初は低温で、徐々に油の温度を上げてこんがり揚げるの二点で、これさえ守ればちゃんと上がりますと巻末にて高田郁先生が語っていました。
 元々、又次さんの初盆に<つる家>のみんなが食べる為にと澪ちゃんが考えていた“面影膳”の中の一品だったんですが、六月に江戸で疫病が流行して小さな子供たちが次々と亡くなったのを見て「お客さんにも…」とお店で盂蘭盆会の三日間だけ提供し、好評を得ていました。
 <つる家>のお客さんたち曰く、「この噛み心地と味わい、一体正体は何だ?」「噛んでるとじわじわ味が出てきて、昔の色んな事を思い出しちまう。とうにくたばった親父のこととか、お袋のこととか…」と言いたくなるほど、高野豆腐とは思えない不思議な食感だそうで、結局誰もその正体をあてる事が出来ませんでした。
 
 初めて読んだ時から気になっていたものの、ちょっと勇気が出せなくて作れずにいましたが、この度思い切って再現する事にしました。
 巻末のレシピには詳細なレシピが載っていることですし、早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、高野豆腐の下準備。高野豆腐を水の入ったボウルに浸け、袋の後ろにある手順通りに戻したら、やや強めに絞って余分な水分を出します。
 水分を取り終えたら、よく切れる包丁で一枚を半分に→厚みを三等分になるよう、慎重に切ります。
 その間、ボウルに醤油、日本酒、おろししょうがを入れ、よ~く混ぜ合わせておきます。
面影膳の謎の揚げ物1
面影膳の謎の揚げ物2
面影膳の謎の揚げ物3
 この合わせ調味料入りボウルへ先程の高野豆腐を投入し、全体に味が染みるよう調味料をもみこんだら、冷蔵庫にしまって約十五分漬け込みます。
 時間が経ったら漬け汁をギュ~ッと絞り、高野豆腐をおろし金でおろして粉状にしたものを全面にまぶしつけ、三十分以上放置して高野豆腐の粉をしっかりなじませます。
 ※戻していない高野豆腐はカチカチなので、卸すのも大変そうだと思ったんですが、これが意外にもガリガリいいつつ簡単に粉っぽく砕けてくれました;。時間はかかりますが、楽しい作業です。
面影膳の謎の揚げ物4
面影膳の謎の揚げ物5
面影膳の謎の揚げ物6
 高野豆腐の粉がなじんだら、ごくごく低温に熱したごま油で片面をじ~っくり揚げ、徐々に温度を挙げながらこんがりするまで揚げます。
 やがて、片面がきつね色に色づいてカリッとしてきたらまた低温に戻してそっとひっくり返し、再度徐々に温度を挙げつつゆっくり上げていきます。
 ※一応、レシピにあったアドバイスを守ったはずなんですが、衣は半分くらいはげてしまい落ち込みましたorz。もしかしたら、馴染ませ方が不十分だったのかもしれません…。 
面影膳の謎の揚げ物7
面影膳の謎の揚げ物8
面影膳の謎の揚げ物9
 両面がきれいに上がったらキッチンペーパーに引き上げて余計な油分を落とし、お皿へ飾り付けて仕上げに国産青のりをふりかければ“面影膳の謎の揚げ物”の完成です!
面影膳の謎の揚げ物10
 揚げる事によって香ばしいこげ茶色になった高野豆腐に、青のりの渋い緑色が映え、見るからに美味しそうな出来栄えです。
 ごま油の胃にガツンとくる風味と、青のりの磯風味が混ざる事によって強烈に食欲をそそる香りに変化しており、早く食べたい気持ちでいっぱいになります。
 挙げた高野豆腐がどういう味になるのか想像もつかないので、食べるのが非常に楽しみです。
面影膳の謎の揚げ物11
 それでは、揚げたての内にいざ実食!
 いっただっきまーす!
面影膳の謎の揚げ物12


 さて、味はと言いますと…確かに、これは不思議な食感!高野豆腐本体はともかく、粉の正体を当てるのはかなり難しいです!
 表面はカリカリザクッと軽やかな食感なのですが、中心はムチムチモチッとした弾力に仕上がっているのが面白いです。
 高野豆腐は煮物にして食べると、作中で言われていた通り「きしきしした噛み心地」「中途半端に歯応えのある」という何とも言いにくい食べ味になる為、好き嫌いが極端に分かれやすいですが(下手に煮てしまうと、ただの味のないスポンジみたいになってしまうのも難点)、これは揚げる事によってきしきし感が見事になくなっている上、歯触りも風味も食べやすく変化しているのがいい感じでした。
 しょうが醤油のキレのある塩気、ごま油の癖になる香ばしい風味が淡泊な高野豆腐へ程よく染み、ちょうどいいバランスで旨味が増幅しているのがよかったです。
 高野豆腐の粉の衣は天かすをもっともろくしたようなサクサク感が印象的で、何より高野豆腐の内側に油が染み過ぎてギトギトになるのを防いでいるのに感心しました。
 あと、何気に重要な役割を果たしていたのが青海苔で、鮮やかに濃い磯の香りが味に奥行きを生み出し、後口をすっきりさせて揚げ物特有のくどさを優しく押さえているのが素晴らしいです。


 作中では膳の一品として添えられていましたが、ご飯のおかずというよりはおつまみor口寂しい時のおやつに向いている気がしました。
 衣がとにかくはがれやすいので作るのは難しいですが、久々に初めて食べるタイプの食感に出会えて満足しました。

●出典)『残月―みをつくし料理帖』 高田郁/角川春樹事務所
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

Comment

2013.10.09 Wed 23:39  |  

普通の木綿豆腐を一度凍らせて解凍して水分を絞り
普通の唐揚げと同様に揚げるた物は、何も言わなければ豆腐と気付かないのです!

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・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
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・再現料理を予定中の漫画:
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