『築地魚河岸三代目』の“イワシの炊かずメシ”を再現!

 今年の夏、イサキを塩焼きにしたものを実に十年ぶりに食べたのですが、皮のぱりぱり感や、塩とこれ以上ないくらい合う癖がなくて上品な白身が美味で、一気に虜になりました(←これまで、塩焼きはさんまが一番だと考えていましたが、イサキは全く別のベクトルで最高でした)。
 見た目もスタイリッシュな縞模様といい、真ん丸な目といい、優しい愛嬌のある顔といい印象的でしたので、来年もまた時期が来たら食べたいな~と思います、

 どうも、真鯛並に成長したイサキの成魚姿を見た時、思わずポケモンのゼニガメとカメックスの違いっぷりを思い出して切なくなった管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『築地魚河岸三代目』にて主人公・旬太郎さんが異色の役人である織田さんから教わった“イワシの炊かずメシ”です!
イワシの炊かずメシ図
 『築地魚河岸三代目』は多種多様な魚の特徴や食べ方を色々紹介してくれる為、「この魚はどんな特徴が?」「今日は魚のおかずを食べたい!」という時の心強い味方ですが、時折現代における魚河岸や漁場の問題、漁獲高、新しい流通形態など、魚に関するあらゆる課題を分かりやすく説明してくれる回もありますので、勉強になります。
 今回ご紹介するのは、最近本誌にて取り上げられていた「魚食文化崩壊序曲」というお話。
 ある日、旬太郎さんは老舗<新宮>の三代目・秀一郎さん(←築地では一目も二目も置かれているサラブレッド的存在で、旬太郎さんのライバルであると同時によきアドバイザー。当初は「認識が甘過ぎる…」と旬太郎さんを鬱陶しがっていた節がありますが、最近ではツンデレしつつも内心認めているようです;)の好意により、「このままでは、日本の魚文化が滅びてしまう」という危機意識を持って魚食を復活させようと全国を飛び回る男性・織田さんと引きあわされます。
 織田さんは仲卸でも漁師でもなく、何と水産庁のれっきとした役人なんですが、普段は背広を着ず私服同然の姿で「日々の家庭料理に魚料理を再度根付かせ、魚の消費量を増やしたい」「魚食文化を復旧させるためなら、全国の漁業組合の婦人部、青年部…どこへでも駆けつけるんだ」という信念の元、あちこちの家庭で魚料理に馴染んでもらう為の活動を行っている異色の役人で、その活動はRe-Fish食堂の立ち上げから料理教室の講師役まで幅広く、旬太郎さんを圧倒します(←どうやら、Re-Fishの代表・上田勝彦氏がモデルのようです)。
水産庁の異色職員・織田さんが繰り広げる魚食推進運動に、感銘を受ける三代目
 このように書きますと、織田さんはガチガチの理想主義者のように思われてしまいそうですが、実際は「俺は肉を否定してる訳じゃない。牛や豚、鶏、羊も大好物だ」とも話す柔軟さを持つ方で、魚食を盛んにさせたいのも単に昔から食べ続けられてきたからという理由だけではなく、「日本に限らず、その国に生きるという事は、その国で穫れる物を食べる事だと俺は思うんだ。日本では、約五百種類の魚介類が周囲の海から手に入る」「国土が狭い日本で、今の人口を賄えるほどの牛や豚は育てられない。飼育に必要な土地だけでなく、与える飼料を考えてもそうだ」という現実面でも魚の文化を蘇らせる利点が数多いと説明しており、読んでいて納得しました。
 確かに、魚料理は美味しいし調理法も豊富なので織田さんの意見には大賛成だったんですが、(これは当管理人の田舎だけかもしれませんが)魚の値段は肉の値段に比べるとやや高めにつきやすいという事も魚食の敬遠につながっていると個人的に考えている為、豚の切り落とし感覚で安く手軽に魚を手に取れるようになったら、尚広まるのでは…と素人考えで妄想したものです;。

 後々、旬太郎さんは織田さんが講師として招かれた「大地を愛でる会」の魚料理教室へ参加するのですが、織田さんは時間がない時でも簡単に作れる料理だけではなく、旬太郎さんすら知らなかったという「イワシはよく洗う。昔からイワシ七度洗えばタイの味って言われていてね、こうするとイワシも臭みが取れて一層うまくなるんだよ」「スーパーで売ってる魚の切り身も、調理前にさっと洗って拭くと表面の雑菌がとれて臭みが取れ、旨味はそのまま」など効果的な下処理法まで丁寧に教えるなど、家庭でも手軽に美味しい魚料理が作れるという事を明るく楽しく啓蒙しており、旬太郎さんにいい刺激を与えていました。 
あちこちの料理教室や集まりに呼ばれては、魚を簡単に美味しく頂ける食べ方をレクチャーします
 そして、料理が出来上がった後旬太郎さんは試食会でお相伴にあずかるのですが、中でも一番気に入っていたのがこの“イワシの炊かずメシ”です!
 作り方はかなり簡単で、みじん切りにして塩と日本酒をまぶしたイワシを、炊いて保温にしたご飯が入っている炊飯器に入れて三分近く放置し、仕上げに薄口醤油・しょうが・青ジソを加えて少し蒸らしたら出来上がりです。
 最大のポイントは「炊かないこと」で、<新宮>三代目の秀一郎さん曰く「魚の炊き込みご飯は温かい内はいいのですが、冷めると酸化した脂分が鼻について味が落ちてしまいます」「炊き上げた後のお熱で蒸らす方法だと、低温・短時間の加熱で済むので、参加するほど脂が出ない」との事で、旬太郎も「今までに食べた炊き込みごはんとは一味違う」と目が生き生きしていました。
 入れて炊いて、後は直接薄口醤油を垂らして混ぜるだけという超楽ちんメニューで、奥様方も「本当に臭みが消えるのね!」と大好評でした。
 正直、魚は炊き込みご飯にするにしても、混ぜご飯にするにしてもしっかり火を通してから、という考え方が合った為、低温で火を通し過ぎない“イワシの炊かずメシ”の発想には意表を突かれたものです。
 しかし、考えてみればお肉も保温調理や低温調理にした方がむしろ風味を失わず肉汁たっぷりに仕上がるという実績がありますので、魚の方もそうだとしても、何ら不思議はないように感じました。
炊くのではなく、余熱で短時間だけさっと蒸らすだけで作れるので楽ちん!炊き込みご飯と違い、冷めても油が酸化せずに香りが爽やかなのが特徴的だそうです
 本誌で見て数日間、ず~っと気になっていた為、再現する事を決意しました。
 作中には詳しいレシピが載っていたことですし、新鮮なイワシを使って早速作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、イワシの下準備。三枚おろしにしたイワシに粗塩を振ってしばらく置き、表面に水分が浮いてきたら流水で軽く洗ってキッチンペーパーか清潔な布巾でしっかり拭き取り、包丁でみじん切りにした後お酒を振って混ぜ合わせます。
イワシの炊かずメシ1
イワシの炊かずメシ2
イワシの炊かずメシ3
 次は、混ぜ込み作業。
 通常よりもやや固めの水加減の白ご飯が炊けたら、その上へ先程のイワシを広げて乗せてすぐにフタをし、約三分蒸らします(下の画像だとちょっと偏り過ぎですので、気持ち広げた方がいいです)。
 時間が経ったら、みじん切りにしたしょうがと千切りにした青ジソを投入してさらに一分蒸らし、薄口醤油で味付けしながらしゃもじでさっくりふんわり混ぜ合わせます。
 ※薄口醤油は塩分が濃いめですので、こまめに味見をしながら混ぜた方がいいです。あと、イワシを入れても蒸らすだけで、炊飯厳禁です!!
イワシの炊かずメシ4
イワシの炊かずメシ5
イワシの炊かずメシ6
 塩加減が決まり、ご飯全域に具が行き渡ったらお茶碗へよそい、そのまま味噌汁などと一緒に食卓に運べば“イワシの炊かずメシ”の完成です!
イワシの炊かずメシ7
 見た目だけだと魚の炊き込みご飯というより、「ひき肉の混ぜ込みご飯?」と戸惑ってしまいますが、イワシの脂特有の甘やかな香りが漂う為、すぐにイワシだと気づきます。
 イワシ臭さはなく、逆にしょうがのすっきりした香気が強い為、爽やかな印象を受けました。
 蒸らすだけ、混ぜるだけ、味付けの薄口醤油だけという魚ご飯は初めてなので、一体どんな味がするのか興味津々です。
イワシの炊かずメシ8
 それでは、出来たてほやほやの内にいざ実食!
 いっただっきま~っす!
イワシの炊かずメシ9


 さて、味の感想ですが…びっくりするくらい柔らかな口当たりで美味!「こんな涼やかなイワシって初めて」と言った奥さんの気持ち、よく分かります!
 炊かずに蒸らしたおかげでイワシの身が全くぱさつかずジューシーに仕上がっており、噛めば噛む程さざ波のようにイワシの濃厚なエキスがはちきれんばかりに溢れ出してきます。
 魚を炊き込みご飯の具にすると、出来たては最高でも一旦冷めると急に臭みが強くなり、脂が酸化するせいでどことなくぎっとり感が出るのが難点でしたが、炊かず飯にすると冷めた後も臭って嫌な味にならず、ふうわりと優しい味わいのままなのに感動しました。
 香りと色は薄いものの塩気は濃口以上にキリッと効いている薄口醤油が、イワシ特有のこってりしつつも爽やかな脂分を殺さず引き立てているせいか、シンプルながらもしみじみ奥行きのあるコク塩味に仕上がっており、癖になります(←魚醤系の、舌へ直接ガツンと響いてくる強烈な旨味成分に通じる物がありました)。
 しょうがのすっきりした風味やわずかな辛味、青ジソのサクサク感がいいアクセントになっていて、例えるとするなら「純和風・イワシのジューシー香味そぼろご飯」というイメージです。
 何と言いますか、イワシがフレッシュなままご飯に活きて浸透しているという印象で、刺身にしたり焼いたりしたイワシとはまた違った魅力がありました。


 炊き込みご飯ももちろん美味ですが、冷めても臭みがなく、変質した脂に悩まされませんので、お弁当やおにぎりにはこちらが断然いいと感じました。
 魚はイワシじゃなくても、アジ・鮭・マグロを使ってもおいしく出来るとの事でしたので、その内いろいろ試してみようと思います。

●出典)『築地魚河岸三代目』 作画:はしもとみつお 原作:九和かずと 原案:鍋島雅治/小学館
   (週刊ビッグコミック NO19 2013年10月10日号掲載分)
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
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 …『美味しんぼ』
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 …『鉄鍋のジャン!』
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