『将太の寿司』の“ひよっこ寿司”を再現!

 その昔、あるラーメン屋さんで相方さんとテーブルに着いた時、「蒸し卵」と書かれたプレート付きのボウルに殻付き卵が入っているのを発見し、頭の中がはてなマークだらけになったことがありました;。
 結局、二人とも「ただの茹で卵?いや、温泉卵?半熟卵?えーい、気になる!」という誘惑に打ち勝てず、あえて店員さんにどんな卵か聞かずに一個剥いて食べたのですが、びっくりするくらい普通の固茹で卵で、二人ともガクッと肩を落としたものです。

 どうも、黄身裏返し卵を一度食べてみたいと思う管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『将太の寿司』にて将太君が新しく出来た弟分の飛男君と一緒に作り上げた“ひよっこ寿司”です!
ひよっこ寿司図
 将太君が鳳寿司に来て一年が経過した頃、親方が知人に頼まれて一人新人を入れる事になり、将太君に初めての後輩が出来ます。
 名前は吾子飛男君で、歳は将太君よりも一つ年下の十六歳なんですが、初登場時からやたらと調子がよくて軽い性格で、初対面の将太君に向かって「ちぃーっす!よろしくおねげーしやーす!!」「荷物入れんの手伝ってくんねー?」と言い放ち、哀れ将太君は威厳を示すどころか後輩の荷物運びをするという前代未聞の災難にあっていました;。
 当初は自由奔放すぎる飛男君と、真面目な将太君とではチグハグな関係になってしまうのではないかと心配したものですが、飛男君が調子に乗り過ぎた時に絶妙な手綱さばきで指導する将太君の姿はいい先輩っぷりで、意外としっくりくる関係になっていた為ほっとしたのを覚えています。
 これだけでも十分問題児ですが、その他にも堪え性がなく自分勝手・仕事中にヤケ酒・隠れて煙草を吸う・ジャンクフードしか食べられない偏食家(←一度、わざわざ寿司を握ってくれた小政兄さんに向かって「寿司ってまずいじゃないっすかぁ、カップ麺でも食ってますよ」という、悪気がない分タチが悪い暴言をした事有り;)など、数えたらきりがない程問題行動を取ってその都度クビ寸前になる危機を迎えるのですが、将太君が時には励まし、時には叱咤する事によって無事苦難を乗り越え、最終的には職人としても人間的にも大きく成長していました。
 最初は生魚すら食べられませんでしたが、実は職人としての才能はそこそこある方で、割と早い時期から創作寿司を色々考えては先輩方から「なかなかどうして、見どころがあるじゃねえか!」と感心されていましたので、人間どう化けるかわからないものだな~と感心したものです(^^;)。
初っ端から飛ばしっぱなしの飛男君は、最初からすごく浮いてました;。
 そんな飛男君が、先輩方から一目置かれるようになっためでたいエピソードが、第180話「飛男の恩返し」。
 飛男君が将太君の指導によって寿司職人の仕事に遣り甲斐を感じ始めるようになったある日、小学校時代の恩師・神部先生が飛男君の様子を気にかけて鳳寿司へ訪ねてきます。
 普段はマイペースで話を真剣に聞いているのかイマイチ分からない飛男君も、小学校四年から六年にかけての三年間、唯一自分の事を心配してよくしてくれた神部先生には頭があがらないようで、久々に会ったのにも関わらず「はい!頑張ります!」と神部先生のいう事を素直に聞いており、将太君を微笑ましい気持ちにさせてました。
 最初はお寿司を食べながら昔話に花を咲かせていましたが、神部先生の一人息子である寿司職人・卓司さんが長年の念願が叶って独立したものの、お店に閑古鳥が鳴いてうまく立ち行かなくなっていることに話が及ぶと神部先生は「このままだと潰れてしまうかもしれない」と辛そうな顔になり、飛男君は何とかして力になりたいと一念奮起します(←ちなみに、神部先生は落ち込みつつも「おっと…お前を励ましに来たのに、こんな湿っぽい話はいかんな」「とにかく頑張れよ!お前が一生懸命に頑張る事が、先生には一番うれしいんだ!」と力強いエールを飛男君に送ってくれるくらいいい先生で、思わずぐっときました。何だかんだで飛男君は、先生や先輩にはかなり恵まれていると思います)。
 そんな時、飛男君が将太君に「起死回生の必殺の新メニュー!これがあれば先生の息子さんのお店も大繁盛間違いなしっすよ!」「だけど俺一人じゃ無理なんス!何とか…何とか手伝ってやってくれねっすか…!?」と頼み込んで手伝ってもらい、三日三晩ほとんど寝ずに試行錯誤を重ねて完成させたのが、この“ひよっこ寿司”です!
 作り方は結構簡単で、茹で卵の黄身にエビのおぼろを混ぜ込んだ物を真っ二つに切った茹で卵の白身の穴に詰め戻し、酢飯で普通の握り寿司みたいに握ったら出来上がりです。
 試食した神部先生が言うには「エビと卵の旨味、それに白身のプリプリした食感が素晴らしい一体感だ!」だそうで、すっかり塞ぎ込んでいた卓司さんも「いけるよ父さん!このメニューでもう一回頑張ってみるよ!」と一転してやる気を取り戻していました。
 調べてみると、実はエビと黄身の相性の良さは昔から認められていたようで、エビの黄身焼き・エビの黄身煮・エビの黄身酢など数々の料理が現代まで伝わっており、それを勘で探り当てた飛男君はすごい逸材なんじゃないんだろうか…と見直したものです。
新しいお寿司を作るのに飛男君が選んだ食材は、魚ではなく何と卵!単なる茹で卵ではなく、何と海老のおぼろを混ぜ込んで甘味や食感もプラスしていました
 実を言いますと、飛男君が魚ではなくわざわざ茹で卵を新メニューの材料に使ったのには、理由があります。
 それは、飛男君が小学校四年生の時に先生と食べた、今でも忘れられない昼食タイムの想い出がきっかけ。

 その日、飛男君は学校行事のハイキングで近所の山へ登っていたんですが、同級生たちが色とりどりの手作り弁当を見せ合っている中、自分だけ菓子パンとコーヒー牛乳を持ってきているのをひやかされてしまい、たまらなくなって一人別の場所で昼食をしませる事にします。
 「パパもママも仕事してて…」と強がってみせはしたものの、同級生の一人が放った「お弁当も作ってもらえないなんて超みじめ!嫌われっ子じゃないの~?」という心無い一言に傷ついていた幼い飛男君は、涙ぐみながらカレーパンにかぶりつくのですが、そこへ神部先生がさりげなくやってきて「うまそうだな」と言いながらお弁当を広げます。
 その言葉に反発した飛男君は、どこでも売っているパンだからちっともうまかないと答えるのですが、実は神部先生は夕べから奥さんと喧嘩していて今朝もお弁当を作ってもらえず、今日はこっそり白ご飯と漬け物だけ弁当箱に詰めてやって来たというちょっぴり情けない笑い話を飛男君に語り、「先生のこのお弁当に比べたら、カレーパンとコーヒー牛乳の方がずっとごちそうだ!」とおちゃらけて、飛男君に笑顔を取り戻させていました(←なお、飛男君は「そんな強そうなヒゲ生やして、奥さんには本当弱いんだから!」とからかっていますが、神部先生は「お前はうちの奥さんの恐ろしさがまるでわかってない!怒ると本っ当に怖いんだからな…!」と思わず真顔に戻っており、普段の尻に敷かれっぷりが垣間見えた気がしました;。どこのご家庭も大変ですね; )。
 お弁当を食べ終わると、飛男君は神部先生から「先生は茹で卵作らせたら、日本で一番の腕なんだぞ!」と言われながら差し出された沢山の茹で卵を一緒におやつ代わりに食べ、お父さんとお母さんやお弁当の事について励まされた後、「お前はいつも下ばかり向いているな…それではとても大切なことも見逃してしまうぞ。ほら、空を見上げてごらん。本当に綺麗な青空だぞ!」とも勇気づけられ、そのおかげで今のように前向きな性格になったようでした。

 この時に食べた茹で卵の美味しさ、そして感謝と感動の気持ちを、どうしてもお寿司で表現したかったからこそ茹で卵を材料に選んだと飛男君は語っており、その話を聞いた神部先生は「ありがとう…ありがとうよ、飛男…!本当に立派になったなあ…お前はもう、立派な一人前の男だよ…!」と男泣きに泣いていました。
 このシーンを見るたび、心と心の通い合いが人をどれだけ強くし、成長させてくれるのか実感出来ますので、個人的に大好きなエピソードです。
小学校の頃、市販のパンをお弁当代わりに持ってきた飛男君に茹で卵をわけた先生
 奇想天外な発想のお寿司ですが、どんな味がするのか前々から気になっていた為、再現する事にしました。
 詳しいレシピはありませんが、想像で何とか作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、エビのおぼろ作り。殻を剥いて背ワタを取り除いたエビを熱湯でさっと茹で、フードプロセッサーで細かいみじん切り状にした後、日本酒、みりん、砂糖、塩と共に小鍋へ入れ、お箸で絶えずよ~く炒め合わせます。
 味付けは結構甘めにした方が黄身といい対比になりますので、砂糖は多めがおすすめです。
ひよっこ寿司1
ひよっこ寿司2
ひよっこ寿司3
 やがて、水気が完全になくなってポロポロのそぼろ状になってきたら、エビのおぼろはできあがりです。
 このエビのおぼろの粗熱が取れるまで一旦冷まし、茹で卵の黄身と一緒にボウルで混ぜ合わせたら、準備完了です。
 ※黄身のホコホコ感を大事にしたい時はそのまま潰すようにして混ぜ、反対に口当たりをより繊細にしたい場合は一度漉し器で黄身を裏漉ししてから混ぜた方がいいと思います。
ひよっこ寿司4
ひよっこ寿司5
ひよっこ寿司6
 次は、握り作業。
 先程の黄身入りエビのおぼろを、真っ二つに割っておいた卵の白身の穴部分にたっぷり詰め込み、その上から酢飯をかぶせて優しく握ります。
 ※酢飯を握る時は、酢水を手に付けてから作業した方が手にくっつかず、味も損なわなくて済みますのでおすすめです。
ひよっこ寿司7
ひよっこ寿司8
 酢飯と卵の白身がしっかりくっついたら形を崩さぬようそっとお皿へ盛り付け、そのまま食卓へ運べば“ひよっこ寿司”の完成です!
ひよっこ寿司9
 上の部分だけ一見すると確かにただの茹で卵みたいですが、横から見ると酢飯や黄身がうっすらと見えるので、「お寿司だ!」と分かります。
 白身のプリッとした白い輝きが綺麗で、食欲をそそります。
 醤油をかけずにそのままぱくっと食べていいみたいですので、一体どういう味になるのか見当もつきません;。
ひよっこ寿司10
 それでは、いざ実食!
 いただきまーす!
ひよっこ寿司11


 さて、味はと言いますと…エビのおぼろが酢飯にしっくりなじんで美味。思わず口許が綻ぶ素朴な味わいで、幸せな気持ちになります。
 ツルツルプリンとした舌触りやさっくりした歯応え、淡泊な味が特徴的な卵の白身に、ハラリと甘くほどけていくエビのおぼろがぴったりで、噛むごとに優しい甘塩っぱさが舌の上を染み渡っていきます。
 細かくつぶされた後もホコホコ感が残っている黄身がエビと酢飯をうまく結び付ける橋渡し役となり、より複雑な旨さに仕上げているのがナイスでした。
 エビのおぼろを使ったばらちらし寿司は何度か食べた事がありますが、こちらは卵の白身が抜群のアクセントとなっているので目新しく飽きのこない感じで、一口で一気に食べられる為非常に食べやすいのがよかったです。
 酢飯のかすかな塩気により、まるで和菓子の黄身餡を思わせるようなエビのおぼろの、ふくよかで品のいい自然な甘味がさらに際立っているのが印象に残りました。
 刻む前の茹でエビは強い弾力でぷっつりと噛み切る感じの食感ですが、細かいそぼろ状になった途端プリプリと歯を震わせるような繊細な口当たりになる為酢飯との一体感が増しており、さっと口の中に広がって他の具材と調和していくのがたまりません。


 使う海老によって味がかなり異なる為、単純そうに見えて実は奥が深い料理です。
 酢飯だけではなく、白いご飯にのせて食べてもしっとり美味ですので、おすすめです。

●出典)『将太の寿司』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
 …『浅草人~あさくさびと~』
 …『鬼平犯科帖』シリーズ
 …『銀の匙』
 …『拳闘暗黒伝セスタス』
 …『スイーツ本部長一ノ瀬櫂』
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